2014年 09月 08日
「政治とカネ」にメスを入れる三井裁判
その一連の調査報道が新聞協会賞を受賞した。私は、そのニュースを9月4日の朝日新聞記事で知った。結びの文章が印象的だ。
「政治家は大切な税金の使い道を委ねられている。そのため、政治家には『政治とカネ』について特に潔癖さが求められる。メディアには、権力を常に監視し、不正があれば取材をして国民の前に事実を明らかにしていく役割がある。・・・」
三井マリ子さんが今、裁判で闘っているのも「政治とカネ」である。
三顧の礼をもって衆議院選候補者として秋田に迎えられた三井さんが、落選が決まったとたん、迎え入れた当人から石もて追われるごとく追い出されたことは、ほぼ全紙が報道している。

でも、しばらくして三井さんは持ち前の不屈の精神を発揮し、「選挙の会計報告を見せてほしい」と選挙を仕切った松浦大悟参議院議員(当時)に手紙やメールで要求する。返事がなかったため、不審がどんどん募っていったという。そこで秋田に通って選挙資金の出し入れを調べあげ、違法行為ではないかと疑われる事実をいくつか発見した。
朝日の記事にあるように「政治家には政治とカネについて特に潔癖さが求められる」。野党の政治家にはさらなる潔癖さが求められる。その政治家が、三井代表の政党支部の政治・選挙資金に使うべき政党助成金を三井選挙には余り使わず、自分の選挙にプールしていたふしがあるのだ。
どうやったか。報道などによると、政党助成金は三井さん名の銀行口座(Aとする)に振り込まれることになっていた。松浦側は、Aの開設を三井さんの承諾を得ずに開設して、三井さんにAを隠し続けた。三井さんにはAとは別の口座(Bとする)を知らせた。
当然三井さんはBしか知らなかった。Bに入金されていた金額が政党助成金総額より少ないという事実をつかんだのは、選挙後の独自調査によってだった。松浦側はAに振り込まれた政党助成金の一部しかBに移さなかったのだ。
何に使われたのかはまだはっきりしない。たとえ違法的使途でなかったとしても、道義的責任は重い。何より本人の承諾なしに銀行口座Aを開設したことが事実なら、有印私文書偽造同行使・詐欺罪に問われるのではないか。三井さんの告発を受け、警察は捜査を開始し、4人が検察庁に書類送検された。この刑事事件はまだ解決していない。
さらに三井さんは損害賠償の民事訴訟に踏み切った。
猪瀬事件に加え、地方議員の政治活動費の使途の問題も然り、「政治とカネ」事件は尽きることがない。元凶は男性政治家ばかりである。女性は男性より不正が少ないなどと言うつもりはない。しかし、男女不平等雇用をなくそう、女性蔑視社会を変えようという使命感から立候補した女性議員の多くは、男性よりはるかに「政治とカネ」に潔癖だろう。
そうした女性が議会に増えれば「政治とカネ」事件はかくまで多発しないはずだ。女性議員が増えれば政治が変わる、社会が変わる、北欧の例を見ればこれは紛れもない真実である。
秋田の選挙で当選こそ出来なかった三井さんだが、裁判という公器で男性政治家の「政治とカネ」を暴き、女性政治家台頭の必要性を世に示してくれるだろう。
木村 昭子 さみどりの会(注)、秋田出身
(注)衆院選で落選した三井候補は、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴した。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。「産むならば 世界を産めよ ものの芽の 燃え立つ森の さみどりのなか」という阿木津英の歌がある。女性は子どもだけでなく、世界を産み出すのだという意味だ。三井さんは、選挙演説に引用しては「私は新しい秋田を産み出したいのです」と結んでいた。「さみどりの会」の由来だ。上は「さみどりの会」のロゴ(ふじみつこ作)。裁判の報道は下のリンク先を。■政党交付金の残金を国庫に返還
■今朝の読売を読んで 「解散・返還は当たり前」
■澤藤弁護士ブログを読んで
■決定的証拠が裁判長に提出された
■供託金は秋田おばこのデモクラシーに
■秋田おばこのデモクラシーに大賛成
■マラッカ海峡より
■裁判をしなかったら供託金はどこに?
■「供託金もどって一安心」_5.21読売新聞
■女は使い捨ての駒か
■5月10日のNHK、11日の朝日、読売、魁
■供託金、もどった
■秋田おばこのデモクラシー
■4月15日の毎日新聞
■裁判長提案「供託金戻したら」は当然
■お金の流れがよくわかった
■NHK 「選挙資金裁判 争点絞られる」
■供託金は戻したらどうか、と裁判長提言
■ワーキング・ウーマン、三井裁判を女性の視点で見る
■今朝の毎日新聞
■女性記者の目
■秋田衆参両選挙で4人書類送検
■秋田衆参両選挙で関係者送検
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判 3
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判 2
■三井候補秋田追放事件を究明する裁判
【写真:秋田市の地方裁判所で裁判を終えて、秋田銀行前を通る三井原告】

