c0166264_1755257.jpg連載「衆院秋田3区の政党交付金」を読んで

この連載は前半の18話は秋田篇で、2012年冬の衆院選を闘って落選した三井マリ子さんの苦い体験談。後半の6話はノルウェー篇で、ノルウェーの選挙事情を彼女自身が取材して書いたルポだ。

秋田篇は読んでいて腹が立つことばかり。松浦大悟参議院議員(当時)は、民主党からの離党者が続出する中、固辞する三井さんを拝み倒して立候補させた。ところが、本気で選挙運動を支える気など殆どなく、お目当ては秋田3区に立候補させることで党から支給される政党交付金だったらしいことが、この連載を読むとよく分かる。

松浦議員とその秘書たちは、三井さんの政治活動のための政党交付金をできるだけ三井さんには使わずに残すことばかり考えていたように思われる。

まず、松浦議員らが三井さんの選挙事務所として用意したのは、支持者が来訪するのも不便な辺鄙な場所。事務所開きも行わず、ポスターや選挙広報に必要不可欠な情報(出身地や経歴等)を載せないばかりか、ポスターの印刷枚数も半分以下に抑えた上、ポスター貼りの手間賃まで横領する輩がいた。

民主党から振り込まれる政党交付金は、専用の送金先口座を三井さんには黙って三井さん名義で設立して、そこに送金されるようにした。その専用口座にはいった政党交付金は、三井さんに説明していた別の口座に移した。これらの出し入れは松浦議員の秘書たちが牛耳り、備品を買うにも三井さんの選挙区の業者を使わず松浦事務所が懇意にしているらしき秋田市の業者を使い、真に三井さんが必要なものではなく後に松浦事務所で使えるようなものに大金が消費される、等々。

これらのことに三井さんが気づくのはだいぶ後になってからだ。選挙後「二度と連絡するな」、「ここは12月いっぱい」と言われて自宅兼事務所を追い出され、秋田を去った三井さんは、選挙収支報告書さえも見せてもらえないので、自分で選管や銀行に出向いて調べたりして不正を突き止める。

c0166264_13371240.jpgそして三井さんは、彼女の承諾を得ずに三井名義の口座を開いた松浦議員秘書を私文書偽造同行使・詐欺罪で告発する。さらに、「盤石の態勢で支えます」と三井さんを秋田移住・立候補させた松浦議員や秘書たちから精神的身体的苦痛を受けたとして損害賠償を求めて民事裁判を起こす

告発のほうは、検察庁に送検された。しかし松浦議員側と長らく取引のある銀行側が被害届を出さなかったために不起訴処分となった。「長い物には巻かれろ」式の銀行側の対応が、第13話に詳述されている。

民事裁判のほうは、和解で終わった。三井さんの出した証拠物件から三井勝訴と思っていたが、三井さんの受けた精神的苦痛等に対する損害賠償は認められなかった。

しかし、三井名義の口座のひとつを隠していたこと、「政党交付金は選挙に使えない」と三井さんに嘘をついたこと、選挙収支報告書を見せなかったこと、選挙後の三井さんへの「つるしあげ」、三井さんが会議を要請しても開かなかったことなどは、“不適切行為である”と、認められた(和解調書。右上をクリックすると読める)。

せめてもの成果は政党交付金の残金を松浦議員側の好き勝手にさせずに済んだことと、さらに松浦側金庫に眠っていた供託金(10%以上とったため没収されなかった)を取り戻したことだ。前者は国庫返還をし、後者は秋田の女性のために使うように基金に回されたと聞く。

c0166264_182959.jpg秋田篇の苦々しさに比べて、後半のノルウェー篇の何と爽やかなこと!

前者の、当事者として選挙の泥沼に巻き込まれた経験と、後者の、筆者が理想としている国を訪問・取材したルポ。

流れるテーマは同じ選挙だが、その内容のあまりの違いに驚く。

ノルウェーでは、何しろ選挙に個人のお金がまったくかからない。だから高校生でも、移民でも、酪農家でも、100年前までは虐げられてきた極北の少数民族の女性でも、立候補できて、議員や大臣になれる。すごい選挙制度! 

おとぎ話のようだが、実在する国の話だ。徹底した男女平等は、議会ばかりか、大臣の数でも、会社の役員数でも貫かれている。

日本の小選挙区制では得票数が議席数に比例せず、「死に票」の割合が多いが、ノルウェーなど欧州諸国は比例代表制を採っているため、票数が議席に正比例する(第24話)。民意の反映する選挙なのだ。政党交付金の分配のしかたも、日本と違う。

日本で問題になっている「政治とカネ」のスキャンダルは彼の地では起こらないのだろうか。比例代表制だから選挙は政党中心に行われるため、日本の小選挙区制のように候補者個人がお金を使う必要がまったくない。だから、政党交付金という公的資金が個人の懐にはいることはないらしい。

一方、選挙にお金がかかるから、松浦議員らは、次の選挙に備えるために他人の政党交付金(三井さんの政党交付金)を貯め込もうとしたのだろう。許しがたい姑息な手段をとったとはいえ、松浦議員個人は、日本の選挙の犠牲者なのかもしれない。

c0166264_18544984.jpg参院選が公示され、また選挙が始まった。比例区、小選挙区に、各政党はどのような経緯で候補者を決めたのか、政党交付金はどのように使われるのか、三井さんの連載を読んで、政党の内幕を垣間見た今では気になるところだ。

相田和弘監督の映画「選挙」を観て怒りが静まらなかったノルウェー人たち(第25話)を思い出しながら、街頭で声を張り上げる候補者たちの演説や仕草に接している。

2016年6月28日

高橋 三栄子(さみどりの会*)

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【写真上から 1枚目:2012年豪雪の秋田で選挙運動をする三井マリ子候補。2枚目:和解調書の表紙。3枚目:市長に就任した酪農家兼市議会議員のシングルマザー。4枚目:相田監督DVD「選挙」。5枚目:「16歳以上の選挙権」運動をするハマール高校の生徒たち】

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(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。さみどりの会ホームページは選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイト。裁判は2015年11月和解で終わった
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by bekokuma321 | 2016-07-13 18:30 | 秋田

c0166264_0231454.jpg連載「衆院秋田3区の政党交付金」第18話まで、3月も末になってやっと全文に目を通しました。

三井さんは、選挙や裁判で体験したことを、絡まった糸を解くように平易にくだいて書いています。それでも、見たことも聞いたこともない、選挙の裏側の会計資料や法制度を初めて垣間見たためでしょうが、私は簡単には読めませんでした。これまでの自分の生活に馴染みのない政治や選挙というテーマについてのやり取りや書類の様々……。

三井さん自身、いくども「恥ずかしながら、知らなかった」「私には無知の罪がある」と書いていますが、当初はほとんど知らなかったようです。しかし三井さんは、疑問をそのままにせず、問題の糸口をつかみ、引きちぎられないようにたどってゆきながら、問題の大元にたどり着こうとします。そこで生まれた新たな疑問には、またひとつひとつたどってゆこうとします。

私に分かるのは、ほとんど何も知らなかった困難な問題に果敢に挑んだ三井さんの底力と明快な頭脳です。

完全に理解してはいない私にもこれだけは分かります。それは、今私たちは消費税が上がることを心配していますが、吸い上げられた皆の税金がこういう使われかたをしているが、それでいいのか、と、「政党交付金」を材料に問題提起していることです。

人によっては、問題の本質を矮小化したいために、いろいろと歪曲してとらえる人がいるかもしれません。しかし「公共の利害に深く関わる問題であり、日本国憲法に定められた表現の自由の下での公正な言論である」という三井さんの文章に賛成です。

湖面に投げた石の波紋が広がるように、多くの人々に、政党交付金への関心が広がってゆくことを期待しています。それが、秋田の政治、いや日本の政治をよくする第一歩だと思います。

最後に、三井さんの「連載」を読んで、普通の暮らしの中にとんでもない謀略が仕組まれてもおかしくないと気づかされされました。

加島 康博 (秋田市、さみどりの会*)

連載「衆院秋田3区の政党交付金」_さみどりの会
党として説明責任がある「秋田政党交付金裁判」
三井裁判和解に思うこと
和解調書と裁判長の真意
女であったゆえに踏みつけられた名誉と尊厳

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(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイトさみどりの会ホームページには裁判情報が掲載されている。裁判は2015年11月和解で終わった
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by bekokuma321 | 2016-04-03 17:12 | 秋田

c0166264_0231454.jpg今年の雪は、少し楽でした。市内では屋根の雪もまずまずで、全く雪下ろししない家もあるようです。

連載「衆院秋田3区の政党交付金」を読んで、知らないところでいっぱい苦労してたんだなと、思っています。私はマリ子さんが立候補の誘いを断っていた時、そこに偶然居合わせました。その後、マリ子さんは秋田に移住し、衆院選を闘い、「ここにいられなくなった」と荷物整理をして横手を去って、裁判を起こし、和解で終わりました。私は、ずっと見ていました。

裁判の文書も読みましたので、いろいろ分かっているつもりでしたが、「エ~!こんなことがあったの」と、驚いています。また政党交付金という私たちの税金のいい加減な使われかたも勉強になりました。

とくに、第9話「松浦議員への2度目の手紙」。ひとり、口惜しさと悲しさを抱えて秋田を離れてから、松浦さんに手紙を出したんですね。催促の手紙を出しても、無視され続けたことは、裁判で知っていましたが、今回の連載で、その手紙の内容を初めて知ることができました。

三井さんの手紙に返事をしていたなら、こんなにこじれることは無かったのに、と思います。でも、松浦さんには無視する以外の方法はなかったでしょうね。そのわけは、ここまで読んだだけでもわかります。
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世の中は、憲法改正・戦争のできる国へと向かっています。マリ子さんは、2012年当時、自民党の改憲案を読んで、これを阻むには民主党に期待するしかないと思ったと聞きました。こちらでも、目立つ道路ぎわに2名連名のポスターをはって選挙に備える自民党候補者を見るようになりました。私は、改憲どころじゃない、秋田の高齢問題、格差問題をどうしてくれる、と思うばかりです。

大倉由紀子さみどりの会

連載「衆院秋田3区の政党交付金」_さみどりの会
和解調書と裁判長の真意
女であったゆえに踏みつけられた名誉と尊厳

【写真:今年は雪が少ないとはいえけっこう多い。とくに高齢女性にとって雪おろし、雪かきは難行苦行だ。2016.2.秋田県横手市郊外】
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by bekokuma321 | 2016-03-05 16:18 | 秋田