カテゴリ:ノルウェー( 552 )

c0166264_20481693.jpg


ノルウェー・ノーベル委員会のカ―シ・クルマン・フィーべ委員長が亡くなった。まだ65歳の若さ。乳がん治療中だったと報道されている。

彼女は、1990年代初頭、ノルウェーの保守党初めての女性党首に就任した。現首相は、フィーベ委員長に次いで2人目の保守党女性党首となる。

20年以上前、フィーベ委員長が国会議員として活躍していた頃、オスロの国会議事堂まで出かけて行ってインタビューしたことがある。前髪をヘアピンで留めた女学生のようなヘア、黒のセーターにベージュのスラックス姿だった。英語よりもフランス語が得意らしかったが、私のために英語で応じてくれた。

『ママは大臣 パパ育児――ヨーロッパをゆさぶる男女平等の政治』(明石書店、1995)p216~p223から、要約して紹介する。

取材の主な目的はEU加盟問題と女性。当時、ノルウェーは、政府がEU加盟を申請していたにも関わらず、国民はEU加盟に反対だった。ノルウェーでは、国民に影響を与える重要政策は国会で決定されても、国民投票にかけることになっていた。加盟か非加盟かをめぐって、国を二分する闘いをしていた。

反対派の主導権は女性が握っていた。彼女たちは「高い福祉、高い女性の地位は、長年ノルウェー人が闘い取ってきたもの。EUは、経済競争のため加盟国に減税を強いている。減税でどこが削られるか。保育や介護など福祉分野だ」と主張した。

それに対して、EU加盟派のスポークスパーソンのカ―シ・クルマン・フィーベは、私に賛成理由を語った。

「福祉を公的負担で賄うことには賛成です。しかし、問題は、高い福祉は、経済力がなければ維持できません。ノルウェー経済を支える石油からの収入は、今後減ります。これからの経済は、国際市場へのアクセスなしには伸びません。それはEUに入ることによって強まるのです」

心からお悔やみ申し上げます。

ノーベル平和賞

[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-20 21:04 | ノルウェー

ノルウェーから、久しぶりにクオータ制に関するニュースが届いた。


報道によると、オスロ大学とベルゲン大学は、クオータ制を男性に採用するよう教育省に提案した。2017年度中に、男女平等法改正案を出すことを要望している。


大学のクオータ制は、長年議論になっていた。というのも、大学入学者は女性が多く、とりわけ心理学における男子学生の少なさが問題となっていた。たとえば、オスロ大学心理学部は、女80%、男20%、と極端に女性が多い。両性の不均衡を改正するには、男性のクオータ制を導入しかないと指摘されていた。


そこで、数年前、少なくとも30%は男性に割当てるようなクオータ制が提案された。論争が続いた。そして昨年、教育省は、男性へのクオータ制導入は、男女平等法のクオータ制の趣旨に反するとこの提案を却下した。ノルウェーの男女平等法は、男女平等と女性の地位を上げることを目的とする、と明記され、女性へのポジティブ・アクション法といえるからだ。


大学側は、時代は変わったと言い、あらためて男女平等法の改正にチャレンジした。社会のすみずみまで男女平等を行き渡らせようという、指導者たちの姿勢に感銘を受ける。



c0166264_17470063.jpg

▲オスロの港から海を見つめるアースタ・ハンステーン(1824-1908)。女性解放運動家、画家、小説家。伝記によると彼女は聖書にある女性像や家父長主義を批判する文章を新聞やチラシに数多く書いた。当時、彼女の考えは受け入れいれられず嫌がらせの対象だった。失望してアメリカに移住。9年後に帰国してからは、さらに女性解放運動に磨きがかかったと言われる。


Vil endre loven for å kvotere inn mannlige studenter
大学のクオータ制





[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-14 17:55 | ノルウェー

26日は、ノルウェーの先住民サーミ国民の日。1992年から正式にノルウェー国民の祝祭日となった。

1917
年のこの日、エルサ・ラウラ・レンベルグは、初の北欧サーミ大会を開いた。ノルウェー全土でサーミ文化祭が繰り広げられ、スウェーデン、フィンランド、ロシアも歩調を合わせる。


今年は例年とは比べものにならないほど盛大のようだ。というのも、初の北欧サーミ大会があった1917年からちょうど100年になる。

ホームページによると、26日を含む1週間はサーミ国民の週、今年いっぱいはサーミ国民の年として、フィンマルク県各地で音楽、映画祭、文化祭、講演会をはじめ、多彩な行事が続く。


さて、100年前、サーミの権利を掲げて初の北欧サーミ大会を開いたエルサ・ラウラ・レンベルグは、ノルウェーの女性史資料によると、1877年、スウェーデンと国境を接するヌールラン県の森林地帯で生まれた。


トナカイ放牧で暮らしていた両親は、彼女に高等教育を受けさせた。きわめて珍しいことだった。彼女はストックホルムに留学して産婆教育を受け、政治集会にも参加。1904年、ストックホルムで世界初のサーミ協会を創設して代表に就任。同時に、『死か生か:ラップ人の現状についての真実の言葉』と題する小冊子を出版。サーミ女性初の出版物だとされている。


この小冊子で、彼女は、サーミ民族の貧困、男性のアルコール問題、土地の収奪、子どもたちの教育を論じる。「スウェーデンの選挙権にはノルウェーにはない収入制限があるためサーミの選挙権が制限されている」とスウェーデンの選挙制度をやっつけている。


その後、結婚して再びノルウェーのヌールラン県に住み、サーミ族の権利擁護を主張。女性に選挙権がなかった時代に、女性がその権利擁護運動の先頭に立つべきだと講演をして回った。1910年には初のサーミ女性解放運動団体「サーミ女性協会」を立ち上げた。


さらに191726日、トロンハイムで、初の北欧サーミ大会を主催。エルサは開会演説をした。当時、サーミ文化や言語は消滅の危機に瀕していた。彼女は、サーミの権利擁護には「土地」と「教育」と「選挙権」が不可欠で、そのためには国境を超えた連帯が必要だと訴える。スウェーデン代表も参加した、この大会は、サーミ政治史の偉大な1ページとなった。


100年後の2017年26日、500万人を越える非サーミ人と、4万人サーミ人は、サーミ国民の日を祝った。トロンハイムの記念式典には国王や首相も参加と報道されている。

しかし、そんなサーミの英雄(正確には英雌だろうが漢字がない)エルサを、20世紀初めの新聞は「キチガイ」(ノルウェー語でSinnsykと表現した記事もあったという。




c0166264_00061966.jpg
▲フィンマルク県のヴァランゲル半島にあるネセビュー教会。このあたりはサーミ語とノルウェー語の2言語が使われる


c0166264_10324258.jpg
▲上の大きな文字vuostáがサーミ語、その下ostはノルウェー語。ともに「チーズ」という意味。フィンマルク県キルケネスのスーパー



c0166264_11371592.jpg

[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-08 00:24 | ノルウェー


c0166264_21155662.jpg「腹立たしいこと極まりない」


トランプ大統領によるイスラム7カ国旅行者の入国禁止について、こう語ったのはノルウェーの元首相だ。


キリスト教民主党のヒェル・ボンディビック元首相は、火曜日午後、国際会議に出席するためにワシントン・ダレス国際空港に降り立った。ところが空港で拘束されて、入国できたのは1時間後だった。


ヒェル・ボンディビックは、キリスト教民主党の元党首で、首相を2度務めた。現在は「オスロ・センター」という平和・民主主義・人権を擁護する独立機関の代表である。


報道によると、元首相は入国審査に外交官パスポートを見せて、「僕はノルウェーの首相でした」とも言った。すぐ、通過できると思ったという。

ところが、元首相は、中東やアフリカの国々から到着した人たちといっしょにある部屋に誘導された。そこに40分ほど留め置かれた。その後、外交官パスポートに記録された2014年のイラン渡航に関して、20分間、その目的について質された。「人権問題の会議出席のためだ」と答えたという。


「ある国の名前が目にはいると、すべてのアンテナがビビッと反応するみたいだ。まったく無用な疑いをかける」「テロの恐怖はわかるが、こんなやり方で、ある宗教の人々をまとめて、扱うべきではない」と彼は取材に答えている。


外交パスポートを保持するノルウェー元首相、キリスト教民主党の元党首、アメリカへの渡航目的はトランプ大統領も出席予定の「世界宗教家の朝食会」―――どれひとつとっても、トランプ大統領令にひっかかるはずなどない。


ひっかかったのは、ただひとつ。3年前のイラン渡航記録だけ。


ボンディビック元首相の話から、一般の人たちならどれだけ邪険に扱われるか想像できる。ましてやイスラム教の7カ国の人たちはいかばかりか。これが宗教に基づく差別でなくて何なんだ。ほんとうに胸が痛む。


Former Norway PM held at Washington airport over 2014 visit to Iran
The Oslo Center (上のボンディビック元首相写真も)
精神疾患を公表したノルウェー現職首相の思い出 (ボンディビック元首相の人となりがしのばれる記事)






[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-04 21:45 | ノルウェー

LGBTのみなさん、あなたが働くには、ノルウェーが最高!

こんな調査結果が1月27日、The Localで報道された。

差別を禁止する法律、職場の規則、住宅への公平な入居、失業率、可処分所得などを調査して、ヨーロッパ43カ国を比較した。

「これまでもLGBTに関する調査はあったが、観光や旅行で行くならどこがいいか、というものだった。今回の調査は、働くにはどこがいいかに主眼を置いた」と調査機関 Expert Market はいう。

c0166264_13393735.jpg
▲ノルウェーのオーモット教会で結婚式をあげるハッピーな2人。Synnøve Sakura Heggem牧師(中央)は、教会が同性の結婚式をあげることを認めなかった時から、一貫して、認めるべきだと運動してきた。同性カップルも教会で式をあげるられるようになったのは2016年春から。ノルウェーが同性婚を法律で認めたのは2009年1月(写真提供Synnøve Sakura Heggem)

Why Norway is the best country for LGBT workers
Norway to allow gay church weddings
ノルウェー、性自認を自己決定できる新法可決
フランス、同性婚を合法に
世界初の同性婚から10年
保育園の教材に同性愛登場
アメリカのバーモント州議会、同性婚法を可決
ノルウェー新婚姻法 追記
ノルウェー新婚姻法
[PR]
by bekokuma321 | 2017-01-31 13:48 | ノルウェー

ノルウェーは、今年も世界一の民主主義国に輝いた。民主主義インデックスと呼ばれる指標で、上位にはノルウェーをトップに北欧諸国が並ぶ。

c0166264_19222320.jpg


イギリスのエコノミスト誌の調査機関 Economist Intelligence Unit による調査。棒グラフ作成はFEM-NEWS。

調査は、世界167カ国を、5つのカテゴリー別にいくつかの項目を10点満点で採点する。総合得点にしたがって、「完全な民主主義」「不十分な民主主義」「混成政治体制」「独裁体制」の4つにクラス分けする。

日本は、「不十分な民主主義」クラスの仲間だ。しかし、前年の23位より順位をあげて20位となった。日々報道される政治ニュースから、20位は高すぎるのではないか、と私は思う。

噂の「アメリカ ファースト」の国 USAも日本と同じ、「不十分な民主主義」クラス入りとなった。日本とほぼ同じ得点で20位から21位に落ちた。

5つのカテゴリーの質問を簡単に和訳する。

① 選挙過程と多元主義 electoral process and pluralism:
「国会議員選挙、首相選挙、地方議会選挙が自由に公平に行われているか」「政党の政治資金の出し入れは透明であるか、かつ一般に受容されているか」など12項目

② 政治機能 functioning of government:
「自由選挙で選出された代表が政策立案にたずさわっているか」「国会が、他の行政機関よりも上位にある最高の議決機関であるか」など14項目

③ 政治参加 political participation:
「投票率」「少数民族や少数派があげた声が政策過程に反映されるか」「国会議員における女性の割合」「政党や政治団体への参加率」など9項目

④ 政治文化 political culture:
「安定した機能的な民主主義を支えることに世論は合意しているか」「議会や選挙を無視するような強いリーダー像を望んでいるか(筆者注:望む文化だと減点)」など8項目

⑤ 市民的自由 civil liberties:
「インターネットや新聞を含むメディアが政治権力に支配されないか」「労働組合を自由に組織化できるか」「異なる政治的意見が公開で自由に議論されているか」など17項目

c0166264_19233217.jpg
 ▲ノルウェーの国政選挙風景。市民が集まるマーケット通りにテントが並ぶ。そのテントが政党の選挙事務所。テント前で政策論争が行われる。比例代表制選挙であり、有権者は政党を選ぶため、どの政党も政策の違いを鮮明に出す。日本のような宣伝カーやスピーカーでの連呼はない。供託金という概念すらない。また候補者にはただの1円もかからない。

トランプ効果
高校生も立候補するカネのかからない選挙
選挙制度しだいでは高校生が議員になれる
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
世界一民主的な国
世界一民主主義の国はノルウェー、日本は22位
[PR]
by bekokuma321 | 2017-01-28 19:41 | ノルウェー

c0166264_3103788.jpg12月7日、京都の丸太町まで出かけて行って三井マリ子さんの講演会を聞いた。

会場となったハートピア京都に早めに到着したので、回りを見ると、精神の病を持つ人への偏見をなくそうという“シルバーリボンキャンペーン“のグッズや、小物、漬物、コーヒーなどが販売されていた。聞けば、主催をした、精神にハンディを持つ人たちが生きやすい社会を目指すボランティア団体「風のリンケージ」の人たちの活動の一環だという。

三井マリ子さんは、「こころのバリアフリーをめざして:ハンディをハンディと感じさせない社会へ」という講演をした。

「バリアフリー」を体現している社会だと三井さんが考えるノルウェーで撮影した写真を見せながらハンディを抱える人がハンディを感ぜずに暮らすために必要なサポートシステムを紹介していく。

三井さんは、ハンディをハンディと感じさせない社会にするには、サポートシステムも必要だが、差別・選別・決めつけをしない価値観を多くの人々が持つことではないかという。では、その価値観は、ノルウェーでは、どのようにして醸成されるのか。

重要なのは教育だと三井さんは言い、その基本は、小学校から大学まで無償であることだと強調した。ノルウェーの教育法では、男であるか女であるかを問わず、ハンディのあるなしにかかわらず、どこの出身であろうと、どんなに障碍を持っていようと、誰もが公平・平等に無料で、同じ教育を受ける権利があるとされている。

だから、ノルウェーに「支援学級」「養護学校」は存在しない。ハンディを持つ子と持たない子を分けることなく、同じ学校で、同じ教室で、皆が一緒に授業を受けるのだという。それぞれのハンディに必要なサポートは補助教員がつくことで、他の生徒たちといっしょに学校生活を過ごす。

さらに小学校は、生徒にテストで選別することはなく、通信簿というものがないのだという。高校教師だった三井さんは、ノルウェーのこの選別しない教育を初めて知ったとき驚いたらしいが、私も本当に驚いた。

初等教育での、公平・平等な体験が、差別・選別・決めつけはいけないという価値感を育成していき、その後のハンディを取り除く政策への税金投入を是とする人々を増やしているのではないか、と三井さんは言う。

誰も、長い人生で何度かハンディに出会う。

生まれた時から心身に重いハンディを持つ子ども、シングルマザーになった母親、妊娠・出産した大学生、うつ病を発症した首相、一人で暮らせなくなった高齢者などなど。5人の子どもの母親でありフルタイムで仕事をする女性は、出産のたびに「産休・育休」を取るわけだが、「またか、などと職場で嫌みを言われたりしないか」と三井さんが尋ねたら、意味が理解できないようだったという。三井さんは、「育休は男性社員もとるし、当然の権利ですから」と言われたそうだ。

最後に、ノルウェーの市議会議員の写真を見せて、それぞれの職業を三井さんは示した(ノルウェーの地方議員は通常の仕事や学業を続けながらの無給ボランティア)。その職業の多彩さだけでなく、看護師、教員、ケアセンター施設職員など、人の世話に関する職業が多いこと。

手厚い福祉政策を制度化して、予算をつけていけるのは議員だ。バリアフリーの実現のためには、「ハンディをハンディと感じさせない社会」をつくろうと考える議員が議会にいなければいけない、と三井さんは語った。三井講演の締めは、やっぱり選挙だ! 選挙はチャンス! そう思うと、選挙もまた楽し、である。

大きく違うノルウェーと日本だが、「ハンディをハンディと感じさせない社会」を目指し、前を向いて進んでいこう!という気になった。

岡田 ふさ子(さみどりの会* 事務局)
c0166264_15134969.jpg
(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。さみどりの会ホームページは選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイト。裁判は2015年11月和解で終わった


c0166264_3163494.jpg
 ▲1位ノルウェー、最下位日本。公的教育への支出比較(OECD)[三井講演パワーポイントデ―タ]

子どもたちがはぐくむ平等と包括教育
ダウン症の人には「何でもやれる能力がある」
ノルウェーの「オープンネス賞」
お金がなくても、ノルウェーになら留学できそう
精神疾患を公表したノルウェー現職首相の思い出
[PR]
by bekokuma321 | 2016-12-12 03:23 | ノルウェー

c0166264_17343676.jpg12月6日、ノルウェーで「ベスト清掃員賞」という珍しい賞の授与式が行われた。

ノーベル平和賞とは違って知る人はほとんどいないと思われるので、かいつまんで紹介する。

2016年のベスト清掃員賞は、メルフス市のシッセル・シァイ(写真中央)に授与された。市議会場で表彰された彼女は「感動で涙を流した」と報道されている。

授与者は、組合員35万人を擁する公務員労働組合(Fagforbundet)。ノルウェー連合LOの傘下にある。その公務員労働組合が、清掃労働組合員3万人によびかけ、今年は、全国から推薦された候補者80人のなかから厳選された。

シッセル・シァイの受賞理由を要訳する。

彼女は、1990年から清掃業務を始め、2000年からトロンデラ―グというノルウェー中部地域にあるメルフス市の公務員となった。今では、60人の清掃員をまとめて、メルフス市の清掃業務をけん引するスーパー清掃員だ。

彼女は、業務を的確に遂行しているだけでなく、同僚への連帯意識が高く、見習いのひとたちの訓練・教育にも卓越しており、プロの仕事としての清掃業務に対して愛情と関心を寄せていて、それが職場環境を向上させ、市全体に貢献している、と高い評価を受けた。

c0166264_23492224.jpgこの賞は、誰がどんな趣旨でいつから始めたか不明だが、多くの清掃業者の激励になっていることは確かだ。清掃業務は、圧倒的に女性が多く、移民が就きやすい職種である。他の職種に比べて平均年収が低いため、労働組合Fagforbundetは、長年、「同一価値労働同一賃金」を掲げて闘ってきている。

清掃をしてくれる人がいるから、清潔で気分のいい環境で働ける。いい環境は仕事の効率をあげる。でも、つい掃除をしてくれる人の存在を忘れてしまいがちだ。そんなひとりである私も、このニュースにガツンときた。

おめでとう! シッセル・シァイ!

Glad og overrasket årets renholder
Fagforbundet

【写真上:Fagforbundetの記事より。 下:2016年の清掃員賞候補者募集のパンフレットより】
[PR]
by bekokuma321 | 2016-12-10 17:51 | ノルウェー

今年のソニア賞は、トロンハイム市のイーラ小学校が受賞した。

ソニア賞とはノルウェーのソニア王妃が授与する教育賞。ノルウェー全土の小中高から、平等と包括性(equality and inclusive)にすぐれた活動をしているとみなされた1校が選ばれる。

トロンハイム市立イーラ小学校は、1770年に創設された。1年生から7年生まで全校生徒425人。その20%が移民などマイノリティ。生徒たちの母言語は、なんと25にのぼる。

11月29日の授与式にはソニア王妃が出席した。王妃は、式典だけでなく、イーラ小学校の授業にも参加した。ノルウェーのニュース動画や写真(ベーゲーVG、2016.11.30)は、王妃を迎える、生徒たちののびやかな姿を伝えている。

6年生の「料理と健康のクラス」に王妃が入室する。王妃のそばには案内役の生徒会会長がいる。その少し後ろに校長、さらにもっと後に市長(頭しか見えない)とソニア賞選考委員会代表が見える。クラスの先生は見えない。生徒が主人公であることは一目瞭然だ。

王妃から「私もこの学校に入れるかしら?」と聞かれて、生徒たちは「もちろん」。すると王妃は「大人でもいいの?」。すかさず、再び「もちろん!」。

「新入生受け入れクラス」という、生徒同士で教え合うグループの存在も、ユニークだ。移民の子どもたちが、学校生活にとけこめるようにするために設けられた。「新入生受け入れクラス」で教えるのは、ソマリアからの移民の小学生だ。彼女はノルウェーに来てわずか4年しかたっていないが、ノルウェー語にも学校生活にも慣れて、今ではノルウェー語を理解できない移民の新入生に教える側だという。隣にはシリアとベトナムから来た生徒が座っている。

さらに重要な点は、教員にも移民出身がいることだ。王妃が、ベールを被った女性教員2人とあいさつをしている写真もある。

ソニア賞選考委員会の文書によると、イーラ小学校のすばらしさは、マイノリティの生徒を進んで受け入れているだけでなく、マイノリティの生徒たちが「ここは安心だ」と思えるような具体策があり、長年にわたって学校ぐるみーー生徒、教員、職員、保護者ーーでとりくまれていることだ。

「イ―ラ、世界の中心」と名づけられた文化祭では、1週間、生徒中心に多彩な文化・芸術が咲き誇る。加えて、対話を重視する、学校独自の「いじめ対策・行動計画」も高く評価された。

強調したいのは、こうした活動の決定から実行のすべてに生徒会が深くかかわっていて、それこそが「民主主義の基本である」と評価されたことだ。

ちなみにノルウェーの生徒会組織は、生徒に影響を及ぼす環境に関して教員や保護者の組織とともに、主体的に関わる。高校生になると、生徒会は県議会に提案し議会で意見を述べる権利を持つ(教育法11条)。そもそも、学校教育の目標は、「民主主義、平等、科学的思考を促進するため」とされている(教育法1条)。

ソニア賞の賞金は25万クローネ(約340万円)と絵画。だけど、イーラ小学校の生み出す「平等や包括の精神」は、クローネをいくら積んでも測れないほどの値打ちがある、と私は思う。

Dronning Sonja om flyktninger: – Viktig å vise raushet
Dronning Sonjas skolepris til Ila skole
Want to apply
ノルウェー国王のスピーチ録画、277万回再生される
ダウン症の人には「何でもやれる能力がある」
映画『パパ、ママをぶたないで』が生まれた国ノルウェー

【追記】大事なことを書き忘れていた。ノルウェーの小学校には、始業前と放課後に学童保育が完備されている。ソニア賞選考委員会は、学童保育所の「平等や包括の精神」をも評価して、ベストと決めた。

c0166264_18565846.jpg
 ▲トロンハイムの夏祭りを楽しむ市民や観光客。

c0166264_23232958.jpg
 ▲トロンハイムの風景。大きな川が流れていて、カヌーをこいでいる人が見える。

[PR]
by bekokuma321 | 2016-12-01 19:06 | ノルウェー

トランプ効果

アメリカの大統領選は、トランプ候補の当選に終わった。実はクリントン候補が180万票ほど多く取った、にもかかわらず。

選挙制度のせいである。各州で1票でも多くとったほうに選挙人全員が割り当てられるため、トランプの選挙人は300人以上。過半数270人をはるかに越える。たとえば、ある州でトランプ50.1%、クリントン49.9%だったとすると、その州の全ての選挙人は、トランプに回って、クリントンには1人も行かない。

死に票がごっそり出る選挙制度だ。無慈悲にも、「勝者総取り方式 Winner take all」と呼ばれているらしい。

選挙制度が歪んでいる上に、アメリカでは、投票集計に何か問題があったのではないかという疑いが浮上している。ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州の3州で、票の数え直しの要求があり、実際、ある州では再集計が行われているという。

c0166264_20362446.jpg一方、トランプ候補の女性差別、人種差別、イスラム差別、同性愛差別に対して、反トランプ・デモが続けられている。11月8日だけで、全米30市、16大学で大きなデモがあった(Wikipedia)。アメリカ国外にも広がっている。

おもしろいのは、北欧ノルウェーだ。

大統領選の結果がわかった11月8日、ノルウェー労働党はただちにデモをした。スローガンは、こうだ。

「今朝のアメリカの選挙にがっかりしているあなた。来年の9月12日はがっかりしないように」

「投票日まで300日。新しい政府に変えよう」

トランプ当選のような悪夢をみたくなかったら、選挙で態度を示そう! なるほど「民主主義度、世界一の国」の国民は考えることが違う。

このデモに呼応するかのように、労働党を先頭にほぼすべての左派政党で党員数が伸びていると、報道されている。現在ノルウェーは保守党を軸とする右派政権であり、労働党は野党だが、今、選挙をしたら、左派92議席、右派72議席と、左派中道政権に戻る。トランプ効果だ。

ここで強調したいのは、ノルウェーには解散がないことだ。国政選挙は4年ごと。9月の月曜日と定められている。選挙のある年の前年暮れには政党が候補者を決めて、メディアで公開される。そう、ちょうど今頃、来秋の選挙の候補者が決まる

9月の選挙では、投票者は政党を選ぶ。だから、候補者個人が、顔や名前を売ったりする必要は全くない。これから9月まで300日。その間、じっくりと時間をかけて、政策を伝えては論争をして、党員を獲得する。これがノルウェーの選挙運動だ。もちろん、選挙期間はない。こういう選挙だから、育児休業中の女性も当選できる。

日本は、小選挙区制という死に票の多い選挙であるうえ、選挙期間が驚くほど短い。それに首相に解散権があるため、選挙日程はギリギリまでわからない。突然の解散・短期決戦となると、現職が有利なのは目に見えている。新人ーーとりわけ女性には新人が多いーーは、有名タレントか世襲でない限りほぼ絶望的だ。

日本の女性の国会議員数は世界で最低ランクだが、この制度が続く限り、女性議員を増やすことは、これまた絶望的だ。

制度を変えるのは容易ではない。でも、イギリスを除く多くのヨーロッパ諸国は、比例代表制に移行している。ノルウェーは、100年ほど前に小選挙区制を捨てて比例代表制にした。元祖小選挙区の国イギリスでも小選挙区制への不満がわき起こっているという。


c0166264_2114393.jpg
▲ノルウェー国会の前で遊ぶ小学生

豊かさとは
世界一民主的な国
イギリス6割が選挙制度改革に賛成
Emigrate now - to Ringerike(「ノルウェー自治体へ移民を」と、米大統領選挙後の移住希望者を勧誘する緊急サイト。アメリカ人とりわけノルウェー系アメリカ人に呼びかけている)
[PR]
by bekokuma321 | 2016-11-26 21:47 | ノルウェー