2017年 10月 01日
市民に優しい選挙制度(ノルウェー)
ノルウェーに飛んだ。日本の選挙と比較すると余りに違っているが、東京新聞が私のメモとインタビューをもとに、簡潔な記事にしてくれた。
記事の内容をより理解しやすいように、ノルウェーの選挙の基本を箇条書きにしてみる。
1)選挙制度は比例代表制。選挙で政党が獲得した票の割合に比例して、その政党の当選数が決まる
2)投票日は法律で4年に1度、9月第1か第2月曜と決められている(地方の判断で日曜日を加えて可)
3)議員数は169人。選挙区(=県)の議員定数は人口にほぼ比例して定められている。最大のオスロ17人、最小のフィンマルク5人など。169議席のうち150議席は選挙区19から選出される。残り19議席は4%条項をクリアした政党に分配される(『ノルウェーを変えた髭のノラ』p212~p215)
4)選挙権は、18歳から。投票する権利と投票される権利(=立候補する権利)ともに。実際、高校生の候補者もいる
5)候補者探しは、1年ほど前から、選挙区である県下の市レベル政党内で始められる。選挙権がある人なら本人の承諾なしに候補者にできる。実際は承諾を得てから載せ、現職優先で、国会議員候補には地方議員経験者が多い(ただし日本と違って地方議員のほとんどが無給のボランティア)
6)候補者名簿はリストと呼ばれる。リストの1番から当選するので、上位に載ると当選率が高い
7)政党のほとんどは、リスト作成にクオータ制をとるため女性候補は40%以上いる。しかも男女交互に並べられることが多い。また多様性のある政党とみなされたいため、青年部や移民家庭の代表を入れることが多い。1番しか当選しないミニ政党では、1番をめぐって党内で激しい議論がなされるといわれる
8)リストは、選挙区の政党(日本で言う政党の県支部)の選定会議で最終決定される。選定会議への参加者は市の代表であり、数は法律で決められている
9)県の政党は、リストを3月末までに選挙区管理委員会に提出する。この3月末前後から、政党の候補者名がメディアで明らかになる
10)リストに載る候補者数は、主要政党の場合、定数プラス6~8人。たとえば2017年、オスロ(定数17人)の労働党リスト・保守党リストともに25人だった。全土では4438人が立候補した。
11)当選した議員1人に代理議員1人がつくため、3人当選すると次点の3人が代理議員となる。議員が、大臣になったり(権力の集中を防ぐため大臣と国会議員の兼務は禁止)、病欠、育休をとったりした際に代理をつとめる
12)選挙運動には期間の定めがない
15)事前投票は7月1日から投開票日の前の金曜日まで
16)多くのメディアが独自に「あなたの考えはどの政党に近いか」というクイズを設け、市民に政党の政策を知る機会を提供する。たとえば「企業減税をしたい(ハイ、どちらというとハイ、どちらかというとイイエ、イイエ)」など
17)有権者にリストの順番を変える権利がある。自分の好きな候補者名の横にある空欄に1番などと数字を入れて順番を変える試みができる。また削除したい候補者にバッテンをつけることもできる(変更されるには多くの人が行使しなければならず、実際は、国会議員のリストが変更になることはまれ)
18)投票用紙は、政党リストが形を整えられたもので、選挙区ごとに大量に印刷される。投票前まで投票用紙はセンシティブなものとはみなされていない。あちこちで配布される
以上、『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(明石書店、2010)に詳述されている。
【注1:2017年10月13日更新】
【注2:ノルウェー総選挙の投票率は最終的に78.2%。上記の9月30日東京新聞の通りである。以前、FEM-NEWSで「投票率は77.6%」と紹介したが筆者滞在時の9月14日時点で公表された数字】
■Foreign observers to monitor Norwegian election