2011年 05月 19日
IMF専務理事とプライバシー保護法
とはいえ、ストロスカーン側は無罪を証明したい意向で、彼の弁護士は、「合意の上のセックスだった」と主張すると報道されている。
世界のマスコミは、ストロスカーンの後、IMFのトップに誰が就任するか、サルコジの対抗馬に誰が社会党の大統領候補になるかをあれこれ詮索している。
一方、マンハッタンのホテル従業員(32歳)は、安全な場所に保護されているという。今後、法廷に立ってストロスカーンが行ったことをありのままに話さななくてはならない。また、ストロスカーンの弁護側は、彼女についてさまざまな質問をしてくるだろう。「彼は無実だ、セックスは合意の上だった」という前提で攻めてくるだろうから、セカンド・レイプ的様相を帯びることも予測される。
私は最高裁で勝利したが、裁判の過程で被告側から、身に覚えのないことを言われ、非常に憤慨した。またその嘘に自尊心を傷つけられた。性暴力事件となると、こんなものではないはずだ。被害者の女性従業員は、体に気をつけて、最後まで頑張ってほしいと願わずにはいられない。
彼女の弁護士によると、彼女はアフリカのギニア出身で、7年前にアメリカへの移民資格を許可された。正式な教育は受けてない。夫はすでに亡くなり、15歳の娘と2人でブロンクスに住んでいる。ホテルの室内清掃の業務を誇りに思い、真面目に働いてきた。
事件後、自分の住まいにも帰れず、職場にも戻れず、娘とさえ会えなくなった。将来どうなるかの予想もつかない今の境遇に、「精神的に混乱している」と弁護士に話したという。
容疑者ストロスカーンはフランス人だ。フランスは、厳しい「プライバシー保護法」があり、政治家のプライバシーも報道しない傾向があるという。このフランスの伝統が、政治家――といっても男性政治家だと私は思う――のセクシャル・ハラスメントや婚外交渉を許容してきたらしい。
しかし、セックスこそ最もプライバシー性の高いものだ。セックスするかしないか、するとしたら誰と、いつ、どのようにするかは、その個人が選択権を持つ。ホテルの従業員であろうと、フランス大統領であろうと、そのプライバシーは同等に尊重されなければならない。
まじめに仕事をしている女性従業員を、(検察によると)全裸になって追いかけまわし、強姦しようとした行為は、性犯罪であり、同時に労働権の侵害である。それ以上に、プライバシーの侵害そのものだ。プライバシー保護法で守られるべき相手は、彼ではなく、彼女ではないか。
http://www.bbc.co.uk/news/business-13435283
http://www.bbc.co.uk/news/business-13434753
http://www.nytimes.com/2011/05/18/nyregion/strauss-kahn-may-claim-consensual-sex-as-defense.html