2014年 12月 23日
ドイツ、「女性クオータ法」成立
昨日のBBC「ドイツ取締役会に女性増を」によると、30%と決めたのは女性クオータ法(Frauenquote law)。
国会で何カ月にもわたって激論が交わされ、その過程でドイツ社会における女性の地位も議論されたという。男女平等を扱う部署である家族省の大臣マヌエラ・シュヴェーズィヒ(社会民主党)はこう語る。
「会社の指導的分野に男女平等がなくて、どうやって会社が男女平等になるでしょう」
「さあ、女性クオータ法はできました。この数週間いや数カ月間にわたって、法について議論してきました。その議論で、いかに法が必要であるかが示されました。そして、いかにすべての文化がまだ男性の手にあるかも示されました」
ドイツの女性クオータ法のモデルになったのはノルウェーだ。
ノルウェーで、会社の取締役に女性40%を義務付けた法律ができたのは、2003年。保守党の産業貿易大臣の発言がきっかけをつくった。「株式上場会社は2008年から、国営会社は2004年から、両方の性の人が少なくとも40%いなければならない」という法律ができた。それ以前は7%だった。
ノルウェーの女性政策を追ってきた私は、産業貿易大臣に何度か直接取材し、記事にしてきた。拙著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店、2010)から要約する。
ノルウェーの保守党はクオータ制に反対だった。その保守党所属の産業貿易大臣が、企業の男女平等にはクオータの法制度しかないと口にした。“クーデター”ともとれる発言はメディアを通じて大々的に広がった。
男女平等をつかさどる子ども・家族大臣(キリスト教民主党)はクオータ制に賛成だった。彼女は、産業貿易大臣のクーデタ―発言に呼応した。彼女は「会社が自主的に取締役の40%を女性にしなければ、クオータ制を導入する」と脅し文句をつけた。結果は明らかだった。自主的に40%は無理だったのだ。
翌年、ノルウェーで取締役クオータ制の法が施行された。世界初のことだった。
当時ノルウェーは、首相こそ男性だったが、内閣の40%、国会議員の約40%は女性だった。すでに政界の女性進出はいい線を行っていた。それに対し、いかにも経済界は見劣りがした。
ドイツはどうか。
首相は女性、内閣の40%近くが女性、国会議員の36%が女性だ。政党や女性団体が女性議員増をめざして運動してきた結果だ(写真右)。ノルウェーに比べさほどそん色ない。BBCは、「首相が女性で、内閣の4割が女性であるドイツで、会社の取締役の18.9%しか女性がいないのは驚きである」と書いている。
両国とも、クオータ法の流れは、法律を審議し決定する政界に女性が3割、4割程度進出していて、さあ、次は経済界をどうする、と始まった。
さて、わが日本。衆院に女性は10%もいない。この圧倒的男性偏重を変えずして、女性が輝く社会を唱えてもちゃんちゃらおかしい。
【写真右下:ドイツ社会民主党の女性議員増キャンペーンポスター】
■"Viele Frauen werden Tag für Tag unterschätzt"
■Germany wants more women in boardroom
■アテネ宣言
■大臣を訴えて勝った平等コミッショナー
■ドイツ新内閣の女性たち
■ドイツの町のジェンダー規定
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