c0166264_22291350.jpg「ノルウェー科学技術大学NTNUの理系に、女性の教授はわずか25%以下です」

NTNUは、トロンハイムにある。エンジニアや科学者養成が主だが、56学部、約4万人の学生(女性45%)を擁する国立の総合大学である。数年前、ノーベル生理学・医学賞を受賞したのは同大学の夫婦だった。

NTNUの理系の教授の4人に1人は女性であることに驚かせられたが、同大学副学長カーリ・メルビー(上の写真、右)は、「わずか25%以下」と形容した。その「わずか25%以下」の女性教授を増やすために、次のようなツールがあるという。

「公募に先立って、まず女性の的確な候補を探します。さらに博士課程院生やポスト・ドクの女性のための特別のメンタリング制度があります。こうした男女数のバランスを均等にする事業に、年5600万円の男女平等予算があり、フルタイムの男女平等スタッフがいます」

今年、ノルウェーリサーチカウンシルから「男女平等の向上」予算として、さらに5500万円の新予算を受ける、と喜ぶ。

大学理事会はどうか。女性は40%以上いる。理事会の画像によると14人中、6人が女性だった。これは、国の法律で取締役会の構成員において、一方の性が40%以下とならないとするクオータ制を定めているからだろう。

c0166264_22301976.jpg「そうはいっても」と、同大学教授プリシラ・リングローズ(左写真)は「男女平等のパラドックス」をスピーチ。ノルウェーに住んで20年以上というイギリス生まれの彼女は、「ノルウェー人にとって平等は同じということなので…」と強調した。

平等にあたるノルウェー語likestillingは、同一という意味も持つ。「移民もノルウェー人と同じでなければ平等ではないと考えている」と彼女は批判的に言った。

「ノルウェーでは、異性愛至上主義は疑問視されきて、同性愛も認めるようになってきた。すると、同性愛に寛容である人こそ文化的にすぐれた人々であるとなってくる。それに対して、イスラム教の人々は、性に不寛容な歪んだ民族と考えるようになる」。そうした傾向を「ホモ・ナショナリズム」と呼ぶ、と彼女は言った。

さらに北欧映画「Play」をあげて、北欧にひそむ黒人への偏見を紹介。5人の黒人少年が、3人の中流階層の白人少年(1人はアジア人)をいじめぬくという話で、黒人少年は、社会の反黒人差別意識を利用して白人少年を心理的に追いつめていく。日本なら、こういう設定そのものがありえないと思う。ぜひ観てみたい。

3人目は同大准教授グロ・クリステンセン(右上の写真、左)。彼女の母親世代からすでに、子育て中であっても夫婦ともにフルタイムの仕事を続ける。その背景には、親への長い育児休業(パパへの強制的育休パパ・クオータを含む)、保育園の充実、柔軟な就業時間など、福祉社会のサポート体制がある。

それに加えて近年は、家事(主に掃除)のため移民労働者を雇う傾向が増えているという。この現象に関して、「ジェンダー平等の売買」という研究がなされている。

私が長年知っている元財務大臣で元政党党首のクリスティン・ハルヴォルシェンは、「お手伝いを雇わずに政治家をやり続けたことは、自慢できる」と言っていた。彼女の時代とは違ってきている、と思った。

最後に副学長カーリ・メルビーは、「国民投票をしたら、パパ・クオータも、会社の取締役クオータも、賛成多数をとれなかったと思います。ステイト・フェミニズムのおかげです」。ノルウェーには、ステイト・フェミニズムという”国まるごとフェミニズム”と言える長い伝統がある(注1)。

企画運営をした石井クンツ昌子お茶の水女子大教授は、「日本にはジェンダーという言葉さえ使えないときがあった」と国をおおったジェンダー・バッシングを振り返った。

宗教的原理的な性役割分業文化を押しつける日本会議。その日本会議に安倍首相や多くの閣僚が属している。こうした右翼議員たちに連なる勢力は、夫婦別姓など男女平等を願う人々を邪魔しては快哉を叫ぶ。火の粉が自分の頭上に落ちてこないようにと、国も地方も、女性差別撤廃に逃げ腰である(注2)。

日本は、ノルウェーと同じく「女性差別撤廃条約」を批准した。しかし、この国は「国まるごとアンチ・フェミニズム」ではないかと思う。

以上のノルウェー学者の来日講演会「最も幸せな国のジェンダー平等」は、4月25日、茗荷谷のお茶の水女子大にて開催された。主催は同大ジェンダー研究所。


【注1】ステイト・フェミニズムState Feminismは、ヘルガ・マリア・ヘルネスHelga Maria Hernesが使った用語だと思われる。クオータ制調査にノルウェーを訪問した1980年代この言葉を知った私は『朝日ジャーナル』(現在廃刊)に紹介した。プリシラ・リングローズは、4月25日レジュメで次のような言葉を紹介している。
「女性が住みやすい国は、女性が男性以上に厳しい選択を迫られたり、性別を理由にした不当な扱いを許したりしない国である。女性が住みやすい国では、女性は子どもを産み、かつ、他の自己実現の道も開かれている。そうした国では、男性に課される以上の自己犠牲を負うような道を、女性が選ぶ必要はない。つまり、ジェンダーによる差別がなく、そしてそのために、他の形での(例えば女性グループ間の)不平等が拡大することもない国である」(発言者として、ヘルガ・マリア・ヘルネスの氏名は記載されてなかったが彼女の顔写真があった)

【注2】「館長雇止めバックラッシュ裁判」における事実認定による。豊中市らが敗訴し三井館長に損害賠償金を支払った裁判。詳しくはHPを。

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by bekokuma321 | 2017-04-26 22:44 | ノルウェー