「私はちっとも悪くないという気持でここまでやってきた。皆さん本当にありがとうございます」と、西岡恵子さんは、目に涙を浮かべながら、会場を埋めた人たちに深々と頭を下げた。

8月6日の午後、徳島市で開かれた「最高裁が認めた藍住町女性議員追放の違法性」と題する集会。藍住町町議の西岡恵子さんの完全勝利を祝い、未来につなげようと支援団が開いた。

代表の諏訪公子さんは「10年という長い裁判を闘い抜いた西岡さんの不屈の精神に驚き、感銘を受けている」とあいさつ。弁護団の木村清志、大西聡、篠原健弁護士からの西岡議員失職訴訟の説明が続いた。それをもとに以下にまとめる。

c0166264_15492493.jpg

第1回は、9年前の2月選挙後だった。議会に「議員資格審査委員会」が設置され、そこで「西岡さんの被選挙権がないという理由で失職議決」。理由は、水道や電気の使用量が少なく、町内に住んでないようだというとんでもないもの。地裁では全面的に西岡さんの主張が認められた。敗訴した藍住町は控訴。高裁は「水道、電気、ガスの使用量(使用料金)のみから、生活本拠が藍住町にないと判断」。西岡さんの敗訴だった。

敗訴という痛手を受けた西岡さんだが、再び議会で働くことに挑み、2012年の選挙に立候補した。そして4期目の当選。たった1人の女性議員西岡さんを落選させてはならないという住民の強い意志が反映した貴重な議席だった。

ところが、である。藍住町議会はまたしても議会から彼女を追い出しにかかり、「議員資格審査委員会」を再び設置した。そして再びの議員失職議決。西岡さんが、この議員失職議決を覆すには、またしても法廷に訴えるしかなかった。「第二次訴訟」の始まりだった。

今度は、地裁、高裁と勝訴が続き、今年6月20日、最高裁が「藍住町からの本件上告を棄却する」と決定した。勝因は「2012年の選挙の際、自宅を外出するとき、帰宅したときの写真や食事の準備状況などを写真撮影して残していたこと」「2014年、2度目の失職後、セコムを導入して、自宅にいる時間をより客観的に証明した」ことだった。

弁護士は、「唯一の女性議員の西岡さんを狙い撃ちしたものだ」と言った。そして「与党が圧倒的に強い議会で与党に対決して、裁判闘争に勝利した」「これだけの攻撃を受けながらも、2016年の選挙で5期目の当選を果たした」と強調した。

三井マリ子は、Xという多数世界にポツンとOが入っていくという話(ロザベス・M・カンタ―著、三井訳『Oの物語』)を今回の事件をもとにして紹介し、実は誰にでも起こりうることではないかと話した。

多数派Xと少数派Oは、今回の事件では男性議員対女性議員。XはOを、チアガール、または女房役、またはセックスシンボルとして見る。チアガールはXを持ちあげXが失敗しても許す。女房役はお茶くみやコピーとりを率先してこなす”職場の妻“。セックスシンボルは・・・ご存じの通り。

この3つの型にはまっているOは、X世界から排斥はされない。だけど、3つの型にはいっていないOは、どうなるか。Xは、そんなOを「こわい女」「わけのわからない女」と見る。うざい、けむたい、やっかいだ。

それが西岡さんだ。町議会は西岡さんを何が何でも追い出したかったのだ。理由は何でもよかった。そうでなければ、光熱水費が少ないだけで町民が選挙で選んだ議員を追い出せるわけがない。

彼女は壮絶な闘いの上、今回、勝利した。勝因は310枚もの写真とおびただしい文書による証拠だった。自宅に住んでいることを証明するために、帰宅したとき、自宅でTVを見ているとき、食事をしているとき、家を出るときを記録し続け、プライバシーをさらけ出すことを自分に課した。

ここまでやらないと、勝てないのか。セクハラ事件を訴えた被害女性が、裁判で、どんな服装をしていたか、どんな風に抵抗したかなどと執拗に問われることを思い出し、憤りに体が震えた。

そういう意味で、西岡さんの事件は、日本の社会で、弱者とりわけ女性が強者に抵抗するときの縮図だ。

いま世界は、多様性の時代、統合・包摂の時代だ。移民・難民への対応、障害者差別撤廃への動き、先住民族の人権獲得などーーー。舵とりをする場は政治だ。その政治の場で、たった一人の女性をいじめ抜き、排除したことは、深刻きわまりない。

だからこそ、西岡さんの闘いは、西岡さんだけの闘いではない。私たちが記憶にとどめ、このようなことは二度と起こらないよう、未来へつないでいかなくてはならない。「さあ、本当の闘いはこれからだ!」

(2017年8月8日 一部更新)



西岡・藍住町議 失職取り消し訴訟 西岡町議「議会正常化を」 勝訴の報告会(毎日新聞/徳島)
祝!藍住町”紅一点”議員、最高裁で町に勝利
唯一の女性議員を追放した藍住町議会
まるで魔女狩り――徳島県藍住町の紅一点議員追放事件
徳島県の男女共同参画センター訪問記
阿波女60人、男女共同参画復活求め県庁へ
3.8 国際女性デー 徳島
女性ゼロ議会の阿波市・吉野川市を訪ねて女性ゼロ議会の阿波市・吉野川市を訪ねて
[PR]
by bekokuma321 | 2017-08-07 15:57 | その他

■■■ 最高裁勝利集会の一部が動画で見られます ■■■

5月21日、豊中市のすてっぷにて「最高裁勝利集会」が開かれました。
112名の参加者が、提訴から7年の月日を振り返り、裁判の歴史的
意義をかみしめました。

その一部が、YouTubeにアップロードされました。
編集・制作は有我譲慶(ありが・じょうけい)さんです。

タイトルに北村三津子さん作の横断幕がアレンジされています。

●三井マリ子:バック ラッシュ最高裁勝訴への道 よかった 本当によかった
 http://www.youtube.com/watch?v=mblUFvgEIrw

●大熊一夫:もう飛ぶまいぞ、この蝶々 / オー・ソレ・ミオ
 http://www.youtube.com/watch?v=VIQRxa3y5v4


記念講演「人格権とは」は、講師の浅倉むつ子教授からアップロードの承諾を得られ
たため、現在編集中だそうです。
[PR]
by bekokuma321 | 2011-05-22 15:02 | その他



地震、津波、原発事故、そして豊中市の最高裁判決へのひどい対応
……やり場のない怒りに震えつつ、明日への希望の光を描いてみました。
                   ――ふじみつこ(デザイナー)

(画像にマウスをあててクリックすると大きくなります)
[PR]
by bekokuma321 | 2011-04-05 12:48 | その他

■明日から3月6日までノルウェーからニュースを送ります

皆さま

最高裁勝利へのたくさんのお祝いありがとうございます。
長い7年でした。ここまで来れたのはひとえに皆さんの
励ましのおかげです。本当にありがとうございました。
辛いこともあった7年間でしたが、将来、闘う人たちの
ために判例として残せたことは、この上ない喜びです。

さて突然ですが、2月20日出国3月7日帰国の予定で、
ノルウェーのフィンマルク県に取材に出かけます。
ノルウェーでも最も北極に近い、とびッきり寒い所です。
降り立つ地キルケネス空港は北緯70度。昨日は零下
28度だったそうです。

しかし、男女平等はノルウェーの中でもトップクラス
です。空港のあるスール・バランゲル市は、市長が
44歳の女性、行政トップも女性、議会の52%が女性
です。

実は、最高裁の決定は早くて3月と予想されていたため、
最高裁決定前に、2月になったら行こうと決めていまし
た。最も寒い時期に行こうとしていたのには訳があり
ます。

『ノルウェーを変えた髭のノラ~男女平等社会はこうして
できた』(三井著、明石書店)に登場するベリット・
オース教授は、最低限の生活を強いられる女性たちを
8つに分類しています。その一つが「僻地の女性」です。
その最果ての地に暮らす人々が「私たちはまあまあ平等
に扱われている」と感じられる社会、それがノルウェーです。

『ノルウェーを変えた髭のノラ』の続編として、「平等
主義」「民主主義」といった社会の根幹をなす問題を
掘り下げたルポを書きたいなと思っていました。その
舞台はノルウェーでも最果ての土地、取材時期は最も
寒い真冬がいいなと考えていました。

取材を決めた後で、予想より2カ月も早く最高裁が、
私の勝利決定を出しました。猛烈に忙しくなり、
毎日、迷いました。

でも、現地受け入れ体制の都合もあります。ノルウェー
王国大使館のご支援もいただいてしまいました。という
ことで、ノルウェー取材に行くことに決めました。

凍傷にならないようホカロンを大量に持っていきます。
おもしろーい土産話を持って帰国します。記事を送信
できる環境になりましたら、速報を送信しますので
読んでいただけたらうれしいです。

三井マリ子(FEN-NEWS編集者、すてっぷ初代館長)
bekokuma@hotmail.com 
FEM-NEWS http://frihet.exblog.jp/
[PR]
by bekokuma321 | 2011-02-22 15:18 | ノルウェー