ノルウェーの国会議員選挙が9月11日にあった。産休中の女性や、高校生が国会議員候補になる国の選挙運動ってどういうものなのか。

ノルウェーに飛んだ。日本の選挙と比較すると余りに違っているが、東京新聞が私のメモとインタビューをもとに、簡潔な記事にしてくれた。

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記事の内容をより理解しやすいように、ノルウェーの選挙の基本を箇条書きにしてみる。

1)選挙制度は比例代表制。選挙で政党が獲得した票の割合に比例して、その政党の当選数が決まる
2)投票日は法律で4年に1度、9月第1か第2月曜と決められている(地方の判断で日曜日を加えて可)
3)議員数は169人。選挙区(=県)の議員定数は人口にほぼ比例して定められている。最大のオスロ17人、最小のフィンマルク5人など。169議席のうち150議席は選挙区19から選出される。残り19議席は4%条項をクリアした政党に分配される(『ノルウェーを変えた髭のノラ』p212~p215)
4)選挙権は、18歳から。投票する権利と投票される権利(=立候補する権利)ともに。実際、高校生の候補者もいる
5)候補者探しは、1年ほど前から、選挙区である県下の市レベル政党内で始められる。選挙権がある人なら本人の承諾なしに候補者にできる。実際は承諾を得てから載せ、現職優先で、国会議員候補には地方議員経験者が多い(ただし日本と違って地方議員のほとんどが無給のボランティア)
6)候補者名簿はリストと呼ばれる。リストの1番から当選するので、上位に載ると当選率が高い
7)政党のほとんどは、リスト作成にクオータ制をとるため女性候補は40%以上いる。しかも男女交互に並べられることが多い。また多様性のある政党とみなされたいため、青年部や移民家庭の代表を入れることが多い。1番しか当選しないミニ政党では、1番をめぐって党内で激しい議論がなされるといわれる
8)リストは、選挙区の政党(日本で言う政党の県支部)の選定会議で最終決定される。選定会議への参加者は市の代表であり、数は法律で決められている
9)県の政党は、リストを3月末までに選挙区管理委員会に提出する。この3月末前後から、政党の候補者名がメディアで明らかになる
10)リストに載る候補者数は、主要政党の場合、定数プラス6~8人。たとえば2017年、オスロ(定数17人)の労働党リスト・保守党リストともに25人だった。全土では4438人が立候補した。
11)当選した議員1人に代理議員1人がつくため、3人当選すると次点の3人が代理議員となる。議員が、大臣になったり(権力の集中を防ぐため大臣と国会議員の兼務は禁止)、病欠、育休をとったりした際に代理をつとめる
12)選挙運動には期間の定めがない
13)選挙運動の方法は、討論会、戸別訪問、チラシ配布、ネット広報、電話かけ…などほぼ何でも自由にできる。が、候補者ポスターや宣伝カーはない。本格始動となる夏頃から、全国あちこちで、さまざまな団体や組織が政党代表による討論会を開く。メディアで報道されることも多い。またメディアも政党同士の政治討論会番組を放送する。こうした政党討論会が主な選挙運動
14)政党同士の討論会のひとつがスクール・エレクション。高校の生徒会が、全政党に招待状を出して、投票日前に校内で討論会を開き、選挙キャンペーンをする。その数日後、実際に投票も行われる(模擬投票)。結果はただちに集計されて、 メディアに流される。若者の投票傾向としてメディアも報道する
15)事前投票は7月1日から投開票日の前の金曜日まで
16)多くのメディアが独自に「あなたの考えはどの政党に近いか」というクイズを設け、市民に政党の政策を知る機会を提供する。たとえば「企業減税をしたい(ハイ、どちらというとハイ、どちらかというとイイエ、イイエ)」など
17)有権者にリストの順番を変える権利がある。自分の好きな候補者名の横にある空欄に1番などと数字を入れて順番を変える試みができる。また削除したい候補者にバッテンをつけることもできる(変更されるには多くの人が行使しなければならず、実際は、国会議員の政党の候補者リストが変更になることはまれである)
18)投票用紙は、政党リストが形を整えられたもので、選挙区ごとに大量に印刷される。投票前まで投票用紙はセンシティブなものとはみなされていない。あちこちで配布される

以上、『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(明石書店、2010)に詳述されているテーマが多い。

【注1:2017年10月13日更新】
【注2:ノルウェー総選挙の投票率は最終的に78.2%。上記の9月30日東京新聞の通りである。以前、FEM-NEWSで「投票率は77.6%」と紹介したが筆者滞在時の9月14日時点で公表された数字】
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by bekokuma321 | 2017-10-01 16:17 | ノルウェー

もうじきノルウェーは、統一地方選だ。女性議員が平均約40%の国だから、女性議員のほうが男性議員より多い自治体が10自治体ほどある。

そんなノルウェーだが、女性たちはそれに満足していない。女性議員を40%から50%へと新しいキャンペーンをしている。

ノルウェーが女性ゼロ議会を一掃したのは1987年のことだった。歴史の歯車をグイッと回したのは、超党派の女性運動だけでなく、マスコミの力が大きかったと思う。

一方、日本はまだ10%程度だ。女性ゼロ議会も多い。保育、教育、介護問題、食の安全、ゴミの問題ーー女性のほうがずっとプロだ。プロの声が政策に反映しないのは、危険だ。

それに原発再稼働も安保法案も、女性のほうが反対が多いが、これでは、その声が議会に届かない。民意の反映しない政治は、民主主義の政治ではない。

ただ最近、うれしいことに、こうした日本の憂うべき現状を報道するメディアが増えてきた。「2割が女性ゼロ議会」と、トップ記事にした東京新聞を紹介する。まだ読んでないかたは、クリックしてどうぞ。


▲東京新聞 1面 2015.6.28


▲東京新聞 1面の続き 2015.6.28

統一地方選直前に特集を組んで「全国規模で女性の力を結集し、戦略的に行動することが求められる」と書いた毎日新聞も評価したい。下図は毎日新聞2015年3月記事よりコピペ。

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by bekokuma321 | 2015-08-23 18:28 | その他