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本を読もう!

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このポスターは、イタリアの友人宅の台所の真っ白な壁に掲げられていた。

生き生きとした女性の表情、シンプルな構図、ダイナミックなデザイン、大胆な色づかい…。聞けば1924年に旧ソ連で制作されたポスターのコピーなのだとか。はるか90年以上も前のことだ。

最も印象深いのは、中央の女性だ。他の言葉はロシア語なので意味不明。そこでgoogle翻訳の助けを借りて、生まれて初めてロシア語を勉強した。

こころもとないことこの上ないが・・・・。女性が手を口元にして、叫んでいる言葉は、「クニーギィ KHИГИ」(ロシア語で「本」の意味)。「本を読もう」と叫んでいるらしい。上と下のЛЕНГИЗ はレニングラ-ド出版の略語。右側のКНИГИ ПО ВСЕМ ОТРАСЛЯМ ЗНАНИЯは、「学問のすべての分野についての書籍」。

国立出版社レニングラード支部の宣伝に作られた、プロパガンダポスターだが、どこかで見たような気がする。実は、このポスターは、超有名で、最近では、英ロックバンドのフランツ・フェルディナンドのアルバム・カバーにも使われるなど、時代を超えて多くの国のさまざまなジャンルに模倣されているという。

モデルの女性は、リーリャ・ブリーク(1891~1978)。ソ連の映画監督で、左翼芸術雑誌“LEF”の編集にも関わった。幼少時からバレエやピアノのほか詩や絵画にも才能を発揮した上、ドイツ語とフランス語に堪能、モスクワ建築大学で建築と美術を専攻した多彩な女性だったらしい。

ポスターの作者はアレクサンドル・ロトチェンコ。グラフィック・デザインの父と称される芸術家だ。「ロシア・アヴァンギャルド」に属し、絵画、建築、写真等多岐にわたって活躍した。1920年代には詩人ウラジミール・マヤコフスキーと共同でポスター制作に熱中。マヤコフスキーの作る詩がキャッチフレーズとなり、ロトチェンコのデザイン力で、次々に前衛的な作品が誕生していったといわれている。

2人の男性をつないだのは、おそらく、リーリャ・ブリークだ。彼女の一生は、英語の短文を読んだだけでも、革命前後のロシアをほうふつさせ、映画のようだ。そのあたりは「叫ぶ芸術ーーポスターに見る世界の女性たち 第32回:本を読もう!(ロシア)」をどうぞ。

「叫ぶ芸術ーーポスターに見る世界の女性たち」_I 女性会議
Lilya Brik: a very Soviet siren
by bekokuma321 | 2016-02-15 16:27 | アジア・アフリカ