人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ドイツ誌「シュピーゲル」、ノルウェーのクオータ制を特集

■■■■■■ ノルウェーは、女性の地位向上の実験場 ■■■■■■ 

ドイツ誌「シュピーゲル」、ノルウェーのクオータ制を特集_c0166264_2365940.jpg外国企業は逃げてゆく。市場は混乱する。国は破滅する。みな女のせいだ・・・。

ドイツが、今、熱い火花を散らしている。その論争のテーマは、会社の取締役の女性割合を40%にするクオータ制。

ドイツの有力週刊誌「シュピーゲル」(Spiegel)、5月29日号を要約しよう。

ノルウェーで、会社の取締役に女性40%を義務付けた法律ができたのは、2003年だ。保守党の産業貿易大臣(写真)の発言がきっかけをつくった。「株式上場会社は2008年から、国営会社は2004年から、両方の性の人が少なくとも40%いなければならない」という法律ができた。以前はわずか7%だった。

その後、フランス、スペイン、オランダ、ベルギー、イタリアが、ノルウェーにならって取締役クオータを導入した。

ところが、ドイツはまだだ。政府内で賛否が分かれている。労働大臣はクオータ制賛成派。しかし、家族大臣は自主的推進がより効果的だとする反対派。

リブ・モニカ・スタホルトは、ノルウェーの弁護士でノルウェーエネルギー省政務官を務め、現在大会社の副社長だ。彼女の弁はこうだ。

「クオータ制は、女性だって専務取締役になれる、と考えるようになる効果を持ちます。男性特有の言動が、受け入れられやすい時代は終わったのです。女性であっても、他の女性を男性的メガネで見ないようにしなければならない。物静かな女性を弱々しいと見たり、大きな声の女性を気が強いと見たりしてたでしょ。男性だったら、同じような資質の人を思慮深いと見たり、力強いと見たりしてましたね。結局、女性は、受け入れられる言動が狭かったといえます」

また、ノルウェー・テレノ―ル電話会社の産業開発部の副専務ヒルデ・トンネは、こう言う。長い髪をエレガントなポニーテールにしている。

「最初、クオータ制に疑問を持ちました。でも、クオータ制は、最も優秀な人物を会社に登用する道具として使えると思うようになりました。つまり、人口の半分以上の人たちにチャンスを与えることになるからです。なぜなら、実際、女性は排除されてきたからです。つまり、何千年もの間、男性の側にクオータ制を与えてきたと言えるのです。人口の半分が除外されていることは、優秀な人間を捨てているのと同じなのです」

ドイツ誌「シュピーゲル」、ノルウェーのクオータ制を特集_c0166264_13365168.jpg取締役クオータに詳しいシンクタンク、オスロの研究機関所長マリット・ホーエル(写真)の分析はこうだ。

「ノルウェーで、女性が経済界にたどり着いたのは、平等の理念からだけとはいえません。1970年代、国の経済の課題がありました。社会福祉国家は、インフレと闘うため拡充されていきました。公務職場と政治の距離は短い。多くの女性が公務職場に入っていき、そして、彼女たちは政治家になり、女性のための政治を作り上げていったのです」

以上は、ドイツ誌の記事だが、私も、ノルウェーの取締役クオータを追ってきた。1990年代末、政界の女性進出は進んでいた。それに対し経済界は相変わらず男性偏重だった。男女平等オンブッドがキャンペーンをして意識改革をしていた。当時は、女性に根強い反対があった。

法の制定に至るまでは、ノルウェーであっても、その道のりは平坦ではなかった。ドイツの今は、2000年前後のノルウェーのようだ。

さて、わが日本は。紅一点の閣僚、女性国会議員率は堂々の世界134位。しかし、ドイツのような議論を国会でしたという話など、まったくなし。政治家は、やれ刺青を探せだの教員の口を見張れだの、小沢さんがこう言ったあー言っただの、法務大臣が競馬サイトで遊んでただのーーー男性政治家たちよ、ふざけるな!



◆Norway's Gender Quota A Laboratory for the Advancement of
Womenhttp://www.spiegel.de/international/europe/how-norway-led-the-way-in-gender-quota-success-a-835738.html
■現地ルポ 「ノルウェー民間企業の取締役は4割が女性!!」の背景を見る
http://janjan.voicejapan.org/world/0812/0812173697/1.php
■ノルウェーで女性重役旋風 :私企業にもクオータ制導入の動き
http://www009.upp.so-net.ne.jp/mariko-m/nor_jjyoseiyuyaku.html
『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店)にノルウェーのクオータ制が詳述されている。その成り立ち、賛否両論、政治的動き、経済界の動き、学者の分析など。

[写真撮影は三井マリ子@オスロ]
by bekokuma321 | 2012-06-06 23:21 | ノルウェー