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「戦わなければならないことが多すぎますね」――201738日、国際女性デーを記念する新聞に載ったベリット・オースのことばだ。


88歳のベリット・オースの闘いは、今なお続いているようだ。オスロ大学名誉教授(社会心理学)。ノルウェー初の女性の政党党首に就任した1970年代、クオータ制を初めて実行した。

クオータ制とは、決定機関や立候補者の少なくとも40%を女性にするしくみだ。これによってノルウェー女性の政治参加は爆発的に進んだ。日本にクオ―タ制を私が紹介したのは80年代だった。今ではクオータ制は、世界中に伝播している。


ノルウェー紙によると、女性デ―にあたって、ベリット・オースは若い人たちへ「女性への虐待、女性の貧困、女性器切除について膨大な調査が出ています。それらを読みなさい」とアドバイス。さらにノルウェーでは、貧富の差ーー女性に極端に貧しい人が多いーーが拡大しているにもかかわらず、どの政党もそれへの対策がないと批判する。


さて、ベリット・オースは、大阪府豊中市にやってきたことがある。いま森友学園事件で話題の豊中市だ。


私が豊中市男女共同参画推進センターの館長をしていた2003年のことだった。愛称「すてっぷ」。男女平等を地域のすみずみに浸透させるために、豊中市が阪急豊中駅前に創立した施設だ。初代館長は全国公募だった。応募したら、幸いにも採用された。


私は、20代から女性差別に敏感に反応し、それに対して闘ってきた。豊中にも、男女不平等社会を変えたいと願う女性たちが大勢いた。そんな市民を下から支えていこう。私は120%努力した。ベリット・オース講演会も、その一環だった。「すてっぷ」の台所事情を話したら、旅費を負担して来日してくれた。彼女は、豊中のあと、名古屋、高知、福井などを講演して回り、聴衆をとりこにした。メディアも大きく取り上げた。


しかし、豊中市議会には、私を嫌っている人たちがいた。日本最大の極右組織といわれる「日本会議」につらなる議員たちだった。


議会には、「教育再生地方議員百人と市民の会」代表の議員、神社本庁と関わる議員、塚本幼稚園卒だという議員らがいた。彼らは、議会質問の名のもとに、「ジェンダーフリー」を議会で攻撃した。その執拗さに、行政は頭をたれておどおどするばかりだった。


日本会議系の議員の唱えるあるべき男女とは、こういうものだ。TVニュース番組での発言を引用する。


「オスとメス、男と女というものは、有史からずっとこうあるわけですから、男性は男性としてきっちりと小さなうちから男性の自覚というものを育ててゆく、女性は女性としての自覚を育てていく」(北川悟司市議)


「もっともっと女性は、家庭を、子どもを大切にして、いい子どもを、つくってください」(北川悟司市議)


「女性が家庭を維持する大きな役割を担う。これ当たり前じゃない。世の中で一番すばらしいことは、愛する子どもを育てることです。一人の女性の人生のなかにこのことがなかったら、社会自体も存続しません。女性が安心して、そうできるように、男は、ある意味、命を捨ててでも働くということなんです」(西村真悟衆議院議員)


「すてっぷ」への妨害行為や図書室蔵書の非難、市役所周辺での悪質な嘘のビラ撒き、私の講演会における集団での難癖、根も葉もないうわさの流布。山谷えり子や高橋史朗を「すてっぷ」近くの会場に招いて「ジェンダーフリー反対」の講演会をシリーズで催す。


攻撃のピークは、夜の市役所での3時間にわたるどう喝だった。議員は、「すてっぷ」の1年前の内部資料を手に、これは人権侵害だと怒鳴り散らした。テーブルをバーンと強打した。こうした日本会議系議員らの執拗な言動に屈した豊中市幹部によって、私は首になった。


不当な首切りだと考えた私は、豊中市らを提訴した。1審は敗訴だった。失意のどん底にあった私を励ましたのは、豊中市民たち(木村真議員も)や国内外の友人たちだった。私は控訴した。そして高裁で勝訴! 裁判長は、地方自治体の政策に対する右翼議員らによる陰湿きわまりない圧力をあますことなく断罪した(注)。

ノルウェーから、私を励ましてくれたのは、ベリット・オースだった。彼女の2008年の手紙は、男女平等の敵は好戦的な家父長制であると、日本会議の特質をズバリ見抜いていた。




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▲ベリット・オースからの手紙(原文は英語)


【注】 日本会議系の政治家による反動的動きが、行政に介入して意思決定に圧力をかけるさまが、裁判によって露呈された。三井マリ子・浅倉むつ子編『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』(旬報社、2012)に詳述されている。

「日本会議」に向かって闘いを挑んだ本:『バックラッシュの生贄』を読んで
インパクションに『バックラッシュの生贄』 (書評)
今も続く右翼的攻撃の楯となる本:『バックラッシュの生贄』を読んで
ベリット・オース「支配者が使う5つの手口」
館長雇い止めバックラッシュ裁判
男女平等を嫌う反動勢力の実像
館長交代「圧力に屈す」市に賠償命令 朝日新聞 第1面(2010年3月31日)
「豊中市批判的勢力に屈服」市施設めぐり大阪高裁判決「元館長の人格権侵害」朝日新聞朝刊(2010年3月31日)   





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by bekokuma321 | 2017-03-17 16:12 | ノルウェー

c0166264_1253237.png「軍の命令か、医の倫理の逸脱か」

終戦直前、九州帝国大学医学部で行なわれたおぞましい「人体実験」。米軍捕虜8人が殺された。当時、同大医学部助教授であった鳥巣太郎は、この生体実験手術に抵抗した数少ない学者だったという。

世は太平洋戦争の真っ最中。軍の命令に背くことが、いかに困難で苦しみに満ちたものだったか。私はただ想像するしかない。

著者の大阪府豊中市の熊野以素(いそ)さんは、鳥巣太郎のめいにあたるという。

彼女は、長年、この事件の調査を続けてきた。膨大な戦犯裁判記録や、再審査資料を読みこみ、そして、真相を明らかにする本を執筆し、出版にこぎつけた。『九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実』(岩波書店)だ。

70年目にして、ほかならぬ姪の力で、真実が明らかになって、草葉の陰で鳥巣太郎はさぞ喜んでいることだろう。

熊野さんとは、豊中市で仕事をしていた2000年ごろ知り合った。私がバックラッシュ攻撃に抗して裁判で闘った際、彼女は、陳述書を書いて大阪高裁裁判長に提出してくれた。自らの女性差別体験を縦軸に、日本の働く女性への偏見を横軸にして、不当な首切りをバッサリと切った、実に読み応えのある内容だった。ありがたかった。

熊野さんは豊中市議会議員でもある。彼女のような洞察力と正義感に満ちた女性を議員に選んだ豊中市民に拍手したい。

陳述書(2007年11月27日 熊野以素)
熊野いそホームページ


【追記】筆者の熊野以素さんから 「普通の人が倫理を踏み越えさせられる、戦争のもつ恐ろしさ、多くのかたに読んでいただきたいと思っています」
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by bekokuma321 | 2015-06-04 12:58 | その他

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9月25日、日本外国特派員協会で山谷えり子国家公安委員長(以下、山谷)の講演があった。そこで英「タイムズ」の記者から、山谷が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の幹部増木重夫氏(以下、増木)と一緒に写っている写真について聞かれた。

山谷は、「その増木さんという方が、在特会の関係者ということは、存じ上げておりません」と、ひきつった顔で答えた。増木は山谷を15年前から知っていると言っているが、何年前から何回ぐらい会っているか、との質問には、「えーと、そーれは、記憶にございませんね、何回とか何年前と言うのは」となぜか歯を見せて笑った後、「たくさんの人といろいろな機会にお会いをしながらいろいろな意見を聞いてきている」、と話題をそらした。

山谷は、日本外国特派員協会に集うジャーナリストたちに向かって嘘をついた、と私は思う。山谷は、増木と、遅くとも2000年代初めから関係があったことを、私は知っている。

2003年2月、豊中駅前のゆやホールで、増木の関わる団体「男女共同参画を考える豊中市民の会」が主催する講演会で山谷は講演をした。この講演会を知らせるチラシは、2003年の年明けから豊中市内のあちこちでまかれた。豊中市の男女共同参画センター「すてっぷ」館長だった私も何枚か入手した(上の写真)。

この主催団体の連絡先の電話・ファックスは、「教育再生地方議員百人と市民の会」(1999年設立)と同じだった。この団体は、「日本会議」や「新しい歴史教科書をつくる会」と親密なつながりを持つ右翼的地方組織で、藤岡信勝、西村真悟、土屋敬之、古賀俊明などの議員が名を連ねている。

HPによると、代表は辻淳子大阪市議(維新の会)、事務局長は増木であり、その顧問に名前を出しているのが山谷えり子である。

増木は、「教育再生地方議員百人と市民の会」事務局長のほかにいくつもの団体の幹部をしており、目的にあわせて使い分けている。

学習塾「英知塾」経営者、MASUKI情報デスク、「救う会・大阪」代表、「教育オンブッド豊中」事務局長。そして「在日特権を許さない市民の会(在特会)」関西支部長。「教育オンブッド豊中」は、時には「教育オンブッド吹田・豊中」とも称している。

c0166264_1712729.jpg2007年8月には、豊中駅前のすてっぷにおいて、増木が事務局長をつとめる「教育再生地方議員百人と市民の会」の総会で、山谷は講演をした(右チラシ)。

山谷が講演した場所は、どちらも大阪府豊中市だが、それは偶然ではない。山谷が懇意にする北川悟司議員(以下、北川)が豊中市議会にいるからだ。北川は、2007年まで「教育再生地方議員百人と市民の会」の代表だった。その北川の選挙対策を仕切る活動家は、ほかでもない増木である。

増木作成のHP には、北川の選挙用のぼり旗の横に立つ増木とその娘の写真や、市議選最終日に北川の宣伝カー前で北川と増木の娘が並んだ写真が載っている。娘は、増木あずさ英知塾教員と書かれているが、増木と行動をともにしていたらしく、すでに高校時代に桜井よし子とのツーショットを撮っていた。そして、彼女と山谷えり子と一緒の写真は、2006年10月撮影が1枚、2007年8月撮影が3枚、公開されている。

北川市議は、男女平等推進を目の敵にする。市議会で、すてっぷ内にある情報ライブラリーのジェンダー図書をやり玉にあげ、「一方的な思想を植えつけるような図書は、すてっぷをはじめ学校図書館などから即刻廃棄すべきである」と述べた。ナチス時代の焚書を連想させる発言だった。

時を同じくして、2002年夏ごろから、利用者と称してすてっぷにやってきた増木は、時には妻を伴って、すてっぷに嫌がらせを繰り返した。対応にあたった職員たちに与えた恐怖は言葉では言い表せない。ちなみに、外国特派員協会で話題になった山谷の写真の前列に並ぶ人の中に増木重夫とその妻がいることは、当時働いていたすてっぷ職員なら誰でもわかる。

私も、閉庁日の土曜の夜、全くひと気のない市役所会議室に呼び出された。増木はいなかったが、「教育再生地方議員百人と市民の会」(事務局長増木重夫)の3人は、仲介役の北川とともに、3時間にわたって私を糾弾した。北川は、時折大声をたて、要求を通すために最後に机をバーンと強打して怒鳴りつけた。

こうした増木や北川の圧力に屈して、豊中市はすてっぷ初代館長の私を追い出した。私は、豊中市とすてっぷを運営する財団に対して、非常勤館長職を雇い止めされたこと、そして常勤館長職への採用を拒否されたことの違法性を主張して損害賠償請求の裁判を起こし、勝訴した。

増木に関しては、大阪高裁の塩月秀平裁判長が次のように判決で述べている(最高裁で確定)。

【平成14 年7 月8 日,増木重夫と名乗る者が来館し・「ジェンダーフリーの危険性を学ぶ」という主旨の勉強会をするということで,「すてっぷ」の貸室の申込みがあったが・「すてっぷ」は,会合名から,「すてっぷ」の設立目的に反すると判断し,目的外使用であるとして使用を断った。

しかし,同人は,被控訴人市女性政策課に抗議し,貸せないなら文書で回答することを求めた。その結果,被控訴人市は,一般使用として認めるに至り,同年8 月30 日,一般使用がされた。なお,「とよなか男女共同参画推進センター条例」は,「すてっぷ」の事業の1 つとして施設の提供を定めており,目的使用と,一般使用がある。

目的使用とは,男女共同参画の推進に関する会議,研修,催しなどのための使用であり(同条例3 条1 項6 号),一般使用とは,「すてっぷ」の設置目的を達成する事業に支障がなく,市長の承認を得た場合の使用である(同条例3条2項)。市長は,増木の活動が「すてっぷ」に対する嫌がらせを目的とすることを知悉しながら,さらなる同人の不当な攻撃を回避するため,上記8月30日の貸室使用を認めたのであり,これは「すてっぷ」の貸室としては上記条例に規定の一般使用としても許されないものといえる。

なお,増木についてはその後,「教育再生・地方議員百人と市民の会の事務局長である増木重夫が,平成20年12月と平成21年1月との2回にわたり,ほか1名とともに,西宮市内の女性の市立学校長を,『西宮市教職員組合の役員を務める男性教諭を処分しろ,入学式に街宣車を出して抗議行動をする』と脅迫した罪で逮捕された」ことが,新聞に報道されている。】

増木が在特会関西支部長であることは、新聞にも書かれており、公然の事実だった(2010年10月20日朝日新聞)。その増木、増木の妻、増木の娘という増木一家全員と親し気に写真撮影に応じていた山谷が、増木と在特会との関わりを知らないわけがない。

嘘をついたままにしておくことはできない。山谷は、国家公安委員長という警察のトップである。国際社会が「ヘイト・クライム組織」と呼んでいる在特会だ。しかし日本の警察はその差別的言動を見過ごしてきた。だからこそなおさら、山谷の発言は許されない。

彼女の任命権者である首相安倍晋三の責任が問われる事態だ。しかし、その安倍もにやけた顔で増木とツーショットをとっている。同じ穴のむじなだ。

山谷えり子大臣に「在特会」の質問集中――外国特派員協会の記者会見 2014.9.25
ファイトバックの会
「慰安婦」写真展、ニコンが中止 
『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』
国連人種差別撤廃委員会から日本政府への勧告。Hate speech and hate crimesはp3-4
安倍改造内閣の女性たち
憲法記念日に思う、足元にある戦場
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by bekokuma321 | 2014-10-03 00:13 | その他

c0166264_1739115.jpg『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』の書評が、女性共同法律事務所「2012・夏 ニュースレター」に掲載された。書いたのは、同法律事務所の高坂明奈弁護士。

高坂弁護士の許可を得て、全文を紹介する。

■『バックラッシュの生贄―フェミニスト館長解雇事件』三井マリ子・浅倉むつ子編(旬報社)を読んで        

本書は、「すてっぷ」(豊中市男女共同参画推進センター)の非常勤館長であった三井マリ子さんが、自身が館長職から排除された背景にあるものを明らかにされた書籍である。

豊中市「すてっぷ」館長不当雇い止め事件について(当事務所の宮地弁護士が三井さんの代理人として活動し、事務所ニュース(13号・18号)でも記事にしている)、三井さんが裁判で勝訴されたことなど、ニュースや新聞報道などでも見たが、その背景にあった事実がこれほどおぞましいものとは本書を読むまでは知らなかった。

私は、怒りで心が震えたとき、喉の奥がきゅっと閉まり、体温が上昇する。本書を読んでいるとき、私は喉の奥が痛くなるほど閉まり、座っていた椅子は熱くなっていた。

この本の読者は、二つの怒りを体験する。

一つは、バックラッシュ勢力のやり口の卑劣さに対する怒り、もう一つは、そのような勢力に対し本来立ち向かうべきはずの行政(豊中市)が屈服したことへの怒りである。

男女共同参画に関するバックラッシュ勢力とは、「狙いを定めた地方自治体において、一般市民を装いながら歪曲したデマを流しつつ、特定の個人を名指しで攻撃する行為をしつこく繰り返し、ときには地方自治体の一部議員と連携しつつ行政や男女共同参画拠点施設の職員等に対する執拗で陰湿な攻撃・批判を行うもの」(本書182頁参照)である。

歪曲したデマというのは、男女共同参画は、「鯉のぼりやおひなさまを否定する」「性教育は子どもにセックスを勧めている」「男女の区別を否定することだからトイレ・風呂が共用になる」などである。

今回、三井さんに仕掛けられた攻撃の中にも、「三井さんが豊中の小学校のトイレの色を同じにしたため男子がどちらに入ってよいか分からずおしっこをもらした。」という全く事実無根の噂を流されるということがあった。

また、一般市民を装った男性が「ジェンダーフリーの危険性を学ぶ」という勉強会をするので部屋を貸して欲しいとすてっぷにやって来るということがあった。会館の使用目的に反していると断ると、男は市議を使ってなぜ使えないのだと迫った。結局、市は、貸し出しを認めてしまう。三井さんは、この弱腰がバックラッシュ勢力を勢いづかせたと言う。

当初、バックラッシュ勢力に注意するよう関係各所にFAXを送るなどしていた三井さんの直属の部下(市役所からの出向)だが、豊中市がバックラッシュ勢力に屈服すると三井さんの首切りプロジェクトに回る。

三井さんは非常勤職員であり簡単に首を切れると踏んだ豊中市は、当該部下に首切りの案を練らせ、後任の館長を探し、三井さんを雇い止めにしている。

なぜ、豊中市は、バックラッシュ勢力に屈服したのだろうか。

その背景には、豊中市が、男女共同参画推進条例を議会で通すために条例に難癖をつけていた議員と交わした密約の存在があった。男女共同参画推進の象徴的存在である三井さんを排除するという密約である。

このような仕打ちに対して、三井さんは屈服しなかった。戦うという決断をされるまでにどのような思いをされただろうかと想像するとまた、体温が上がった。

そして最後には、一審から逆転勝訴の高裁判決を受け、生贄から奇跡の生還を果たされたことの感動で体温が上がった。

最近は女性も男性も冷え性の人が多いので、身体の中から熱くなりたい人におすすめの一冊だ。

高坂明奈(弁護士)
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by bekokuma321 | 2012-10-08 21:54 | その他

c0166264_1739115.jpg『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』は、豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」館長であった三井マリ子さんの雇い止め裁判の記録である。

三井さんは2000年に全国公募に応じて初代館長(非常勤)に採用されたが、彼女の活躍が気に入らない勢力の圧力を受け、センターの体制強化のために常勤館長とするというシナリオのもと不当解雇された。

豊中市と男女共同参画推進財団を相手に訴訟を起こしたが一審では敗訴。しかし、大阪高裁で勝訴し、2011年に最高裁が市と財団の上告を棄却し高裁判決が確定した。

本書のタイトルは、豊中市が男女共同参画推進条例制定をバックラッシュ勢力(反動・揺り戻し)の市議会議員に認めてもらうことと引き換えに、館長を生贄として解雇したことに依っている。

バックラッシュ勢力の攻撃や行政への圧力を三井さん自身がまとめたドキュメンタリー、共に闘った2人の弁護士の論説、高裁に提出された浅倉むつ子早稲田大学教授の意見書で構成されており、一気に読めるものとなっている。

1999年に男女共同参画社会基本法が成立し、2000年頃から男女共同参画への攻撃が全国的に吹き荒れた。

徳島県議会でもジェンダーフリーや男女混合名簿に対しての批判が繰り返され、議員の言動に戦々恐々とする県職員の姿を垣間見た私は、その様子を三井裁判の陳述書として大阪高裁に提出した。バックラッシュ勢力による地方自治体の意思決定への陰湿な介入・圧力を断罪した高裁判決に、少しは資することができたかと思っている。

徳島では、2010年4月に「在日特権を許さない市民の会(在特会)」が徳島県教組書記局を襲撃する事件が発生したが、本書には三井さん攻撃の急先鋒であった市議と在特会元関西支部長との関係も、暴かれている。

男女平等を理解できない保守系議員が単に騒いでいるだけでなく、明確に憲法9条、24条を標的にしている勢力がバックラッシュを企て広げていることがよく分かる。


高開 千代子(男女共同参画社会をすすめる会@徳島)

【「週刊新社会」に掲載された書評を、著者の許可を得て転載しました】

館長雇止め・バックラッシュ裁判
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by bekokuma321 | 2012-08-10 17:17 | その他

飯田しづえさん

c0166264_22173263.jpg「飯田しづえさんがいらしたら、この豊中市の惨状をどう思ったでしょうね」

ある女性が、私にこう言った。2012年6月30日、豊中市のすてっぷにて、集会「バックラッシュをはねかえそう!」が終わった後だった。

バックラッシュとは「反動」という意味で、男女平等を逆流させようとする動きを指す。集会は、『バックラッシュの生贄ーフェミニスト館長解雇事件』(旬報社)の出版をきっかけに、豊中市民が企画した。

私は、2004年3月、バックラッシュ勢力に屈した豊中市によって職場から追放された。こんな仕打ちを許してはならないと思った私は、提訴した。そして昨年1月、最高裁で勝った。

6月30日の会で、私は、人格権侵害をした豊中市の犯罪的行為が判決という形で未来永劫残ることになった、と伝えた。

判決の中身を聞いた参加者の1人が、昔、豊中市議会で活躍した故飯田しづえさんを思い出したのだろう。往年の飯田しづえさんの顔がパーっと浮かんだ。

私が豊中で働くようになったのは、2000年秋。その後まもなくだったと思う。飯田しづえさんを伴って私のところにやってきた友人のおかげで、私は直接飯田さんに会ってお話することができた。すでに飯田さんは90歳を過ぎていた。今から10年前のことだ。

都議会議員2期を務めた私は、飯田さんの議員時代の働きぶりに関心を抱いた。飯田さんについて調べた。飯田さんは、1955年という早い時代に市議会議員に初当選。以来、7期も連続当選した。

働く女性にとって不可欠だった保育所の問題、合成洗剤追放など暮らしの問題、さらには伊丹基地撤去運動などの平和運動----市民運動と議会の間を行ったり来たりしながら闘ってきた女性だった。20代の頃、左翼演劇活動に参加したからという理由で、教職の場を奪われるという経験もした。

当時、私は、男女平等についての講演をよく頼まれた。世界、日本、そして豊中市の女性の闘いの歴史が一目でわかる年表をつくって資料として配布しようと思い立った。

豊中市がすでに作成していた書面を取り寄せた。見たら、そこには女性議員についての記載はない。豊中市に初めて女性議員が誕生したのはいつなのだろう。調べたら、1955年だった。その初の女性議員は、私が親しくお話した、あの飯田しづえさんだった。

全体のバランス上、固有名詞は書かないほうがいいと考え、「1955年、豊中市に初の女性議員誕生」と書いた。同時に、増えるたびごとの選挙年を書き入れ、女性議員増の歴史を一目でわかるようにした。それ以来、飯田さんに、豊中市女性議員第1号の印象を聞きたいと思うようになった。しかし、飯田さんの体調が思わしくなく、願いはかなわなかった。

さて2012年6月30日、豊中市の講演を終えた私は、京都の友人宅におじゃました。友人は、翌朝、居間にかけたカレンダーを1枚めくって7月にした。すると飯田しづえさんが、こちらを見て笑っているではないか。

「姉妹たちよ 女の暦2012」(ジョジョ企画)7月号は、飯田しづえさんだった。

自宅にもどった。同じカレンダー「女の暦2012」が、洗面所の壁にかかっている。私は、6月のカレンダーをめくって7月にした。そう、飯田しづえさんの笑顔が、また目の前に表れた。

飯田しづえさんは、「おもしろかってんよ」と、私を励ます。今朝も・・・。

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by bekokuma321 | 2012-07-13 22:41 | その他

c0166264_131365.jpg三井マリ子+浅倉むつ子 編著『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』の感想を紹介する。今回は、宮城県の伊藤由子さん。

■■国家的プロジェクトの一環だった■■

「バックラッシュの生贄」を読んだ。フェミニスト館長解雇事件を通して、あぶりだされたものの深さ・広さ・酷さに、ため息が出る。

「すてっぷ」館長であった三井さんを追い詰め、執拗なまでに、彼女の行く手を阻んできたその勢力とその人たちの横暴な手段は、実は、国家的プロジェクトと呼べる組織的な動きの一環であったのだ、という思いを強くした。

実名でつづられた国会議員や市議会議員などバックラッシュ勢力の言動から、七生養護学校と三井さんの事件は直線でつながっているーーとわかった。事実は小説より奇なりである。

事件を解明すべく、しぶとく証拠を追い続けた三井さんと、彼女を支えた仲間たちの信念に脱帽!冷静に緻密に論を組み立てて、隠されていたことを“見える化”にしていった「首切りプロジェクト」年表は、たとえば過重労働・過労死など、権力を持たない側が反証してゆくときのモデルとして使えるのではないだろうか。

また、セクハラ・パワハラで悩んでいる女性たちに役立つと、この本を伝えていきたいと思う。セクハラ・パワハラは人格権侵害であるという立件をしていけるのではないかと思えるからだ。

三井さんはあとがきに、勝利できたのは、4つの奇跡があったからだと書いている。第一は超豪華弁護団に出会えたこと。第二は、ジェンダー法と労働法の権威者が一審の判決を論破してくれたこと。第三は、高裁で塩月秀平裁判長に出会えたこと。第四は、足かけ7年に及んで、全国と豊中市民の会が支えてくれたこと。

力を落とすような事件が多い中、このあとがきを読んで、元気が出てきた。まだまだ捨てたもんじゃない。この国には素敵な仲間がいっぱいいるんだと。

伊藤 由子(宮城県加美町議会議員)


■院内セミナー「 バックラッシュを跳ね返して新しい時代へ 」にどうぞ
http://frihet.exblog.jp/17916127/

c0166264_1325558.jpg6月1日(金)午後5時半
衆議院第2議員会館(国会議事堂前下車5分)

●「本裁判は21世紀の女性問題の教科書である」 紀藤 正樹(弁護士)      
●「横暴で執拗な言動に負けたのは誰か?」 浅倉むつ子(早稲田大学教授)
●「女叩きの張本人は誰なのか?」 上野千鶴子(東京大学名誉教授)      
●「平等社会をつくることは世界との約束です」 三井マリ子(豊中市男女共同参画センター初代館長)
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by bekokuma321 | 2012-05-27 12:57 | その他



昨年、最高裁で、「理不尽かつ陰険な首切りは人格権の侵害」という歴史的勝利判決が確定しました。日本中を席巻する男女平等つぶしに対して、初めて、反撃の一打を浴びせることができました。

歴史的判決を勝ち取った、この事件についての本、『バックラッシュの生贄――フェミニスト館長解雇事件』が出版されました。1冊1400円。

この本は、大阪地裁に提出した三井マリ子の「陳述書」を「面白いけれどぞっとする読み物」と評した旬報社社長の発案で、できあがりました。

陳述書をもとに書き下ろした私の拙文、浅倉教授による「人格権侵害論」、訴訟を指揮してくださった寺沢・宮地両弁護士の裁判を振りかえる達意の文章、そして、年表で構成されています。バックラッシュのチラシ、新聞、写真、解雇をカムフラージュする文書ーーも含めました。

バックラッシュ勢力は全国のあちこちで男女平等推進政策を踏みつぶしては、快哉を叫んでいます。行政は萎縮し、自己規制に走り、日本の男女平等政策は推進どころか後退に次ぐ後退。

そんな現場のひとつが豊中市でした。同市はバックラッシュの攻勢に屈服して、センターの館長である私を生贄として差し出しました。

男女平等という切り口から見える「ファシズムの恐ろしさ」を感じ取っていただけましたら、幸せです。

■バックラッシュの生贄 (フェミニスト館長解雇事件):
http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/750?osCsid=b436dc50390d2445404f4600f91eac21

三井 マリ子

■YouTube豊中市女性センター館長の不当解雇 三井マリ子さん最高裁で勝訴
http://www.youtube.com/watch?v=LBkvy8Wzg-4

                     
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by bekokuma321 | 2012-03-30 13:34 | その他

21日(土)午後2時。女性たちの次なるエンパワーにつな
がる会です。ご参加を、心からお待ちしています。

■■■■ 最高裁勝利判決を記念する集い ■■■■

市民を欺く豊中市の男女共同参画行政。背後にうごめく
バックラッシュ勢力。こんな土壌で、三井マリ子館長は
侮辱的な首切りにあいました。大阪高裁はこれを「人格
権を踏みにじる違法行為」と判決し、最高裁もこれを支
持しました。歴史的司法判断でした。勝訴までの道のり
を振り返ります。お友だちを誘いあわせの上、お気軽に
ご参加ください。 今週土曜日です。

●「勝訴!よかった よかった 本当によかった」

●1部 ―記念講演―

c0166264_9544143.jpg浅倉むつ子さん(早稲田大学大学院教授)……人格権とは

浅倉教授は、地裁判決を批判し、館長排除の裏にあるバックラッシュ攻撃について解説した意見書を高裁に提出。それが裁判の流れを変える力となりました。
「浅倉意見書を読んで」(18人の声)
http://fightback.fem.jp/asakura_kanso_mokuji.html

―スピーチ―
斉加 尚代さん(MBSディレクタ―)…………報道と女性問題
和田 明子さん(豊中市民)………………… 「市民との共同」の嘘
寺沢勝子さん・宮地光子さんなど弁護団 ……「すてっぷ」館長雇止事件

●2部 ミニコンサート

大熊一夫さん(ジャーナリスト、元大阪大学教授)
  オペラ歌唱:モーツアルト『フィガロの結婚』より「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」

浅倉むつ子さん(早稲田大学大学院教授)
  ピアノ演奏:ショパン「ワルツ 作品64の2 」


●日時:5月21日(土)午後2時~

●場所:とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」
 http://bit.ly/jG4HBT 
(阪急宝塚線豊中駅徒歩1分)

●参加費 2000円

主 催:館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会
問合せ:090-8385-3170 (上田)、090-6055-7036(望月)
090-8149-0008(山田)

●チラシ
http://fightback.fem.jp/11521syoso-tirashi.pdf
●裁判が1分間でわかるTVニュース
http://www.youtube.com/watch?v=LBkvy8Wzg-4

(以上、転載・転送大歓迎)
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by bekokuma321 | 2011-05-19 10:04 | その他

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■■最高裁勝利判決を記念する集いを催します■■

市民を欺く豊中市の男女共同参画行政。背後にうごめく
バックラッシュ勢力。こんな土壌で、三井マリ子館長は
侮辱的な首切りにあいました。大阪高裁はこれを「人格
権を踏みにじる違法行為」と判決し、最高裁もこれを支
持しました。歴史的司法判断でした。勝訴までの道のり
を振り返ります。お友だちを誘いあわせの上、お気軽に
ご参加ください。

●「勝訴!よかった よかった 本当によかった」

●1部 講演とスピーチ
浅倉むつ子さん(早稲田大学大学院教授) ………人格権とは
斉加尚代さん(MBSディレクタ―)…………報道と女性問題
和田明子さん(豊中市民)…………………「市民との共同」の嘘
寺沢勝子さんなど弁護団 ………………「すてっぷ」館長雇止事件

●2部 ミニコンサート
大熊一夫さん(ジャーナリスト、元大阪大学教授)オペラ歌唱
浅倉むつ子さん(早稲田大学大学院教授)ピアノ演奏

●日時:5月21日(土)午後2時~

●場所:とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」
 http://bit.ly/jG4HBT (阪急宝塚線豊中駅徒歩1分)

●参加費 2000円

主 催:館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会
問合せ:090-8385-3170 (上田)、090-6055-7036(望月)
090-8149-0008(山田)

●チラシhttp://fightback.fem.jp/11521syoso-tirashi.pdf

●裁判が1分間でわかるTVニュース
http://www.youtube.com/watch?v=LBkvy8Wzg-4
(以上、転載・転送大歓迎)

写真は大阪高裁裁判後の弁護士解説つき交流会にて。三井原告(左から2人目)と弁護団。大阪弁護士会館にて。
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by bekokuma321 | 2011-05-14 12:36 | その他