カテゴリ:ノルウェー( 552 )

c0166264_22182370.jpgノルウェーの報道によると、アメリカが軍事介入して破壊しつくされたイラクにおいて、女たちや少数民族の救済を続ける女性解放運動家が、ラフト賞に決まった。

女性の名はヤナー・モハメド(Yanar Mohammed、写真)。民主主義と人権のために闘う女性運動家であり、ジャーナリストでもある。イラクで、暴力被害女性を保護するシェルターの運営やニュースを発行し続ける「女性の自由ための組織」の代表。

ラフト賞審査員は、イラクの現状をこう説明する。

「性暴力は、戦略の一部であることが多い。イラクは、政治・軍事の名の下で、女性の人権がふみにじられている数多くの戦場のひとつである。女性に対する虐待や暴力は、イラクで増大の一途をたどる。強姦されたり、誘拐されて売買春宿に投げ込まれたり、名誉殺人の犠牲になったり・・・」

「女性の自由のための組織」ホームページによると、ヤナー・モハメドは、ISISの陣地近くにまで直接でかけて行って少女たちの救済交渉をしている。また、国連やアメリカの大学でイラク女性の実情を講演したり、と国内にとどまらず、世界に向かってイラク女性への理解を深める活動を続ける。

ヤナー・モハメドは、「行き場のない人たちは100万人とも200万人ともいわれている。そのうち約150万人が女性で、その半数が16歳から30歳の若い女性である。要するに10万人ほどが、今、この時点でも人身売買の犠牲になっているだろう」と語る。

ラフト賞を知らない人が多いと思われるので、ホームページから紹介すると、1986年、ノルウェーの学者で人権活動家ト-ロフ・ラフト(Thorolf Rafto) の努力に感謝する学生らの手で創設された。1979年、ラフトは、大学から排除された”政治的に偏向した学生たち“に講義をするためチェコを訪問。プラハで、ラフトは保安警察の手で殴打され重傷を負い、それがもとで1986年死亡した。

政治的表現の自由を守り発展させることにもっともふさわしい人が選ばれるのだという。また、世界ではあまり知られていない人権活動家が選ばれることによって、その業績を広く知らせる役目を果たしている。

受賞者から何人もノーベル平和賞受賞者が輩出している栄えある賞だという。

ヤナー・モハメドの気の遠くなるような闘いは、ノーベル賞に値する。ぜひ、と思う。

Organization of Women’s Freedom
Organization of Women’s Freedom in Iraq OWFI_facebook(ヤナー・モハメド写真は本facebookより)
The Rafto Foundation
「民族浄化」を乗り越える女たち
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by bekokuma321 | 2016-09-30 22:42 | ノルウェー

c0166264_3274543.jpg「ナパーム弾を受けて泣き叫びながら逃げる少女」が、フェイスブックに帰ってきた。

さきほどはいってきたニュースによると、フェイスブック側は、ノルウェーのアフテンポステン紙らの抗議によって、削除した写真をもとに戻したという。

おめでとう!

問題となったのは、何も身に着けずに走っている少女の写真だ。あのベトナム戦争の・・・。

アメリカが支援した南ベトナム軍は、ナパーム弾を使って北ベトナムの村々を焼き尽くした。ナパーム弾は、アメリカ軍が開発したとされる爆弾で、1000度という高温のゼリー状のものが炸裂するのだという。少女は、そのナパーム弾のついた衣服を脱ぎ棄てて、走った。「ギャーッ、熱いよ~」という断末魔の叫び声が聞こえてきそうだ。

この写真は、世界中の人の心を動かし、反戦運動を加速させたといわれている。それを、フェイスブックは、ヌードを受け付けないというルールがある、と掲載を拒否した。杓子定規、とはこのことだ。

ことのはじまりは、ノルウェーの作家トム・エーガランが、彼自身のフェイスブックに少女の写真を戦争の記録として掲載したところ、その写真が削除されてしまったことだ。

ノルウェーのアフテンポステン紙は、9月8日、削除したフェイスブックの編集長マーク・ザッカバーグに「表現の自由の侵害であり、編集権の濫用だ」と激しい抗議をした。それを同紙のフェイスブックと新聞紙上に載せた。削除された写真のコピーも載せた。このフェイスブックの記事は、削除された。

このアフテンポステン紙のジャーナリスト魂に、多くのノルウェー人が反応したと思われるが、そのノルウェー人のなかに首相もいた。彼女は問題の写真を載せて、フェイスブックの検閲に対する批判を投稿した。それも削除された。

ノルウェーの政治家はフェイスブックなどソーシャルメディアを利用する政治家が多いが、エルナ・ソルベルグ首相(保守党)も、自身のフェイスブックに気軽に投稿する。彼女の投稿は、アフテンポステン紙が抗議した翌日だった。

つづいてノルウェー・ジャーナリズム協会も、協会の新聞Journalisten のフェイスブックに、その写真を載せた。また、それも削除された。同紙編集長は、他のメディアに向かって、写真のシェアを依頼した。「これはヌードではない。表現の自由、歴史、戦争なのだ」と。

さらに、ノルウェー紙 「ダグサヴィーセンDagsavisen」は、写真の本人キム・フックに直接取材を試みた。同紙によると、キム・フックは、戦争被害の子どもたちを救援する「キム財団」を通じて、こんなふうにコメントを寄せた。

「力強いメッセージを持つ歴史的写真です。
それを、ヌードであると見る人に悲しみを覚えます。
写真を見るのはつらいですが、歴史の重要な一瞬なのです。
写真家ニック・ウトによる、この報道写真は、無実の犠牲者
にあたえる戦争の恐ろしさを示す真実の瞬間をとらえており、
強く支持します」

当事者の少女キム・フックに直接、取材してくれたおかげで、彼女があの写真の持つ意義をしっかりとらえていると知った。53歳となった彼女が、カナダに移住し、反戦運動家として活躍していることもわかった。とてもうれしかった。

今回、フェイスブックを検閲撤回に動かしたのは、ノルウェー側の、官民あわせてのすばやい連帯の力にあった、と私は思う。

The girl in the picture saddened by Facebook's focus on nudity
Facebook backs down from 'napalm girl' censorship and reinstates photo
ポルノか歴史的報道写真か
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by bekokuma321 | 2016-09-11 03:46 | ノルウェー

c0166264_2203757.jpgノルウェーの主要紙「アフテンポステン」は、フェイスブックに対して、「そのような検閲に組することはできない。報道の自由の侵害である」と、公開書簡を送った。

ベトナム戦争で、ナパーム弾爆撃を受けて逃げまどう人たちにまじって、裸のまま泣き叫びながら逃げる少女。覚えている人も多いだろうが、その写真は、世界に流されて反戦運動のシンボルにもなった。

最近、その写真を載せた記事が「アフテンポステン」に掲載され、それが、同紙のフェイスブックにも掲載された。

フェイスブックは、全裸の少女や女性の画像は載せられないとして、アフテンポステンに削除を要求するメールを送ってきた。

アフテンポステンによると、そのメールの24時間後、アフテンポステンからフェイスブックに返事をする前に、当該フェイスブックは削除された。ノルウェー首相のフェイスブックに対する批判的投稿まで削除された。

アフテンポステン側は、「フェイスブックは、ポルノグラフィーと歴史的報道写真を区別できないのか」と激しく批判。「これは深刻である。フェイスブックは巨大なメディアであり、その編集権を持つあなたMark Zuckerbergは、権力の乱用をしている」とする警告文を英語とノルウェー語で送った。その抗議文を同紙が公開。それが大きな議論を呼んでいる。

さて、当時9歳だった少女の名はキム・フック。皮膚の移植手術を数え切れないほどしたという。現在、2人の子どもの母となったキム・フックは、カナダ在住。「キム財団」を創設。戦争被害となった子どもの救済を中心に、世界で反戦活動をしている。財団ホームページを見たら、あの有名な写真もクレデット代を支払うと使用できるようになっている。

さあ、フェイスブックは、どう応えてくるか。

Dear Mark. I am writing this to inform you that I shall not comply with your requirement to remove this picture.
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by bekokuma321 | 2016-09-09 22:01 | ノルウェー

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『福祉に生きる 39 久布白落実』(高橋喜久江著、大空社)を読んだ(注1)。

久布白落実(くぶしろおちみ、1882-1972)は、公娼廃止運動を先導した矯風会の代表的運動家である。現役でがんばる売買春禁止運動のリーダー高橋喜久江さんの師でもある。

戦前、戦中、市川房枝とともに日本の女性参政権運動を牽引した指導者だが、市川房枝ほどは知られていない。

この本を読むと、久布白落実は、1882年、熊本県に生まれた(注2)。女子学院卒業後、アメリカで伝道師をしていた父のもとに行き、バークレイの神学校予科に進学した。滞米中、売春をしている移民の日本女性を見て、廃娼意識が芽生える。帰国後、廃娼運動に没頭すると同時に、国際会議や海外視察に出て国際連帯に尽力した。

たとえば、1920年、世界婦人参政権協会に矯風会代表として加入。1928年、第2回世界宣教会議に日本代表8人のうちただ1人の女性として出席。1935年には、廃娼後の女性問題やその解決の先行事例を調査するため、寄付金で渡航費を工面し、北米にわたっている。

1928年の船旅の記述には、私の大好きなノルウェーが登場する。会議はエルサレムだったが、久布白落実は日本にすぐ帰らずヨーロッパに向かう。イタリア、ジュネーブ、ロンドン、デンマーク、ノルウェー・・・。

北欧訪問の目的は、もし廃娼となったら女性たちの生活はどうしたらいいのか、福祉の充実している国々の実情を見て対策を練るためだったという。長い船旅でいっしょになった「ノルウェー人宣教師が当時の中国内乱で苦悩の心境と宣教の使命を吐露する姿にうたれ」たとある。この宣教師の妻がノルウェー滞在の案内役だったらしい。

オスロを訪問したときの記述は、

「ノルウェーでは船中の宣教師夫人の世話で国立美術館の見学のとき売春女性が描かれた画をよく見せられた。この画が人々の心を動かして1887年、ノルウェーは公娼制度の撤廃にふみきったのだと。これは帰国後、『女は歩く』を自費出版するとき口絵につかっている。」

この「売春女性が描かれた画」は、クリスチャン・クローグ作「警察医務室前のアルバーティン」に違いない(上)。

私が初めてこの絵画を見たのは1989年だ。その後、他のクローグ作品も見たが、どれも、底辺の労働者たち、働き疲れた女たちの暮らしがリアルに表現されていた。

なかでも、女性史に影響を与えたといわれるのが、この絵。どんな絵かを、拙著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店)から引用する。

c0166264_14424498.jpg「(国立女性博物館の)館内には妊娠中絶に使われた昔の黒い手術台や手術器具が置かれた部屋もある。こんな手術台が1960年代まで使われていたのだという。手術台の横の壁には、私も見たことのある有名な絵画『警察医務室前のアルバーティン』が飾られていた。ムンクに影響を与えたといわれる画家クリスチャン・クローグの作品だ。売春を決意した極貧の少女アルバーティンが、性病検査のため警察医務室に入室しようとしている絵で、本物はオスロのナショナル・ギャラリーにある。社会派作家でもあったクローグは、この絵と同時に『アルバーティン』という小説を発表し、売春婦の悲惨な暮らしを初めて世に知らしめた。しかし、小説のほうは、発表後ただちに没収されてしまった」

久布白落実は、私より60年以上も前に同じオスロで同じ絵を見たらしいーークリスチャン・クローグの絵はノルウェー人にだけでなく、日本女性にも影響を与えたのだ。

ついで、久布白落実は、ノルウェーでは、女性駆け込み施設に公費が使われていることを見抜き、寄付金だのみの日本と比べている(今の日本もあまり変わらない)。

「ある施設で同規模の東京婦人ホームの運営と比べると、ノルウェーでは1年3万6000円、国庫と地方自治体の折半で費用が分担されるのに、東京婦人ホームでは年間予算3~4000円。公金支出はなく寄付による財政である。」

さらに、久布白落実は、女性の窮状解決に対する無策を知らせるため、軍事費と比較する。

「軍艦1隻2000万円の建造費は各県に2ヶ所ずつ100ヶ所の婦人ホームが建てられ運営できるのに、と日本の現状を批判した」

治安維持法が改悪され、特高が全国に設置された時代だ。それ考えると、彼女の急進性に胸を打たれる。

ノルウェー女性の参政権獲得は1913年だ。久布白落実が訪問した1928年、すでに国にも地方にも女性議員が誕生していた。久布白落実は、充実した福祉政策をこの目で見て、女性参政権が必須だとの意を強くしたに違いない。

国際的視野から、女性の貧困や苦境をなくすには政治を女性の手で変えなければと、戦後は、国会議員に挑戦した久布白落実・・・。しかし日本の選挙は、彼女を当選させなかった。3度挑戦し、3度落選している。

彼女の固い意志は、同じ時代、秋田女性の貧困と苦境の実態を日々目にした矯風会秋田支部長の早川かい、その同志和崎ハルにも宿っていただろう。和崎ハルは、戦後初の選挙に立候補して見事当選。しかし、その後、2度挑戦し、2度落選している。

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【写真上:オスロのナショナル・ギャラリーで何年も前に買い求めたクリスチャン・クローグ作「警察医務室前のアルバーティン」の絵はがき。中:オスロ中心街にあるクリスチャン・クローグ像。下:新宿の大久保にある矯風会館】

【注1: この本は入手が不可能。貸してくださった著者の高橋喜久江さんに心から感謝申し上げます】
【注2: 久布白落実の結婚前の姓名は大久保落実。「熊本県鹿本郡米之嶽村郷原」に生まれたとある。調べたところ現在の山鹿市らしい】
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by bekokuma321 | 2016-09-09 14:53 | ノルウェー

c0166264_17161684.jpgノルウェーの国王が、木曜日、園遊会で行ったスピーチがすごいらしい。

翌日にはfacebookのシェアが100万人以上になったという。さきほどクリックしたら、277万回になっていた。

Youtubeに、NRK(ノルウェー公共放送)の英字幕付き録画が出てきたので、ハーラル国王の力強いスピーチのさわりを、私なりに訳した。

「ノルウェー人は、北方から、中部から、南方から、いや、あらゆる地域からやってきました。ノルウェー人は、アフガニスタン、パキスタン、ポーランド、スウェーデン、ソマリア、シリアからやってきた移民でもあります」

「出身はどこか、国籍はどこか、簡単には言えません。祖国とは、心がここにあると思うところです。祖国は、いつも国境の内側にあるわけではないのです」

「ノルウェー人は、女の子を愛する女の子です。男の子を愛する男の子です。そして、お互いに愛しあう男の子と女の子なのです」

「ノルウェー人は、神を信仰する人であり、アラーを信仰する人であります。全てを信じる人(汎神論)、何も信じない(無神論)人もいます」

「ノルウェー人は、グリーグ(Grieg)、ヒューゴ(Kygo)、ヘルビレス(Hellbillies)、カーリ・ブレネス(Kari Bremnes) が好きです」

「つまり、ノルウェーはあなたがたであり、私たちなのです」

「わたしの最大の夢は、お互いが助け合って、この国をさらに信頼と連帯と寛容さにあふれる国にすることです」

国王が、難民、同性愛者、イスラム教信仰者など少数派との連帯を、多数派に向かって吐露したのだ。このような国王のスピーチを聞くことのできる国。ウーンやっぱり、I Love Norway!

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▲ノルウェーの国会議事堂前で遊ぶ小学生たち。肌の色も、宗教も、さまざま・・・。
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by bekokuma321 | 2016-09-03 17:30 | ノルウェー

ノルウェーでDV殺害事件

c0166264_15197.jpg8月29日、ノルウェーの最北端キルケネスで、37歳の女性と、その12歳の息子が銃殺される事件があった。

報道によると、2人を殺害したのは女性の夫で、2人を殺害した後、自殺をはかって入院中である、と、警察が発表している。妻はタイから3年前にやってきて、ノルウェー在住資格をすでに持っている、という。

ノルウェーのDV対策は、予算といいスタッフといい日本とは比較にならないほど充実している。暴力被害者からの相談受付も24時間対応のうえ、駆け込みシェルター(クライシスセンター)も随所に設置されている。警察官へのDV研修もなされてきた。女性議員が多く、女性に対する暴力に黙ってはいない。

2011年2月、私はキルケネスの隣町を取材したことがあり、滞在中、キルケケネスにも行った。

公立図書館が町の中心部にあり、その蔵書の豊かさに目をみはった。たくさんの子どもたちが、静かに読書していた。厳寒の外とは大違い。その温かさは、室内温度にあるだけではなく、かもしだす雰囲気にもあるような気がした(注)。

その図書館の壁の目立つところに駆け込みシェルターのポスターが貼られていた(写真上)。町のシンボル「戦時下の母」像(写真下)が、シェルターのシンボルに使われていて、これなら、ノルウェー語がおぼつかない移民女性でも、危機を感じたときに察しがつくかもしれないと思った。

事件の背景には何があったのだろう。移民女性であることも、関係したのだろうか。亡くなった女性の友人知人の証言や、なによりも殺害容疑の夫からの事情聴取が待たれる。

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▲Krigsmødre(戦時下の母親)のモニュメント。赤ん坊をかかえ、毅然と前方を見つめる女性。足元に座る子どもも同じ方向を見ている。母親は裸足だ。キルケネスの広場中央にある。

Dobbeltdrapet i Kirkenes
映画『パパ、ママをぶたないで』が生まれた国ノルウェー(ノルウェーのシェルターの実態、社会的政治的背景のレポート)
絵本「パパと怒り鬼―話してごらん、だれかに―」DV(ドメスティック・バイオレンス)を子どもの視点からとらえたノルウェーの絵本

【注:「図書館大国」といわれるノルウェー。全国に散らばる図書館の全体像をつかむには、『文化を育むノルウェーの図書館』がおすすめ。Magnussenn矢部直美、吉田右子、和気尚美共著で新評論から刊行されている】
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by bekokuma321 | 2016-09-03 01:25 | ノルウェー

FEM-NEWS読書会をしたい

c0166264_2359426.jpg三井マリ子さんが主宰するこの「FEM-NEWS」は、議論百出となる政治的テーマに関する国際的情報を、詳細にリアルタイムで提供しているだけでなく、かなり過去まで遡ったリンクを貼ってあり、読み応えのあるものです。

これを議論のネタにする討論会をあちこちでできたら、と強く思います。

さいたま市で開かれた「夏のマダン」(写真上)で、在日韓国人のかたたちに、あなたが紹介していたように「ノルウェーは3年在住なら地方参政権獲得」、「物事を決める場にはクオータ制」、「国会議員選挙も地方議会選挙も比例代表制」、「地方議会も議院内閣制(フォルマンスカープ)」などは、日本でもっと真剣に議論すべきです。

c0166264_003339.jpgさきほど「フォルマンスカープ」で検索したら、すでに「北欧福祉社会は地方自治体がつくる」に解説してあることがわかりました。2011年10月22日に広報しています。これは、小さな自治体の老人ホーム訪問記(写真右)で、地方自治体が中央政府から独立して福祉政策を遂行しているという、素晴らしい報告です。

フォルマンスカープ同様、北欧福祉についても一人でも多くの人に知ってほしいです。

さて、「地方参政権の問題も含めて、選挙制度改革への関心を高めるには、どうしたらいいか」と三井さんは悩んでいるようですが、私の答えはただ一つです。あなたの人脈を通じて、全国の地方議員たちやその支援者に、FEM-NEWS読書会を開催してもらい、敢えて議論百出のテーマを選んで討論をしあうことではないでしょうか。

理解して賛同してくれる議員が出てきたら、「審議会委員の団体推薦リストは男女一名ずつとする」という条例(「男女ペア推薦の法律」:明石書店『ママは大臣パパ育児』p112)を議員提案で議会に出してもらうのです。それが通れば、行政側は、男女半々の委員を採用しやすくなります。

FEM-NEWSウオッチャーの私が相棒となって、全国の「読書会」にボランティアで飛び歩きます。「如何にしたら世直しができるか」の具体案を提示し、その筋道を伝えることで、参加者のなかから「三井マリ子メソッドの伝い手」が生まれ出てくるはずです。

読書会の呼びかけは、「FEM-NEWS」の末尾にその情報を載せさえすればいい。「パリテ」を目指す三井さんの闘いには、たくさんの人々が集い、「伝え手」になりたい人々もたくさん出てくると思います。

田口房雄(緑の党 Greens Japan 会員)
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by bekokuma321 | 2016-09-03 00:06 | ノルウェー

c0166264_2245924.jpg「選挙に向けて政策論争がキックオフ」

先週、ノルウェーからこんな見出しのニュースが届いた。2017年秋の国政選挙に向けて、8月18日、全党首が集まって討論会を行ったことを知らせていた。国政選挙は1年以上も先だから、アメリカの大統領選よりはるかに長期戦だ。

ノルウェーの国政選挙は日本でいえば衆院選だけだ。その日本の衆院選は、解散後、ほんの1カ月で選挙になり、選挙期間はわずか12日間。弾丸のようだ。

こんな短期間で、政党や候補者の政策や政治姿勢を比較検討などできるはずもない。世襲議員や前議員が有利なのは当たり前だ。女性候補など後発部隊は、有名タレント以外は当選など望めない。

そのうえ日本は、選挙中、肝心要の候補者による政策討論会は禁止されている。連呼(名前を叫び続ける)は合法だが、名前を聞くだけで候補者の政策の違いや、それが自分たちにどんな影響を及ぼすかがわかるはずはない。

そこで、ノルウェーの選挙のキックオフについて少し調べてみた。件の党首討論会は、首都オスロの南にある港町で開かれた「アーレンダール・ウィークArendal Week」という夏祭りに組み込まれた1つのプログラムだった。

アーレンダールは、オスロの南方にある人口4万人ほどの港町。「アーレンダール・ウィーク」とは、アーレンダール市あげての政治文化フォーラムのことを指す。

趣旨は、「政治、社会、産業分野の代表者たちが、市民といっしょに現在と未来の政策を語りあって、民主主義と民主主義的討論を強める」こと。

目標は3つだ。「アーレンダールが、政治的交流の場となること」、「選挙にできるだけ多くの人々がかかわるようにすること」、「政財界の代表的人物たちと市民が直に交流できるよう支援をすること」だという。 す・ば・ら・し・い!

今夏は、8月15日から20日までの1週間。港のそばの通りに約170のスタンドが立ち並び、約550ものイベントが朝から晩まで繰り広げられた。子ども向けプログラムも盛りだくさんだ。子ども記者というものもある。

記者になって首相に取材した12歳の女の子は、「私は、識字障害で悩んでいるんですが、首相がその病気だったと公開していたことを知って、首相にアドバイスをお願いしたんです。とても励まされました」との感想。それが大手新聞に載っていた。

「アーレンダール・ウィーク」のモットーは「すべての人に開かれ、すべて無料、切符も不要 Open to all - free - no tickets」。どこで何が開かれているかは、地方紙やホームページを見るとわかる。動画には、いくつかの会場で楽しそうに歩き回る子どもたちが写っていた。

スタンドは、アムネスティなど国際団体、全国公衆衛生女性組合など労働組合、右から左までの全政党、森の会など市民団体・・・。イベントは、冒頭に紹介した党首討論会や青年部長討論会、国際会議、意見が分かれる政治的テーマの討論会(例:「すべての人に働く場を」、「押し寄せる難民」)、コンサート、演劇、ヨガ、カフェ・・・。

国際会議のひとつ「北極カウンシル」は、国際機関、国会、大学などが共催していた。発言者には、アメリカ大使、ノルウェー外務副大臣や国会議員、船舶協会会長に加え、アラスカ選出の米連邦上院議員(女性)が招待された。この会議の言葉は、通訳なしの英語だった。

党首討論会には、主要7政党に加えて初めて1議席をとったばかりの緑の党の8党首全員が登壇。首相と財務大臣を含め女性党首は3人だ。難民政策から、教育、福祉、労働、医療など暮らしの問題まで、政策の違いをアピールした。大きな会場は、ほぼ満席。

c0166264_2233326.jpg日程をずらして、同じ大ホールで、党青年部部長の討論会もあった。

8政党の代表で男6人、女2人。全員20代。現役の大学生や院生で、8人中2人は現職の地方議員だ。ノルウェーの地方議員は、無給のボランティアである(大都市は例外)。職業や学業を続けながら議員職を兼務する。労働党の青年部長は、10歳のころシリアから家族と亡命してきた、オスロ大学の院生だという(注1)。

何年か前、オスロ市議(東京都議にあたる)に当選した18歳の女子高校生を取材したことがある。インドからの移民でタクシー運転手の娘だと知って、私は目を丸くした。が、じき、シリア難民が国会に登場する時が来る、そんな予感がした(注2)。

ノルウェーは、民主主義をはかる指数で世界一である(英誌「エコノミスト」のEconomic Intelligence Unit)。世界一のノルウェーは、こうして民主主義の力を養う努力をしているんだな、とその秘訣を見つけた思いだ(注3)。

オリンピックに費やされる2兆円もの予算があれば、日本でもこのようなフォーラムを、毎年、楽にやれるだろう。オリンピックでなくても、日本の政党に毎年交付される320億円という政党交付金――政治家によって飲み食い、キャバクラやSMバーに使われたり、政治活動に使わずにため込まれている、私たちの血税――を回すだけでも簡単にできる。

問題は経費ではない。老若男女すべての人たちに政治的判断力を持たせようようとするノルウェーに対して、市民にできるだけ政治的判断力を持たせまいとする日本。その違いだろう。


【写真上:アーレンダール・ウィークのプログラム冊子「未来をつくるために Former fremtiden」。下:政党青年部部長会議】

【注1:ノルウェーは、小学校から大学まで学費は無料】
【注2:ノルウェーでは、18歳以上の住民は3年間住み続けたらその地方の参政権を得る。参政権は選挙権と被選挙権。ノルウェー国籍は不要。選挙は比例代表制で、政党内議論を経て作られた候補者リストがそのまま投票用紙になる。比例代表制なので、大政党は大政党なりに、小政党は小政党なりに代表者を送れる。そのため、小さな自治体であっても、5~6政党から議員がいて、女性議員も4割ほどいる】
【注3:「アーレンダール・ウィークArendal Week」ホームページによると前年度から企画をネットで公募。今年のおおよそのイベント数は討論会200以上、セミナー80、講演会50、文化行事50。とくに子どもや若者が民主主義に関心を持てるようにするため工夫が施された、と報告されている】

Arendal week
民主主義度1位ノルウェー、23位日本

世界一民主的な国
世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位

ノルウェー地方選2015
スクール・エレクション終わる
ノルウェーの地方議会選挙
ノルウェー:市長と議会に女性を増やす秘策
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
比例制選挙がいい
北欧福祉社会は地方自治体がつくる
ノルウェー選挙:性差も肌の色も越えて


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by bekokuma321 | 2016-08-30 22:46 | ノルウェー

EUに「ノー」

6月24日、イギリスは国民投票でEUから離脱する道を選んだ。そのとたん、ポンドは急落、株は暴落、首相は交代。世界中が大騒ぎになった。

日本は昨日、年金運用で5兆円の赤字となったのは、EU離脱の影響があると、言っていた。

なぜ、イギリス国民はEU「ノー」を選んだのか。

大方のメディアが言うように、難民急増を恐れる国民の感情に乗る離脱派の作戦が功を奏したこともあるだろう。でも、私は「EUに加盟して40年。長年のEUに対する懐疑心が票になって表れた」とする『ガーディアン』紙が当たっていると思う。

イギリスは、今、ノルウェー方式をみならおうとしているという。ノルウェーは、EUに加盟していないにも関わらず、経済的に成功している国だからだ。最新調査だと、EU反対は、ノルウェー国民の74%にのぼる。

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このポスターは、ノルウェーのEU反対市民がつくったポスターだ。ノルウェー政府は加盟申請したが、このポスターのもとに集まった国民は、EU加盟を拒否した。

ポスター下方にある建物はオスロにある国会議事堂。国会を乗っ取るような巨大な木製の像は、北欧神話に出てくる女神サーガ。千里眼を持つといわれる伝説の女性だ。

実は、ノルウェーのEU反対運動は、女性たちが主導した。女たちはこう主張した。

「ノルウェーは不平等をなくすことに社会の富を使ってきた。
保育、教育、福祉など公的サービス部門を充実させた。
その結果、女性の職場が増えた。
すべての女性が無理なく外で働けるようになった。
しかしEUは、福祉分野に市場原理を導入し、公的分野を縮小させようとしている。
これでは金持ちしか、必要なサービスを受けられなくなる」

この後は、I 女のしんぶんの「叫ぶ芸術ーーポスターに見る世界の女たち」をどうぞ。

How did UK end up voting to leave theEuropean Union?

Nei til EU
How Do EU Decisions Affect Nordic Gender Equality?
EU国民投票と女性





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by bekokuma321 | 2016-08-27 21:38 | ノルウェー

大学のクオータ制

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▲女性が多いオスロ大学。大学前で電車を待つオスロ大学の学生たち

ノルウェーからの報道によると、大学のクオータ制導入が再びニュースになっているようだ。

ベルゲン大学は、心理学部の男子入学にクオータ制をとりいれると決めた。2016年、同大学心理学部を専攻した学生の84%もが女性であるからだ。

ベルゲン大学の教育学部副学部長で、健康心理学専門のオッドルン・サンダール教授は、「働く場では、男性心理学者や博士も、女性の心理学者や博士も、どちらもいることが大切なのです」と、メディアに語っている。

同様にオスロ大学も男性のクオータ制導入を決めた。教育省(日本の文科省)は、大学からの、この提案を回覧してコメントを求めている最中だ。

当局は、心理学部を希望する男性が加点をもらえる方式にするか、同じ成績の女子学生よりも、男子学生を優先的に入学させる方式にするか、どちらかを選択することになる。その締め切りは9月2日。クリスマスまでに決定される、という。

4年前にも同じテーマのニュースがあった。当時、ノルウェーのオスロ大学副学長インガ・ボスタInga Bostadは、男子学生への加算―--ジェンダーポイントKjønnspoeng―-を認めないと決定した。オスロ大学では女子学生が男子より多い学部ーー心理、医学、歯学ーーなどで議論されていて、男子が20%しかいなかった心理学部は、加算点採用を決定し、それをオスロ大学本部に提案していた。その心理学部の決定を、大学としては反対したのだった。

今回は、4年前とは異なって、心理学部のクオータ制を認めた大学本部側が、教育省に申請した。

いかなる分野であっても、できるだけ一方の性に偏らないようにすべきだ、というノルウェーの強い意志が見える。

Bergen vil kvotere inn menn til psykologistudiet
オスロ大学、男子への加算点認めず
●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第5回「クオータ制が生んだ名物教授」 
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by bekokuma321 | 2016-08-08 10:36 | ノルウェー