2013年 09月 30日
ノルウェーの2013年国政選挙 by リングダール裕子
彼女の報告のさわりは、9月16日、朝日新聞の『声』欄に掲載された。子どものときから生きた政治を学んでいるノルウェーの学校教育に目を見開かされた人もいたのではないか。
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9月9日にノルウェーの国政選挙が行われ、8年ぶりに右派政権の誕生となりました。
結果は、労働党55席、保守党48、進歩党29、キリスト教民主党と中央党がそれぞれ10、自由党9、左派社会党7、緑の党1、そして(中国系共産党の)赤の党は0。得票数は労働党が一番だったのですが、連立を組んでも中道右派(96議席)には勝てず、政権交代となりました。
オスロやベルゲンのような大都市では労働党と保守党がほぼ二分し、三番目に強いのが進歩党という傾向です。地方によっては、中央党が、労働党と二分するか、最大党となったところもあります。西ノルウェーから南ノルウェーにかけての保守的クリスチャン人口が多いところでは、キリスト民主党が強い傾向があります。
12歳の息子の通う小学校の話をします。ベルゲンのフィリングスダーレンにあり、伝統的に労働党が強い地域です。
選挙の数日前に小学校6年生と7年生対象のスクール・エレクション(模擬選挙)が行われました。
息子の小学校では、労働党50%、赤の党27,5%、保守党12,5%、左派社会党7,5%、進歩党2,5%でした(赤の党が多かったのは、宿題をなくすという政策がきいたようです)。逆に、裕福な人が多く住むファーナという地域は、保守党をサポートする人が多いそうです。
もう一つ興味深い事は、ノルウェーでは小学校から政治や民主主義について教え始めるということです。小学校は7年生まであるのですが、各政党の特色も簡単に学ぶようです。選挙の数日前になると、6年生と7年生は、街中に設置された各政党の選挙事務所に赴き、質問を自由にします。これも教育の一環です。
また、模擬選挙が行われた同じ日に、防衛大臣(女性)と、国会議員(男性)が息子の小学校を突然訪問し、子どもたちの質問に答えたということです。以下、質問の例です。
•北海油田をさらに開発させたいのはなぜか。
•学校の建物が老朽化しているのはなぜか。
•なぜ学校給食が支給されないのか。
•児童たちのの使っている教科書はなぜ老朽化したままなのか(ノルウェーではほとんどの教科書は市/学校からの借用)。
•防衛大臣として最重要課題は何か。
•政治家として常にどこへ行っても注目されることをどう思うか。
また、子どもたちから5人が選ばれて、テレビ局の人から4つの主要政党の党首の写真を見せられ、どう思うかと質問されるということもありました。子どもたちは、どの人がどの政党の党首なのか、どういう政策あるいは特色があるのか、よく知っていました。
例えば進歩党の党首の写真を見せられたときには、難民政策には反対であるとか、また教育や環境問題に関心がある事を伝えたりしていました。自分の両親からよく聞かされているのでしょう。
余談ですが、私は、選挙当日、投票場で立会人の仕事をしました。投票時間は朝9時から夜の9時まででしたが、朝8時に集合し、選挙後の開票を行い、11時頃にやっと仕事が終わりました。
2年前の市議会県議会選挙のときは、経験もないのに役員にいきなり抜擢され、12時頃まで仕事が続いたと記憶しています。
やった事は、まず選挙場にある記入所に各政党の投票用紙をアルファベット順に設置し、ひもを取り付けたボールペンをテープで固定したりします。投票が始まってからは、投票者を並ばせたり、案内をしたり、また必要な人にはカーテンを引いた記入所で手伝いをしたりと、仕事自体はそれほど難しくありません。もちろん二人一組になって、登録とはんこを投票用紙(リスト)に押して、投票箱に入れてもらうことは、最も重要な事です。
選挙の仕事をするにあたって、事前に研修のコースを受ける事は義務づけられています。3時間コースだったのですが、投票者の秘密を厳守する事、時間がかかっても、大切な事は必ず行い、民主主義と人権が本当に守られているなあと実感しました。
特に秘密を厳守する事において、ノルウェーでは、選挙だけでなく、学校やあらゆるところで人と接する仕事をするときは、「秘密は必ず守ります」という誓約書を書かされます。
ノルウェーの選挙に関する情報はこれでひとまず終わりにします。
リングダール裕子
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■高校生が国政選挙に影響を与える社会
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■スクール・エレクション
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