精神保健と性差は、重要なテーマだと思う。c0166264_15584327.jpg

11月16日、22日のイタリア精神保健講演会ではふれられなかったが、次の機会には、イタリアの改革にジェンダーの視点をどう入れ込んだかを聞きたい。

医師・関係者と、女性(患者)の間のコミュニケーションは、世界中どこでも、父権的である。つまり、女性は、声をあげたり苦情をていしたりを奨励されず許可されないことが多い。やっとこさ声をあげても、値引きされたり無視されてしまう。

1997年WHO発行の精神病とジェンダーの研究誌は、精神保健おける性差研究の結論として、次のようなことばを紹介している。

「精神保健に関わるすべての専門家たちは、訓練を受けて、臨床現場で出会う女性(患者)たちが力をつけられるようにすること」(*)

c0166264_15391993.jpg世界の精神科入院患者の2割は日本だ、と聞いた。日本は精神病院だらけと言ってもいい。一方、日本の男女平等度は、世界142カ国の中で104位(世界経済フォーラム)。日本女性の地位は、世界最低レベルにある。精神保健改革は社会変革なしには進まない、と言ったロベルト・メッツィ―ナ(右上写真)のことばを聞きながら、日本の精神保健改革への女性の参加を思った。

さて、2013年、オックスフォード大学の研究によると、女性のほうが男性より40%も、精神病にかかる割合が高かった。イギリス、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドを調査したものだ。それに関連して、ガ―ディアン紙は、一般読者にこんなクイズをした。私の正解率はわずか60%だった。

★ クイズ 【女性と男性でどのような差があるだろうか】

1 男女で、どちらが精神障がいになりやすいと思いますか
A 男性  
B 男女同じ  
C 女性

2 男女で、うつ病になる確率に違いがありますか
A 男性が女性の4倍
B 男性が2倍  
C 男女同じ
D 女性が2倍  
E 女性が4倍 
 

3 アルコール依存症にかかる割合は男女で差がありますか
A 男性が女性の5倍
B 男性は2.5倍
C 男女同じ
D 女性が2.5倍
E 女性が5倍

4 不安障がいにかかる割合は男女で差がありますか
A 男性が女性の4倍
B 男性が2倍
C 男女同じ
D 女性が2倍  
E 女性が4倍

5 酔ったときの評価は、男女で違いがありますか
A 男女同じ
B 酔った女性のほうが酔った男性より悪く言われる
C 酔った男性のほうが、酔った女性より悪く言われる

6 悲しいとか不安だとか言ったら、男女で異なった評価をされますか。
A 男女同じ
B 悲しいとか不安だとか言った男性のほうが、同じことを言った女性より悪く思われる 
C 悲しいとか不安だとか言った女性のほうが、同じことを言った男性より悪く思われる

Women 40% more likely than men to develop mental illness, study finds
Gender and women's mental health(pdf) (*)は、ここのサイトの「情動障がいと統合失調症に関わる疫学における性差」(WHO 1997)序文において、Michele Tansellaが指摘している。Michele Tansellaはイタリア・ヴェローナ大学教授。

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▲講演会「鍵をかけない! 拘束しない! トリエステ型地域精神保健サービスを世界へ」。精神障がい当事者にも、家族にも女性が多い。真剣に聞く女性参加者たち(東大駒場ホールにて、2014.11.16)
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▲エリザベッタ・ウ―ヴァ(ロベルト・メッツィ―ナのおつれあい)も会場で熱心に聞いていたが、主催者から紹介はなかった。獣医師。暴力を受けた女たちの心のケア相談にもあたっている(同上)。

バザーリアの闘い
イタリアの精神保健改革
日本縦断トリエステ精神保健講演会――トリエステ改革についての初の講演会講演録(2010年)。講師は女性2人(学者、家族)、男性1人(精神科医)。ジェンダーの視点がほの見えた。


★精神保健と性差に関するクイズ【女性と男性でどのような差があるだろうか】正解は、左下Moreを

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by bekokuma321 | 2014-11-24 16:10 | ヨーロッパ

バザーリアの闘い

c0166264_2025075.jpg11月16日、東大駒場のホールで、イタリアの講演会があった。

タイトル「鍵をかけない! 拘束しない! トリエステ型地域精神保健サービスを世界へ」。講師ロベルト・メッツィ―ナ医師(写真右)。トリエステ精神保健局長であり、WHOメンタルヘルス調査研修コラボセンター長でもある。

イタリアには精神病院がない。20年前そう聞いた私は「嘘でしょ」と思った。でも、大熊一夫のトリエステ視察団に同行して、この目で精神病院がない社会を見てきた私は、もうそんなアホなことは絶対言わない。

「精神病院のない社会」――この夢のような改革はイタリア北部の都市トリエステでスタートした。

1970年代、手足の拘束、薬漬け、電気ショック…が当たり前だったトリエステのサン・ジョヴァンニ精神病院。そこに1人の医師フランコ・バザーリアが赴任した。

バザーリアは、「精神病院こそ、人間を無力化、無価値化させるものだ」という信念を持っていた。彼は、仲間たちと病院の脱施設化に、命をかけた(写真下)。
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彼と仲間たちの闘いによって、精神病院に閉じ込められていた患者は、精神保健サービスセンターでサービスを受けるゲスト(客)へと変貌をとげた。さらに、バザーリアは、トリエステの変革をイタリア全土に広めるための法律「180号法」成立へ、政治家を動かした。

バザーリアは1980年死亡。その後、彼の志を引き継いだ人たちの手でトリエステ型サービスは続けられた。その1人が、初来日したロベルト・メッツィ―ナ医師だ。

トリエステ型サービスとは、精神の病の治療ではなく、食べること、寝ること、着ること、遊ぶこと、働くこと、恋することなど、人間が生活をしていく上でのありとあらゆる場面で、ゲスト(客)に必要な手助けをするといった意味を持つ。

たとえば、女性の「ゲスト お客」なら、地域にある女性団体のイベントに参加して、女性たちと一緒に交流し行動する(写真下)。

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講演内容は、本シンポジウムを主催した「バザーリア映画を自主上映する180人のMattoの会」HPにアップされる予定だ。お楽しみに。私は、写真撮影に忙しくメモもとれなかったが、ひとつだけ気にかかったことばがある。

「病院にあたるホスピタルと、歓待にあたるホスピタリティ。語源は同じです」と言ったロベルト・メッツィ―ナ医師のことばだ。

調べてみたら、病院ホスピタルの語源はラテン語のホスぺスhospesで、「見知らぬ人」または「お客」という意味だ。ホスぺスの発音からpがとれて、ホスト、ホテルという英語にもつながっていったという。

一方、英語のホスピタリティ(歓待、おもてなし)は、ラテン語でホスピティウムhospitium。そもそもの意味がおもしろい。ホスピティウムは、歓待という概念と、病院・宿という両方の意味を持っているのだ。

古くは、「ゲスト お客」は歓待を受けることが権利だったのだという。対する「迎える人」は歓待するのが義務だったのだという。ホーマーの時代は、すべてのお客は、1人の例外もなく、ゼウスの保護下にあり、歓待を受ける権利があるとされていたという。

考えてみれば、今日でも、「ゲスト お客」を迎える人は、さあ、ここに来たら、5時夕食、8時消灯、あれしちゃダメ、これもダメと言ったりしない。「お客」のニーズにできるだけあわせる。これが当たり前だ。

「お客」が最も望まない姿、究極の“反ホスピタリティ”が、今の精神病院だ。それを取り壊して、「お客」が望むような本来の姿に変える、それがトリエステ型なのだ。こんふうに素人の私は考えた。

トリエステでは、患者を患者と呼ばず、「ゲスト お客」と呼んでいたが、そこには歴史的な哲学的な背景があったのだ。

11月22日は大阪のクレオ大阪西でも、同じ講演会がある。二度と聞けない講演かもしれない。時間を見つけて、ぜひ参加をおすすめしたい。詳しくはこちらから
http://180matto.jp/event.php

ロベルト・メッツィ―ナの師フランコ・バザーリアと仲間たちの連帯あふれる闘いは、映画「むかし、Mattoの町があった」に詳しい。この名画を観てない方は、ぜひぜひ観てほしい。

案内「トリエステ型地域精神保健サービスを世界に」
180人のMattoの会
日本縦断トリエステ精神保健講演会
精神障がいとジェンダー
精神病院をなくした国イタリアから
■赤松英知(きょうされん常務理事)のルポ「精神病院をなくした町イタリア・トリエステ:”入院大国”日本と大違い」(しんぶん赤旗 2014.11.17。残念ながらNetでは見られない)
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by bekokuma321 | 2014-11-18 20:29 | ヨーロッパ

精神の病に苦しむ人は、あなたのそばにも、私のそばにもいる。

その人たちの多くは、精神病院に閉じ込められたり、薬漬けにあったりしている。日本でも、世界でも・・・。

しかしイタリアは違う道を選んだ。精神病院を使わない道だ。精神病院をなくしたトリエステ地域精神保健サービスは、いまや世界のモデルとなった。

その世界最高の語り部ロベルト・メッツィーナRoberto Mezzinaが、来週、来日する。東京と大阪で、精神病院のない国イタリアの挑戦を、講演する。

メッツィーナ医師は、トリエステ精神保健局長でWHO調査研修コラボセンター長。トリエステ精神保健の最高責任者、そしてトリエステ型地域精神保健サービスを世界に普及させるWHOの責任者だ。

講演会の参加費は、東京無料、大阪500円。申し込みや、その他詳しくはこちらから
http://180matto.jp/event.php

c0166264_19434841.jpgご存知、イタリア精神保健改革を描いたイタリア映画「むかしMattoの町があったC’era una volta la città dei matti」を見た方が多いだろう。

今回の講演会は、その映画の上映運動を始めた「バザーリア映画を自主上映する180人のMattoの会」2周年記念事業である。

ちなみに、WHOは、「女性と精神保健についての事実」を発表し、精神保健にジェンダーの光をあてる。それによると、

●女性のうつ疾患は、精神障がいの41.9%に登り、男性の29.3%に比較してきわめて高い
●高齢者の精神疾患問題は、うつ、脳機能シンドローム、痴呆であるが、その患者のほとんどは女性である
●暴力的紛争、内戦、災難、追放によって5000万人が影響を受けているが、その80%は女性と子どもである
●女性が、一生涯のうちに暴力を受ける割合は、16%から50%にのぼる
●女性の5人に1人が、強姦や強姦未遂にあっている

180人のMattoの会
日本縦断トリエステ精神保健講演会
精神障がいとジェンダー
精神病院をなくした国イタリアから

【写真:強姦体験を引きずる女性を母に持つヒロイン。性を忌み嫌う母の手で、精神病院に拘束される。「むかしMattoの町があった」PR写真より】
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by bekokuma321 | 2014-11-10 19:54 | ヨーロッパ

c0166264_1852230.jpg4月12日から1週間の予定で精神病院をなくした国イタリアのトリエステに来ている。

精神病院に入院している人間性を否定された患者の人生をどうしたらとりもどせるのか。悩める日本の精神科医、家族、ソーシャルワーカー、ジャーナリストなど10人。世界で最も効果をあげているといわれるトリエステに1週間滞在し、探訪した。

トリエステでは、当事者、その家族、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、精神科医など精神保健に関わるすべて人たちの「連帯」を五感に感じた日々だった。

サン・ジョバンニ精神病院という公立の病院だった場所が、サン・ジョバンニ公園となっている。閉鎖と拘束の環境が、誰でもいつでも気軽に行き来できる環境に変わったのだ。

緑したたる開放的な公園の中に、イチゴ・レストラン、イチゴラジオ放送局、工房、住宅、園芸養成所と広大な庭園、全体をコーディネイトするオフィスなどが点在している。その放送局でも、庭園でも、レストランでも、精神に病をかかえた人たちが自然に働いている。リサイクルの布で作った素敵なバッグを25ユーロで買った。このファッションとアートの国イタリアで、商業ベースに乗せてがんばる心意気に感動してしまう。

私はとくに精神医療・保健変革にどうジェンダーの視点がはいったかに強い関心をもって参加した。この分野に関しては追って・・・。

◆WHO:gender & mental health http://www.who.int/mental_health/resources/gender/en/
◆つれづれなるままのトリエステ日記50%プラス

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by bekokuma321 | 2010-04-19 02:46 | ヨーロッパ