タグ:イタリア ( 37 ) タグの人気記事

c0166264_15175532.jpg

「『精神病院がなくなったら、私たちのほうが狂ってしまう』と、私に言った女性がいました」

こう言うのは、マリア・グラツィア・ジャンニケッダだ。

マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、イタリア精神保健改革運動の生き証人。精神科医フランコ・バザーリア(1924-1980)が働いていたトリエステで、精神病院廃絶運動の渦中にいた一人である。昨年までサッサリ―大学社会学教授で、フェミニスト。先日、彼女の来日講演があった。

イタリアで、精神病院廃絶が始まったころ、「精神病院が閉鎖されます。○月○日、あなたの娘さんを迎えにきてください」というような手紙が当局から家族たちに届いた。多くの家族は、精神病院から自宅に戻されると知って驚き、精神病院閉鎖に猛反対をした。

マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、そうした家族たちの集会に呼ばれた。そのとき、冒頭の発言が彼女に向かって投げつけられた。

女性解放を唱えてきたフェミニスト・ジャンニケッダにとって、精神病院廃止によって、母親、娘、妹、などが家族介護に縛られることは、あってはならないことだった。

「家族が家で世話をするのではなく、あちこちに地域精神保健センターをつくって、そこが責任をもって世話をする。この精神保健改革は、患者だけの解放ではありません。患者と患者の家族をともに解放するのです」と訴えた。

このとき、ジャンニケッダに強い反発をした、この女性は、その後、家族会運動にまい進していき、多くの家族をこの運動に引き込むリーダー的存在となっているという。引き込まれた女性の一人が、2010年来日したジゼッラ・トリンカスだ、とジャンニケッダは言った。トリンカスは、イタリア家族会連合会長、サルデーニャで精神障がい者のグループホーム経営に頑張っている。

c0166264_15194487.jpg

上のエピソードは、9月22日、東京大学駒場キャンパス講演会(イタリア語、日本語通訳付き)で披露された。ただ、裏方の仕事があった私はメモをとれていない。他の内容は後日、共催団体から広報される正確な報告を待ちたい。

さて、9月28日(水)、同大学石原孝二研究室で、マリア・グラツィア・ジャンニケッダの英語講演があった。簡単に報告する。

こちらのテーマは、イタリアの司法精神病院についてだった。日本では精神病院廃絶すら達成していないので、司法精神病院廃絶ははるかかなたの話だと思いながら聞いた。

イタリアの司法精神病院はOPGと略される。2011年から「なくせOPG」(STOPOPG)と呼ばれる市民運動の連合体ができ、廃絶に向けてネットワークを組んでいる。

c0166264_15574279.jpgイタリアでは長年の精神保健改革によって、1960年代末から精神病院の10万ベッドが少しずつ減らされ、1978年バザーリア法によって精神病院廃絶が強化された。このあたりは「大熊一夫著『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』(岩波書店)をみなさんが読んでいることを前提にします」と、ジャンケッダより発言があった。

精神病院がなくなったイタリアだが、刑法によって規定される司法精神病院OPGは残っている。法務省の管轄だ。6つ司法精神病院があり、そこの何千ものベッドは、常に満員状態(前著『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』p165~p175に詳しい)。

2006年から、EU加盟国以外からやってくる移民、難民の増加とともにOPGに入れられる人の数は増えてきた。「犯罪は、極貧状態、近くに頼れる仲間がいない、社会からつまはじきにされる、などによって引き起こされるのだから、当然でしょう」とジャンケッダは言った。

OPGは一部改革されたり、現存するOPGが閉鎖されたり・・・それに代わるレムズREMSと呼ばれる「安全策をほどこす住居施設」に移っている。とはいえ、法的根拠となる刑法の改正はない。つまり、世話と保護監督されなければならないと専門家によって認定された人は拘束される、とされている。ジャンニケッダは、REMSの快適そうな門構えと、その中で見た牢獄のような高いフェンスを見せた。

現在、司法精神病院6つのうち、3つが実態としてなくなった。最新統計では、司法精神病院に入院している人は269人。REMSには573人である。

新しく生まれたREMSは、司法精神病院と本当に違うのか。司法精神病院が減って、本当に拘留が減ったのか。もし拘留をしないとすると、精神を病む人で罪を犯した人はどう対処されるべきなのか――今、イタリアでは活発な議論がある。

この議論の根底を知るには、1978年のバザーリア法にもとづいた、イタリア精神保健改革に立ち戻る必要がある。と、ジャンニケッダは、そもそものバザーリア法をまとめた。

c0166264_15231978.jpg

イタリアの精神保健改革の第一は、精神病院の新設を禁じたこと。第二は、患者(と呼ばず「客」と呼ぶ)を地域精神保健センターで、支援しケアをするとしたこと。第三は、一般病院に最大15ベッドの精神科サービスステーションが新設されたこと。第四は、強制保健治療Involuntary Health Treatmentというものが生まれたこと。

この第四の強制保健治療は、他の病気と同様に法に規定されている。すなわち、治療は「人間としての尊厳、市民的、政治的権利を尊重して」「強制的保健治療をほどこされる人の同意と参加が確実とされたうえで」行われる。

強制保健治療は、公務員である精神科医を含む2人の医師によって要請される。命令を下すのは市長または市長代理である。さらに判事による認可が必要とされる。

強制保健治療は、利益優先をさけるため、私立の精神科で行うことは許されていない。公立一般病院の精神科サービスステーション、または地域精神保健センターでなされる。

しかも、強制保健治療は長くて7日間と決められている。延期される場合は、最初と同じように市長や判事による手続きを経なければならない。

「大事なことは、強制保健治療は、患者が社会に危険だから施すのではなく、患者が特別な支援(緊急対応:投薬管理、個室監督など)を必要としているから施される、ということなのです」

「精神科医には、その患者が危険であるかいなかを診断する義務はもうないのです」

イタリアの精神病院廃絶は、精神病を患う人たちを、自由と権利が付与された人間に復権し、法的位置に絶大な変化をもたらした。変わったのは患者だけではなく、患者の家族も変わった。さらに、精神科医の法的規定が変わった――バザーリアの娘と称されるマリア・グラツィア・ジャンニケッダは、こう結んだ。

最後に、FEM-NEWSとしてつけ加えたいのは、バザーリアの妻フランカ・ウンガロについてだ。彼女もフェミニストだ。カリスマ医師バザーリアゆえ、妻の業績は見えにくいが、彼女は作家であり、バザーリアの著作のほとんどすべてが妻との共著である。

また、夫の亡き後、フランカ・ウンガロは、国会議員に当選して、180号法(バザリア法とも呼ばれる)に対するバックラッシュ勢力と闘いつつ、精神病院を出た人たちをケアする地域精神保健センターをつくりあげる運動や、家族会運動の発展に寄与した。この妻と、マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、制定されたバザーリア法がちゃんと施行されるよう運動を続けてきた(法ができることと、法が施行されることは別)。現在、マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、「フランコ&フランカ・バザーリア財団」理事長。

【写真上:2016年9月22日、東大駒場キャンパスのホールにて。中央がマリア・グラツィア・ジャンニケッダ】
【写真中1:2016年9月22日、東大駒場キャンパスのホールにて。バックの写真がイタリアから精神病院をなくしたフランコ・バザーリア】
【写真中2:なくせ司法精神病院STOPOPG 運動のシンボルマーク】
【写真下:2016年9月28日、東大駒場キャンパスの18号館にて。左がマリア・グラツィア・ジャンニケッダ。「日本の精神病院における"任意入院"と、"措置入院"は想像できますが、"医療保護入院"というのは何ですか。想像できません」と強い語調で質問している】

映画 むかしMattoの町があった:全国各地にて自主上映会展開中!
[PR]
by bekokuma321 | 2016-09-29 15:40 | ヨーロッパ

『むかしMattoの町があった』は、イタリア内の精神病院を廃止する精神保健法(180号法)が成立するまでの格闘を描いた映画です。Mattoはイタリア語で狂人という意味です。

日本では2012年から自主上映会が始まり、以来、上映は4年間で180回を超え、総視聴者約17000人となりました。これを記念して、トリエステ精神保健改革の生き証人、マリア・グラツィア・ジャンニケッダ(写真)が記念講演を行います。講演は東京と大阪の2回です(イタリア語から日本語への通訳つき)。

c0166264_20351235.jpg

■マリア・グラツィア・ジャンニケッダ略歴
フランカ&フランコ・バザーリア財団理事長、昨年までサッサリ大学教授(専門は政治現象の社会学)。 180号法の権威。 1970年代のカオス状態のトリエステ・サンジョヴァンニ病院で、バザーリアの改革チームに加わり精神病院の廃止に貢献。バザーリア亡き後、フェミニストであり、上院議員に当選した妻フランカ・オンガロ・バザーリアと共に家族会運動で活躍。 Stop! OPG(「司法精神病院廃止!」運動)の主力メンバーで、新聞をにぎわす論客。 映画「むかしMattoの町があった」制作に協力。 フェミニスト。

■東京 2016年9月22日(木・祝)
■プログラム
<第一部> 09時30分-13時00分  映画「むかしMattoの町があった」
<第二部>
14時00分-15時00分  
“日本のMattoの町”について言いたい放題! 出演:大熊一夫、伊藤順一郎、参加者
15時15分-18時00分  
講演会「イタリア精神保健革命の顛末 ~カリスマ・バザーリア、180号法誕生、 逆風下の家族会運動とフランカ・オンガロ・バザーリア~」 講師:マリア・グラツィア・ジャンニケッダ
■料金 第一部:映画の資料代1000円  第二部:無料
■場所 東京大学駒場Ⅰキャンパス900番講堂(東京都目黒区駒場3-8-1)
■アクセス 井の頭線「駒場東大前駅」 下車すぐ
■定員650名(先着順)
■申込方法 以下のサイトからお申込みください。★申込み〆切:9月18日(日)★
<イベント概要ページ>
http://kokucheese.com/event/index/409520/
<お申込み用ページ>
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/409520/


■大阪 2016年9月24日(土)
■プログラム
13時30分~16時30分 
講演会「法を変え、社会を変える―イタリア精神保健55年の蓄積に学ぶ」 講師:マリア・グラツィア・ジャンニケッダ
■場所 大阪弁護士会館2階ホール  (大阪市北区西天満1-12-5)
■アクセス
・京阪中之島線「なにわ橋駅」下車 出口1から徒歩約5分
・地下鉄・京阪本線「淀屋橋駅」下車 1号出口から徒歩約10分
・地下鉄・京阪本線「北浜駅」下車 26号階段から徒歩約7分
・JR東西線「北新地駅」下車 徒歩約15分
■定員400名(先着順)
■料金 無料
■申込方法 以下のサイトからお申込みください。★申込み〆切:9月18日(日)★
<イベント概要ページ>
http://kokucheese.com/event/index/416195/
<お申込み用ページ>
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/416195/

主催は、バザーリア映画を自主上映する180 人のMattoの会(東京、大阪)、東京大学大学院総合文化研究科・石原孝二研究室(東京)、大阪弁護士会(大阪)、認定NPO大阪精神医療人権センター(大阪)

障害者問題の原点 ナチス安楽死計画 (大熊一夫)
日本の身体拘束(大熊一夫)
イタリア精神病院解体の裏にある女性パワー
「むかしMattoの町があった」と金子準二精神科医
映画「むかしMattoの町があった」
[PR]
by bekokuma321 | 2016-08-24 21:03 | ヨーロッパ

観たい、観たいと思っていた映画「むかしMattoの町があった」(*)をやっと観る機会を得た。

観終わった後、胸に湧き上がった思いは複雑だった。観られてよかったという思いの一方、事実を知った重み、そして主人公たちが抱える課題は、日本の現状とも重なり胸が締め付けられた。

この映画には複数の人生が描かれている。精神科医のフランコ・バザーリアと、妻であるフランカ・バザーリア、当事者のマルゲリータとボリス、そして看護師のニーヴェス。フランコの精神病院改革運動に、それぞれの人生が絡み合って映画は進んでいく。

私には看護師ニーヴェスの生き方がとても印象に残った。他の看護師と同じように従来の拘束・投薬・電気ショックなどの精神病治療を踏襲していた彼女が、院長となったフランコの進める改革による患者の変化を目の当たりにして徐々に目覚めていく。

目覚めた彼女が立ち上がって自分の感じことを堂々と述べる姿は本当に凛々しい。一度は夫の助言にしたがってフランコを裏切った彼女だが、再びフランコと働くことを決意、夫の元を離れ子どもを連れてやってくる。仕事にやりがいを感じて打ち込む彼女に、家庭に注ぐ時間は多くない。夫は法律を後ろ盾にして子どもを奪い取る。彼女が女性でなかったら、そんなことにはならなかっただろう。やるせなさとともに憤りを感じた。

マルゲリータも、そしてその母も、女性であるが故に引き受けなくてはいけない苛酷な人生があった。娘を「悪魔の子」として精神病院に入れる母親、病院内に監禁される若い娘。なぜ、そこまで辛い人生になってしまったのだろうと涙がこぼれてとまらなかった。

私たちは、なにかというと、すぐに分けたがる。女と男、健常者と障がい者、大人と子ども…。でも、もっとシンプルな同じ人間だということを忘れがちではないだろうか。

精神病院を出て労働者として働き出した元患者たちが「同一労働、同一賃金」を要求するシーンがあった。同じ働きをしたら同じ賃金を支払う。その仕事を誰がしたかは関係ないはずだ。男性と同じ仕事をしても女性であるだけで低賃金である場合が多いことを知っている私には、障がい者の叫びが痛いほどわかった。生きにくさをつくり出しているものの1つに、「区別」があるのではないかと強く感じた。

障がいは、社会環境・制度がつくり出しているものだと聞いたことがある。映画にもあったが、自分の感情や基準を超えた経験が不安や恐怖を生みだし、通常とは異なった言動に走ってしまった人たちが、施策や法律によって精神病院に隔離・拘束される。そこでさらなる不幸を生み出している。

この映画を観たことが終わりでないと思っている。障がいとはいったい何で、人がその人らしく生きるということは、どういうことかという根源的な課題を、改めて突き付けられた。

2015年11月10日

岩嶋 寿子 (女性と障がい者の生き方・働き方を支援するキャリア・アドバイザー)


c0166264_956957.jpg (*)イタリア語Mattoは狂気を持つ人、Mattoの町は精神病院を意味する。イタリアは精神病院を廃止した。革命とも称される精神病院解体。そこに至るまでの経緯をドラマにしたイタリア映画。NHKにあたる公共テレビRAIでイタリア全土に放映され、21%の高視聴率をあげた。今、世界中で自主上映されている。

上記映画会は、11月7日、八王子勤労者福祉会館によって「女たち、女親の視点から」見ようと企画された。主催者によると、「三井マリ子さんは、バザーリア法を日本に紹介した大熊一夫さんと2010年4月、英語版の本映画を見て、日本上映のきっかけをつくった。誰にも感動と勇気を与えるこの作品を、女性の視点から見て、当事者のかかえる問題と社会の課題を考える」(上映会チラシ)。



バザーリア映画を上映する180人のMattoの会
映画「むかしMattoの町があった」
精神病棟を使わずにクライシスに対峙するには
[PR]
by bekokuma321 | 2015-11-14 10:17 | ヨーロッパ

イタリアは、精神病院をなくした。では、心の病を持っているひとはどうしているか。地域の多様な人たちによるサポートの力でケアするシステムをつくった。

先日、そのイタリアの実践と哲学を学ぶ機会があった。

「精神病院は、トータルな人間を“患者”というレッテルをはって、その役割に閉じ込めてしまう。精神病院があるから、ドアがあり、カギがあり、規則があり、管理がある」

「精神科医は、さまざまな職種の人やボランティアで行う共同作業チームのマネージャーであり、チームリーダー。スタッフに権限移譲をするが、リスクは背負う」

「基本は、その人の疾患を治すことではない、その人の人生を取り戻すことをサポートすること」

「サービス利用者は、一般市民であり、権利を持つ主体者である。職員はそれを尊重する」

これは、イタリアのトリエステ精神保健局長のロベルト・メッツィ―ナ医師の言葉である。通訳は松嶋健広島大学準教授。

ロベルト・メッツィ―ナは、イタリアのトリエステ精神保健局長。10月31日、11月1日の2日間、東大駒場キャンパスで、「地域派の精神科医を育てるセミナー『トリエステ精神保健局長と日本の精神科医との対話』」で基調講演をした。テーマは精神病棟を使わずにクライシスに対峙する道をどう見つけるか。

彼は2009年からWHO調査研修協働センター長として、世界中の「精神病院の脱施設化」と「精神病院に代わる地域密着型サービスの発展」を支援している。

c0166264_19431235.jpg

初日は「トリエステの“隔離・拘束”をしない地域精神保健システム」。2日目は「地域派の精神科医の育成方法」。どちらも、フランコ・バザーリアの思想と実践を引きついだトリエステ精神保健の経験に基づいての話だった。心ふるえる中身だった。

「精神病のクライシスは危機。管理しなくては、治さなくては」から、「クライシスは好機。循環型の、らせん運動のはじまり」。精神保健局の使命は、「偏見、差別、排除の撤廃に向けて、利用者の問題に対応する」。利用者が「~病」であるか否かは関係ない。その人のかかえている問題に対応し、社会から切り離されずに生きていけるよう支援をすること。

ピッツア・カウンセリング(注)あり、配管工をまきこむことあり、裁縫が得意な職員による繕い手助けあり、教区の神父の出番あり、市長や警察との対話あり・・・。地域に存在する多様なリソースを最大限使って、信頼できる関係性を築いていくことの重要性が伝えられた。

後半は、日本の精神科医やコメディカルスタッフからの発言を受けて、メッツィ―ナとの対話形式で進められた。

浜松の新居昭紀医師の発言は、すごい実践に基づいていた。おそらくトリエステに流れる精神もこうではないかと思った。

「保護室で、人ではない物を見てしまった。精神科医をやめたいと思った」。「閉じた箱ものに入れたら、そこに必ず管理が出てくる。精神病院は不要だ」「ゴミ巣窟に煙草くゆらす主婦は、発病5年。ゴミ掃除にひんぱんに行った。盗っ人と何度も言われたが、それでも続けた。彼女は治った」

新居医師の「盗っ人被害発言」に、メッツィ―ナは「実際、精神科医は盗っ人です。人間の主体性を盗んできた。利子をつけて返さなければいけない」とコメントしていた。新居医師の人となりや精神保健に関する考え方に関しては、大熊一夫との対談「精神病院依存主義からの脱却」に詳しい。

日本各地から参加した精神科医とコメディカルスタッフから女性医師2人の発言を紹介する。

福岡から参加した渡辺真理医師からは、精神病院勤務医だった頃の閉鎖病棟でのショック、患者さんからひっぱたかれた経験・・・。その後、精神病院を辞め、ちはやACTクリニックを開設。そこで訪問支援活動するようになって、調理を通じて心の支援を続けながら利用者の心に近づいてきた体験が語られた。

また札幌から参加した長谷川直美医師は、刑務所での精神科診療と、街で営む「ほっとステーション 大通公園メンタルクリニック」の2つの異なる実体験からの衝撃的な話だった。殺人や暴行をした「危険人物」というラベルを貼られた人が、関わり方が変わることで、別の人間性が現れて、別の人生を歩むこともできる。それを証明するかのような話だった。

イタリアとそん色ない取り組みが日本でも行われている。素人の私は、ついうれしくなった。しかしながら、全体としては、まだまだ少数。参加した医師の中にも、精神病院は必要だと考えている人がいたことには驚かされた。

日本は、「身体拘束が90%増えたという、この実態をどう変えるかが問われている」(有我譲慶)。

一方、イタリアの精神病院廃絶の立役者バザーリアを日本に紹介して、日本の精神病院をなくそうとがんばる大熊一夫から、誰の発言かとは言わずに、こんなイタリア批判が読み上げられた。

「欧米の脱施設化は、精神科医療に対する国の財政的困窮の結果といった側面と、イタリアに見られるような政治運動の一環として行われたという両面性を持っています。イタリアにおける脱施設化は30年かけて完了しましたが、現在、総合病院で15床程度の病室では十分な急性期対応ができず、入院を拒否されたり、デポ剤による過鎮静にして在宅で看させられるために、家族の負担は増大しています。」

メッツィ―ナは笑いながら、「イタリアには、『嘘は足が短い』‐‐‐英語ではLies have short legs‐‐‐ということわざがあります。虚言はすぐにばれるということです」とかわした。

イタリアの精神保健を憎々しげに言った人物は、「日本精神科病院協会」の代表。安倍首相のお友だちだ。

この2日間のレポートは、みわよしこさんのレポートを参照してください。みわさん、グラッツェ・タント! みわよしこライブレポート

(注)ピア・カウンシリングのミスではない。ピッツアリアに皆で食べに行って、熱々のピッツアを食べながらわいわいやることをさしているようだった。縛ったり、薬を与えたりという方法ではなく、日常生活と切り離さないすごしかたのひとつとして挙げたもの。ピッツア・セラピーとも言える。

映画「むかしMattoの町があった」
180 人のMatto の会(地域派の精神科医を育てるセミナー『トリエステ精神保健局長と日本の精神科医との対話』の主催者)
メッツィーナ医師 / 病棟転換型居住系施設を批判 Roberto Mezzina
精神病院をやめたイタリアから・続き@横浜
マニコミオ(精神病院)をやめたイタリアから日本へのメッセージ
[PR]
by bekokuma321 | 2015-11-02 20:25 | ヨーロッパ

イタリアのレンツィ内閣は、選挙法改正案を成立させた。2016年7月から執行される。

イタリアは、上下院2院制で、選挙はどちらも完全比例代表制である。

今回の改正によって、40%に届いた最高得票の政党は自動的に過半数議席を得ることになる。どの政党も40%に満たない場合は、上位2つの政党で再投票される。

特筆すべきは、女性議員を増やすための積極策が、同時に明記されたことだ。

100選挙区ごとに、政党が決める候補者名簿(リスト)が投票用紙となる。有権者は、支持する政党のリストを選んで投票する。政党ごとの得票率に比例して議席数が決まり、リストの上から当選してゆく。

今回の改正では、各政党のリストのトップに登載される候補者は、少なくとも40%が女性となるよう、党中央が決定する。比例代表制選挙の場合、リストのトップの候補者は、ほぼ確実に当選する。つまり、女性議員が確実に増える。次のイタリア国会議員選挙が楽しみだ。

第2次大戦後、イタリアの内閣は63回も変わり、「回転ドア」と揶揄されてきた。政権の安定をどう確保するかが課題となっていた。しかし、この選挙改正案には、野党は政治権力を最大党に集中させると強く反対していた。

Major election reform in Italy as parliament approves new law
イタリアはパリタリア
アテネ宣言
[PR]
by bekokuma321 | 2015-05-21 16:55 | ヨーロッパ

c0166264_1510882.jpg「僕は、キィェンジェを見るとオランウータンを思ってしまう」

キィェンジェとは、セシル・キィェンジェ(Cecile Kyenge)。イタリア初の黒人女性大臣だった。その時、彼女をこう侮辱したのは、右翼の政党「北部同盟」のロベルト・カルデロリだ。

つい先日、このことが上院議会にかけられて、「彼の言ったことばは、人種差別ではない」という結論が出た、という。

彼女の所属する民主党でさえも、それに賛成したというから、残念きわまりない。人種差別的だと抗議した政党は「五つ星運動(M5S)」だけだった。残酷な話だ。

セシル・キィェンジェは眼科医。コンゴ生まれで、イタリア留学後、イタリア人と結婚した。アフリカとイタリアの交流と連帯に力をつくしてきた彼女を、エンリコ・レッタ前首相は、インテグレーション大臣に任命した。

大臣に就任してからというもの、彼女は、極右団体や極右政党から頻繁に攻撃にさらされ、「コンゴに帰れ」などという横断幕を掲げられたり、顔をオランウータンの頭にすげ変えられた写真がフェイスブックで流されたりした。現在、彼女はこうした暴力的言動を民事裁判に訴えているらしい。

このたびの上院の結論に対して、セシル・キィェンジェは、「国の機構に選ばれた人間が、どんな人をも侮辱していいとなると、弱い立場の人を誰が守るのでしょう。危険な前例をつくりました」と語った。

なんと毅然としたファイトバック・・・・。

Kyenge: “Calderoli assolto per avermi detto orango, triste il Pd che lo difende”
イタリア黒人大臣、差別にさらされる
猿に変えられた黒人女性大臣の顔――イタリア
[PR]
by bekokuma321 | 2015-02-11 21:19 | ヨーロッパ

イタリアの精神保健改革

日本の精神医療はこれでいい、などと思っているひとはいない。

イタリアは精神病院をなくした。いったいどうやって。病院廃絶後、いったいどうなった。イタリア精神保健改革の語り部ロベルト・メッツィーナが日本にやってきて、東京と大阪で講演会が開かれた。

大阪講演については、フリーランス・ライターみわよしこさんのルポをどうぞ。

取材メモ:イタリア・トリエステの精神医療に関する講演(上)
取材メモ:イタリア・トリエステの精神医療に関する講演(中)
取材メモ:イタリア・トリエステの精神医療に関する講演(下)
取材メモ:イタリア・トリエステの精神医療に関する講演(おまけ・私見)

c0166264_17222100.jpg


More
[PR]
by bekokuma321 | 2014-11-23 17:05 | ヨーロッパ

精神の病に苦しむ人は、あなたのそばにも、私のそばにもいる。

その人たちの多くは、精神病院に閉じ込められたり、薬漬けにあったりしている。日本でも、世界でも・・・。

しかしイタリアは違う道を選んだ。精神病院を使わない道だ。精神病院をなくしたトリエステ地域精神保健サービスは、いまや世界のモデルとなった。

その世界最高の語り部ロベルト・メッツィーナRoberto Mezzinaが、来週、来日する。東京と大阪で、精神病院のない国イタリアの挑戦を、講演する。

メッツィーナ医師は、トリエステ精神保健局長でWHO調査研修コラボセンター長。トリエステ精神保健の最高責任者、そしてトリエステ型地域精神保健サービスを世界に普及させるWHOの責任者だ。

講演会の参加費は、東京無料、大阪500円。申し込みや、その他詳しくはこちらから
http://180matto.jp/event.php

c0166264_19434841.jpgご存知、イタリア精神保健改革を描いたイタリア映画「むかしMattoの町があったC’era una volta la città dei matti」を見た方が多いだろう。

今回の講演会は、その映画の上映運動を始めた「バザーリア映画を自主上映する180人のMattoの会」2周年記念事業である。

ちなみに、WHOは、「女性と精神保健についての事実」を発表し、精神保健にジェンダーの光をあてる。それによると、

●女性のうつ疾患は、精神障がいの41.9%に登り、男性の29.3%に比較してきわめて高い
●高齢者の精神疾患問題は、うつ、脳機能シンドローム、痴呆であるが、その患者のほとんどは女性である
●暴力的紛争、内戦、災難、追放によって5000万人が影響を受けているが、その80%は女性と子どもである
●女性が、一生涯のうちに暴力を受ける割合は、16%から50%にのぼる
●女性の5人に1人が、強姦や強姦未遂にあっている

180人のMattoの会
日本縦断トリエステ精神保健講演会
精神障がいとジェンダー
精神病院をなくした国イタリアから

【写真:強姦体験を引きずる女性を母に持つヒロイン。性を忌み嫌う母の手で、精神病院に拘束される。「むかしMattoの町があった」PR写真より】
[PR]
by bekokuma321 | 2014-11-10 19:54 | ヨーロッパ

c0166264_1335265.jpgイタリアのマッテオ・レンツィ首相は、内閣改造をし、閣僚大臣を男女半々にした。

国防相にも女性が就任した。

ローマにある調査機関の副所長カ―ラ・コリチェッリは、おもしろいコメントをしている。

「事態はまだ不確定ですが、目を奪われました。彼のやりかたはホントにあたらしい。閣僚に女性が多いことは、いい効果を産みます。イデオロギーではなく、私の実体験から言えるのですが、最低の女性でも、男性よりはいいのです」

日本も内閣改造らしい。お願いだ、最低の男性ばかりにしないでほしい。

Italy chooses women in times of crisis

【お断り:イタリア人コメントの英語は「even the worst woman is better than a man」。当初、「最低の女性でも、最低の男性よりはいい」と和訳したが、ミス。「最低の女性でも、男よりはいい」が正しいので修正した】
[PR]
by bekokuma321 | 2014-03-13 13:49 | ヨーロッパ

魔女

今朝、イタリアから届いたメール。
c0166264_19272880.jpg

私はイタリア語ができない。和訳はつたなくても、イラストがわかりやすいので・・・ちょっと訳してみた。

1月6日の確認

「ママ、ママ、魔女みたいだ」

「違うわ。掃除という偉大な仕事をする非正規労働者よ」

さらに、メール本文に、以下のメッセージがあった。
「すべての女性は男性より多くの仕事を強いられている。目に見えないが、必要不可欠な仕事を。男社会に認められずにいる尊敬するすべての女性たちに」

メールの送り主は下記の男性。
ing. Luciano Anelli
Operatore Pari Opportunità
Documentatore, divulgatore e comunicatore
della Cultura Femminile
[PR]
by bekokuma321 | 2014-01-06 19:32 | ヨーロッパ