2015年 04月 26日
地方議会選挙を終えて思う「日本の選挙って変だ」

日本の投票は、有権者は投票所に行って、支持する候補者氏名を書いて、その紙を投票箱に入れるという方法をとる。
この、手書きで候補者の名前を書くという当たり前の方法を、他の国の人々に言うと、みな仰天する。「だから日本の候補者は、自分の名前の書いたたすきをつけているのです」、と納得してもらえるまでなんと手間暇かかることよ。

しかし、ここは日本。
勝つためには、立候補者は自分の氏名をできるだけ多くの人に書いてもらわなければならない。だから候補者にとって何よりも大事な選挙運動は、自分の名前を覚えてもらうことだ。

全国フェミニスト議員連盟で男女平等社会をつくろうとしてきた仲間たちの多くは、駅頭で、公園で、団地の前で、政策を訴える工夫をしていた。


名前を書くのが選挙だから、政策なんていらないといわんばかりだ。
政策で支持者をつかんでいる現職以外は、日本の場合、政策で当選なんてありえない話なのだ。
マイクを握って訴える女性候補者を見ながら、「身近な問題を政治課題にのせてきた実績のある人たちが、そのチラシをまけないのは、どんなにか悔しいだろう」と思った。

全国フェミニスト議員連盟を創設して20年以上、女性議員増の運動をしてきた。だが、一向に増えない。

しかし、政党助成金という巨額の公費を受け取っていながら、政党には女性候補を増やすための実効ある具体策に欠けていた。女性が輝くなどとふれこむ政府、選挙管理委員会、総務省など関係機関は、指をくわえてみているだけだった。

私が取材を続けているノルウェーでの地方選は2011年秋にあったが、女性議員は38%だった。
政党別では、左派社会党は51%、労働党は44%が女性だった。ノルウェーでは、ほとんどの政党は候補者を決めるときに一方の性を4割から6割になるように決めていて、それをクオータ制という。クオータ制に反対する政党もあるため、結果は、40%を割ってしまった。
市長は20%が女性、つまり5人に1人が女性首長だった。
こうした差異をつくる根本は、選挙制度にあると思う。ノルウェーをはじめヨーロッパの多くの国々は、国も地方も比例代表制選挙なのだ。
日本は、国会が小選挙区制で、地方議会は複数当選者を出すいわゆる中選挙区制だ。中選挙区制は小選挙区制よりは小政党や無所属に有利だと言われるが、基本的には最も得票の多い人から順番に当選する小選挙区制の変形に近い。

だから、票を最も多く獲得した政党はそれなりに、票の獲得率が少ない政党はそれなりに、当選者が出る。よって、どんなに小さな町にも、さまざまな政党から議員が出ている。それに政党は候補者を決める段階で、クオータ制にもとづいて少なくとも4割は女性にしているので、4割ほど女性議員が誕生する。

候補者名が書かれたリスト(投票用紙)の左側に設けられた空欄にバツ印をつけてその候補者に1票を加算する方法と、用紙の空欄に他党の候補者名を書き足す方法の2種類が設けられている。
これによって、女性や障がい者など、まだ議会に少ないグループの候補者にバツ印をつけると、その候補を上位に押し上げて当選させる可能性が高まるのだ。
多様な声をすいあげて議会に届ける代弁者を選ぶ、それが選挙だ。
なのに、日本では、誰がどんな政策を持っているかを知らせることを禁じている。
日本の地方選挙に多い無所属候補のほとんどは、隠れ自民だそうだ。その結果、「オール与党議会」も多いと聞く。もちろん「オール男性議会」は数知れずある。
選挙のたびに、「日本の選挙制度は変だ」と怒りを覚える。
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