力ずくで変えていった(『ノルウェーを変えた髭のノラ』感想)

『ノルウェーを変えた髭のノラ』(三井マリ子著、明石書店)を読みました。

ヨーロッパは、昔から女性にも人権があるものだと思っていましたら、なんとノルウェーでも30年前は今の日本と大差なかったと言うことを、この本で初めて知りました。現在の北欧の女性の活躍を見聞きして、女性が人権を得たのはごく最近だなんて思えなかったので、衝撃でした。

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では、なんで、北欧と日本で、これほどまでに大差がついてしまったのでしょう。女性を取り巻く環境の違いを強く感じる一冊でした。

クオータ制という言葉を、私が知ったのは、ここ数年前です。ところが、ノルウェーでも、3、40年ごろ前までは、女性議員が非常少なかったので、クオータ制を入れるように政党内で頑張って、そしてクオータ制を入れたら、それを使って、つまり、女性たちが力ずくで、変えていったことがわかりました。自然に女性が議会に増えるのを待っていたのではなかったのです。その先頭に立った女性は、ベリット・オースさんです。

そもそも日本の女性議員数は、人口比にして、あまりに少なすぎます。少なすぎるゆえ、お飾りのような女性議員や、権力者に媚びるような女性議員しか目立たないのではないかと思います。

『ノルウェーを変えた髭のノラ』によると、19世紀にはノルウェー女性にも参政権がなかったそうです。女性に参政権のない理由に、ノルウェーでも「公的な場で行動する女性は売春婦と同じだ」などという馬鹿らしいことを言っていたというのです。

私がこの本を読んで思うのは、安倍首相の言う「女性も輝く、云々」は的外れだということです。北欧のように、女性たちが、子どもを育てながらフルタイムで仕事を続けられる状況になってはじめて「女性も輝く」という言葉が出てくると思うのです。

首相は、まずパートで安い時給できつい仕事をさせられている女性たちの労働条件を改正せよ、と言いたいです。

この本には、2008年(割と最近ですよね)に、ノルウェーでは会社の取り締り役に女性を4割入れなくてはいけなくなったことが紹介されています。ノルウェーでは、この取締役会は、社長を首にすることも出来るそうなので、そこに女性4割ですから、凄い事です。

ノルウェーでも日本と同じように、女性を侮辱した時代が長く続いていたのですが、ノルウェーの素晴らしさは、女性が、人として人権を勝ち取ろうとしてきた強さだと私はこの本を読んで感じました。

もう一つ感動した点は、日本とは全く違う選挙制度でした。日本は、選挙に出るとお金がかかると言われていますが、「ノルウェーは個人が1円も負担することはない」と書いてあり、本当に驚愕でした。女性や貧乏な人は選挙に出るなといわんばかりの日本の選挙とは大きく違う所です。

選挙が近づくと、テレビによる政治討論会もとても多いそうです。選挙期間中、日本は候補者同士の政治討論が禁止されています。議論もせずに選挙前は良い事だけ言って、当選したらさっさと態度を変える。あまりに長くこうしたことが続いて、日本ではみなそんなものだとあきらめているのです。

この本を、私の知人、特に政治にそれほど関心の無い人たちにすすめたいと思います。

中山 あみ(サバイバー)


『ノルウェーを変えた髭のノラ』を読んで(星川まり)
ノラの国の130年後: 書評『ノルウェーを変えた髭のノラ』(榊原裕美)
新潟日報「ノルウェー政界の男女平等:クオータ制が後押し」
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by bekokuma321 | 2018-03-10 18:24 | ノルウェー