前回、嬰児を殺害した高校生について書いた。そして、学校教育を批判した。http://frihet.exblog.jp/10784932/

今回は、なぜ、生徒たちに性に関する必要不可欠な情報が届いていないかの根っこを探ってみる。

今、中学高校の性教育がズタズタにされている。思春期の子どもたちに、性のこと、避妊のこと、出産のことを科学的に教えてきた良心的な先生たちは、絶望的なためいきをついて、私にこう言った。「教えなくてはいけないという教育者としての使命感が、上からの圧力で粉々に打ち砕かれているのです」(大阪府の中学保健体育教員)。

その背後に、国会議員や地方議員を巻き込んだ、男女平等や性の自立を進める流れに反対する反動的な動きがある。バックラッシュBacklashと呼ばれる動きだ。

行政や教育委員会幹部は、声の大きな議員の意見に、なびいたり、屈したり、いや、そういう議員の声を先取りしたりするから、教育現場はたまったものではない。性教育や男女平等教育の質が落ち、量が激減していくのである。

こうしたバックラッシュの動きで、よく知られているのは、現自民党参議院議員の山谷えり子議員の議会や報道における発言である。2002年、彼女が民主党議員だったとき、中高生のために作られた冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』を激しく批判した。この冊子は、自分が自分の人生の主人公になるために、避妊について教えている副読本だ。

山谷議員を「私は以前から知っていて仲良しだ」と書く円より子議員にしても、「全体として、『性や結婚、家族の多様性を教えることが、売春や援助交際に至ることもある。性の自立が妊娠中絶にまでいくかも』といった論調だ」と、山谷議員の国会発言に批判的だ。
http://www.madoka-yoriko.jp/
http://www.yamatani-eriko.com/press/index.html

与党政治家の議会発言を、“天の声”と仰ぐ教育行政幹部がいる現在、現場の性教育は、効果的で魅力的な内容であればあるほど、上から圧力がかかることになるのである。

日本におけるバックラッシュの動きについては、以下の記載が参考になる。裁判所に提出された書面から転載する(「館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会」HPより)

【性教育に関しては、性行動の低年齢化や性感染症の急増など、不測の事態に備えるため、国や自治体が性教育の必要性を認めて取り組んできた。また、民間団体や教育団体なども、女性の人権を損なう性の商品化情報が氾濫している事態を憂慮し、自立と共生に根ざした科学的に正しい知識の必要性から性教育の研究と普及に務めてきた。

ところが、ある保守団体は、女性組織とも組んで大々的なジェンダーフリー・性教育バッシングを展開した。その手口は、女性の国会議員を主唱者とし、その一部始終を産経新聞など一般紙はもとより、日本会議系の刊行物で広く報道するというところにあった。

一例をあげると、2001年から配布されていた中学生向けの性教育ハンドブック「思春期のためのラブ&ボディBOOK」(厚生労働省所轄の財団法人母子衛生研究会作成)に関して、2002年5月衆議院文教委員会で、山谷えり子議員(日本会議推薦)は、「セックスをあおっている」「ピルをすすめている」などの質問をして槍玉にあげた。これが導火線になって、性教育の行き過ぎ、過激などとしてバッシングが激化し、最終的にハンドブックは回収され絶版に追い込まれる騒ぎも起った。】
http://fightback.fem.jp/05_9_27jynbisyomen.pdf


【2002(平成14)年5 月、中学生向けの性教育の冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』について、国会で山谷えり子衆議院議員は、「セックスをあおっている」と、性教育への不当な批判を行った。

これに関して産経新聞は、“中学生にピルのおすすめ!?”というタイトルで厚生労働省の見解に真っ向から対立する記事を書いて教育現場を批判。これに連動するように、「三重県のいのちを尊重する会」が三重県教育委員会に上記冊子の使用中止を申し入れ、各地でも同様の批判陳情が続出した。

冊子『思春期のためのラブ&ボディBOOK』は、厚生労働省の提言をもとに、財団法人母子衛生研究会が作成したものである。当冊子は、こうした不当な圧力にあって、結局、絶版、回収される事態になった。

この件は、学校においてなされていた科学的な性教育を、ゆきすぎ、過激という修辞をつけて、排斥・排除していく全国的動きの導火線となったものである。2003(平成15)年には、新潟県の小学校長が「男女混合名簿は共産主義思想に基づいている」として、男女別名簿に変更した。鹿児島県議会では、「ジェンダーフリー教育」への反対の陳情を採択している(甲41~43)。また香川県議会では、「一部の教育現場などにおいて、男女共同参画に名を借りて、男女の区別や役割を機械的・画一的に解消・排除しようとするとり組みがあり、これは長年つちかわれてきた良識的な価値観や伝統文化の破壊につながる」とした決議を採択している(2005(平成17)年12月)。

2005(平成17)年には、自民党が「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」を結成、又、中山文部科学大臣がジェンダーフリー教育批判を行っている。】
http://fightback.fem.jp/saisyu_jynbisyomen_new.pdf
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# by bekokuma321 | 2009-02-05 13:56 | アジア・アフリカ

1月29日、オバマ大統領は、リリィ・レッドベター公平賃金法(Lilly Ledbetter Fair Pay Act)に署名した。大統領就任後の最初の法律が、賃金の平等を求めるものだったことに、アメリカ女性たちの歓喜の声がl聞こえてきそうだ。オバマの選挙公約のひとつでもあった。

オバマ大統領は、女性差別賃金の是正を求めて闘い、同法案のきっかけを作ったリリィ・レッドベターさんを招き、彼女の目の前で長年の功績をたたえた。そのスピーチは、聞き逃せない。
http://www.nwlc.org/fairpay/

大勢の女性議員たちに囲まれて大統領が署名する写真は、見ものである。http://www.now.org/issues/economic/012909ledbetterty.html
http://www.nytimes.com/2009/01/30/us/politics/30ledbetter-web.html?_r=1

法律は、またの名をリリー・レッドベター法。アラバマ州在住の女性リリー・レッドベターさんが、タイヤメーカー会社を相手取って起こした訴訟。タイヤメーカーを退職後、同じ仕事の男性従業員より賃金が低いとわかって提訴した。しかし、最高裁は、賃金が最初に支払われた日から6ヶ月以内に提訴しなければ無効と判断し、レッドベターさんは敗訴した。

民主党が中心となって議会に提出し可決された「公平賃金法」は、最後に支払われた日から6ヶ月以内であれば提訴できるというもの。これで賃金が公平になるわけではなく、訴訟がやりやすくなるというだけのことだ。オバマ大統領も「これは第一歩だ」と言っていた。

この法は、性差別だけでなく、人種、宗教、国籍、年齢などによって賃金差別を受けた従業員が起こす訴訟要件を緩和するものだ。

この法案成立に向け、女性団体を中心に、国会議員に熱心にロビー活動が続けられていた。オバマ大統領も、署名前のスピーチで「超党派でこの法案成立のために闘った運動家たちに感謝する」と述べた。

補足するが、この女性差別をしている会社は、ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバ-・カンパニー。世界一のタイヤ会社だ。日本では、同社100%出資の日本法人として、「日本グッドイヤー株式会社」が設立されている。住友系のゴム会社。日本各地に支店がある。


【関連記事】

オバマ大統領の女性政策については、インターネット新聞を(日)
http://janjan.voicejapan.org/world/0811/0811070987/1.php

リリィ・レッドベター公平賃金法案 (英)
http://www.nwlc.org/fairpay/pendinglegislation.html

米連邦上院議会での平等賃金法案について(英)
http://www.now.org/press/01-09/01-22a.html

米連邦下院議会での平等賃金法案について(英)
http://www.now.org/press/01-09/01-09.html
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# by bekokuma321 | 2009-02-04 11:09 | USA

報道によると、1月31日、福島県本宮市内に住む高校2年の女子生徒(17)が、殺人容疑で逮捕された。出産直後に赤ん坊を殺害した容疑。高校生は容疑を認めているという。

29日午後、自宅で出産した直後に、刃物のようなもので頭や胸など数カ所を刺して殺害した疑い。高校生は、高校を早退して、自宅トイレで出産した男の子を自分の部屋に運んで殺害後、布に包んでこたつの中に隠していた。生徒が血まみれだったことなどから、父親が警察署に通報。

妊娠させた男性がいなくては、女性は妊娠しない。殺人を擁護するわけではないが、彼女に妊娠させた男よ、出てこい! 男子生徒か、男性教員か、知人か。それとも強姦された場合だってある。相手の男性が何も問われないのは絶対おかしい。殺すに到ってしまった女性の10ヶ月という月日を、その男は何をしていたのか。

家族は娘の妊娠に気づかなかったと報道されている。きっと女生徒は日に日に膨らんでくるおなかを気づかれることを恐れ、あらゆる手をつくしたに違いない。つわりもあっただろう、体育のときはどうしたのだろうか。友人や教員は、相談を受けなかったのだろうか。一緒に考えてあげる人が周りに誰もいなかったのだろうか。

10代の母親は、今の世の中、大勢いるではないか。とくに欧米では、子育てしながら高校や大学に通ったりする女性もめずらしくない。アメリカ大統領となったオバマも、母親が10代で出産した。

もしかして日本の現実を無視したノーテンキな言い方かもしれない。ならば、早期なら、妊娠中絶という方法も残っている。いや、その前に避妊をなぜきちんとしなかったのか。これは相手の男性に真っ先に言いたい。さらに、先生たちには、学校の性教育はいったいどうなっているのか、を問いたい。

あー、この大情報時代に、自分の体を守るための最も基本的で、最も大切な情報が、女性に届いていなかったのだ。強い憤りを覚える。

映画「マンマ・ミーア」は、10代で妊娠した女性の娘が、成長し、偶然、母親の日記を見つける。その日記には、同時期に3人の男性と恋におちていたことが書かれていた。結婚式に、父親が誰かわからないので、3人に招待状を送ったら全員がやってきたというストーリーだ。音楽以外に、私が一番いいなと思ったのは、主人公の女性のセックスライフをポジティブに描いている点だ。

これとは逆に、この殺人事件の裏には、高校生のセックスを忌み嫌い、避妊情報まで遠ざけている学校教育があるような気がしてならない。高校生の妊娠なんてとんでもない、出産なんてなおさら。そういう考えの行き着く先は・・・。赤ん坊を殺し、それ手を下した17歳の人生も殺してしまう社会。
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# by bekokuma321 | 2009-02-03 04:06 | アジア・アフリカ

原麻里子ブログ

「原麻里子のメディア・社会分析ー社会人類学の視座から -」に、ルワンダのドキュメンタリー批評がありました。 

BSドキュメンタリーのルワンダ報道は私も見たように思いますが、他のことで忙しくしていた頃で、きちんと見てませんでした。「原麻里子のメディア・社会分析」を読み、再放送してもらいたいと思いました。

http://blog.goo.ne.jp/anthropologist/e/4d901e332fdd9fb586a97c56dcddefdf
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# by bekokuma321 | 2009-02-01 12:31 | アジア・アフリカ

ルワンダの奇跡

c0166264_034224.jpgルワンダは国会における女性の進出率が世界一である。2003年、全国会議員80人の中の女性は39人(48.8%)となり、スウェーデンを抜いてトップに踊り出た。

次の2008年選挙では45人(56.3%)に増えて、天の半分以上を女性が支えることになった。

国会だけではない。内閣の37.1%、知事の33.3%、裁判官は最高裁長官を含め35%が女性である。

1994年のジェノサイドで、夫や家族を殺害され、自らも強姦され、住居を失い、食料不足にあえぐ生活だ。トラウマに苦しむ女性も多い。識字率も低く、HIV・エイズ、マラリア、結核という感染症もまん延した。女性たちにとっては、政治どころではなかったはずである。いったい、ルワンダ女性に何が起こっているのか。

もっと読むには 「ルワンダの奇跡――女性進出いまや世界一!」
http://janjan.voicejapan.org/world/0901/0901296424/1.php

全国フェミ二スト議員連盟の1月24日のシンポジウムから、ルワンダに焦点をあててまとめたもの (写真はルワンダの報告をするアリス・カリケジ弁護士、撮影・高橋三栄子)
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# by bekokuma321 | 2009-01-31 00:06 | アジア・アフリカ