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あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

FEM-NEWSは、世界中から届く女たちのニュースを和訳して届けるブログです。編集責任者は三井マリ子です。

2017年のロゴ写真は、ノルウェーの画家クリスチャン・クローグ(1852-1925)による絵「アルバーティン」の一部にしてみました。少女アルバーティンが、性病検査のために警察官に促されて医務室に入ろうとしている瞬間が描かれています。

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 ▲「アルバーティン」(1887年)。画面を占める派手な衣装の女性たちは売買春婦

作家でもあったクローグは同時に「アルバーティン」という同名の小説を表し、女性が貧しさゆえに売春婦とならざるえない社会を告発しました。アルバーティンは、貧しいお針子である母を助けて朝から晩まで働きますが、金はすべて病気の弟の薬代に。ある日、警察官に騙され酒を飲まされて強姦されたアルバーティンは、売春婦の道に入っていきます。

本は、道徳心を損なうからと発禁処分。それに怒ったジャーナリストは大衆の前でその内容を伝え、新聞では売春問題について大論争が展開されます。それが絵画の人気を高めることとなり、公娼制廃止は国を揺るがす大きな運動に発展していきます。首相は、ほどなく公娼制廃止に踏み切ったとされています。

私は昨秋、オスロの国立美術館でこの絵の前に立ちました。現在もいる、おびただしい数の「アルバ―ティン」のことを思いながら・・・。

1928年、私と同じ場所に立って、この絵を鑑賞した日本女性がいました。久布白落実(1882-1972)です。当時の日本は公娼制が野放しでした。女性には参政権がありませんでした。そんな社会を変えようと、久布白は運動していました。そんな彼女が、ノルウェーの公娼制は1枚の絵に触発された市民たちの運動によって崩れ去ったことを知ったのです。

帰国した彼女は、女性参政権運動にのめりこみます。秋田市民1000人を前に「第1回 公娼廃止大演説会」で講演。翌1929年再び秋田入りして、秋田県初の女性参政権を要求する講演会で「公娼問題よりとき伏して、婦人参政権の必要なることを力説」します。彼女から影響を受けた人の中に、女性運動家和崎ハルがいました。後にハルは、戦後初の女性代議士39人の1人となります。

あけましておめでとうございます_c0166264_9555847.jpg私が、ノルウェーのクオータ制を初めて日本に紹介したのは1980年代です。女性を政策決定の場に増やして、男女平等社会にしたいと思ってのことでした。

その後、ノルウェーの政治・福祉制度に関する書籍を刊行し、講演もしてきました。今も、女性やマイノリティを議会に増やさない限り民主政治はないと思っています。

ただ衆院選を経験した私は、「小選挙区制はクオータ制という種をまく土壌にふさわしくない」と確信できます。ここにメスを入れなければ、と考えるようになりました。そのモデルは、100年ほど前、小選挙区制から比例代表制に変えた国、ノルウェーです。

さて私は、東京都立高校教員を経て東京都議会議員(2期)。法政大学講師から大阪府豊中市男女共同参画推進センター初代館長、福井県武生市初代男女平等オンブッド(オンブズマンのこと)などの職を経てきました。そのかたわら、NGO「全国フェミニスト議員連盟」を中心に女性運動を続けてきました。お茶の水女子大学を卒業した後、フルブライト奨学金をいただいて、アメリカのコロンビア大学でMAを修了しました(家族・地域教育学)。

東京都議時代、東京都労働局にセクシャルハラスメント防止施策を初めて実施させました。当時、ILOから発行されたセクシャルハラスメントをなくすための政策についての国際調査報告書によると、日本で初めて、唯一の公的制度でした。東京都のセクシャルハラスメント政策は、全国の自治体に影響を与え、次いで国のほうも関心を持つようになりました。『セクハラ110番』(集英社)に詳述されています。

著書は
『バックラッシュの生贄――フェミニスト館長解雇事件』(共編著、旬報社)
『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)
『女たちのパワーブック』(ノルウェー労働党女性局編)(共訳、かもがわ出版)
『ママは大臣 パパ育児ーーヨーロッパを揺るがす男女平等の政治』(明石書店)
『男を消せ!--ノルウェーを変えた女のクーデター』(毎日新聞社)
『セクハラ110番』(集英社)
など多数。

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by bekokuma321 | 2017-01-03 23:19 | FEM-NEWSについて