ノルウェーの国政選挙は3日を残すだけとなった。

メディアは「ハラハラドキドキの選挙ドラマ」と大見出しであおっている(主要紙「ダグブラデート」)。

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比例代表選挙のノルウェーでは、国民は政党を選ぶ。政党に集まった票に比例してその政党から何人当選するかが決まる。議席は169。

「比例代表制は、勝負をつけるのではなく、票数の多い少ない、を正確に議席に反映させる。つまり多数派と少数派の双方がその大きさに比例して代表される」――三宅一郎の弁だ。小選挙区制は邪悪だと言いきった、石川真澄(元朝日新聞記者)の本に見つけた。

日本の小選挙区制では、最も票をとった人のみが当選し、それ以外の候補に入れた人の票はことごとく死票となってしまう。当選する可能性があるのは、せいぜい2番目に大きい政党の候補ぐらいだ。

昔、ノルウェーも小選挙制選挙だった(名称は別)。小選挙区制は不平等であると、ノルウェーが比例選挙に変えたのは20世紀初めだ。

ノルウェーの選挙の取材を続けてきて、この比例代表制の長所が、今回ほど発揮される選挙はないのではないかと思う。

世論調査によると、保守中道政権が続くのか、それとも左派中道政権に変わるのか、大接戦(Uavgjortウーアブヨルト)で、169議席の色分けを決める最大のカギは、少数派政党なのだ。

現政権が続投する可能性を見よう。今と同じ保守党・進歩党の2党連立なら70数人。閣外協力をしているキリスト教民主党・自由党を含めると85人前後。この85という数字は全169議席の過半数であり、続投かなと思える。が、どうも違うらしい。キリスト教民主党は政策の違いから「進歩党とは組まない」と公言しているからだ。進歩党は極右と言われる政党で、強硬な難民政策をとる。

すると、政権交代か。労働党・中央党・左派社会党の3党なら75人前後と過半数には遠い。しかし、緑の党がはいると80議席を確実に超える。緑の党は国会に1議席しかないものの、オスロをはじめ地方議会に躍進。さらに、ここにきて、新油田採掘問題で支持を増やしている。もうひとつ、進歩党とは組まないというキリスト教民主党が、左派中道リーグにはいるシナリオもある。こうなると、90議席を超える。

こんなわけで、有権者も熱くなっている。自分の1票が、政治のかじ取りをだれにするかを決めるかもしれないのだ。「いつもの支持政党はやめて、今回はミニ政党に入れようかな」ーーこんな”戦略的投票者”が多いらしいのもうなずける。

さきほど4時過ぎ、事前投票所に行ってみた。投票所の前から延々100人以上が待っていた。どんどん増えてきて、受け付け締め切りの夜7時まで終わるのだろうかとハラハラ、ドキドキする。

真剣な顔をして、じっと並ぶ姿が印象的だった。

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道路まで続く投票を待つ人たちの長蛇の列。看板「ここで事前に投票できます」が右に見える

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▲公園の中に設けられた事前投票所。「もうじき私の番だ」と待つ人たち

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▲オスロ選挙区には20ほどの政党が立候補。投票ブースには候補者リストが政党別に並ぶ。ほとんどの政党はクオータ制をとっていて男女交互に候補者を並べるので当選者に男性偏重はない

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 ▲パスポートか運転免許証などIDを見せて承認されたら、投票用紙を投票箱に入れる

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女性議員を増やすために ~ノルウェー選挙に学ぶ~


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by bekokuma321 | 2017-09-09 16:39 | ノルウェー

民主主義度世界一といわれる国の選挙運動をこの目で確かめたくて、ノルウェーにやってきた。

ノルウェーの国政選挙は9月11日だ。だけど7月から投票ができる。一人でも多くの人に投票してもらうためには、2か月という事前投票期間も苦にならないらしい。

オスロから知人の車で北へ。ヨットが停泊する青い海を過ぎると、森、麦畑、川。美しい自然がどこまでも続く。

選挙に関するポスターや看板は1枚もない。選挙の宣伝カーもない。

「たしか70年代には政党のポスターがあったようです。今は自然環境を壊さないようにと全政党で路上に看板やポスターをはらないと決めています」と国会議員候補者の知人が言う。2時間で目的地ヘードマルク県レーナ市にたどり着いた。

国会議員候補の知人が選挙区を離れて悠々としていられるのは、比例代表制選挙だからだ。候補者個人ではなく政党を選ぶ選挙のため、個人が選挙運動をする必要などない。候補者であっても、党首以外はほぼ通常の生活をすごせる。

日本の町の風景を特徴づける選挙ポスターを思い出す。先月、福岡県北九州市で見たのは、山本幸三議員のポスター。今月初め徳島市で見たのは、後藤田正純議員のポスター。まだ衆議院議員選挙の日が決まってもいないのに、大きな字で名前の書かれた議員の顔が目にはいってきた。

レーナ市の事前投票は、市役所の隣にある文化センターの受付で行われていた。文化センターは音楽会などに使われる大劇場や、図書館、喫茶などがある、市民の憩いの場だ。

受付の右側に投票ブースが2つ設置されている(写真下)。ブースには、候補者名が印刷されたリストが政党別に並べられている。今回は17政党ある。投票者は、だれにも見られないようにカーテンを引いて、ブースに並ぶ政党の候補者リストから支持政党の1枚を取って、中身を内側にして2つ折りにする。ブースから出て、受付で身分証明書を見せて、リストにスタンプを押してもらったら、それを投票箱に入れる。とても簡単だ。

日本では、投票所に行くとまず多くの人がいる。事前投票の理由を書かされたあと、前もって郵送されたハガキを出すと、投票用紙を渡される。投票ブースに移動するが、そこにカーテンがないうえ、背後に何人か座っているため、監視されているような気になりながら、投票用紙に支持する候補者の名前を自分で書き入れる。候補者の名前を書くことを「自書式」というが、今でもこの方法をとる国は、日本しかないと聞いたことがある。

日本の選挙に比べて、ノルウェーの選挙は、候補者にも投票者にも、なんとも言えない優しさに満ちている。

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by bekokuma321 | 2017-08-25 06:38 | ノルウェー

ノルウェーは今秋、国会議員選挙がある。投票日は9月11日(月)。法律で9月の第1か2週の月曜日と決められている。解散もないから、ボンヤリしている人にも、とてもわかりやすい。

9月まで待たなくても、今日も投票ができる。ノルウェーの選挙投票は、すでに7月から始まっているからだ。「事前投票」と呼ぶ。7月1日から9月8日までだ。日本の「期日前投票」は選挙期間だが、ノルウェーには選挙期間という定めはない。そう、年から年中選挙運動をしているような感じだ。

2カ月間余りの長期間、いつでも投票できるのだ。これなら、うっかり忘れることも少ない。

c0166264_15534316.jpg投票時間は、選挙区ごとに決められていて、オスロ大学、オスロ市役所は午前10時から午後7時まで(土曜は午後6時まで)。

ヘードマルク県の小さな町オーモット市は市役所、図書館・カルチャーセンター、ケアセンター(高齢者や障害者総合施設)などが投票所にされ、時間は各施設の通常開館時間に加えて、特別時間が組まれている。

バス停の隣に新設された事前投票所を取材したことがある(上の写真)。遠くにいる人の目にも飛び込んでくる巨大な看板に目を奪われた。車いすやベビーカー用のスロープの大きさも目立った。これなら、らくだ。

選挙は比例代表制だ。国会議員数は169人。19県がそのまま選挙区なのでわかりやすい。19の選挙区から決められた数の人が選ばれる。たとえばオスロは19人、北部のフィンマルク県は5人、南部のアウスト・アグデル県は4人で最も少ない。

比例代表制は、最強候補が1人当選する小選挙区制とは異なり、大政党は大政党なりに小政党は小政党なりに当選者を出せる。多様な民意をほぼ的確に反映する。投票日が終わると、県選管は、政党ごとの”獲得票”を、1.4→3→5→7というふうに割っていき、その商で最大数をとった政党リストの上から順に当選していく。「修正サン=ラグ方式」といって、ドント方式より弱小政党に有利なんだそうだ。

c0166264_15545330.jpg有権者は投票ブースに入って、そこに並ぶ政党リストから支持政党のものを1枚とって、政党名を見えないように裏返しにして(以前は封筒に入れる方式だった)、それを投票箱に入れる。政党の決めた政党リストを変えたいなら、国会議員の場合、政党リストに数字を書き入れたり、×をつけたりする。

投票が終わると、県選管は、政党ごとの“獲得票”を国の選管に伝える。この“獲得票”の面倒な計算は省くが、要するに選挙区で1議席もとれなかった政党の中から4%以上とった政党リストのトップ候補が、各選挙区の最後の1議席をもらう。それを「平等化議席」と呼ぶ。

そもそも比例代表制である点で、小政党への票を切り捨てないように、という意志が感じられるが、「平等化議席」で、さらなるきめ細かな手を打っているといえる。平等と言えば、選挙に出る人や支援者がお金を使うなどということは絶対ない。日本のカネまみれ選挙とは異なる。だからこそ、ノルウェーでは貧しい難民を親に持つ人や、女子高生も立候補する。

忘れていけないのが、国会議員選挙と同時にサーミ議会選挙もあることだ。先住民族サーミ人は一般の政党から出て国会議員に当選する人もいるが、それとは別にカラショークにあるサーミ議会の議員となってサーミのために働くこともできる。

ノルウェーの選挙は、素人にわかりやすく、らくで、便利で、平等なのだ。ノルウェーを含む北欧諸国は、福祉と平等のモデル国だ。その原点は、システムをつくる国会議員を選ぶ選挙自体が平等・公平・同権に満ちているからだ、と私は思う。

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 ▲オスロにある国会議事堂

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 ▲カラショークにあるサーミ議会

ノルウェーの選挙は政党の政策を選ぶ選挙
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by bekokuma321 | 2017-08-12 16:37 | ノルウェー

ノルウェーは、選挙にできるだけ多くの市民が、簡単に参加できるよう、あの手この手で工夫をこらしている。

9月の統一地方選を例に、その工夫のあとをのぞいてみたい。投票日は、今年は9月12日(月)だった。しかし、ほとんどの市で11日(日)、12日(月)の両日をあてていた。

そして、事前投票期間の長いこと。8月1日から9月9日までの1か月以上だった。事前投票ができる投票所は、市役所だけでなく、市民が普段よく利用する要所要所に置かれていた。その上、よく目立つ! 「ここで、事前投票ができます」と書かれた大きな看板がドーン。これでは通り過ぎてしまうことなどありえないと思った。

オスロのある事前投票所は、バス停のとなりに新設されていた。プレハブ仕立ての小屋のようなところだった。車いすやベビーカーで入れるようにスロープも万全だった。

候補者を出している政党は25もあり、自分の考えに近い政党が見つからないことはないほど多彩だった。


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by bekokuma321 | 2011-09-24 20:00 | ノルウェー