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比例代表制は女性や弱者が当選しやすい

比例代表制は女性や弱者が当選しやすい_c0166264_2157089.jpgドイツで、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟が大勝した。得票率41.5%。

といっても、安定多数ではない。連立を組んできた自由民主党は4.8%と、5%に達せず、1議席もとれなかった。だからメルケル首相は、連立相手を探している。ひょっとしたら、緑の党と組むかもしれない。

日本の選挙は、ドイツの小選挙区・比例代表制の併用制に学んだらしいと聞いた。しかし、日本の衆議院の「小選挙区比例代表並立制」と似ているのは、言葉だけ。

基本が全然違う。ドイツは、小選挙区制も加味された比例代表制といったほうがいい。ドイツの有権者は、小選挙区で候補者を1人、比例区で政党を1つを選ぶ(日本のように書くのではない)。基本は、比例区での各党の得票率だ。それに従って議員数が配分される。

つまり、ドイツは、多数派から少数派までその大きさに比例して代表が決まる、実質、比例代表制である。一方、日本は、選挙区で最も票をとった1人が当選する小選挙区制が基本なのである。

『この国の政治』(石川真澄著、旬報社刊)によると、ドイツでは、第二次大戦後、日本のような並立制が議会に2度提案され2度とも「否決された」。その理由は、「不公平な選挙制度だから」、だという。小選挙区制は、「民意をひどく歪めた政党の勢力分布をつくってしまう、非常に悪い制度」(石川真澄)なのだ。

昨年暮の衆院選を例にとると、自民党の比例代表得票率は27.6%にすぎなかった。そんな自民党が国会の議席の61%(480中294議席)を占めた。世襲議員のオンパレード。女性は10%にも満たなかった。なるほど、こりゃおかしい。石川真澄は正しい。

ドイツより純粋な比例代表制をとるのは、北欧諸国。その北欧ノルウェーについては、FEM-NEWSが報告してきたが、ドイツ同様、この9月、国会議員選挙があった。(続きは左下のMore)

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比例制だから、投票する人は、候補者名が印刷された政党のリストが並ぶ棚から、自分の支持する政党のリストを1枚選んで投票する(上)。

だけど、「この党はいいけど、この候補者は嫌い」と思ったら、候補者名の右横にバツをつけて削除の意志を示せる。また、「この候補はずいぶん下だけど、1番にしたい」と思ったら、その候補の左横の四角い箱に1番と書けばいい(下)。

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ノルウェーは、過去8年間、労働党・中央党・左派社会党の連立だった。今回、この3党あわせても保守党・進歩党2党に及ばなかったため、労働党党首ストルテンベルグ(現首相)は、選挙後早々と下野宣言をした。

というわけで、次期ノルウェー首相は、保守党党首ソルベーグだ。同国史上2人目の女性首相となる。

ドイツ同様、彼女は、今、どの政党と連立を組むか交渉中だ。メディアによると、学校問題、エネルギー問題など微妙な政策の違いをどうすりあわせるか、会議は連日続いている。

とりわけ、注目されるのは移民問題だ。保守党と連立政権をになう予定の進歩党のタカ派的政策に、他党が同意できず、「ともに連立を組めない」という党首も出てきたらしい。選挙後1月たっているのにいったいどうなるのか、と日本人の私はやきもきするが、「これまで何度もノルウェーの連立政権は少数政権でした。それでやってこれましたよ」(Elisabeth Ivarsflaten)とのんびり。

どういう政権を組むか、党首たちは、ときには何カ月もかけて、じっくり膝を交えて話し合う。じっくり話し合うのは、みな慣れている。

何より、議員立候補者を選ぶリストつくりがそうだ。各政党のリストは、県にあたる選挙区ごとの選挙候補者選定委員会で決まる。各政党は、投票日半年前にあたる3月末まで、選管に出さなくてはならない。

その委員会の何カ月も前から、県を構成する各市の政党委員会で、誰を次の選挙の候補者にするかを自薦他薦の名前をあげて、じっくり検討が始まる。その時点で、どこの地域に住んでいるか、年齢、性別、がかならず考慮される。ほぼ全政党が尊重する「クオータ制」は、ここらあたりで実行される。

「供託金」はない。選挙に出る個人に1円もお金がかからない。育児休業中の現役ママだって、18歳のお金も時間もない学生だって、「立候補しよう」となる。18歳から60代まで幅広い層の候補が男女半々にリストに並ぶわけだ。

じっくりスタイルは、選挙運動も同じだ。政党の党員たちは、街角で、ショッピングモールで、政党のチラシやバッジを配りながら、一人ひとりにじっくり政策を語りかける。とりわけ、投票日を控えた週末の青空市には、全政党の選挙テントがズラリと並ぶ。候補者は、政策を伝えようと通行人に近寄る(下)。

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中高生の政党員も珍しくないからだろう。政策パンフの派手なこと、わかりやすいこと。文房具、携帯ストラップ、飴など、カワイイ付属物にも、政党ごとに工夫がある。労働党は赤いバラが必須アイテムだ。チラシといっしょに、学校内で配ったりもする(下)。

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一方、日本は、選挙期間中は戸別訪問も公開討論会も禁じられている。政策パンフは、1枚ずつに証紙をはらないと配布できない。候補者は、ひたすら名前をがなりたてて宣伝カーを走らせる。

ドイツやノルウェーのように、投票用紙に候補者名が印刷されていないから、投票するときは、候補者名を自分で書かなくてはならない(下)。この、日本人なら当たり前だと思ってきた「自書式投票」、他にやっている国などどこにある。私は聞いたことも見たこともない。

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選挙の結果、ノルウェーでは、大政党は大政党なりに小政党は小政党なりに、得票率に応じて何議席かが決まる。各党のリストの上から順に当選者が決まっていくから、当然、女性は4割ほど当選する。今回、ノルウェーでは、女性の国会議員は39.6%だった。

ドイツの女性当選者はまだ不明だ。前回は33%が女性議員だった。


【写真の3枚目にあたる投票用紙は、リングダール裕子さん提供。ベルゲンを含む県(選挙区)の労働党リスト。リストには1番男性、2番女性、3番男性、4番女性・・・と男女交互に候補者が並べられている。選挙の結果、労働党は4人の議席枠を獲得した。有権者による変更権は効果がなかったようで、リストの順番通り上から4人、つまり、男女2名ずつが国会議員となった。この選挙区は次期首相の保守党党首の地盤だ。全体の定数は16人で、労働党のほか、保守党、進歩党など6政党から代表(国会議員)が選ばれた。「比例代表は民意をできるだけ正確に反映する」の見本だ】


◆ノルウェー、女性の国会議員増えず
http://frihet.exblog.jp/20718991/
◆世界一民主的な国
http://frihet.exblog.jp/19256560/
◆連立の3政党党首全て女性
http://frihet.exblog.jp/20711801/
◆ノルウェー選挙:性差も肌の色も越えて
http://frihet.exblog.jp/12280670/
by bekokuma321 | 2013-09-30 22:51 | ヨーロッパ