アメリカのトランプ大統領は、疑惑解明に司法省が特別検察官を任命したと聞くと、「すべては魔女狩りだ」と怒った。彼は、「ロシア関係の捜査をやめるよう」FBI長官に指示していた疑惑がもたれている。

魔女狩りとは、いつもながらド派手な言いがかりだ。ロシア介入などなかったのなら、証拠をもとに徹底調査をさせて、疑惑を晴らせばいいだけのことだ。

ところで、今日、国会議事堂の一室で、自・公・維新の3党によって共謀罪が強行採決された。この際、ほんものの魔女狩りとはどういうものか思い出してみたい。

アメリカでは、セーレムの魔女裁判が有名だ。17世紀、ニューイングランド地方のセーレム村で、100人を超す村人たちが次々に「魔女である」と告発され、何の証拠もなく、裁判で有罪とされ、絞首刑となった。

ことの発端は、牧師の娘たちが、ある会合で奇妙な行動をとったことだ。牧師は、娘たちの行動の原因は、使用人である黒人女性によって妖術をかけられたからだと断じた。「自白すれば減刑される」と言われた使用人は、妖術をかけたと”自白“した。さらに、関係者であると密告された村人たちが次から次に告発されていった。

『魔女狩り』(森島恒雄、岩波新書)によると、魔女狩りはアメリカより先にヨーロッパで起きた。「1600年を中心の1世紀はまさしく『魔女旋風』の期間だった」。一説には数十万の女性たち(男性も)が、「迷信と残虐の魔女旋風」の犠牲となって、絞殺されたり、絞殺された上で焼かれたり、生きながら焼き殺されていった。

ノルウェーでも魔女狩りがあったと聞いて取材にでかけたことがある。フィンマルクのヴァルドゥーだ。17世紀、魔女の烙印を押されて逮捕された女たちは、城内の「魔女の穴」に監禁され、拷問で自白を強いられて、その拷問に耐えたとしても、城塞跡から500メートルほど先の火刑場に引っ立てられて灰と煙にされた。

ありえない罪を有罪と断定する決めては何だったか。強いられた「自白」だった。魔女とされた人たちは、審問官が誘導するままにすべてを肯定し、「自白」をしていった。

なにやら、今日、衆院の法務委員会で強行採決した共謀罪に似ているではないか。ある場所に集まって話し合っただけで処罰しようというしろものだ。計画するのは頭の中でのことだから、物証があるはずはない。だから自白と密告しかない。

20世紀のイギリスの最高法院長マクドネル氏の言葉は、警告的だ。

「魔女裁判は『自白』というものが不十分であり頼りにならぬものであることを、他のどんな裁判よりも強力に証明している」(同上『魔女狩り』)

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 ▲裁判で死刑となり焼き殺された"魔女狩りの犠牲者"を記憶にとどめるモニュメント(ヴァルドゥーに2011年創設)


小林多喜二から共謀罪を思う
「むかし魔女、いま大臣」(連載「衆院秋田3区の政党交付金」) 
ノルウェーの魔女裁判から思うこと
魔女モニュメント、オープン
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# by bekokuma321 | 2017-05-20 01:40 | USA

支配者が使う五つの手口

4月22日、ベリット・オース(オスロ大学名誉教授)から封書が届いた。

開けたら『支配者が使う五つの手口』というベリット・オースの名著のミニ本が出てきた。「最近、バルセロナで出版されたカタルーニャ語版です。100冊送られてきたので、1冊マリ子に送ります」。

それで思い出したのが、大阪豊中市男女共同参画推進センターすてっぷの館内を飾った『支配者が使う五つの手口』のポスターだ。

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スウェーデン・ヴェクショー市男女平等委員会が作成した『支配者が使う五つの手口』の冊子とDVDを持っていた私は、その表紙を拡大コピーして、大勢の人の目につくところに飾りたいと思った。

すてっぷ館長だった私は、作成者のスウェーデン・ヴェクショー市男女平等委員会に、長いお願いの手紙を書いた。ほどなくスウェーデンから承諾の返事が来た。小躍りしながら、さっそくパネルにして館内に展示した。

さて、ベリット・オースは、「クオータ制」の産みの親だ。1970年代初め、ノルウェーのミニ政党の党首に就任した。彼女は、さっそく党規約にクオータ制を入れた。彼女の実践したクオータ制は、他党をも動かした。80年代になると、労働党の首相グロ・H・ブルントラントが閣僚人事にクオータ制をいれ、大臣の40%を女性にした。ニュースは世界をかけめぐり、日本にも届いた。

ベリットを世界的に有名にしたのは、実は、クオータ制よりも、ポスターの原典である『支配者が使う五つの手口』だ。ベリットは、自身の体験を社会心理学で分析して、男性が女性から自信を奪うテクニックを5つに分類したのだ。

「1 無視する」「2 からかう」「3 情報を与えない」「4 どっちに転んでもダメ」「5 罪をきせ恥をかかせる」。

ほとんどの支配層は、あらゆる被支配層にこの5つを使う、とベリットは言っているが、テレビで安倍首相の答弁を聞いていたら、まさしく、と思った。

続きは、「叫ぶ芸術―ポスターに見る世界の女たち―支配者が使う五つの手口(北欧ほか世界各国)」をどうぞ。


叫ぶ芸術 ポスターに見る世界の女たち (I 女のしんぶん)
ベリット・オース、豊中市、日本会議
ベリット・オース「支配者が使う5つの手口」
ベリット・オース、80歳の闘い
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# by bekokuma321 | 2017-05-17 15:43 | ノルウェー

c0166264_4291578.jpgオスロには、フリチョフ・ナンセン広場、フリチョフ・ナンセン通りがある。フリチョフ・ナンセンは、探検家、科学者、そして政治家。第一次大戦後は国連難民高等弁務官として、難民を救うために特別の証明書を発行して、何十万もの難民を救済した。

ナンセンのような歴史上の偉人(正確には偉大な男性)の名がつけられた道路は、オスロだけで750あるという。

ところが、さすがノルウェー、女性の名を冠した道路も100あるらしい。「すごいな」と日本人の私なら思うが、ノルウェー女性はそう思わないらしい。

「750対100。これは、過去、女性たちの存在が過小評価されてきた証し」であり、「歴史はすべての人によってつくられるものであり、過小評価されたグループを表に出すことはきわめて重要だ」と考えた。

c0166264_433012.jpg考えただけではない。彼女たちは、「女性史の夜」と名づけた5月8日の夜、今ある男性の道路名のうえに、ノルウェー史に貢献してきた女性の名前をつけるアクションをやってのけた。

アクションは、Women's Front、Feminist Initiatives 、Women's Group Ottarの3女性団体が主体となって企画された。昨年に引き続いて2回目のようだ。

その夜、女たちは、道路名の掲げられた場所まで行って、脚立に登って、自分たちが用意した女性名つき紙をはりつけた(最上の写真)。

女たちが用意した歴史的偉人(偉大な女性)はこういう人たちだ。

中絶した女性を犯罪者とする刑法の改正運動をしたカッティ・アンケル・ムッレル(Katti Anker Møller 注1)、女だからスキージャンプは無理だとされていた時代のスキージャンパーのヒルダ・ブラッシェルド(Hilda Braskerud)、初のサーミの権利大会を開催した運動家エルザ・ラウラ(Elsa Laula、注2)、女性初の映画監督エディス・カ―ルマル(Edith Carlmar)、などなど。

c0166264_418289.jpgノルウェー人で亡くなった人の名しか実際はつけられないが、そこはアクション。今も元気な89歳の女性運動家べリット・オ―スの広場や、サーミの歌手マリ・ボイネの通り、アメリカの黒人運動家アンジェラ・デービスの通りも用意した。

ノルウェーの女たちの工夫と連帯に満ちたアクションに、拍手を送りたい。それに、一夜とはいえ道路標識など公共物の変更を女性運動に認めたオスロ市、記事にして広めたノルウェーメディアにも。

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▲オスロのメインストリート。カールヨハンという国王の名がつけられている


kvinnehistorisk natt 2017
I går ga kvinneaktivister byen en rekke nye gatenavn, oppkalt etter kvinner. Les og se bildene
Kvinnehistorisk overtagelse av Oslos gater
Samisk legende fikk en liten del av Oslo «oppkalt» etter seg
ドイツの町のジェンダー規定

【注1】「自己決定権を初めて主張した女性」(明石書店『ノルウェーを変えた髭のノラ』)
【注2】「サーミ解放運動の先頭に立ったエルサ」(第 22 話 むかし魔女、いま大臣)(さみどりの会ホームページ)
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# by bekokuma321 | 2017-05-14 04:41 | ノルウェー

c0166264_2313580.jpg「この賞は、虐待から逃れてきた人たちためのシェルターと、そこで働く人たち――少女のころ闘うことを選び、今、シェルターの職員をしている――それに貧しい家庭に育った子どもたちと分かちあいたい」

今年の「男女平等賞」に輝いたカードラ・ユースフ(36)のことばだ。 さきほどノルウェーから入ってきた報道から要約して紹介する。

男女平等賞は、ノルウェー労働組合連合LOが、困難な道を勇敢に切り開いた女性に対して、4年に1度授与する賞だ。1997年に始まって、今年は20年目。これまで、初の女性首相グロ・ハーレム・ブルントラント、ジェンダーにとらわれない子どもの本作家アンネ・カット・ヴェストリ、女性で初めてノルウェー国教会最高位である監督に就任したローズマリー・クーンなどが受賞した栄えある賞だ。

カードラ・ユースフの名がノルウェーに知れ渡ったのは、2000年のこと。

ノルウェーのイスラム・コミュニティでは、少女たちに性器切除が行われていた。実は、イスラム教のイマム(指導者)が、少女たちに性器切除をするよう指導していたのだ。彼女は、その事実を隠しカメラとレコーダーで録画に成功。それがテレビのドキュメンタリー番組で放映された。大反響を呼んだ。

彼女の調査報道によって、イスラム文化・宗教か人権か、人種差別か女性差別か、家庭のしつけか個人の尊厳か、伝統か自己決定権か・・・・などのテーマで議論が広がっていった。そして、議論はノルウェーの女性器切除禁止法の制定にまで進んだ。

その後、彼女はいくつかのメディアで社会評論を担当するようになり、現在は、ノルウェー主要紙の専属コラムニストだ。 女性運動家であり、3人の母親でもある。

カードラ・ユースフ自身の話も壮絶だ。8歳で戦火のソマリアからノルウェーに逃れてきた。ノルウェーで育ち、ノルウェーの学校で学び・・・やがて「反逆児」に!

カードラ・ユースフは、養親が彼女に女性器切除をさせ、すでに決められていた相手と結婚させると察した。15歳になったとき、彼女は親を捨てる決意をし、家出を決行。ノルウェーの全土にはりめぐらされているシェルターのひとつに飛び込んだ。新しい人生のはじまりだった。

連合LOの会長ゲル・クリスチャンセンは、カードラ・ユースフに「男女平等賞」を授与した理由をこう述べる。

「彼女は現代におけるもっとも重要な意見の持ち主のひとりです。彼女は、多様性と自由への扉を開けて、私たちに再びそれを考えるように促しました。それだけではない。彼女は、抑圧された女たちに光をあて、正義のために立ち上がろうとするひとたちすべてに感銘をあたえています。これこそ、世界が求める、男女平等そのものなのです」

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     ▲アムネスティの女性器切除廃止キャンペーン・ポスタ―

LOs likestillingspris 2017 går til Kadra Yusuf
Kadra fikk LOs likestillingspris
Dagsavisen_Nye Meninger:Kadra Yusuf
女性性器切除被害者は2億人
ソマリア女性にナンセン難民賞
ノルウェーの「ベスト清掃員賞」
映画『パパ、ママをぶたないで』が生まれた国ノルウェー
イラク移民の少女が国会議員有力候補になれる国
ノルウェーの難民と“児童婚”
難民問題
イスラム教と女性(リングダール裕子「ノルウェーの女たち」より)


【写真上:facebook Kadra Yusufより。 写真下:I 女のしんぶん連載「叫ぶ芸術―ポスターに見る世界の女たち 34 『赤いバラの闘い』
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# by bekokuma321 | 2017-05-11 23:22 | ノルウェー

テレビ報道はフランス大統領選ばかりだが、北欧フィンランドの選挙について一言。

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4月9日(日)、首都ヘルシンキ議会で、フェミニスト党の代表カチュ・アロKatju Aroが初議席を得た。

フェミニスト党は、スウェーデンでFeminist Initiativeの名で誕生以来、北欧各国に生まれている。「国境なきフェミニズム」とも呼んでいる(上の写真)。既成政党が力を入れてこなかった男女平等を中心に、難民を含むすべての人の間の差別撤廃を掲げる。これぞ、本当の改革派だ。

Katju Aroのモットーは「すべての政治は、人間の尊厳を守るためにある」

フィンランド・フェミニスト党は、国会議員選挙で票を伸ばした右翼の「フィンランド党」に危機感を抱いて、2016年夏から活動を開始し、年末に公認されたばかりだ。2017年4月の統一地方選では、ヘルシンキをはじめ9市で候補者リストを出した。全体で6856票、0.3%、1議席をえた。

このような理想主義的政党が、わずか4ヶ月ほどの政党活動で、9市の議会に大勢の候補者を出し、首都の議会に議員を誕生させたとは驚きだ。比例代表制選挙ならでは、といえる。

Feministinenpuolue
Feminist Parties Moving Forward in the Nordic Countries
真っ赤なリュージュで男女平等
イギリス6割が選挙制度改革に賛成 
「育児パッケージ」がはぐくみ育てる平等の社会
アバのベニー・アンダーソン、フェミニスト党を支援
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
高校生も立候補するカネのかからない選挙
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# by bekokuma321 | 2017-05-08 22:56 | 北欧