2015年 10月 21日
オスロ市長、副市長、ともに女性
市長は、左派社会党のマリアンヌ・ボルゲン(Marianne Borgen、写真)。副市長は労働党のカムサイニ・グナラナム(Khamshajiny Gunaratnam)。ベルゲンに続いて、オスロの市長も副市長も女性となった。
地方選挙が終わって、労働党、緑の党、左派社会党の3党は、連立政権に向けて1カ月以上にわたる話し合いを続けてきた。
3党のモットーは、「オスロをもっと環境にやさしい、子ども中心の、分断のない町に」。
新市長となるボルゲンは64歳。1995年からオスロ市議。2007年の地方選でも、オスロ市長めざして立候補した。「子どもを救え Save the Children Norway」に勤めていたが休業中。「子どもを救え」は1946年創設された子どもの人権と福祉のために運動する非営利民間団体。全国5都市に支部を持ち、国内外の子どもたちのために活動している。
副市長のカムサイニ・グナラナム(Khamshajiny Gunaratnam)は27歳。10代でオスロ市議になって、今回は3期目。スリランカからの移民で、労働党青年部所属。彼女は、2011年7月、ウトヤ島で起きた労働党サマーキャンプ殺戮事件で生き延びた。
3党協議が始まったころ、躍進した緑の党のショアイブ・スルタンが初のイスラム教徒市長になるのではないかと取りざたされた。
しかし、緑の党は、ラン・マリエ・ングェン・バルグ(Lan Marie Nguyen Berg)がオスロ市環境局のコミッショナーのポストをとることで合意に達した。いわば環境大臣にあたる。彼女は、気候変動問題など地球レベルの環境保護対策に活動する。オスロ大学で開発学を専攻し、ベトナムやアフリカに留学した。ベトナム移民の娘(注1)。
彼女は、オスロ市議会で第3党となった緑の党代表として、3党合意に党の政策を入れさせた。たとえばオスロ中心部は、2019年まで自家用車は乗りいれられなくなる。さらに自転車にやさしいまちづくりをめざす。
市長を連立を組む小政党に譲った労働党は?
労働党は、市長候補レイモンド・ヨハンシェン(Raymond Johansen)が事務総長に就任した。オスロ市には大臣にあたる8局長(Commissioners)がいて行政を指揮・監督するが、その代表が事務総長。いわばオスロ市の首相といえる(注2)。レイモンド・ヨハンシェンは左派社会党所属だった。1995年、左派社会党候補者リストに登載されたものの2000人以上から削除され落選した。その後、労働党に移った。
オスロ市は、保守党中心の政治が20年にわたって続いていた。今年9月の選挙が終わってから届いたニュースで、女性が多く当選したばかりでなく、移民ノルウェー人が何人も当選したことがわかった。オスロ市のいわゆる“内閣”のメンバー名を見ても、その多様性がはっきりとうかがえる。
女性市長率いる左派中道政権になって、どんなオスロに変わるのか。楽しみながら追跡したい。
■Slik skal de rødgrønne styre Oslo
■Dette er Oslos nye ordfører
■Nattåpne barnehager og dyrepoliti i Oslo
■Save the Children Norway
■Oslo Arbeiderparti
■Oslo MDG
■SV_Oslo
■ベルゲンは市長も副市長も女性
■ノルウェー:市長と議会に女性を増やす秘策
■ノルウェー地方選:名簿変更権を使おう
■オスロ市議会議員カムシ
■移民女性のための移民女性による選挙キャンペーン
【写真:市長は左派社会党HP,副市長はfacebookより】
(注1)ラン・マリエ・ングェン・バルグの父親は、14歳のころベトナムからノルウェーにたった1人で移住してきた。ベトナム戦争で下半身に障がいを受けた彼をノルウェーの家族はボランティアで育てあげた。彼はオスロ大学卒業後、専門職につき、現在は年金暮らし。今、彼はアフガニスタンの子どもたちを親代わりになって助けている。(Lan Marie Nguyen Berg)
(注2)市長(ordfører)と事務総長(byrådsleder)の区別は難しい。英語は ordfører=mayor、byrådsleder=governing mayor 。事務総長というと行政府のトップにあたるが、オスロ市は、どちらも市議会議員選挙で市民から選ばれる政治家だ。市長は「王様」で、事務総長は「首相」というたとえがわかりやすい。