2017年 04月 30日
これが北欧の言う平等だ!
画面に真っ先に現れるのは若いパパ。スウェーデンの電気技師シルビアだ。
480日間ある育児休業の半分を彼がとる。2人の子どもをあやしながら、食事を用意する。いかにも楽しそうだ。彼は「子育ては2人でと決めたんです。ですからはじめから平等に分け合っています。ママが半年の育休ならパパも半年。僕に、30%とか、10%、5%の育休なんてありえません」。
北欧理事会・閣僚理事会(注)がつくった広報用の動画だ。
北欧の多くの男性は育児家事を分担し、多くの女性は子どもが小さい間も仕事を続ける――切っても切れない関係。さらに、職場のフレックスタイム、誰もがはいれる保育園、介・看護職への男性の進出、経済的自立が女性にいかに大切かの研修・・・。3分間の動画にギュッとつまっている。
子どもとすごすために仕事を休む男性が世界でもっとも多いのは北欧諸国。スウェーデン、アイスランドが先頭を走り、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどが続く。子育て中、就業時間をフレックスタイムに変える会社の数も圧倒的に多い、という(ちなみに、OECD加盟国で、男性がもっとも家事など無償労働をしない国は、わが日本だ)。
しかし、と北欧理事会・閣僚理事会はこれに満足せず、次のようにさらなる平等をめざす。
「親休暇の7割以上は依然として女親が取得しており、完全な男女平等にはまだ遠い」。そしてスウェーデンの調査によると、「子どもが小さいときに父親が育児休業をとったシルビアのような家では、女性の生涯賃金が月に7%上昇している。この例は、性による賃金格差の撤廃につながる要因となる」。
女性も男性も、どんな人も1日は24時間。子どもの成長や人生にママだけでなくパパもかかわる、そうした毎日をすごせる人が多数いる社会、それが性による格差のない社会をつくる。可能にする鍵は、「コーヒーと法律です」--こう黒板に言わせている(上の写真)。こんなふうに、核心をさりげなくつくところが、また素敵だ。
日本もほんの少しの予算で、このような動画をつくれるはずだ。このテーマにぴったりの監督は何人もいる。問題は、政府がどっちの方向を見ているかだ。
■世界一幸福な国ノルウェーの女性たち
■イクメン議員辞職とマタハラ
■1日6時間労働へ!
■ノルウェーのワーキング・マザー
■教員ストに見た「北欧モデル」
■女性の雇用率の高い国は
■北欧に対する偏見
■企業の4分の1以上「育休より退職を」
■Anne Hathaway honors International Women's Day at the UN – video (上の北欧の育児休業政策が引用されている)
【注】北欧理事会とは、北欧諸国が、団結をめざして閣僚レベルで会議を開き、政策のすりあわせをする国際機関。国家主導型のASEANとは異なり、地域に根付いた民間協力を国家が後追いする形で作られたという。その北欧理事会の主要政策のひとつに「男女平等推進」がある。北欧理事会の全体のヴィジョンにも、女性の権利や男女平等の視点が色濃い。