2017年 07月 25日
ノルウェーの選挙は政党の政策を選ぶ選挙
さて、スウェーデン、ノルウェーなど北欧諸国では首相の解散権はあってもないに等しい。
ノルウェーでは憲法で9月第2月曜日と明記されていて、私が知る限り、解散による選挙はなかった。スウェーデンは数年前、現首相のステファン・ロベーンが予算案を否決されたため解散をしたが、なんと「50年ぶり」と報道されていた。
ノルウェーは、この9月11日(月)が国会議員選挙だ。議員は196人。現在、保守党を中心とした中道右派政権で、首相は保守党党首のエルナ・ソルベルグ。ブルントラント以来、ノルウェーで2人目の女性首相だ。
9月に向かって、夏休みが過ぎると選挙運動は終盤に近づく。世論調査がさかんに行われ、定期的に主要9政党の支持率が発表される。それによると次期選挙では、労働党を中心とした左派中道政権に変わりそうだ。これまでひとけた代だった中央党(過去の農民党)の人気が10%代まで伸びていて、さらに票を伸ばそうと、党首トリュグヴェ・マグヌス・スラグスヴォル・ヴェーダ(元農業大臣)は、全国選挙バスツアーを企画しているらしい。
立候補にお金は1円もかからない。だから18歳以上なら、高校生でも立候補可能だ。貧しい移民家庭の子どももいる。教育がいっさい無料なので、貧しい家庭に生まれても、大学院卒や弁護士などの有資格者も多い、そんな背景もある。
政党内で活発に運動をしていると、まず地方議会議員に選ばれる。そこで頭角を現すと国会議員候補に推薦される。日本と全く異なるのは、北欧の場合、地方議員は基本的に無償のボランティアである点だ。大学で学びながら、または保育士や教員をしながら、“余暇”に地方議員の役目を果たす。つまり、地方議会での経験が評価されるということは、無償ボランティア活動が評価されることだ。
選挙は比例代表制だ。各政党が投票日の1年ほど前から選挙区(県に相当する)の政党会議で候補者について話し合い、およそ半年前の3月、選挙区の選挙管理委員会に、候補者名簿が届けられる。この候補者名簿はリストと呼ばれ、リストはそのまま投票するときの投票用紙になる。
比例代表制は、日本の小選挙区制のように最高得票の候補者1人だけが当選して、ほかはすべて落選という選挙ではない。大政党は大政党なりに、小政党は小政党なりに、その票に比例して当選者を出せる。比例代表制とは、「勝負をつけるのではなく、票数の多い少ないを正確に議席に反映させる。つまり多数派と少数派の双方がその大きさに比例して代表される」。三宅一郎の弁だという。小選挙区制は邪悪だと言いきった、石川真澄(元朝日新聞記者)の本に見つけた。
有権者は、候補者を選ぶのではなく政党を選ぶ。だから、政党は旗幟鮮明が命だ。では、どうやって政党の政策を普通の市民が知りえるのか。政党が作成配布するパンフレットやホームページからだけでなく、マスコミが頻繁に暮らしの課題について政党の意見を聞いては報道する。
Valgomatとは、税金、学校教育、道路建設・・・など国民の関心あるテーマが書かれていて、賛否を問うもので、全部に答えると自分の答えともっともマッチする政策を持った政党はどこかがわかる、というしくみだ。主要メディアのWebサイトから誰でも簡単にできる。NRK(日本のNHKあたる)では、24項目の問いがあって、冗談でやってみたら私は「キリスト教民主党」に近いと出た。VGというタブロイド新聞では、5項目で、こちらでは私は「労働党」に近いという。
さて、ノルウェー人だったら、どちらに投票しようか。
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