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ノルウェーでは、全国の高校で9月11日投票の1週間前にスクール・エレクションがある。スクール・エレクションは、9月4日(月)、5日(火)に投票が行われて、今日、6日(水)結果が発表された。

若者の投票傾向を知ることのできる絶好の機会と、メディアは大きく報道した。

ノルウェー調査データセンター(Norwegian Centre for Research Data)によると、労働党27.8%、保守党15.1%、進歩党10.4%、左派社会党10%、自由党7.4%、緑の党6.8%、中央党6.7%、赤党5.7%、キリスト教民主党3.1%。最下の棒グラフ参照(同センターWeb)。

392の高校が参加し、約19万人の高校生が校内に設けられた投票所で投票した。

実際、政党討論会を取材したヘードマルク県エルブルム高校の投票結果はどうか。労働党25.8%、左派社会党17.3%、保守党14.5%、中央党10.1%、緑の党7.9%、進歩党7.3%、赤党5.5%、リベラリスト3.8%、自由党3.4%、キリスト教民主党3.4%。

エルブルム高校は、全国に比べて、左派社会党と中央党への支持者が多い。全校932人のうち855人が投票して、投票率91.7%という高さ。生徒会主催で、強制ではないことを考えると驚くべき参加度だ。

では、高校生はどんなふうに投票をするのか。

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9月4日、エルブルム高校を訪ねた。

この高校では、政党の討論会をしたホールに入るところに投票所が設けられていた。投票ブースは町中にある投票所と同様、カーテンでしっかりと閉められて手の動きなどは外から見えない(日本ではカーテンがないため背後から動きが見える)。ブースの中には20以上の政党の候補者リストが政党ごとに積まれていた。その候補者リストが投票用紙になるのだが、実際の投票用紙とまったく同じものだった。投票箱は、数年前、実際に町の選挙で使われていたものと同じだった。

投票管理は、投票する生徒の名前を書かせる人、投票のしかたを説明する人、スタンプを押して投票箱に入れるところを確かめる人など、事務すべてが生徒のみで行われていた。

彼女たちは、1週間前に先生からの「選挙の投票の管理をしたい人はいませんか」に答えたボランティアだという。「今日、午前中、投票事務のオリエンテーションを受けた」と1人が話してくれた。

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日本の人たちにノルウェー高校生の政治参加を見せたいからと話したら、投票者の流れが途絶えたときに、投票箱を囲んでポーズをとってくれた。下の写真だ。受付はベアテ・ビョルケホーレン(最右)、投票監視はミーナ・ハーセラン・バウゲルート(最左)とヘッダ・レグスタ・フースビュイ(右から3人目)、投票用紙への押印と投票箱への投函監視はアーダ・ベルゲ(右から2人目)。みな本物の選挙権を持つ高校3年生。「教員になりたい。そのために大学に進学する」という生徒がほとんどだった。

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ノルウェー全土の400に近い高校で、高校生がこんなふうに大人顔負けの政治参加をしているのだ。

この背景には、ノルウェーでは、学校での政治活動は民主主義養成に役立つと奨励されてきたことがある。集計管理を担う文部科学省の下部機関NSDは、スクール・エレクションを、「政治的ロールプレイである。生徒たちは、実際の行動を通じて、選挙や、政党、選挙事務局について体得し、この国の政治制度がどのように動いているかを知ることになる」と意義づける。

ノルウェーの民主主義度は世界で最も高いという調査がある。高校生たちの顔を見て、この座はしばらく揺るがないだろうな、と思った。

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by bekokuma321 | 2017-09-07 06:27 | ノルウェー

ノルウェーの国政選挙は9月11日だ。投票日をひかえ、メディアスクール・エレクションだけでなく首都オスロの街並みは選挙、選挙、選挙。

投票率をあげるため、選挙の重要性を知らせるため、民主主義のため・・・涙ぐましい努力の跡をいくつか写真で紹介する。


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▲「あなたの1票を使え」と数カ国語で書かれた政党の旗。大政党から小政党までさまざまなロゴがビルの間に揺れている。洗濯物を干しているかのようだ。

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▲銀座のど真ん中ともいえる繁華街カールヨハン通りにドーンと設けられた事前投票所。

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 ▲人通りの多いバス停の横に設けられた事前投票所。

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▲国会議事堂の前に設けられた、NRKの仮設スタジオ(左の黒い建物)。隣も民間メディアのスタジオ。国会議事堂をバックに政党の政策討論会がここから毎日発信される。市民や支援者が仮設スタジオと議事堂の間の広場(手前)に集まって討論に参加する

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▲地球温暖化反対の声を選挙に反映させようと集まったデモ。カールヨハン通りから国会議事堂に到着した参加者たち。環境団体の旗に加えて、緑の党、左派社会党、自由党、赤党の旗が見えた。報道によると25000人

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▲地下鉄の出入り口に張られた労働党のポスター。党首ヨーナスが「すべての人とともに」と呼びかける

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▲地下鉄構内の広告塔に映し出される保守党のポスター。現首相の党首アーナが「首相はすべての人のために」と呼びかける

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▲地下鉄構内のポスター「選挙 私たちは投票します。あなたも投票を 9月11日」

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▲地下鉄車内の広告「9月10日、11日、オスロ市内のどこの投票所でも投票できます」

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▲スーパーで売っている人気のお菓子「期間限定商品 選挙ラバン2017  あなたはどちらに投票する? 」。赤ゼリーと青ゼリーとが別々の袋に入っている。赤は左派政権、青は右派政権を指す

【2017年9月10日更新】
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by bekokuma321 | 2017-09-05 04:34 | ノルウェー

女性議員はノルウェー国会の約4割を占める。9月11日の選挙で、多分エミリー・エンガー・メールはその一人になる。

弱冠24歳。オスロ大学法学部の単位を終え、現在法律事務所に勤務する。ヘードマルク県中央党候補リストのナンバー2だ。ちなみにノルウェーは完全比例代表制で、ほぼ全政党が男女交互に候補者を並べるため、1番が男性なら2番は女性となる。

比例代表制の候補者は、小選挙区制候補に比べてさほど忙しくないのだが、彼女は忙しそうだ。1番目は中央党党首のトリュグヴェ・マグヌス・スラグスヴォル・ ヴェーダで、彼はメディア対応や全国遊説に時間をとられて、2番目の彼女がもっぱら選挙区のさまざまな討論会に出なければならないかららしい。

ストールハマール高校のスクール・エレクションにやってくると聞いて、校内で待ち受けた。ギンガムチェックのシャツにジーンズで現れた。来るなり、テーブルセッティングをし、選挙グッズを並べ、さらに討論会で座る場所をチェックしていた。いつの間にか高校生が大勢ホールに集まった。

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スピーチがすぐ始まった。彼女は労働党と緑の党の間に座った。国会議員選挙は生まれて初めてだろうに、終始落ち着いた対応ぶりだった。

数百人を前にした1時間半の討論会を終えたばかりの彼女に質問をぶつけた。

ー政治家になろうと思ったのはどんなことからですか。
「アメリカのミシガンに留学していました。学業だけでなく、政治的活動や社会的運動にかかわっているアメリカの大学生を見て、私も学業や仕事だけでなく何か社会的なことをしたいと思ったのです」

ーでも、なぜ中央党ですか。
「中央集権に反対だからです。住んでいる人々に遠いところで人々にかかわる大事なことを決めるのは民主主義ではないと思います。それを主張しているのが中央党です」

ー中央党から声がかかったのですか。
「いいえ。アメリカから帰国してほどなく、自分の住んでいるへードマルクの中央党青年部にメールしてみました。それからとんとん拍子に事が運んで、青年部でさまざまな政治活動をするようになりました。ヘードマルク県青年部副代表もしました」

ー政治経験が少ないのでは、と思うのですが、これまで、政治活動は。
「へードマルク県中央党青年部副代表ですから、政治的活動家です。選挙前には中央党政策委員会委員もしていました。それに私はヘードマルク県の県会議員として、行政情報を身近にしています(県会議員は無給のボランティア)」

ー国会議員になって何を一番したいですか。
「地方の民主主義のために、市の合併に反対したいです。それに地方を活性化するために道路の整備をしたいと思います」

彼女は、選挙テーブルの準備、討論、質問への回答、ビラまき、をすべてたった一人でこなしていた。中央党は選挙運動にフルタイムのスタッフを何人かかかえていると聞いたが、彼女を手伝う助っ人は誰もいないのか。心細くないのか。私は心配になった。

ノルウェーに、ある時代の生活を当時のやり方でやってのける「リアリティショー」という番組がある。大勢からトーナメント形式で最後に1人生き残る。彼女はその番組で1764年の暮らしに挑戦して、見事優勝したのだという。18世紀を生き延びた女性に、高校生相手の討論会は朝飯前と見た。

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石油の新採掘か漁業・環境保護か(ノルウェー)
決闘の場はトロムソ図書館(ノルウェー)
育休候補、大学生候補が国会議員になれる国(ノルウェー)
ペン、リップクリームにコンドーム、etc(ノルウェー)
スクール・エレクションは民主主義の学校(ノルウェー)
投票者にも候補者にも優しい選挙(ノルウェー)
高校生も立候補するカネのかからない選挙 (近江真理)
選挙制度しだいでは高校生が議員になれる(田口房雄)
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
世界一民主的な国
世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位
女性議員を増やすために ~ノルウェー選挙に学ぶ~
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by bekokuma321 | 2017-09-04 02:58 | ノルウェー

「みなさん、広く全体を見ることが大事です」。テーブルに立ち上がって言ったのは緑の党だ。彼の主張は、ノルウェーの将来は、北海油田採掘をさらに拡大するのか、環境保護か、どちらを選ぶかにかかっているという。

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ストールハーマル高校で行われたスクール・エレクションの政党討論会シーンだ。

8月31日12時半。ホールには300人ぐらいいただろうか。エルブルム高校と同じく満席だった。ストールハーマル高校は、ヘードマルク県の県庁所在地ハーマル市にある実業高校。約700人がスポーツ、料理、介護、幼児教育などを学ぶ。

昨夜のNRK・TVの選挙特集は、この石油・ガス問題と環境問題だった。保守党の気候・環境大臣ヴィーダル・ヘルゲセン、緑の党スポークスパーソン、労働党の環境問題担当の3人が討論を戦わした。3人が集まったのは、なんと、はるかロフォーテン諸島のヘニングスヴァール。漁業問題と石油問題がぶつかる土地だという。漁師が使っていた倉庫なのだろうか、木造の薄暗い建物がスタジオに使われていた。暗くてよく見えないが、たくさんの人が参加している(下はNRK画像から拝借)。

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漁業問題に加えて地球環境保護という大問題と、ノルウェーに経済に安定をもたらしてきた北海油田産業。どう折り合いをつけるのか、どちらをとるのか。

石油・ガス問題では、大政党である保守党と労働党は、さらなる油田採掘を支持しているようだ。保守党は経済繁栄から、労働党は雇用確保からだ。しかし、冒頭の緑の党を筆頭に、左派社会党、中央党など左派に属する小政党は強く反対している。今、労働党は、ミニ政党との連立なしには政権をとれそうもない。となると?

ストールハーマル高校での環境問題は、緑の党の大パフォーマンスにもかかわらず、学校教育問題、移民問題、16歳に選挙権を下げる問題など若者が関心を持つテーマに押されて、盛り上がらなかった。ところが、年金党の初老紳士が「私は若い人代表です」と笑わせ、「15年以上前のことをふりかえって比較できるのは私しかいません」と語っては拍手喝采をあびた。

ともかく毎日、毎日、老若男女が、どの政党を選んだらいいかと、国をあげてとりくんでいる姿には感動を覚える。

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 ▲1時間半の政党討論に耳を傾けるストールハーマル高校の高校生

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▲政党討論会が終わると、高校生は同じフロアの横にある部屋に移って政党党員に質問や意見を交わしていた。たくさんの果物が置かれている。公的政治資金が使われているのだという
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by bekokuma321 | 2017-09-01 04:40 | ノルウェー

毎晩9時半、ノルウェーの家庭はNRKで選挙デベイトを見る。今晩は題して「首相の決闘」。NRKは日本のNHKにあたる。

現首相アーナ・ソールベルグ(保守党党首)と、元外相ヨーナス・ストーレ(労働党党首)の論争だ。次の首相にふさわしいのはどちらか。政策から私生活まで多彩な話題で1時間半続いた。

番組で真っ先に目を引いたのは、2人の討論が行われた場所だ。首都オスロのNRKスタジオではなく、北の都トロムソにある公立図書館だった。

優美な曲線の屋根と総ガラス造りの豪華な建築は、とても図書館には見えない。トロムソ市の中心にある、この図書館は、さまざまなイベントに使われ、市民の憩いの場になっているそうだ。吹き抜けの会場はどこもかしこも人、人、人。「どなたでも自由に参加できます」という呼びかけに応じてやってきた市民たちだ(写真下はNRKウエブの録画から借用)。

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国会議事堂やメディアが集中する首都オスロで番組をつくるほうが、NRKには楽だろう。でも、それではオスロ近郊の人しか参加できない。オスロの人たちと、北極圏にあるトロムソ市民では首相への質問も違ってくるだろう。

それに、話す言葉も違う。ノルウェーには大きくわけて4つの方言があるといわれていて、北部の人は北部なまりの独特の方言を使う。アクセントだけでなく単語自体が違う場合もある。トロムソのあるフィンマルク県にはサーミの人たちも住む。サーミの人たちの言語はまったく別の言語で、方言とは言えない。

討論の中身だが、番組直前、労働党支持率が下がったという世論調査が発表になったばかりだった。しかし労働党党首ヨーナス・ストーレは、「決闘」にふさわしく、移民・統合大臣の国民の分断をあおるような行動(注)をとりあげて、首相に先制攻撃をした。

参加した市民からの質問には、漁業問題や、「20年間、薬物中毒だった。治って病院から地域に戻ったが周りに友人や相談に乗ってくれる人がいない。あなたならどうしますか」という深刻なものもあった。専門家や芸能人中心の日本の選挙報道とはずいぶん異なる。

椅子席は満員のため立っている人もいたが、市民のほとんどが座っていたのに対し、首相と元外相の2人は終始立ちっぱなしだったことも印象に残る。

先週、この選挙番組は、西海岸のローエンで放送されていた。討論をする政治家とアナウンサーのバックに壮大な山とフィヨルドが広がっていた。

世界一民主主義の国は、選挙制度や選挙運動、そして選挙報道までが民主的のようだ。思い出すのは、「どこに住んでいようと、平等の権利を持つ」とうたうノルウェーの教育方針だ。

「教育はみんなのもの!子どもや若者は、どこに住んでいようと、どちらの性であろうと、どんな社会的文化的背景を持っていようと、いかなる支援を必要としていようと、平等に教育を受ける権利を持つ」

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 ▲労働党の支持率低下を報道するアフテンポステン紙(2017年8月30日)。左が労働党党首、右が首相の保守党党首


【注】極右といわれる進歩党から移民・統合大臣となっているシルヴィ・リストハウグ Sylvi Listhaugが突然スウェーデンを訪問して、またメディアの見出しを飾った。スウェーデンにある移民・難民が集まる町 Rinkebyを参考にするための視察というが、選挙に利用としているのが見え見えであり、野党はもちろん首相など与党からもひんしゅくを買った。同じ移民問題を担当するスウェーデンの大臣と会う予定だったが、スウェーデン大臣は面会をキャンセルした。(Norway minister sparks war of words with Sweden over immigration)

育休候補、大学生候補が国会議員になれる国(ノルウェー)
ペン、リップクリームにコンドーム、etc(ノルウェー)
スクール・エレクションは民主主義の学校(ノルウェー)
投票者にも候補者にも優しい選挙(ノルウェー)
政党を選ぶノルウェーの選挙
平等・公平・同権に満ちた選挙制度(ノルウェー)
トランプ効果
高校生も立候補するカネのかからない選挙 (近江真理)
選挙制度しだいでは高校生が議員になれる(田口房雄)
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
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世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位
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by bekokuma321 | 2017-08-31 03:05 | ノルウェー

スクール・エレクションは、ノルウェー全土の高校で行われる“模擬投票”だ。でも、模擬投票という日本語からは想像できないほど重要な意義を持つ。

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スクール・エレクションは、一般投票日の1週間前に全土の高校で行われる。投票が終わるとただちに学校ごとに各政党の獲得票が集計されて、さらに全土の合計が出される。それを「待ってました」とばかりメディアはいっせいに報道する。それによって、政党関係者はもちろん、大人たちも、若者がどの政党をどの程度支持しているかを把握できる、これ以上ない選挙予測となる。

c0166264_0265260.jpgまた、スクール・エレクションの政党討論会は、生徒会主催とはいえ、各党の主要候補者が出席する。

たとえば、先日のエルブルム高校の政党討論会には、ヘードマルク県の保守党1番目の候補(写真左)、労働党2番目の候補(写真右下)が出席していた。

保守党候補は、現首相の顔を描いたシャツを着て熱弁をふるい、労働党候補は、シンボルの真っ赤なシャツを身に着けて堂々たる態度で聴衆をひきつけた。

c0166264_029237.jpgヘードマルク県の議員定数は7人。過去の選挙から見ると、7人のうちわけは、労働党3人、保守党1人、中央党1人、進歩党1人、左派社会党1人だ。よほどの事がない限り、この傾向は動かない。つまり、高校生の目の前にいるスピーカーの少なくとも2人は9月から国会議員なのだ。高校生が真剣なのもわかる気がする(一番上の写真参照)。

残念ながら、期待していた2人の女性候補には会えなかった。

1人は、労働党1番目の現国会議員アネッテ・トレッテバルグステューエン(36歳)。もう1人は中央党2番目のエミリー・エンガー・メール(24歳)。

c0166264_150530.jpgアネッテ(写真左)は来日して講演をしたことがあり、日本人にもなじみのある政治家だ。彼女は、同性愛を公表しており、同性愛者の権利擁護が主な活動のひとつ。同性愛の男ともだちの精子でセックスせずに妊娠したことを公表し、この夏、出産した。現在、育児休暇中のため、「選挙活動をいっさいしていないようです」と聞いた。

選挙運動をせずに、家で子どもの面倒を見ていても、リストの1番目彼女は、この9月、確実に国会議員となる。とはいえ、へードマルク労働党が彼女に全く不満がないとはいえないようだ。政党党首は選挙の全国的顔、一方、選挙区の政党の顔は候補者リスト1番目の候補が担うのが普通だからだ。

c0166264_1522877.jpg中央党のエミリー(写真右の女性)は、中央党党首(ヘードマルク中央党1番目、写真の男性)に代わって、ヘードマルク県中を回っているという。党首はメディア出演などで超多忙であり、選挙区に手が回らないのだ。彼女は、現役の大学生。オスロ大学法学部で勉学を続ける傍ら、ヘードマルク中央党青年部副部長として頭角を現してリストの2番に登載された。中央党の人気上昇が続くと、2人当選の可能性がある。すると、史上最も若い国会議員の誕生となる。

アネッテとエミリー。どちらも、比例代表制選挙でなければ、ありえない話だ。

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 ▲ノルウェーの投票用紙。20以上の政党が候補者リストを出す。そのリストが投票用紙となる。

ペン、リップクリームにコンドーム、etc(ノルウェー)
スクール・エレクションは民主主義の学校(ノルウェー)
投票者にも候補者にも優しい選挙(ノルウェー)
政党を選ぶノルウェーの選挙
平等・公平・同権に満ちた選挙制度(ノルウェー)
トランプ効果
高校生も立候補するカネのかからない選挙 (近江真理)
選挙制度しだいでは高校生が議員になれる(田口房雄)
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
世界一民主的な国
世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位
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by bekokuma321 | 2017-08-30 00:54 | ノルウェー

ノルウェーでは、有権者は1票を政党に投じる。だから有権者は、どの政党がどんな政策を持っているかを知らなければ話にならない。一方、自分の選挙区でさえどんな候補者が出ているかを知らない人も多い。比例代表制選挙ゆえだ。

では、いったいどうやってそれぞれの政党の政策を知るのだろう。

政党は大小さまざま20以上ある。20以上のなかで国会議員を出している政党は8つ。それに地方議会に存在感を表している赤党をあわせて、9つが主な政党だ(注)。

現在ノルウェーは、保守党中心の中道右派政権だ。ノルウェーでは右派政権を「ブルジョア陣営」、左派政権を「赤緑陣営」と呼ぶ。この呼称を初めて知ったとき、金持ち連中ととられるレッテルを政党に貼っていいのか、と違和感を覚えた。でも、政党が基本的にどちらを向いているかを知るには、わかりやすい表現ではある。実際の政治はそれほど単純ではないが。

ともかく、頻繁に行われる世論調査によると、2陣営の勢力は拮抗している。左派か右派かどちらか明快でないミニ政党次第で、どちらの陣営が政権をとるかが決まるという報道もある。

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先日、スクール・エレクションでの政党討論会を紹介した。生徒会が主催する全政党の討論会だ。招待に応じて高校にやってきたのは、主要9政党を含む11政党。みな選挙区ヘードマルク県の党員だ。

高校生たちは、校内で、政党代表のスピーチに耳を傾けた。

11人は、左から右まで、ほぼ政策左寄りか右寄りかに対応して、ズラリと横一線に並んだ。上の写真を見てほしい。各人の席の前には政党シンボルが張られている。ところが、どこを探しても人物名はない。

もっとも左は赤党、次に左派社会党、労働党、中央党・・・立っているのは地方議会で躍進した緑の党。右のほうにはブルジョア陣営が並んでいる。

また校内には、ほぼ全政党の選挙ブースが所せましと設けられていて、党員たちが選挙用パンフレットを配ったり、質問に答えたりしていた。こうした情報をもとに、帰宅後、親や兄弟姉妹と話題にすることになる。親が政党員の場合は、その政党になじんでいることが多いのは日本も同じだろう。

一方、日本では、政党青年部はまったく目立たない。ノルウェーでは、政党は、政党パンフレット(中央)、政党青年部パンフレット、選挙区政党パンフレット、と少なくとも3つの機関が、それぞれ独自の情報を流す。もちろん同一政党で基本的政策は同じだ。しかしまれに、政党の中央組織と政党青年部の間で、または政党の中央本部と同じ政党の選挙区組織で異なった結論になることもある。

その背景には、政党交付金の拠出方法が日本と異なっている点がある。ノルウェーの政党交付金は、政府から、政党中央、政党青年部、政党地方組織の3つの機関に、別々に独立して拠出される。政党青年部は政府から直接送金された予算で、独自に活動を行える。

たとえばエルブルム高校内では、筆記用具、キャンデー、リップクリーム、蛍光バンド(暗い道路で光る)などを、パンフレットとともに配布していた。面白いのは、労働党のコンドームだ(下の写真、下列中央の真四角の白いパッケージ)。若者の関心を呼ぶために知恵をしぼったのだろう。

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一般には、政党からのパンフレットより、テレビや新聞がメインだ。ほぼすべてのメディアは、「2017選挙」という特集を組み、主要政党9つに焦点をあてて、さまざまな角度から政党の政策を報道している。多くのメディアは、自分の意見はどの政党に近いかの参考にするための政策クイズを設けている。Valgomatと呼ばれる。

テレビ、新聞に加え、ネットがのしてきているのは世界共通だ。しかしラジオも健在だ。NRK(日本のNHKにあたる)のラジオで「政治の15分」というシリーズがあり、それが今は「選挙の15分」に様変わり。テレビでは異なった意見を持つ複数の政治家・専門家による討論が多いが、このラジオ番組は、アナウンサーが政党党首1人にその言い分をじっくり聞く。ラジオを聴く層である50代以上の中高年向けだろう。

先日からメディアの大きな話題は、移民・難民政策だ。移民・統合問題の大臣が厳しい発言をしてはメディアの見出しを独占している(最下写真)。知人は、「非正規労働者の労働条件の改善をもっと扱うべきだ」「小さな市を合併したことによる、地方の暮らしの不便さをもっと扱うべきだ」などと不満をもらしていた。

今朝のラジオは、中央党の党首だった。前回の選挙に比べ、確実に勢力を伸ばしている。彼の発言でメディアを引き付けた話題はやはり移民・難民への対応だった。今、ノルウェーは、EU加盟国であるヨーロッパ諸国から雇用を求めてやってくる移民と、シリアやアフガニスタンなどからの難民と、2つの問題をかかえている。後者に対する法は、国際条約だ。中央党は、国際法順守は当然だが現状とマッチしなくなっていて改正が必要だと強調。さらに、地方自治における民主主義をかかげる同党は、「言語や文化を習熟させる学校教育、独立できる就職などに対応するのは市だ。市の限度超えては、受け入れは困難だ」などと発言した。

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NRK Valgomat  
Aftenposten Valgomat 
Dagbladet Valgomat 
VG Valgomat 
NRK Valg2017
Aftenposten Valg2017


【注】2017年8月29日更新。2013年の選挙で、緑の党は国会に1議席を確保した。その結果、国会に議席を有する政党は8つとなった。赤党は左派社会党よりも左に属している党であり、国会に議席はない。しかし、地方議会にかなりの議席を持つ。
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by bekokuma321 | 2017-08-29 05:41 | ノルウェー

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「私は労働党がいいと思った」
「左派社会党です」
「保守党を支持しますね」
「赤党の献身的な姿勢にひかれました」

「さきほどの政党討論会を聞いてどう思いましたか」と聞いた私への高校生たちの回答だ。

8月25日午前10時、ヘードマルク県エルブルム高校でスクール・エレクションの政党討論会があるというので行ってみた。

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スクール・エレクションは、ノルウェー全土で、高校生が選挙本番の1週間ほど前に行う、いわゆる“模擬選挙”だ。それぞれの高校で、生徒会が主催する。投票前には、全政党の候補者を招待し、政治討論会を開く。学校内で、政党の選挙キャンペーンもする。生きた政治教材そのものだ。

政治や選挙をタブー視する日本とはずいぶん違う。日本で、こんなことを許した学校の校長は首になるのではないか。高校教師をしていた私は、ノルウェーのスクール・エレクションを初めて知った時、腰がぬけそうなほど驚いた。

「エルビス」という愛称で呼ばれるこのエルブルム高校には、30カ国以上の異なった国の生徒が通う。ヒジャブやチャドル(注)をまとった女子高生も見える。

10時、階段教室に入室したら、多くの生徒で、すでにほぼ満席だった。さらに多くの生徒が入ってきた。空席はない。床に座り込む生徒、立っている生徒。投票権は18歳(高校3年生)からで、投票権を持つ人ならだれでも候補者になれる。要は、高校生の国会議員だってありうる。熱心なのもうなづける。

生徒たちの前には11政党の代表が座った(上から2枚目の写真)。向かって左から、赤党、左派社会党、労働党、中央党、緑の党、民主主義党、キリスト教民主党、自由党、保守党、進歩党、リベラル党。4、50代らしき人もいたが、ほとんどは各政党の青年部に属する20代が多いようだった。全員、国会議員候補だという。

校長がほんの一言挨拶した。彼自身、校長をしながら市議会議員(自由党)を務めている。ノルウェーでは市議会議員はみな通常の仕事をしながらのボランティアだから、よくあることだが、この選挙で彼は自由党の国会議員候補リストでトップに登載されていると聞いて、少々驚いた。

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司会役の2人の女子高生が開始の合図をした。学生議会(ユース・カウンシル)の代表だというマイケン(上写真のマイクを持つ女性)とヴィレムだ。

プログラムは、1 政党の公約発表  2 健康保健問題、狼捕獲問題、欠席率と退学の関係についての意見  3 イエス・ノーで答える質問  4 最後の提言。  

圧巻は、2の政策について発言しているときに、その意見に反対なら挙手して、いくつかの政党が反論できることだ。反論は1分で答えなければならず、時間が来たら、司会がスピーチ台をたたく。それでもやめなかったら、2回たたく。各自の発言時間が厳しく制限されていて、全員に発言の機会が与えられるようになっている。みなよく時間を守る。

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10時15分から始まった討論会は、11時15分で終了。ゾロゾロと部屋から出た生徒たちの多くは、カフェテリアに設けられている政党のブースに立ち寄ってさらに話を聞いていた。政党に質問をぶつけている人もいた。投票日である9月11日の1週間前の4日、5日がスクールエレクションの投票日だという。投票は校内で行われる。

世界一の民主主義の国を育てる土壌はこれだ! とひざをたたいた。

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投票者にも候補者にも優しい選挙(ノルウェー)
政党を選ぶノルウェーの選挙
平等・公平・同権に満ちた選挙制度(ノルウェー)
トランプ効果
高校生も立候補するカネのかからない選挙 (近江真理)
選挙制度しだいでは高校生が議員になれる(田口房雄)
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
世界一民主的な国
世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位
女性議員を増やすために ~ノルウェー選挙に学ぶ~

【注】8月26日更新した。ノルウェーの学校はブルカを禁止している。ブルカは目の部分だけ編み目状で他はすっぽりと覆い隠す女性の服装を指す。ヒジャブ(またはヒジャーブ)はスカーフ状の布で頭を覆い、顔は見せるもの。チャドルは顔は出すが全身を覆っているもの。今、連立政権の一角を担う進歩党の移民・統合大臣シルヴィ・リストハウグSylvi Listhaugが「小学校でヒジャブを禁止すべきだ」と公言して大論争になっている。エルブルム高校ではヒジャブと、チャドルの女子生徒がいた。上から4枚目の写真で右側の女子生徒は紫色のチャドルをしている。
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by bekokuma321 | 2017-08-26 07:26 | ノルウェー

民主主義度世界一といわれる国の選挙運動をこの目で確かめたくて、ノルウェーにやってきた。

ノルウェーの国政選挙は9月11日だ。だけど7月から投票ができる。一人でも多くの人に投票してもらうためには、2か月という事前投票期間も苦にならないらしい。

オスロから知人の車で北へ。ヨットが停泊する青い海を過ぎると、森、麦畑、川。美しい自然がどこまでも続く。

選挙に関するポスターや看板は1枚もない。選挙の宣伝カーもない。

「たしか70年代には政党のポスターがあったようです。今は自然環境を壊さないようにと全政党で路上に看板やポスターをはらないと決めています」と国会議員候補者の知人が言う。2時間で目的地ヘードマルク県レーナ市にたどり着いた。

国会議員候補の知人が選挙区を離れて悠々としていられるのは、比例代表制選挙だからだ。候補者個人ではなく政党を選ぶ選挙のため、個人が選挙運動をする必要などない。候補者であっても、党首以外はほぼ通常の生活をすごせる。

日本の町の風景を特徴づける選挙ポスターを思い出す。先月、福岡県北九州市で見たのは、山本幸三議員のポスター。今月初め徳島市で見たのは、後藤田正純議員のポスター。まだ衆議院議員選挙の日が決まってもいないのに、大きな字で名前の書かれた議員の顔が目にはいってきた。

レーナ市の事前投票は、市役所の隣にある文化センターの受付で行われていた。文化センターは音楽会などに使われる大劇場や、図書館、喫茶などがある、市民の憩いの場だ。

受付の右側に投票ブースが2つ設置されている(写真下)。ブースには、候補者名が印刷されたリストが政党別に並べられている。今回は17政党ある。投票者は、だれにも見られないようにカーテンを引いて、ブースに並ぶ政党の候補者リストから支持政党の1枚を取って、中身を内側にして2つ折りにする。ブースから出て、受付で身分証明書を見せて、リストにスタンプを押してもらったら、それを投票箱に入れる。とても簡単だ。

日本では、投票所に行くとまず多くの人がいる。事前投票の理由を書かされたあと、前もって郵送されたハガキを出すと、投票用紙を渡される。投票ブースに移動するが、そこにカーテンがないうえ、背後に何人か座っているため、監視されているような気になりながら、投票用紙に支持する候補者の名前を自分で書き入れる。候補者の名前を書くことを「自書式」というが、今でもこの方法をとる国は、日本しかないと聞いたことがある。

日本の選挙に比べて、ノルウェーの選挙は、候補者にも投票者にも、なんとも言えない優しさに満ちている。

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by bekokuma321 | 2017-08-25 06:38 | ノルウェー

「ヨナスよ、大惨事 だーーそう、最悪だ!」

8月14日月曜日、ノルウェー公共放送NRKは、こんな見出しで世論調査を伝えた。大惨事とは、ヨナス・ガーレ・ストーレ率いるノルウェー労働党の支持率がガックリ下がったことを指している。

労働党は27.1%だった(下グラフ、左から3番目)。対する保守党は23.8%(上グラフ、右から2番目)。労働党は、保守党を上回っているが、7月に比べて5.9%も下げたと報道されている。

ノルウェーは9月11日に投票日を控えて、選挙のニュースが多い。日本の変な選挙制度を変えたいと思ってる人には役立つと考え、また紹介する。

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    ▲NRKの結果。赤党から進歩党へと、極左から極右までほぼ政策に従って並んでいる

ノルウェーの選挙は比例代表制だから、議席数は政党の支持率にほぼ比例する。最新世論調査によると、労働党は、前内閣で連立を組んだ中央党(上グラフ、左から4番目)と左派社会党(同、左から2番目)の議席を合わせても多数派をつくれない。先月まで新政権は労働党中心になりそうだと言われていたが、あやしくなってきた

いまノルウェーは保守中道連立政権だ。保守党と進歩党(同、最右)という2党を、ミニ政党のキリスト教民主党(同、右から4番目)と自由党(同、右から3番目)2党が閣外協力をする。このままなら保守連立政権の続投かと思うが、キリスト教民主党党首は、進歩党(最右派)の政策とは相いれないと公言しており、どうもはっきりしない。

比例代表選挙は、政党を選ぶ選挙だ。政党らしさを決めるのは政策で、たとえば保守党の公約は減税だ。福祉・教育に私企業の参入を進めようとしている。それに反対するのが社会民主主義の労働党だ。ストーレ党首は、減税は非現実的だと保守党党首のアーナ・ソールバルグ首相をこきおろす。連立相手の進歩党は、難民の受け入れに厳しく、左派はなお一層強く批判をする。

さらに現政権は、行政の効率化と称して地方自治体の合併を推進してきた。それに猛反対してきたのが労働党の連立政党である中央党(以前の農民党)だ。政権をとったら合併政策をもとにもどそうとしている。

というわけで、保守党中心の保守中道政権になるか、労働党中心の左派中道政権になるか、まだわからない。

ノルウェーは政党を決める選挙だから、選挙運動の目玉は党首討論会だ。

第1回党首討論会は、8月14日夜、オスロ南方の港町アーレンダールであった。同市恒例の夏祭りに合わせて、9党代表が市内の文化会館に集合し、党首討論会に臨んだ。こちらは、いかにうまく議論できたかを競うもので、結果が数字であらわされる。プレスルームに陣取った多数の関係者が大スクリーンに映し出される討論会を見て採点するらしい。14日は、ミニ政党の左派社会党党首が最高点だった。

党首は党の顔だから超多忙なのは日本もノルウェーも同じだ。が、ノルウェーの議員候補者に日本のようなブラック企業真っ青という忙しさはない。妊娠中で体をいたわる女性候補でも、候補者リストの上位に登載されていれば、当選はできる。緑の党スポークスパーソン(この党は党首をこう呼ぶ。男女2人いる)は12月に出産を控えた女性で、彼女は「当選したら育児休業にはいる」と言っていた。

国会議員も労働者だから、他の労働者に保障されている病欠や休暇をごく自然にとる。でも、国会議員の職務は? 全然、大丈夫! 彼女が留守の間は、緑の党の次点候補が「代理議員」としてただちに国会議員職を引き受ける。ここも比例代表制のいいところだ。

どの政党に入れたらいいかわからない人にはValgomatがある。ゲーム感覚で楽しめる。しかもネットですぐできる。賛否が分かれそうな政策が並んでいて、順番に賛否の印をつけていくと、最後に「あなたは◎政党に近いです」と決めてくれる。先日やってみたら「あなたはキリスト教民主党に近いです」。思わずノルウェーの友人に話したら、彼女は「私もやってみたら、赤党ですって」。

日本だと、候補者は自分の名前を書いた巨大な看板をつけた選挙事務所を設ける。ところが、比例代表制の国では、候補者に選挙事務所はいらない。いるのは、政党のPRコーナーのみ。首都オスロは小屋が並び、選挙区によってはテントが張られる。テントはどの政党も似たようなサイズだが、政党の色で区別がつく(上のグラフの色)。党員が通り過ぎる人たちと政策論議を交わす。小屋やテントの前に置かれたテーブルには、チラシやバッジなど選挙グッズに加えて、キャンデーやクッキー、ニンジンなどおやつも置いてある。

先日、徳島県で、高級ハムが候補者から何百人もの有権者宅に宅配されたという話を聞いてきたばかりだ。ノルウェーの選挙小屋や選挙テントで置いているのは、子どもが駄菓子屋で買える10円そこそこのもの。票を金で買おうなどといういじましさとは全く次元が違う。

子どもと言えば、ノルウェーの中学高校では、校内に全党の候補者が招かれて政策論議が行われ、本番さながらの模擬投票もある。スクールエレクションという。

日本では、1票でも多く票をとった1人のみが当選する。しかも、候補者名を手書きしなければならないという世界に類を見ない変な投票方法だ。だから候補者は、名前と顔を覚えてもらうために、顔と名前が目立つポスターを選挙区中にはりまくる。顔と名前の印刷されたうちわ、ワイン、カレンダーなどを配った人もいる。候補者は宣伝カーによる連呼や、人の集まる場所に立っては連呼をしまくる。1票で落ちるかもしれない。熾烈な戦いが続く。

さらに変なのは、日本は、他国で最も当たり前の戸別訪問を禁止していることだ。さらにもっと変なのは、禁止されているにも関わらず、現職議員なら「議会報告を届けに来ました」とか言って戸別訪問をしても誰にも咎められないことだ。

こういうわけだから、日本の選挙で、候補者の政策はほとんど重視されない。「世話になった親父さんの後継ぎだから」「◎◎先生に頼まれたから」「TVでよく見るから」と1票を入れる。2011年3月11日の東北大震災後の選挙でさえ、原発政策が争点にならなかった。

私たちに代わって国の土台を決める代表を選ぶのが選挙だ。小選挙中心の日本の選挙と、比例代表制のノルウェー。どちらがいいか、答えは明らかだ。

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▲ノルウェーの投票所。他人に見られないように四方を囲まれたブースで支持政党用紙1枚をとって、投票箱にいれる

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 ▲ノルウェーの街頭での選挙運動。右側に居並ぶカラフルなテントが各政党の選挙テント

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  ▲投票日が近い週末の選挙運動はまるでお祭り騒ぎ。子どもも、中高生もたくさん参加する



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by bekokuma321 | 2017-08-19 00:23 | ノルウェー