2015年 04月 04日
「育児パッケージ」がはぐくみ育てる平等の社会
フィンランドから、元首相マリ・キヴィニエミOECD事務次長、ノキアソリューションズ&ネットワークスのウッラマイヤ・シモラ営業部長。
ノルウェーから、スタート・オイル アジアパシフィックのヒルデ・メレーテ・ナフスタ社長、IMFアジア太平洋地域事務所オッドパー・ブレック所長(司会)。
日本から、IMFアジア太平洋地域事務所木下裕子次長、ANAホールディング株式会社の小林いずみ社外取締役、 OECD東京センター村上由美子所長(あいさつ)。
結婚・出産しても働き続けることが当たり前になっているフィンランドとノルウェー。それに対して、いわゆるM字型雇用から抜け出られない日本と韓国。この著しい差異が明らかになってからずいぶん経つ。
今回のシンポジウムで、現状打破には2つ緊急課題があるとあらためて認識した。
ひとつは、女性の非正規雇用を少なくすること。もうひとつは、学童保育を含む保育所を充実させること。
どちらも実現には、政治的意思と行動が欠かせない。
フィンランド元首相のマリ・キヴィニエミ(左)は、「フィンランドでは、保育所を希望するすべての子どもがはいれる保育所を用意しなければなりません。法律で地方自治体に義務づけられています。いい法律をつくることが大事です」と強調した。
「フィンランド女性はフルタイム勤務が多い。非正規雇用は基本的に認められないとする法があるんですよね」とマリ・キヴィニエミに私は尋ねた。「そうです、労働法があります」と応えた。
主催は、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、駐日フィンランド大使館、駐日ノルウェー王国大使館の4者。
会場には、今、世界で話題の、フィンランド「育児パッケージ」が展示されていた。「赤ちゃんボックスbaby box」とも呼ばれる。
赤ん坊が生まれたすべての家庭に、平等に無料で渡される段ボール箱だ。中にはおむつや、毛布、ベビー服、帽子、靴下、ミトン、絵本など赤ちゃんに必要な品と、ブラジャーやコンドームなど親に必要な品までどっさりはいっている。
中身を出したら、段ボール箱は、赤ちゃんのベッドになる。これで、生まれた時から、親と添い寝をせず、赤ちゃんだけで寝るくせがつくのだという。
「育児パッケージ」は、1938年に貧しい家庭への政府からの贈り物として誕生した。が、1949年から収入の差に無関係に全家庭に平等に贈られるようになった。
フィンランドは、2014年世界母親ランキングで第1位となった。BBCによると、「仕事に忙しい私にとって、赤ちゃん用品のショッピングに時間を使わすにすんでとても助かった。世界一幸せな母親と聞いて、すぐ育児パッケージを思い出しました」と30代の母親は言った。
「『育児パッケージ』こそ、フィンランドの平等を表すシンボルです」とヘルシンキ大学のPanu Pulma歴史学教授は語る。
生まれたときから、どんな親のもとに生まれようと全員が平等に祝福される長い伝統。これが、フィンランドの男女平等を尊重する政治や働く場をはぐくんできたに違いない。
■Why Finnish babies sleep in cardboard boxes
■Finnish Baby Box
■The babies who nap in sub-zero temperatures
■Child and Family Policy in Finland(フィンランド社会保健省の子どもの福祉に関する法律などのガイドブック)
■日本はフィンランドとノルウェーの女性活躍推進法から学べるか
■妊娠した女性が差別される国、されない国
■ノルウェーのワーキング・マザー(6人目が出産まぢかでも正規雇用で働くノルウェー・ママについて)
■Early Childhood Education and Care in Finland
■Child day care in early childhood education in Finland
■Finnish Labour Legislation and Industrial relations
■Temporary emloyment in Finland