カテゴリ:ノルウェー( 599 )

c0166264_22265574.jpgノルウェーでは、昨秋の国会議員選挙後、4カ月を経て、1月17日、新内閣が誕生した。

保守党党首のソルベイグ(大使館ではソールバルグ)内閣は、国王の認証式を終えて、王宮前でラインアップ。恒例とはいえ、外は零下だ。バリバリに凍った地面と、寒い空の下での国民へのあいさつ。動画を見ながら、「さすがバイキングの末裔だなあ」と感心した。

EU関係省がなくなり、新しく高齢者省ができた。

首相を含む閣僚20人の、半数にあたる10人は保守党から、7人は進歩党から、3人は今回初めて連立にはいった自由党から入閣した。

女性は10人、ちょうど半数だ。1986年以来、常に一方の性(ジェンダー)は60%から40%となっていて、最近は男女半々のことが多いようだ。

c0166264_22401879.jpgジェンダーよりも、この数か月間、セクシュアルに関する問題が注目されている。#MeeToo運動により、性的嫌がらせが告発され続け、政治家の加害事件も公にされたきた。野党の労働党副党首は、過去のセクハラをマスコミで連日取りざたされて、謝罪し、辞任した。

そして、メディアの矛先は、連立政権を組む3党、保守党、進歩党、自由党に属する議員に。

報道によると、文化大臣に就任する自由党党首のトリーネ・シェイ・グランデ(写真)は、王宮に行く直前まで、NRK(日本のNHK)から、「10年前の党内における男性への性的問題の噂」について追及にあっていた。

政権3与党の党首全て女性(ノルウェー)
Trine Skei Grande til Aftenposten: – Jeg er ingen overgriper
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by bekokuma321 | 2018-01-18 22:45 | ノルウェー

c0166264_20125217.jpgノルウェーの報道によると、1月14日(日)、ノルウェーの新政権がまとまった。9月11日の選挙以来、4カ月の長き月日をかけての結論だ。

保守党を中心に、進歩党(極右と呼ばれることが多い)、自由党(保守党同様19世紀に創設されたノルウェー最古の政党)の保守中道3党の連立となる。

しかし、依然として、少数与党のため、法制度の国会通過には、キリスト教民主党の賛成を得る必要がある。キリスト教民主党は、選挙前から、難民政策などを中心に「進歩党とは政策の違いが大きく、共闘はできない」と公言してきた。

というわけで、連立を組む3政党の党首は、たまたま全員女性となった。右上写真は、保守党ホームページから拝借した。左からシーヴ・イェンセン(進歩党党首)、エルナ・ソルベイグ(保守党党首)、トリーネ・シェイ・グランデ(自由党党首)。

ノルウェー語ENIGHETは「合意」。3政党が政策合意に達したという意味だろう。ロフォーテン諸島付近の油田採掘をめぐっては、保守党・進歩党側が、油田開発反対を掲げる自由党に大幅譲歩をしたとされている。

ついでに、首相、財務大臣、外務大臣の閣僚3大ポストも女性が占める。さらに、経団連にあたるNHOの会長も女性が就任している。主に政界分野とはいえ、国のかじ取りが女性の腕にかかっていることを見るのは、なんとも壮観だ。

とはいえ、ノルウェーの女性たちは、「まだまだ男女平等ではない、セクハラ蔓延を見よ」と闘いの手を休めてはいないようだ。

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▲昨年秋の選挙当日、記者会見に臨む保守中道4政党。左から保守党、進歩党、キリスト教民主党、自由党

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▲上と同じ記者会見の終了時。3党がまとまり、キリスト教民主党党首は別の方向へ

Norway's Liberals to join Conservative-led government
Norway confirms new minority coalition government after negotiations
ノルウェー労働党党首セクハラを語る
ノルウェー初の女性外務大臣
Why Norwegians Aren't Moving to the U.S.
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by bekokuma321 | 2018-01-16 20:24 | ノルウェー

c0166264_20234732.jpgアメリカのトランプ大統領の人種差別発言が、メディアに大激震を起こしている。

木曜日、ホワイトハウスの会議室で、トランプ大統領はこう発言したと報道されている。

「なんで、ハイチやエルサルバドルやアフリカの国のような Shithole countriesから移民を受け入れなければならないんだ。ノルウェーのような国の人たちには、もっと来てほしい」

Shitholeーーこれほど下劣な言葉はあまり他にないと思う。意味はあなたが調べてほしい。

ルイジアナ州選出のセドリック・リッチモンド議員は「トランプ大統領の、『メイク・アメリカ・ファースト・アゲイン』は、『メイク・アメリカ・ホワイト・アゲイン』にすぎない」とただちに批判した。党を超えて批判が上がっているが、このコメントが私は最も的を射ていると思う。

さて突然、トランプの口からノルウェーが出てきたのは、なぜか。実は、前日の水曜日、彼はノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相(保守党)の訪問を受けて会談をしたばかりだったという。ノルウェー・メディアはトップ会談をトップ記事で報道しても、世界のメディアは、小国ノルウェーの首相のアメリカ大統領もう出に関心は薄かったようだ。ところがトランプの人種差別発言で初めて、前日のノルウェー首相会談が注目された。

ドナルド・トランプが望んでも、ノルウェー人はアメリカに移住はしたくないだろう。

ノルウェーは、男女平等指数でアイスランドに次いで世界2位民主主義度指数で世界1位、国連の最新発表で世界で最も幸福な国だ。

国会議員の41%が女性。首相、財務大臣、外務大臣の3大ポストを女性が占め、連立政権の2政党の党首は2人とも女性(注)。希望するすべての子どもは保育園に入れ、小学校から大学院まで教育費はすべて無料、医療も無料、一人暮らしの高齢者も住み慣れた町で必要なケアを受けて暮らせる。

昨年9月、ノルウェー国会議員選挙を取材した。その時、会ったニルス・クリステン・サントルーエン(Nils Kristen Sandtrøen)は、労働党から当選した。彼は、高校卒業後アメリカのアラスカの大学に留学したときの経験を、メディアにこう語っていた。

「アラスカは貧富の差が大きく、生きることに不安を抱いている人が多かった。ふるさとのノルウェーは、質の高い公立学校、だれもが楽しめる文化やスポーツ施設などがあり、貧富の格差が少ないことを認識した。格差の少なさが信頼しあえる社会をつくるとするノルウェーの価値観は、闘いとらねばならないものだと思う」


Trump derides protections for immigrants from ‘shithole’ countries
The happiest country on earth
World Happiness Report 2017


【上の写真は、ノルウェー紙VGに掲載された、ノルウェー首相のアメリカ大統領訪問のイラスト。「昨日は自由党の男性議員と会った。(トランプも)人なんだから」とエルナがつぶやく。Ernas hemmelige forhold
【注:少数政権のため、自由党が閣内に入る見込みで協議中。自由党も女性党首なので、新連立政権を構成する党首3人がすべて女性となる】
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by bekokuma321 | 2018-01-12 20:34 | ノルウェー

映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力から端を発した#Meetoo(私も)運動は、ノルウェー社会を揺さぶった。

ブルントラント前首相もセクシャルハラスメント体験を告発したことは既報のとおりだ。

ノルウェー最大政党の労働党の女性たちが、過去の被害体験を訴えた。しかも、被害を言っても真剣にとりあってもらえなかったと言った。加害者は労働党のナンバーツーのトロン・ギスケ(51歳、既婚)。ストルテンベルグ内閣で教育調査大臣、文化教会大臣などを歴任した人物だ。

その彼が、過去に青年部の若い女性たちにセクハラをしたというのだ。彼は、現在、病欠をとっているが、不適切な行為だったと謝罪して(行為の一部は認めていない)、党の要職や国会の重要ポストの辞任となった。

報道によると、労働党は、会議で話し合った末、党首のヨーナス・ガール・ストーレJonas Gahr Støre(元外務大臣)は、次のような発表をした。

「私たちが知っている事実は、ギスケの行いは私たちの法規定や価値に沿っていないということです。ギスケと彼を訴えている若い女性たちの間には、権力ならびに年齢の差があることにとくに驚かされました」

「自分も他の政党のリーダーたちも、こうした問題にもっと注意を向けるべきです。確信がもてないからということで、より真剣に探ることをしてこなかった。私自身も、私の前任者(ストルテンベルグ首相も含めて)も、他の政党のリーダーたちもです」

セクハラを個人的な問題とせず、政党という組織全体の重要問題としてとらえようという姿勢が、にじみ出ている。

その背景には、第一に、勇気を出して告発した女性党員や、その発言を信じて「ギスケは辞任すべきだ」と第一声をあげた女性幹部らの存在がある。第二に、セクシャルハラスメント問題を真正面からとりあげ、問題のありかを掘りさげ、「まだやるの」というくらい継続して報道してきた、マスメディアの存在がある。

男女平等のトップランナーといわれる国ノルウェーでも、多くの女性たちが、職場で学校でセクシャルハラスメントにあっている。いわんや、日本では、”浜の真砂はつきるとも…”だろう。

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 ▲ノルウェーの主要政党党首(リーダー)たち。ヨーナス・ガール・ストーレ労働党党首は左から5番目(ノルウェー国会、2017年9月)

Norway Labour deputy leader resigns amid harassment claims
Støre was scolded by Stenseng
Jonas Gahr Støre med oppsiktsvekkende Trond Giske-spark til Jens Stoltenberg
Arbeiderpartiet og Giske-saken
Jonas Gahr Støre: - De som vil så splittelse, vil ikke lykkes
Ap-leder Jonas Gahr Støre ut mot lekkasjer om splid mellom partitopper.

Kilder til VG: Giske går av som nestleder etter gjentatt press fra Støre
Labour figures demand deputy leader’s resignation after harassment controversy
セックス同意法(スウェーデン)
ノルウェーDV予算をめぐる攻防
詩織さんを応援します
詩織さんの告発
支配者が使う五つの手口
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by bekokuma321 | 2018-01-12 00:06 | ノルウェー

平和、女性解放、連帯ーー古くて新しい世界的テーマ。寝ても覚めても私の目に飛び込んでくるように、寝室に飾ってある。

ポスターは『I女のしんぶん』新年号に掲載された。『I女のしんぶん』は1962年に結成された差別と戦争のない社会をつくるための定期刊行物。今こそ応援したい。ぜひ購読を。申し込みはこちら Email info@ijosei.jp Tel 03-3816-1862  Fax 03-3816-1824。

世界のポスターについては、Web「叫ぶ芸術:ポスターに見る世界の女たち」サイトで、ポスター画像や解説も読める。

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by bekokuma321 | 2018-01-10 10:16 | ノルウェー

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1月5日、朝日新聞は「クオータ制」をわかりやすく解説していた。題して「(いちからわかる!)日弁連も始める『クオータ制』って?」

昨年12月8日の日弁連臨時総会で決まった副会長のうち2人は女性にするという「クオータ制」記事(河原理子記者)のフォローアップだ。

これを機に、世界の国々に影響を与えてきた「クオータ制」の産みの母ベリット・オースに心から敬意を表したい。ベリット・オースは、オスロ大学名誉教授。左派社会党初代党首、アスケル市副市長、市議会議員、国会議員を歴任した、卓越した指導者だ。2003年、来日して、大阪府豊中市男女共同参画推進センター「すてっぷ」や、名古屋市、高知市、武生市で講演をしたこともある。

1980年代、私はノルウェーでクオータ制を初めて知った。「これぞ女性を政界に増やす秘策」とひざをたたいた。日本でも、と翻訳・紹介し、何十もの記事を書き、講演しまくった。何年間かで日本でも導入しようと…。今思えばなんと無謀だったことか。赤面してしまう。

「クオータ制」という日本語に決めるまでは悩んだ。ノルウェー語ではKvote。英語にするとQuota。日本語では「割り当て」だが、どうもしっくりこない。発音をカタカナして紹介したほうがよさそうだ。でも、中学英語にあるクオーター(4分の1)と間違えやすい。Quotaだけでなく、Quota systemとセットで訳したほうがいいのでは。発音をカタカナにするとクオウタか、クウォータか、クォータか。ノルウェー王国大使館広報官の方々と、ああでもない、こうでもないと、頭をひねった。

あれから30年。ようやく日本でも普通に「クオータ制」が話題に上るようになった。

ベリット・オースは、1973年、民主社会党(現在の左派社会党の前身)党首だったとき、自党にクオータ制を導入した。選挙の候補者の半数を女性にしたのだ。「50%クオータ」だった。クオータ制を政策決定に女性を増やす策として使ったのは、これが世界初のことだった。

ノルウェーでも、クオータ制の道は平たんではなかった。その歴史は、『ノルウェーを変えた髭のノラ:男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)に詳しい。あらましは●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第2回でも読める。

彼女の実践した政界におけるクオータ制は、男性の育児参加や、教育界、経済界に広がり、さらに国連やEU諸国に波及していった。関心のある方は、右の「タグ欄」から「クオータ制」をクリックしてどうぞ。

【写真:90歳近くになっても女性解放の炎を絶やさないベリット・オース。ノルウェーのアスケル市自宅にて】
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by bekokuma321 | 2018-01-07 22:11 | ノルウェー

c0166264_0395776.jpg12月11日から、ノルウェーの国会議員アウドゥン・リースバッケンが、3か月の病気休暇にはいると、報道された。彼は、野党の左派社会党党首であり、元子ども・平等・社会大臣。

ノルウェーでは、他の労働者同様、国会議員が休暇を取ることは珍しくない。

でも、3か月も休暇をとって、国民の代表としての職務は? ただちに代理議員がバトンタッチするので、まったく心配ない。

最近、日本でも議員の育児休業をめぐって代理議員の話題がメディアに出た。そこで、あらためてノルウェーの代理議員制度をふりかえってみたい。

ノルウェーは比例代表制で、選挙区(=県)から複数の議員が選ばれる。代理議員制度の土台には比例代表制があるので、ここはしっかりおさえたい。

アウドゥン・リースバッケンは、ベルゲン選出の国会議員だ。彼の選挙区は、ベルゲンを含むホルダラン県(Hordaland)で、定数16人の大選挙区。首相もここの出であり、保守党支持者が多いところだ。

2017年9月、総選挙があったばかりだ。有権者は、候補者にではなく、支持する政党に1票を入れる。政党の獲得票に比例して、ホルダラン県16人の政党の議席はこう分けられた:保守党5、労働党4、進歩党2、中央党2、左派社会党1、キリスト教民主党1、自由党1。

左派社会党は1人だけで、当選したのは、候補者リスト1番のリュースバッケンだった。

c0166264_0543189.jpg今回、病気休暇をとる彼の議員職を埋める代理議員は、彼と同じ選挙区の左派社会党候補者リスト2番目のジーナ・バースタッド(Gina Barstad)だ。彼女は、選挙で次点の候補だった。

若さあふれる31歳。とはいえ彼女は、以前もリュースバッケンの代理議員として国会議員をつとめた経験と実績がある。彼が大臣に就任したためだった。ノルウェーでは、権力の集中を防ぐため、大臣と国会議員は兼務できないのだ。

ノルウェーの国会議員は、育児休暇や病気休暇をよくとるが、国会議員の休暇は、働く者の権利として保証されているうえ、職務は選挙時の次点候補がカバーするので、休暇をとったからと議員を批判する有権者はいない。その一方、代理議員制度は、次点候補ーー若い人のことが多いーーの国会への登竜門ともなる。

c0166264_0551332.jpgアウドゥン・リースバッケンは左派社会党党首なので党首代行も必要となる。党首の代行は副党首カースティ・バーグストゥー(Kirsti Bergst)が就任する。彼女はフィンマルク選出の国会議員で、サーミ出身の1981年生まれの30代だ。

NRKによるとアウドゥン・リースバッケンは、こう語っている。

「もうじき戻ってきます。ラッキーなことに僕の周りには党のすばらしいチームがいて、僕のいない間を支えてくれるでしょう」

ちなみに地方議員は、北欧ではそもそも仕事や学業をもっていて、余暇に働くボランティア(無給)だ。職場や大学から免職されれば、国会議員よりも休暇をとるケースが多いようだ。私自身よく見聞きした。中には1年間の教育休暇をとった地方議員の話を聞いたことがある。

【写真:上は党の公式HP、中と下はFace Bookより借用】

Audun Lysbakken i sykepermisjon
パパにもっと時間ができた! 
男性大臣2人の育休 
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by bekokuma321 | 2017-12-19 11:29 | ノルウェー

2017年も終りに近づき、遅くなってしまったが、Democracy Index2016をお知らせする。

それによると、またもノルウェーが世界でもっとも民主主義度が高い国に選ばれた。トップの5位まで、ニュージーランドの他すべて北欧諸国だ。

5カ国ともに、選挙制度が比例代表制であることはもっと注目されていい。日本は20位。

1 ノルウェー9.93
2 アイスランド9.50
3 スウェーデン9.39
4 ニュージーランド9.26
5 デンマーク9.20
6 カナダ 9.15
6 アイルランド 9.15
8 スイス 9.09
9 フィンランド 9.03
10 オーストラリア 9.01


英誌「エコノミスト」の調査部門が定期的に発表している民主主義度ランキングだ。調査国は160カ国以上。調査項目は以下のとおり。

① 選挙過程と多元主義electoral process and pluralism:
「国会議員選挙、首相選挙、地方議会選挙が自由に公平に行われているか」「政党の政治資金の出し入れは透明であるか、かつ一般に受容されているか」など12項目

② 政治機能functioning of government:
「自由選挙で選出された代表が政策立案にたずさわっているか」「国会が、他の行政機関よりも上位にある最高の議決機関であるか」など14項目

③ 政治参加political participation:
「投票率」「少数民族や少数派があげた声が政策過程に反映されるか」「国会議員における女性の割合」「政党や政治団体への参加率」など9項目

④ 政治文化political culture:
「安定した機能的な民主主義を支えることに世論は合意しているか」「議会や選挙を無視するような強いリーダー像を望んでいるか(筆者注:望む文化だと減点)」など8項目

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Democracy Index 2016 Revenge of the “deplorables”



【注:このニュースはすでに紹介済みであることがわかったので、再度の掲載となる。強調点が違うので、2つを参考にしてほしい。既報はこちら民主主義コンテスト 世界1はノルウェー、日本は20位
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by bekokuma321 | 2017-12-18 20:12 | ノルウェー

c0166264_22101493.jpg 2017年11月9日「グレーテ・ベルゲがたったいま亡くなった」というメールがノルウェーの友人から届いた。

ジャーナリストのグレーテがブルントラント首相付きの広報担当官に抜擢されたのは1988年。数年後、ノルウェーの子ども・家族大臣にと、首相から懇願された。小さな子どもを持つ、現役ママ大臣の登場だった。私は夢中で取材して『ママは大臣パパ育児』(明石書店)を書きあげた。

今では日本でも耳にするようになった「パパ・クオータ」は、グレーテが音頭とりをして進められた。「パパ・クオータ」とは父親も育児休業をとるように誘導する公的政策だ。

またジャーナリストだったグレーテは、新鮮な言葉をいろいろ駆使して、意識改革にも力を入れた。

右のポスターは、彼女が男女平等大臣だった90年代後半のもの。子ども・家族省と男女平等オンブッドと男女平等審議会の3機関が手を携えて作成した。

ポスターを見ていると、今でこそ世界トップクラスの男女平等国ノルウェーだが、そこにたどりつくまでには国をあげて”女性運動”に頑張っていたのだなあ、とわかる。

ド派手な黄色のシャツにジャラジャラ・アクセサリーをつけた厚化粧の金髪女性が「私はフェミニストなんかじゃないッ」と叫ぶ。

ところが彼女は次に「でも、なぜ?」とつぶやく。「でも、なぜ昼休みの電話番はいつも女なの?」(1行目のノルウェー語の訳)

2行目からのノルウェー語は「叫ぶ芸術 ポスターで見る世界の女たち」をどうぞ。
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by bekokuma321 | 2017-12-13 22:43 | ノルウェー

12月10日、オスロ市庁舎で、2017年ノーベル平和賞授賞式典があった。一日遅れたがYoutubeで視聴した。

今年は、草の根組織ICANの活動が選ばれた。受賞者を代表して、記念スピーチをしたのは、ICAN(注1)事務局長ベアトリス・フィーン(Beatrice Fihn) と核兵器廃絶運動を続けてきた被爆者のひとり日系カナダ人節子・サーロウ(Setsuko Thurlow)。

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   ▲節子さんにポインターをあててクリックするとノーベル平和賞受賞式が映る

2人は、ノルウェー国王夫妻、皇太子夫妻、ノルウェー首相夫妻をはじめ、各界リーダーたちの拍手喝采をあびながら、スピーチを終えた。腹の底からの怒りを絞り出して訴えた節子さん。その一部を紹介する。

節子さんは広島生まれ。1945年8月6日、節子さんは、アメリカが広島に落とした原子爆弾の閃光を窓から見た。13歳だった。

がれきにうずもれて命がはてそうだった節子さんに人の声が聞こえたーー

「あきらめるな」
「がれきをかきわけて前に進むんだ」
「速くはって行け。光が見えるだろう」 

彼女は暗闇のなか前に進んだ。そして一命をとりとめた。しかし、家族や同窓生351人は無残にも燃えて灰に変わってしまった。

この残忍な原爆投下を戦争犯罪と認めず、「正義の戦争」を終わらせた「よい爆弾」という神話を信じている人がいるが、この神話こそ、今日なお核軍備競争に走らせているのだ。節子さんは断じた。

7月国連で核兵器禁止条約(注2)が採択された。人類最悪のときの生き証人である節子さんは、人類の最善のときの証人となった。この条約こそ、命をつなぐ光である。条約を拒む者たちは、歴史に指弾されるだろう。

いかなる障害が立ちはだかろうとも、前に動き続け、前に進み続け、この光(条約)をともに分かち合おう。この光こそ、私たちに託されたことなのだーーこの大切な世界が生き続けるために。

途中、拍手で何度か中断された。目をうるませるひと、涙を拭くひと・・・。13歳のとき、がれきのなかでかけられた言葉(注3)を再び繰返して、節子さんがスピーチを終えようとしたとき、拍手はクライマックスに達し、会場が総立ちとなった。

節子さんは、緑色の海原と白い波の模様で彩られた黒のロングドレスをまとっていた。着物地を仕立てたように見えた。日本女性初のノーベル賞受賞者にふさわしく、終始、堂々と威厳に満ちていた。c0166264_1534419.jpg


【注1】ICANは、「核兵器廃絶国際キャンペーンInternational Campaign to Abolish Nuclear Weapons」の愛称。日本を含め101カ国、468団体の連合組織。オーストラリアで創設され、事務局はジュネーブ。核兵器を条約で禁止しようと絶えまぬ努力を続けた。
【注2】今年7月、国連で122カ国が賛成して採択された。50カ国が批准すれば発効する。締約国には核兵器の開発、実験、生産のほか、核兵器を使った威嚇などを幅広く禁止した。前文で「ヒバクシャ」という表現を用い、核兵器の使用による犠牲者や核実験による被害者にもたらされた受け入れがたい苦痛と被害に言及した。しかしながら、ICANが創設されたオーストラリア、世界唯一の被爆国日本、ノーベル平和賞のノルウェーは賛成しなかった。
【注3】"Don't give up! Keep pushing! See the light? Crawl towards it."

2017 Nobel Peace Prize Ceremony(Youtube: Setsuko Thurlowの演説を含む全録画。 上の写真は本動画より借用)
Nuclear annihilation 'one tantrum away', Nobel peace prize winner warns
2017 ican lecture
Følg festen live her! Fredsprisfesten streames her
Nobel Peach Laureates_2107 Presentation Speech
Setsuko Thurlow Gives Final Remarks at Ban Treaty Adoption
Setsuko Thurlow Speaks At the UN
The nobel peace prize
「私たちは死よりも生を選ぶ代表者」 ICAN受賞講演

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▲オスロ市庁舎正面入り口。ノーベル平和賞受賞式は中央の建物1階で行われる。オスロ市は現在、中道左派が連立を組み市長も副市長も女性。ちなみに首相も女性、ノーベル平和賞選定委員会委員長ベリト・レイス・アンデルセンも女性。前委員長も女性だった

<2017年12月12日更新>
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by bekokuma321 | 2017-12-11 15:16 | ノルウェー