2011年 12月 30日
●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第2回
三井マリ子(全国フェミニスト議員連盟国際部)
今年のノーベル平和賞は3人の女性解放運動家に決まった。受賞者全員女性という驚くべき決定をしたのは、ノルウェーのオスロにあるノーベル平和賞選考委員会だ。
同委員は政党から推薦された人の中から一方の性に偏らないように構成される。現在、女3、男2の5人で、女性の割合は60%だ。ノルウェーの公的な決定機関は、一方の性が40%から60%でなければならない。ノーベル平和賞選考委員会も例外ではないのである。
ノルウェーは、クオータ制を女性の政治参加に活用した世界初の国である。クオータ制の威力は絶大で、現在、内閣の50%、国会議員の約40%、県会議員の45%、市議会議員の38%が女性だ。
ここに至るまでの道は平たんではなかった。歴史的経緯はこうだ。
1973年 民主社会党(のち左派社会党に統合)、選挙候補者リストの半数を女性にする「50%クオータ」を導入。
1974年 自由党、「40%クオータ」を導入。
1975年 左派社会党、「40%クオータ」を導入。
1978年 男女平等法によって決定の場の男女平等がうたわれる(クオータ制は明言なし)。
1980年 議席の半数を女性としなければならないとする「50%クオータ」を明記した憲法修正案が左派社会党から提出されるが否決。しかし女性運動は勢いづく。
1981年 男女平等法が改正され、決定の場に両性の代表がはいることが明言される。
1983年 労働党、「40%クオータ」を導入。
1986年 労働党内閣、女性閣僚を44%に。以後、政権交替があっても内閣の「40%クオータ」は守られる。
1988年 男女平等法が改正され、公的決定の場の「40%クオータ」が明記される。
1989年 中央党、「40%クオータ」を導入。
1993年 キリスト教民主党、「40%クオータ」を導入。
2006年 会社法が改正され、取締役会に「40%クオータ」が義務づけられる。
おわかりのようにクオータ制は、政党が作る議員候補者リストから誕生した。そのきっかけをつくった政党は民主社会党。当時の党首はベリット・オース。ノルウェー初の女性の党首だった。
(全国フェミニスト議員連盟「AFER」 71号 2011. 11. 25 より転載)
[写真は、ノルウェーの投票ブース。政党ごとに候補者リストがある。この中から支持する政党のリストを1枚とって、投票箱にいれる。このリストに書かれている候補者は、今ではほとんど男女交互に並べられている]