2015年 02月 06日
ベアテ・シロタ・ゴードンと三井裁判
ベアテさんは、女性の人権を確立するためには、政治家になって議会で発言すること、差別には泣き寝入りせず原告として裁判で闘うこと、その2つを強調した。
その後、私たちは、「ベアテさんの会」を立ち上げて活動をしている。
三井マリ子さんは、都立高校教員をなげうって議員に挑戦したり、行政の不法を法廷に訴えたり、とベアテさんの言ったことばを体現してきた。
議員を辞した後は、全国フェミニスト議員連盟のなかで、女性議員を増やす活動を続けてきた。私もその活動に参加してきたが、骨の折れる大変な仕事だ。
2012年の秋ごろ、松浦大悟被告は、民主党秋田県の代表として三井さんに故郷秋田から立候補してほしいと懇願したという。当時、民主党の支持率は史上最低を更新し続けていて、離党する議員が多く、ましてや新人の当選などありえなかった。三井さんも固辞していたという。それでも、盤石の態勢で迎えるからと勧誘が続いた。
当時、私が三井さんからもらったメールには、「落選を恐れて立候補しないのは、おかしいのでは」と秋田への移住を決意したいきさつが綴られていた。そのメールで、私は女性議員増の運動をしてきた三井さんが、ついに立候補に踏み切ったことを知った。
ところが三井さんが落選した途端、松浦被告は、「あなたがいると票が減る、今後いっさい連絡してこないように」と言って、三井さんを秋田から追い出した。信じられないことである。
三井さんの選挙だったのだから、何かあったら責任はすべて三井さんに来る。そこで三井さんは、秋田を去る前に選挙会計はどうなっているかを松浦被告に申し入れた。しかし、無視されたという。
秋田を追い出されてから、しばらく寝込んでしまった三井さんだが、その後、手紙で、「会議の開催」「会計を明らかにすること」を再び要望した。なしのつぶてだった。
そこで、やむなく三井さんは、秋田まで何度も通って、選管や銀行に行って1人で調査を続けた。そうした努力で、犯罪の疑いのある事件が見つかった。三井さんは警察に告発し、受理された。
さらに、三井さんの政治活動のための「政党交付金」を、三井さんを追い出して自分たちが勝手に使えるようにした松浦被告の行為は、三井さんへの背信行為というだけでなく、応援してくれた知人友人への背信行為でもあるーーこう考えた三井さんは、民事裁判に訴えた。
「政党交付金」(政党助成金ともいう)は、この裁判の重要なテーマだ。政党交付金は、私たちの税金から一人250円を積んでできたものだ。お金がかかりすぎる選挙を見直して、政党の健全な活動を進めるためにつくられたものだという。その公費が、選挙に手慣れた政治屋たちに都合のいいように使われているとしたら…。
今回(1月16日)は、公開の裁判だというので富山から秋田まで傍聴に行った。秋田駅前で裁判のことを多くの人に知ってもらうためにビラ配りをした。
受け取る人は男性が多かった。残念なことに女性は避ける人が多く、若い人たちは興味が無さそうに見えた。悲しかったが、ベアテさんが私を応援してくれていると思って、声をかけ続けた。
日本には、議員を経験する女性も、立候補する女性も、極端に少ない。だから、「選挙違反」や「政治とカネ」という言葉を聞いても、女性の多くはまるで他人事だ。むしろ、そういう言葉を聞いただけで敬遠する傾向がある。その結果、政治はますます多くの女性たちとかけ離れてしまう。
この裁判は、あまり例の無いものなので関心を持つ人は少ないと思うが、政党交付金など裁判のテーマや意義を、政治に無関心な人たちに、わかりやすく知らせてほしい。そして、女性史に残してほしいと願っている。
山下 清子 ベアテさんの会
【写真上:ベアテ・シロタ・ゴードンの自伝『1945年のクリスマス』(柏書房)、写真下:秋田でビラまきをする山下清子(左)、さみどりの会(*)】
(*)2012年の衆院選で落選した三井候補は、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴した。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。「産むならば 世界を産めよ ものの芽の 燃え立つ森の さみどりのなか」という阿木津英の歌がある。女性は子どもだけでなく、世界を産み出すのだという意味だ。三井さんは、選挙演説に引用しては「私は新しい秋田を産み出したいのです」と結んでいた。「さみどりの会」の由来だ。過去の報道・報告は左下Moreをクリックしてどうぞ。
●憲法記念日に思う、足元にある戦場
●ベアテ・シロタ・ゴードンさんと私
●日本国憲法第9条にかける私の想いー―ベアテ・シロタ・ゴードンさんロングインタビュー
■井戸塀政治家から政党交付金どっぷり政治家へ
■「女はみくびってもいいのだ」という意識
■今朝の読売を読んで 「解散・返還は当たり前」
■澤藤弁護士ブログを読んで
■決定的証拠が裁判長に提出された
■供託金は秋田おばこのデモクラシーに
■秋田おばこのデモクラシーに大賛成
■マラッカ海峡より
■裁判をしなかったら供託金はどこに?
■「供託金もどって一安心」_5.21読売新聞
■女は使い捨ての駒か
■5月10日のNHK、11日の朝日、読売、魁
■供託金、もどった
■秋田おばこのデモクラシー
■4月15日の毎日新聞
■裁判長提案「供託金戻したら」は当然
■お金の流れがよくわかった
■NHK 「選挙資金裁判 争点絞られる」
■供託金は戻したらどうか、と裁判長提言
■ワーキング・ウーマン、三井裁判を女性の視点で見る
■今朝の毎日新聞
■女性記者の目
■秋田衆参両選挙で4人書類送検
■秋田衆参両選挙で関係者送検
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判 3
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判 2
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判