2009年 09月 07日
ノルウェー選挙:性差も肌の色も越えて
ノルウェーの国会は、現在169 議席中61議席、36.1% が女性議員。内閣の半数を女性が占める。
なぜ、こんなに多くの女性が当選できるのだろう。その理由は選挙制度にある。
ノルウェーは比例代表制だ。政党が、候補者リストに載せる候補者名とその順番を決める。投票する人は、自分の支持する政党の候補者リストを選んで、その用紙を投票箱に入れさえすればいい。有権者にリストの順番を変える権利が与えられているが、変えるには多くの票がいるため、政党の決めたリストで決まることが多い。
ということは、候補者リストを決めるときに、上の方に女性がのっていさえすれば、女性は当選するのである。熾烈な選挙戦はいらない。ひとりひとりのポスターも、選挙カーもいらない。
では、候補者リストとは、どういうものか。
左上は、首都オスロの労働党の候補者リストだ。1番から20番まで候補者名が書かれている。オスロ選挙区の定数は20。どの政党も20人―全議席分の候補者―を上げることになっている。当選するかどうかはともかく、ズラリと候補者をならべるのだ。その結果、人口500万人、国会議員169人の小さな国だが、今回、国会議員に立候補した人は3600人にのぼる。ちなみに、日本の衆院選に立候補した人は1369人だった。
男女の違いを、左上リストに書かれた名前から見てみよう。
1番は、現首相・労働党党首で男性。2番は、国会議員の女性。3番は、オスロ労働党代表で男性。4番は、現外相で男性。5番、6番、9番、10番、12番、14番、16番、18番、20番は女性。20人のうち男女比は10対10。ちょうど男女半々である。
平等は性だけではない。民族や肌の色による差別のない社会づくりを掲げる労働党は、それも実践している。6番、11番は、パキスタン出身、16番はモロッコ出身、18番はインド出身、19番はトルコ出身だ。私の見た限り、いわゆる移民出身者は5人だ。世襲議員の多い日本とは、あまりにも違う。
このように多様な候補者をそろえないと、「あの政党はバランスに欠ける」と見られるのだという。今年の選挙には、20以上の政党・政治グループが、候補者リストを提出していて、うち議席を持つ7政党のほとんどが、男女半々の候補者リストをつくっている。
ところで、日本の選挙風景に慣れている私たちは、投票用紙は投票所でないと手に入らない、貴重なものだと思ってしまう。ところがノルウェーの投票用紙は、候補者リストそのものだ。この候補者リストは、選挙区ごとに大量に印刷され、投票前に大量にばら撒かれる。だから、すぐ手にはいる。
私がノルウェーの選挙キャンペーンを実際に取材したのは、1997年だ。「はい、どうぞ」と、路上で候補者リスト(投票用紙)を渡され、「えっ、もらっていいんですか」と目を白黒させた覚えがある。今は、インターネットで全政党の候補者リストがクリック一つで見られるようになっている。
■参考サイト
http://www.samfunnsveven.no/
■参考文献
「投票者はリストを書き替えられる!
大きくて立派な投票用紙/住所や職業までわかる投票用紙/有権者の三つの権利/投票用紙に見る名簿変更権/男たちの逆襲」 (毎日新聞社刊『男を消せ!―ノルウェーを変えた女のクーデター』)http://www009.upp.so-net.ne.jp/mariko-m/mokuji.html