2016年 09月 11日
連帯の力、フェイスブックに少女の写真を再掲させる
さきほどはいってきたニュースによると、フェイスブック側は、ノルウェーのアフテンポステン紙らの抗議によって、削除した写真をもとに戻したという。
おめでとう!
問題となったのは、何も身に着けずに走っている少女の写真だ。あのベトナム戦争の・・・。
アメリカが支援した南ベトナム軍は、ナパーム弾を使って北ベトナムの村々を焼き尽くした。ナパーム弾は、アメリカ軍が開発したとされる爆弾で、1000度という高温のゼリー状のものが炸裂するのだという。少女は、そのナパーム弾のついた衣服を脱ぎ棄てて、走った。「ギャーッ、熱いよ~」という断末魔の叫び声が聞こえてきそうだ。
この写真は、世界中の人の心を動かし、反戦運動を加速させたといわれている。それを、フェイスブックは、ヌードを受け付けないというルールがある、と掲載を拒否した。杓子定規、とはこのことだ。
ことのはじまりは、ノルウェーの作家トム・エーガランが、彼自身のフェイスブックに少女の写真を戦争の記録として掲載したところ、その写真が削除されてしまったことだ。
ノルウェーのアフテンポステン紙は、9月8日、削除したフェイスブックの編集長マーク・ザッカバーグに「表現の自由の侵害であり、編集権の濫用だ」と激しい抗議をした。それを同紙のフェイスブックと新聞紙上に載せた。削除された写真のコピーも載せた。このフェイスブックの記事は、削除された。
このアフテンポステン紙のジャーナリスト魂に、多くのノルウェー人が反応したと思われるが、そのノルウェー人のなかに首相もいた。彼女は問題の写真を載せて、フェイスブックの検閲に対する批判を投稿した。それも削除された。
ノルウェーの政治家はフェイスブックなどソーシャルメディアを利用する政治家が多いが、エルナ・ソルベルグ首相(保守党)も、自身のフェイスブックに気軽に投稿する。彼女の投稿は、アフテンポステン紙が抗議した翌日だった。
つづいてノルウェー・ジャーナリズム協会も、協会の新聞Journalisten のフェイスブックに、その写真を載せた。また、それも削除された。同紙編集長は、他のメディアに向かって、写真のシェアを依頼した。「これはヌードではない。表現の自由、歴史、戦争なのだ」と。
さらに、ノルウェー紙 「ダグサヴィーセンDagsavisen」は、写真の本人キム・フックに直接取材を試みた。同紙によると、キム・フックは、戦争被害の子どもたちを救援する「キム財団」を通じて、こんなふうにコメントを寄せた。
「力強いメッセージを持つ歴史的写真です。
それを、ヌードであると見る人に悲しみを覚えます。
写真を見るのはつらいですが、歴史の重要な一瞬なのです。
写真家ニック・ウトによる、この報道写真は、無実の犠牲者
にあたえる戦争の恐ろしさを示す真実の瞬間をとらえており、
強く支持します」
当事者の少女キム・フックに直接、取材してくれたおかげで、彼女があの写真の持つ意義をしっかりとらえていると知った。53歳となった彼女が、カナダに移住し、反戦運動家として活躍していることもわかった。とてもうれしかった。
今回、フェイスブックを検閲撤回に動かしたのは、ノルウェー側の、官民あわせてのすばやい連帯の力にあった、と私は思う。
■The girl in the picture saddened by Facebook's focus on nudity
■Facebook backs down from 'napalm girl' censorship and reinstates photo
■ポルノか歴史的報道写真か