c0166264_0395776.jpg12月11日から、ノルウェーの国会議員アウドゥン・リースバッケンが、3か月の病気休暇にはいると、報道された。彼は、野党の左派社会党党首であり、元子ども・平等・社会大臣。

ノルウェーでは、他の労働者同様、国会議員が休暇を取ることは珍しくない。

でも、3か月も休暇をとって、国民の代表としての職務は? ただちに代理議員がバトンタッチするので、まったく心配ない。

最近、日本でも議員の育児休業をめぐって代理議員の話題がメディアに出た。そこで、あらためてノルウェーの代理議員制度をふりかえってみたい。

ノルウェーは比例代表制で、選挙区(=県)から複数の議員が選ばれる。代理議員制度の土台には比例代表制があるので、ここはしっかりおさえたい。

アウドゥン・リースバッケンは、ベルゲン選出の国会議員だ。彼の選挙区は、ベルゲンを含むホルダラン県(Hordaland)で、定数16人の大選挙区。首相もここの出であり、保守党支持者が多いところだ。

2017年9月、総選挙があったばかりだ。有権者は、候補者にではなく、支持する政党に1票を入れる。政党の獲得票に比例して、ホルダラン県16人の政党の議席はこう分けられた:保守党5、労働党4、進歩党2、中央党2、左派社会党1、キリスト教民主党1、自由党1。

左派社会党は1人だけで、当選したのは、候補者リスト1番のリュースバッケンだった。

c0166264_0543189.jpg今回、病気休暇をとる彼の議員職を埋める代理議員は、彼と同じ選挙区の左派社会党候補者リスト2番目のジーナ・バースタッド(Gina Barstad)だ。彼女は、選挙で次点の候補だった。

若さあふれる31歳。とはいえ彼女は、以前もリュースバッケンの代理議員として国会議員をつとめた経験と実績がある。彼が大臣に就任したためだった。ノルウェーでは、権力の集中を防ぐため、大臣と国会議員は兼務できないのだ。

ノルウェーの国会議員は、育児休暇や病気休暇をよくとるが、国会議員の休暇は、働く者の権利として保証されているうえ、職務は選挙時の次点候補がカバーするので、休暇をとったからと議員を批判する有権者はいない。その一方、代理議員制度は、次点候補ーー若い人のことが多いーーの国会への登竜門ともなる。

c0166264_0551332.jpgアウドゥン・リースバッケンは左派社会党党首なので党首代行も必要となる。党首の代行は副党首カースティ・バーグストゥー(Kirsti Bergst)が就任する。彼女はフィンマルク選出の国会議員で、サーミ出身の1981年生まれの30代だ。

NRKによるとアウドゥン・リースバッケンは、こう語っている。

「もうじき戻ってきます。ラッキーなことに僕の周りには党のすばらしいチームがいて、僕のいない間を支えてくれるでしょう」

ちなみに地方議員は、北欧ではそもそも仕事や学業をもっていて、余暇に働くボランティア(無給)だ。職場や大学から免職されれば、国会議員よりも休暇をとるケースが多いようだ。私自身よく見聞きした。中には1年間の教育休暇をとった地方議員の話を聞いたことがある。

【写真:上は党の公式HP、中と下はFace Bookより借用】

Audun Lysbakken i sykepermisjon
パパにもっと時間ができた! 
男性大臣2人の育休 
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# by bekokuma321 | 2017-12-19 11:29 | ノルウェー

「セックスは自発的であるべきです。もしも自発的でないならば、違法です」
「相手が望んでいるかいないか、はっきりしないなら、セックスをしないことです」
「私たちは、社会の考え方、価値観を変えたいのです」

こう述べたのは、スウェーデンの首相ティファン・ロベーンだ。

12月18日(月)、記者会見で、首相、副首相、法務大臣3人が居並んで、新しく「セックス同意法」を国会に提案すると表明した。政府は「被害者の利益を大事にする」姿勢を強調した。

アメリカの、有名映画プロデュ―サーによる性暴力被害者の告発に始まった「私も運動(#MeToo)」。北欧では大きなうねりとなった。

ノルウェーでは、1001人以上のアーティストが、被害を公にした。さらに、メディアに働く人たちの大がかりな性暴力調査が行われて、178 人が「セクハラを受けた」ことがわかった。

スウェーデンは、政府が率先して制度改革に歩を進めた。しかもやることが早い。さすが「私たちはフェミニスト政府です」と宣言しただけのことはある。

c0166264_1453454.jpg さて、日本はどうだ。

東京都議会議員だった私は、セクハラという言葉さえ定着してなかった頃、日本で初めて東京都にセクハラの公的相談窓口をつくらせた。それまで、相談項目の「その他」に混じって、見えなかったセクハラが、単独で受け付けられるようになった。セクハラの内容や件数を明らかにすることができた。日本で初めてのことだった。

その背後には、アメリカの最高裁判事候補のセクハラ疑惑が世界的ニュースになっていたこと、女性団体がセクハラに悩む都民女性の調査をして結果を公表したこと。それに加え、議員だった私自身が東京都議会の委員会室で、都庁の廊下で、都議会議員控え室で、性的嫌がらせにあって悔しい思いを募らせていたからだ。

あれから4半世紀、日本の法律は、いまだセクハラを禁止していない。


Swedish PM Backs New Sexual Consent Law
178 people in Norway’s media industry experienced sexual harassment: report
1,001 Norwegian artists denounce sexual harassment
Vil undersøke sex-trakassering i norsk mediebransje
ノルウェー労働組合員736人、組織内のセクハラ文化を抗議 「恥と罪の意識を返却します」 #MeToo
ブルントラント元首相 セクハラ被害を語る
ノルウェーDV予算をめぐる攻防
4月6日 営業ウーマンの逆襲

【写真:「セクハラ110番」(三井マリ子著 集英社 1994)表紙】
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# by bekokuma321 | 2017-12-19 02:33 | 北欧

2017年も終りに近づき、遅くなってしまったが、Democracy Index2016をお知らせする。

それによると、またもノルウェーが世界でもっとも民主主義度が高い国に選ばれた。トップの5位まで、ニュージーランドの他すべて北欧諸国だ。

5カ国ともに、選挙制度が比例代表制であることはもっと注目されていい。日本は20位。

1 ノルウェー9.93
2 アイスランド9.50
3 スウェーデン9.39
4 ニュージーランド9.26
5 デンマーク9.20
6 カナダ 9.15
6 アイルランド 9.15
8 スイス 9.09
9 フィンランド 9.03
10 オーストラリア 9.01


英誌「エコノミスト」の調査部門が定期的に発表している民主主義度ランキングだ。調査国は160カ国以上。調査項目は以下のとおり。

① 選挙過程と多元主義electoral process and pluralism:
「国会議員選挙、首相選挙、地方議会選挙が自由に公平に行われているか」「政党の政治資金の出し入れは透明であるか、かつ一般に受容されているか」など12項目

② 政治機能functioning of government:
「自由選挙で選出された代表が政策立案にたずさわっているか」「国会が、他の行政機関よりも上位にある最高の議決機関であるか」など14項目

③ 政治参加political participation:
「投票率」「少数民族や少数派があげた声が政策過程に反映されるか」「国会議員における女性の割合」「政党や政治団体への参加率」など9項目

④ 政治文化political culture:
「安定した機能的な民主主義を支えることに世論は合意しているか」「議会や選挙を無視するような強いリーダー像を望んでいるか(筆者注:望む文化だと減点)」など8項目

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Democracy Index 2016 Revenge of the “deplorables”



【注:このニュースはすでに紹介済みであることがわかったので、再度の掲載となる。強調点が違うので、2つを参考にしてほしい。既報はこちら民主主義コンテスト 世界1はノルウェー、日本は20位
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# by bekokuma321 | 2017-12-18 20:12 | ノルウェー

ガーディアン紙によると、わずか1か月に6700人ものロヒンギャ(イスラム系少数民族)が殺害された。少なくとも730人は、幼い子どもたち。ミャンマーから逃亡してきたロヒンギャは8月以降だけで64万人に上るとされる。

ミャンマー政府の最高権力者はアウンサン・スーチーである。国家顧問兼外相という肩書を持つ。

スーチーは、1991年ノーベル平和賞を受賞した。今、彼女のロヒンギャへの消極的対応に抗議して、ノーベル平和賞の取り消しを求める署名が36万人以上も集まっている。

11月、オックスフォード市は、1997年授与した「市民の自由」称号をはく奪した。12月14日、ダブリン市議会も、「ダブリン自由賞」の取り消しを決議した。もっとも、こちらは、アイルランド出身のロック歌手が、スーチーにも贈られた名誉市民称号はいらないと返上する抗議のあとだったが。

日本は、京都大学、龍谷大学などが、名誉博士号を送っている。取り消しの気配はない。それどころか、安倍政権は、2016年、スーチーを招いて8000億円もの資金援助をした。すでに、多くのメディアや国際人権団体から、少数民族虐待に何の手も打ってないと非難されていたにも関わらず、だ。

メディアの報道は、コンスタントに続いているが、早かったのは、2015年5月のアルジャジーラではないか。和訳されているので、核心を突く調査報道を日本語で読める。その中で、私の心に焼き付いているのは、彼女は選挙で勝つためにロヒンギャ虐待を黙殺しているというくだりだ。その箇所を引用する。

「彼女は過去数年間、――軍が彼女の大統領選出を可能にする、あるいは彼女の出馬を認めた場合 ――2016年に大統領に選出されるために必要な票をもつミャンマーのマジョリティである仏教徒に擦り寄った。そのため、ロヒンギャに犯した暴力を軽視し、迫害の加害者と被害者に対して見せかけだけの平等を提言してきた。」

「かつての良心の囚人はどうなったのか。そう、今は喜んで原則よりも票を、無実のロヒンギャの命よりも政党の発展を優先する、シニカルな政治家なのだ。」

選挙に勝つためには何でもする、こんな政治家は日本だけでないらしい。だからこそ、市民は選挙制度に強い関心を持つべきなのだ。

ああ、でも一度は尊敬していた女性のこの変わりよう。悲しすぎる。

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▲歴代の平和賞受賞者写真。オスロのヘンリック・イプセン通りにあるノーベル・インスティチュートにて


Aung San Suu Kyi's inexcusable silence(アルジャジーラ 英語)
アウンサンスーチーがロヒンギャ問題について沈黙している。その理由は許しがたいものだ(アルジャジーラ記事の和訳)
アウン・サン・スー・チー当選2012年のFEM-NEWS
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# by bekokuma321 | 2017-12-15 00:04 | アジア・アフリカ

c0166264_22101493.jpg 2017年11月9日「グレーテ・ベルゲがたったいま亡くなった」というメールがノルウェーの友人から届いた。

ジャーナリストのグレーテがブルントラント首相付きの広報担当官に抜擢されたのは1988年。数年後、ノルウェーの子ども・家族大臣にと、首相から懇願された。小さな子どもを持つ、現役ママ大臣の登場だった。私は夢中で取材して『ママは大臣パパ育児』(明石書店)を書きあげた。

今では日本でも耳にするようになった「パパ・クオータ」は、グレーテが音頭とりをして進められた。「パパ・クオータ」とは父親も育児休業をとるように誘導する公的政策だ。

またジャーナリストだったグレーテは、新鮮な言葉をいろいろ駆使して、意識改革にも力を入れた。

右のポスターは、彼女が男女平等大臣だった90年代後半のもの。子ども・家族省と男女平等オンブッドと男女平等審議会の3機関が手を携えて作成した。

ポスターを見ていると、今でこそ世界トップクラスの男女平等国ノルウェーだが、そこにたどりつくまでには国をあげて”女性運動”に頑張っていたのだなあ、とわかる。

ド派手な黄色のシャツにジャラジャラ・アクセサリーをつけた厚化粧の金髪女性が「私はフェミニストなんかじゃないッ」と叫ぶ。

ところが彼女は次に「でも、なぜ?」とつぶやく。「でも、なぜ昼休みの電話番はいつも女なの?」(1行目のノルウェー語の訳)

2行目からのノルウェー語は「叫ぶ芸術 ポスターで見る世界の女たち」をどうぞ。
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# by bekokuma321 | 2017-12-13 22:43 | ノルウェー