2015年 08月 17日
ノルウェー:市長と議会に女性を増やす秘策
現在ノルウェーは、最も男女平等に近い国のひとつ。閣僚大臣は半数を女性が占め、国会、地方議会とも約40%が女性議員だ。
とはいえ、ここに至る道は平たんではなかった。
女性をもっと決める場に増やそうという運動は、1960年代から本格的に始まった。地方議会を取材していた女性記者が、「保育、学校、高齢者介護の問題を決めるのに女性がほとんどいないのはおかしい」と怒った。彼女の怒りがきっかけで、女性を当選させようキャンペーンが始まった。
比例制選挙の投票用紙にあたる各党の候補者名簿に並ぶ女性にバッテンをつけようという運動だった(注)。ノルウェーの選挙では、候補者の横にバッテンをつくとその人に票が加わり、順番が上にあがる。それを活用して、下の方に登載されていた女性候補の順位を上げて、当選させようという運動だった。
2015年8月、ノルウェーの女たちは、男性偏重の地方議会を変革する運動を、またまたスタートさせた。初の運動から約50年、今年の9月14日の投票日まで、どれだけ有権者の心をつかめるか。ポスターとアピール文を紹介する。
「民主主義の社会は、民意を反映していなければなりません。
しかし、ノルウェーで、女性の市長は全市のわずか22%しかいません。
ノルウェーは、男女平等の世界チャンピオンである、と思っています。
でも、政治の世界への女性の参入はまだまだなのです。
『女性に入れろキャンペーンkvinnerinn』は、2015年の選挙で女性をもっと当選させようと、生まれました。
2013年現在、429市のうち女性が市長職についている市はわずか96でしかありません。まったく不十分!
すべての人が参画することで民主主義は強くなります。投票を忘れないで、そして女性候補にバッテンをつけることを忘れないでください。そうすれば物事を決める場に多様な人が選ばれます。
連帯して、強くなろう!」
■Hun er eneste kvinne i kommunestyret
■#kvinnerinn
■Vil krysse frem kvinnelige politikere
■Slik bekles ordfoerer-norge av menn
■halftheskymovement(上から7番目のポスターに書かれているノルウェー語は、「世界で最強の未使用資源は女性である――ヒラリー・クリントン」。原語は以前から使われてきた)
■ノルウェー地方選、始まる
■女性と選挙、女性と政治
■比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
■ノルウェー、女性の国会議員増えず
■世界一民主的な国
■連立の3政党党首全て女性
■ノルウェー地方選レポート1:「女のクーデター」 再び
■ノルウェー地方選:女性市長5人に1人
■ノルウェー選挙:性差も肌の色も越えて
(注)ノルウェーの選挙法は何回か改正されている。1960年代、候補者名簿(リストと呼ぶ)の候補者名から気に入らない候補名を線で消す方法が合法だった。消された候補者の順番は下がり当選に遠のく。女性議員増運動の初期は、この方法がとられた。当時、女性たちは超党派で「男性名を消そう」という運動をし、リストの下のほうが当たり前だった女性の順番を上に押しあげた。その後、バッテン(x)をつけて票を加算する方法に変わった。(『男を消せ!--ノルウェーを変えた女のクーデター』(毎日新聞社)に詳述されている)。