2014年 03月 31日
映画界の女性差別をなくすために
オンブッドであるスンニ―ヴァ・ウルスタヴィック(Sunniva Ørstavik)の怒りの矛先は、「映画産業におけるクオータ制を撤廃する」と表明した文化大臣に向かった。
彼女の痛烈な批判はこうだ。
「平等は自然にやってくる、と勘違いしているのではないか。映画業界における平等推進が自然になしとげられると思うのは、歴史に学んでいない」。
2006年、中道左派連立政権時代、報告書『数は語る』は、調査結果を公表した。映画界の重要な職に占める女性は、2002年から2006年まで18%にすぎない。そして、2010年まで女性が40%を占めなかったら、映画産業界にクオータ制を導入する、とした。ところが2012年女性は33%と、目標の40%に達しなかった。映画産業界の重要な職とは、プロデューサ―、監督、脚本家の3役をさす。
ノルウェーの現政権は保守党(日本の自民党にあたる)と進歩党(ノルウェーメディアでは極右)による連立政権だ。
文化大臣の決定に対して、ノルウェー映画俳優平等協会(映画界の労働組合) の委員長ホーク・ヘイヤ―ダ―ル(Hauk Heyerdahl)は、含蓄のあるコメントを発表した。要訳する。
「国から補助金を受ける際、今後は、もっと自由度が高まると喜んでいると思う。しかし、この2年ほど改善は見られるが、映画業界の性による不均衡はずっと醜悪だった――これを肝に銘じなければならない。映画業界が独自に改善できる余地もあるが、新政権が歯止めをかけなければ、性によるバランスは、またもとにもどる危険をはらんでいる」
今回のニュースの特徴を2つあげると・・・
ひとつは、ノルウェーは、映画産業という文化の領域にまでクオータ制を導入して、男女平等を進めてきたが、政権交代によってその流れが変わりつつあること。
第2は、オンブッドは国家予算で運営される“国家機関”だから、ときの政権には甘いはずと考えてしまいがちだが、平等という目標にそぐわない場合、堂々と政権を批判するということ。
オンブッドとはオンブズマンのことで、北欧のほとんどの国に男女平等を推進するオンブズマンがいる。ノルウェーではオンブッドと呼ばれる。女性差別をなくして男女平等を進めるために、企業や行政一般を監視・指導・啓発する専門官だ。大臣と検察官を足して2で割ったような強い権限を持つ国家公務員。政府から独立した機関。常勤のスタッフを数多く抱え、差別を受けたという人たちから苦情を受けつけ、その撤廃に日夜励む。
ノルウェーは、男女平等オンブッドから平等と反差別オンブッドに変わり、人種やハンディをもった人すべてを対象となった。
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