民主主義度世界一といわれる国の選挙運動をこの目で確かめたくて、ノルウェーにやってきた。

ノルウェーの国政選挙は9月11日だ。だけど7月から投票ができる。一人でも多くの人に投票してもらうためには、2か月という事前投票期間も苦にならないらしい。

オスロから知人の車で北へ。ヨットが停泊する青い海を過ぎると、森、麦畑、川。美しい自然がどこまでも続く。

選挙に関するポスターや看板は1枚もない。選挙の宣伝カーもない。

「たしか70年代には政党のポスターがあったようです。今は自然環境を壊さないようにと全政党で路上に看板やポスターをはらないと決めています」と国会議員候補者の知人が言う。2時間で目的地ヘードマルク県レーナ市にたどり着いた。

国会議員候補の知人が選挙区を離れて悠々としていられるのは、比例代表制選挙だからだ。候補者個人ではなく政党を選ぶ選挙のため、個人が選挙運動をする必要などない。候補者であっても、党首以外はほぼ通常の生活をすごせる。

日本の町の風景を特徴づける選挙ポスターを思い出す。先月、福岡県北九州市で見たのは、山本幸三議員のポスター。今月初め徳島市で見たのは、後藤田正純議員のポスター。まだ衆議院議員選挙の日が決まってもいないのに、大きな字で名前の書かれた議員の顔が目にはいってきた。

レーナ市の事前投票は、市役所の隣にある文化センターの受付で行われていた。文化センターは音楽会などに使われる大劇場や、図書館、喫茶などがある、市民の憩いの場だ。

受付の右側に投票ブースが2つ設置されている(写真下)。ブースには、候補者名が印刷されたリストが政党別に並べられている。今回は17政党ある。投票者は、だれにも見られないようにカーテンを引いて、ブースに並ぶ政党の候補者リストから支持政党の1枚を取って、中身を内側にして2つ折りにする。ブースから出て、受付で身分証明書を見せて、リストにスタンプを押してもらったら、それを投票箱に入れる。とても簡単だ。

日本では、投票所に行くとまず多くの人がいる。事前投票の理由を書かされたあと、前もって郵送されたハガキを出すと、投票用紙を渡される。投票ブースに移動するが、そこにカーテンがないうえ、背後に何人か座っているため、監視されているような気になりながら、投票用紙に支持する候補者の名前を自分で書き入れる。候補者の名前を書くことを「自書式」というが、今でもこの方法をとる国は、日本しかないと聞いたことがある。

日本の選挙に比べて、ノルウェーの選挙は、候補者にも投票者にも、なんとも言えない優しさに満ちている。

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by bekokuma321 | 2017-08-25 06:38 | ノルウェー

c0166264_7172863.jpg「女の子はヨーナスが好き」。

10月10日(月)のノルウェー紙第1面の大見出しだ。ノルウェー労働党の党首ヨーナスが、にっこり笑っている。

保守党・進歩党の現連立政権の人気が落ちて、労働党支持が高く、とりわけ女性は労働党が好きだ。こんな世論調査結果が報道された。

「もしも今日、投票するとしたらどの政党に入れますか」――女性の回答は、労働党45%、保守党20%、進歩党10%、中央党7%、キリスト教民主党5%、左派社会党4%、自由党4%、緑の党3%、赤党1%、その他2%(円グラフ)。

ノルウェーの国会議員選挙は4年に1回行われる。解散はない。2013年に当選した現国会議員は、来年2017年9月11日に改選を迎える。選挙区は19の県だ。冒頭の世論調査のとおりなら、今、野党である労働党・中央党・左派社会党の連立による赤・緑連立政権が再登場する。

ちょうど10月は、各選挙区の政党の「候補者選定委員会」が候補者リストを提案する時期だ。選挙区ごとにある政党が、性別、年齢、どこに住んでいるかなどを考慮して偏りのないように作る。中央の政党が介入することはない。

政党の多くは。候補者選定にクオータ制(一方の性を40%以上にする)を守っているうえ、上から男女交互に並べる。

選挙区の政党会議でリストにのる候補者を決めたら、それがマスコミで報道される。だから日本から来たばかりの私にも候補者名がわかる。比例代表制選挙なので、当選者の察しもつく。

c0166264_7194988.jpg19選挙区のひとつへ―ドマルク県を見てみる。国会議員169議席のうち8議席がここから選ばれる。

小さいながらも、政権の一角を占めそうなのは左派社会党だ。10月8日(土)、地方紙に「トップはカーリン・アンネシェンに」という記事が載った(上)。トップとは、「国会議員候補リスト」の第1番目の候補という意味だ。リストには彼女をトップに13人の候補者が並ぶ。左派社会党の当選者は1人だが、有権者にアピールするためにできるだけ多くの候補者を並べる(注)。

比例代表制なので、小さな政党でも普通1人は当選する。トップの候補者つまりカーリン・アンネシェンは再選される可能性が高い。

さて、最も支持の高い労働党はどうか。

へ―ドマルク県からほぼ毎回4人は当選してきた。しかし大所帯ゆえ、リストはスンナリ決まらないようだ。最終的には、リストは一本化されるが、今は、いくつかのリストが提案されている。現国会議員アネッテ・トレッテバルグステューエンの上位に登載されるらしいものの、今のところ彼女を8番目(絶対当選しない順番)にした自治体もある。アネッテは、発言力のある若手国会議員で、2012年、仙台市に招かれて講演した。

首相を出している保守党のへードマルク県候補は、まだ決まっていない。トップの座を狙う男性2人がし烈な争いをしているからだという。

野党の中央党は、このところ支持を伸ばしている。1番は現職国会議員と決まったが、2番目をめぐって2人が譲らず、まだリストを提案できないらしい。

提案されたリストに沿って12月に開かれる各県(=選挙区)の政党の候補者選定会議が、最終リストを決める。そして、12月から翌年9月まで延々と選挙キャンペーンが続く。

政党を選ぶ選挙だから、候補者個人が名前を覚えてもらう努力など無用だ。もっとも強調したいのは、個人が選挙にお金をかけることはありえないから、奨学金で生きている大学生が立候補したりできることだ。小選挙区制中心の日本の選挙とは大きく違う。

リストの上位に登載されたら、育休中でも障害者でも移民出身でも学生でも無理せずに当選できる。男女が交互に並ぶので、女性は、大政党なら当選者の半分、小政党でもトップなら1人は当選する(上のカーリン・アンネシェン参照)。

こうして女性議員が4割を占めるノルウェー国会の誕生となる。

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Ostlendingen
Glomdalen_Ingen tvil om Karin på topp
Løten Ap vil vrake Trettebergstuen fra Stortinget
【ノルウェー地方選挙レポート 2011】

【写真はノルウェーの森】
【注】ノルウェーは、長期夏休みを始め労働者の休暇が潤沢であることや、育休や教育休暇もあり、議員も休む。さらに国会議員の場合、閣僚と国会議員の兼任は禁じられているため、大臣になった人の国会議員ポストは空く。すると、大臣になった人の選挙区から補充される。このように、空いた議員ポストを補充する人ーーそれが”代理議員”だ。選挙で4人当選したら、代理議員も4人選ばれる。また、政党は、できるだけ広範囲に票を集めようと、リストに候補者を多く並べる。以上のような選挙だから、当選を考えず、政党への票を積み上げるために立候補する人がほとんどだ、と言える。
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by bekokuma321 | 2016-10-11 07:54 | ノルウェー

c0166264_22184390.jpgNRKニュースによると、トロンハイム市のあるヌール・トロンデラーグ県の中央党は、国会議員候補者リストのトップをマリット・アーンスタッドに決定した。選挙といっても、来年秋の話だ。

アーンスタッドは、ノルウェーの現交通通信大臣。

彼女には、おもしろいエピソードがある。1999年、石油大臣だったころ、独身のまま出産し、4か月の育児休業をとった。しかも大臣職に復帰した翌年、シングルマザーのままゼロ歳の息子をだっこして、サウジアラビアを公式訪問。サウジアラビアの政界には女性が誰もいなかったから、蜂の巣をつっついたような騒ぎとなった。

ノルウェーの次の国会議員選挙は、2013年9月第2週の月曜日。解散がなく、4年に1回、いつも同じ時に行われるから、ゆっくり準備ができる。それに政党中心の比例代表制だから、日本のように個人が死に物狂いの選挙活動をするなどということはない。

11月になると、来年の選挙の政党候補者リストが決まったというニュースがメディアにのりはじめる。来年の秋までの長い選挙期間に、政党討論会や支援者拡大などさまざまな運動をする。

http://www.nrk.no/multimedia/1.8347373
http://www.nrk.no/nyheter/distrikt/nrk_trondelag/1.8422917
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by bekokuma321 | 2012-11-25 22:27 | ノルウェー

c0166264_20294937.jpgノルウェーは9月の統一地方選挙をどうすべきかを悩んでいる。7月11日のテロ事件で亡くなった77人の中に労働党の候補者が11人もいるからだ。

たとえば、ハンネ・クリススティン・フリーテュン(20歳)は、ステュン市の候補者だ。ソグン・オ・フィヨーラネ県青年部の代表でもあり、車いすの障がい者を手伝うヴォランティア活動をしていたといわれている。

c0166264_20242337.jpgグロ・バーダル・ホーヴォル(18歳)は、ウルスタ市の候補者だ。音楽専攻の高校生だ。

2人の女性はどちらも、それぞれの市で、労働党候補者リストの4番目に登載されている。

ノルウェーの選挙は国会も地方議会も完全な比例代表制である。有権者は、投票所で、支持する政党の候補者リストを1枚選んで投票箱に入れる。それぞれの政党が獲得した票に従って、何人当選するかが決まる。当選者は基本的に1番目から順に当選する。労働党の場合、男女交互に名前を並べることが規則で決まっている。

その候補者リストは、各地の選挙管理委員会にすでに提出されており、候補者名はメディアで報道されてもいる。投票は9月だが、8月10日から事前投票ができる。通常なら8月初めから大々的選挙キャンペーンがスタートする。

ハンナ・クリススティン・フリテュンも、グロ・バーダル・ホーヴォルも、4番目だからよほどの番狂わせがない限り当選確実だった。テロ事件がなければ、彼女たちはともに地方議員となっていたのだ。

ノルウェーの未来を背負う、若き女性たちの非業の死は、あまりに痛ましい。

■Valgstyrene må vurdere nye lister
http://www.nationen.no/2011/07/27/politikk/kommunevalg/lokalvalg/anne_beathe_tvinnereim/utoya/6786054/
■Hanne Kristine framleis sakna
http://www.nrk.no/nyheter/distrikt/nrk_sogn_og_fjordane/1.7728265
■Police begin releasing names of victims of Norway massacre
http://www.thestar.com/news/world/article/1030619--victims-of-norway-massacre-identified
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by bekokuma321 | 2011-08-02 20:36 | ノルウェー

IDEAの最新報道によると、コスタリカは、2009年9月の法律で、2010年からのすべての選挙において、政党候補者名簿(リスト)の40%は女性でなければならないとなった。さらに、リストは男女交互にならべると明記された。

これを守らない政党は、選挙管理委員会から候補者リストを受け付けてもらえない。ごく単純な罰則だが、わかりやすくていい。

http://www.quotaproject.org/uid/countryview.cfm?country=54
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by bekokuma321 | 2010-08-26 01:36 | 中南米