カテゴリ:ノルウェー( 548 )

c0166264_22291350.jpg「ノルウェー科学技術大学NTNUの理系に、女性の教授はわずか25%以下です」

NTNUは、トロンハイムにある。エンジニアや科学者養成が主だが、56学部、約4万人の学生(女性45%)を擁する国立の総合大学である。数年前、ノーベル生理学・医学賞を受賞したのは同大学の夫婦だった。

NTNUの理系の教授の4人に1人は女性であることに驚かせられたが、同大学副学長カーリ・メルビー(上の写真、右)は、「わずか25%以下」と形容した。その「わずか25%以下」の女性教授を増やすために、次のようなツールがあるという。

「公募に先立って、まず女性の的確な候補を探します。さらに博士課程院生やポスト・ドクの女性のための特別のメンタリング制度があります。こうした男女数のバランスを均等にする事業に、年5600万円の男女平等予算があり、フルタイムの男女平等スタッフがいます」

今年、ノルウェーリサーチカウンシルから「男女平等の向上」予算として、さらに5500万円の新予算を受ける、と喜ぶ。

大学理事会はどうか。女性は40%以上いる。理事会の画像によると14人中、6人が女性だった。これは、国の法律で取締役会の構成員において、一方の性が40%以下とならないとするクオータ制を定めているからだろう。

c0166264_22301976.jpg「そうはいっても」と、同大学教授プリシラ・リングローズ(左写真)は「男女平等のパラドックス」をスピーチ。ノルウェーに住んで20年以上というイギリス生まれの彼女は、「ノルウェー人にとって平等は同じということなので…」と強調した。

平等にあたるノルウェー語likestillingは、同一という意味も持つ。「移民もノルウェー人と同じでなければ平等ではないと考えている」と彼女は批判的に言った。

「ノルウェーでは、異性愛至上主義は疑問視されきて、同性愛も認めるようになってきた。すると、同性愛に寛容である人こそ文化的にすぐれた人々であるとなってくる。それに対して、イスラム教の人々は、性に不寛容な歪んだ民族と考えるようになる」。そうした傾向を「ホモ・ナショナリズム」と呼ぶ、と彼女は言った。

さらに北欧映画「Play」をあげて、北欧にひそむ黒人への偏見を紹介。5人の黒人少年が、3人の中流階層の白人少年(1人はアジア人)をいじめぬくという話で、黒人少年は、社会の反黒人差別意識を利用して白人少年を心理的に追いつめていく。日本なら、こういう設定そのものがありえないと思う。ぜひ観てみたい。

3人目は同大准教授グロ・クリステンセン(右上の写真、左)。彼女の母親世代からすでに、子育て中であっても夫婦ともにフルタイムの仕事を続ける。その背景には、親への長い育児休業(パパへの強制的育休パパ・クオータを含む)、保育園の充実、柔軟な就業時間など、福祉社会のサポート体制がある。

それに加えて近年は、家事(主に掃除)のため移民労働者を雇う傾向が増えているという。この現象に関して、「ジェンダー平等の売買」という研究がなされている。

私が長年知っている元財務大臣で元政党党首のクリスティン・ハルヴォルシェンは、「お手伝いを雇わずに政治家をやり続けたことは、自慢できる」と言っていた。彼女の時代とは違ってきている、と思った。

最後に副学長カーリ・メルビーは、「国民投票をしたら、パパ・クオータも、会社の取締役クオータも、賛成多数をとれなかったと思います。ステイト・フェミニズムのおかげです」。ノルウェーには、ステイト・フェミニズムという”国まるごとフェミニズム”と言える長い伝統がある(注1)。

企画運営をした石井クンツ昌子お茶の水女子大教授は、「日本にはジェンダーという言葉さえ使えないときがあった」と国をおおったジェンダー・バッシングを振り返った。

宗教的原理的な性役割分業文化を押しつける日本会議。その日本会議に安倍首相や多くの閣僚が属している。こうした右翼議員たちに連なる勢力は、夫婦別姓など男女平等を願う人々を邪魔しては快哉を叫ぶ。火の粉が自分の頭上に落ちてこないようにと、国も地方も、女性差別撤廃に逃げ腰である(注2)。

日本は、ノルウェーと同じく「女性差別撤廃条約」を批准した。しかし、この国は「国まるごとアンチ・フェミニズム」ではないかと思う。

ノルウェー学者の来日講演会「最も幸せな国のジェンダー平等」は、4月25日、茗荷谷のお茶の水女子大にて開催された。主催は同大ジェンダー研究所。


【注1】ステイト・フェミニズムState Feminismは、ヘルガ・マリア・ヘルネスHelga Maria Hernesが使った用語だと思われる。クオータ制調査にノルウェーを訪問した1980年代この言葉を知った私は『朝日ジャーナル』(現在廃刊)に紹介した。プリシラ・リングローズは、4月25日レジュメで次のような言葉を紹介している。
「女性が住みやすい国は、女性が男性以上に厳しい選択を迫られたり、性別を理由にした不当な扱いを許したりしない国である。女性が住みやすい国では、女性は子どもを産み、かつ、他の自己実現の道も開かれている。そうした国では、男性に課される以上の自己犠牲を負うような道を、女性が選ぶ必要はない。つまり、ジェンダーによる差別がなく、そしてそのために、他の形での(例えば女性グループ間の)不平等が拡大することもない国である」(発言者として、ヘルガ・マリア・ヘルネスの氏名は記載されてなかったが彼女の顔写真があった)

【注2】「館長雇止めバックラッシュ裁判」における事実認定による。豊中市らが敗訴し三井館長に損害賠償金を支払った裁判。詳しくはHPを。

NTNU in Tokyo
お金がなくても、ノルウェーになら留学できそう
子どもたちがはぐくむ平等と包括教育
難民体験学習をするノルウェーの若者
世界一幸福な国ノルウェーの女性たち
ノルウェーの大学、クオータ制再び提案
大学のクオータ制
ヨーロッパを動かしたノルウェー「取締役クオータ」
オスロ大学、男子への加算点認めず
●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第5回「クオータ制が生んだ名物教授」 
ベリット・オース、豊中市、日本会議
内閣府男女共同参画室との会合 (木村民子)
[PR]
by bekokuma321 | 2017-04-26 22:44 | ノルウェー

ノルウェーの裁判所が、「非正規労働者にも正規雇用者と同じ賃金を支払え」という判決をくだした。


43日、労働裁判所から出た画期的な判決だ。さすがノルウェー。エイプリル・フールの話ではない。非正規雇用にも、正規雇用と同一賃金、同一条件でなければならないというのだ。ノルウェー紙には、労働組合の完勝とも書かれている。

判決文は以下のようなもので、ノルウェー労働裁判所の判事7人による全会一致だ。


「合意した産業条約8A条の6、7項は、製造業協定に規定されている派遣会社(staffing agencies) に雇われているいかなる人も、雇う会社(hiring companies)の雇用者と少なくとも同一賃金ならびに同一労働条件に置かれる、と解釈される」

連合傘下にあるフェルスフォーブネ(労働組合のひとつ)の書記クヌート・ウイガールは喜びを隠し切れない。「とてもうれしい。(賃金だけでなく労働条件も同一だから)派遣会社内で労働組合の仕事をしてもいいことに、ほっとしてもいる」


賃金と労働条件に関して、派遣会社は、20164月から施行の新関税期間における産業協定に規定される、または、昨年改正された労働環境法の特別条項に規定されているように各々で結ばれる団体協定に規定される、そのどちらかである、とすることに、ノルウェー経営者連盟(経団連のような機構)は、異議を唱えていた。

わかりにくいが、要するに、「非正規は正規職より低賃金でも合法だ」と、経営者側は主張していた。

規則は、EUからの雇用会社指令に関連して提出されていたもので、労使でその規則の解釈がまったく異なっていたため、労働裁判所に提訴されていた。

このたび労働裁判所は、いかなる場合であっても労働者法が適用されるという2012年の双方の合意があり、それは疑う余地がないと結論づけた。


経営者連盟の関税と会員サービス部部長のニーナ・メルソンは、「協定をどのように理解すべきかを理解した」とコメントしている。

ニュースにある労働裁判所だが、労働に関する紛争を扱う特別の裁判所のこと。労働事件はとくにスピーディさを求められるからといわれている。ノルウェーだけでなくヨーロッパの多くの国にある。日本にはこのような裁判所はなく、労働事件であっても通常の裁判所でダラダラと扱われる。そのため日本では、働く場を奪われた労働者は、弁護士費用や交通費など経費だけはかさみ、給与は支払われない事態におかれることが多い。


c0166264_22365470.jpg
 ▲オスロの繁華街にある裁判所

Temporary workers to have the same salaries as employees – full victory in court

判決文(saken gjelder:Likebehandlingsreglene ved fra bemanningsforetak bundet av Industrioverenskomsten ノルウェー語)
Fikk fullt medhold i Arbeidsretten

Vikarer skal ha samme lønn som ansatte
世界一幸福な国ノルウェーの女性たち
LGBTが最も幸せに働けるのはノルウェー
ハンディをハンディと感じさせない社会へ
ノルウェーの「ベスト清掃員賞」
ダウン症の人には「何でもやれる能力がある
女性や若者を非正規にしないためにゼネスト

【注】本意ではないがVikarを非正規と訳した。ノルウェー語のVikarは、臨時雇用のことで病欠、産休、育休、教育休暇などで職務免除となる雇用者の代行をする。非常勤雇用は常勤雇用と同一労働同一賃金であるとすでに認められているので、このたびの紛争は人材派遣機関から派遣される臨時的労働者のケースであろう。報道によるとVikarは移民が多くを占めており、今回の判決は移民の人権保障につながり移民格差解消への一歩となるという。






[PR]
by bekokuma321 | 2017-04-04 22:47 | ノルウェー

c0166264_1640819.jpg原発事故で避難した子どもたちが、避難先の学校でいじめにあっている。この「原発いじめ」ほど卑劣な行いはあまりないのではないか。

昨日の新聞もいじめにあった高校生の話を掲載していた。彼女は小6の時、福島から千葉に避難した。転校先で「福島に帰れ」「被曝(ひばく)者だろ」「放射能がうつる」などといじめられ、別の小学校に再び転校したという。

2月には、福島から愛知県一宮市に転向した中3の男子が自殺した。彼は、JR大阪駅前の商業施設から飛び降りた。「担任によって人生全てを壊された」などという「遺言」のメモが残されていた。

高校教員だった経験から言うと、韓国人など外国人を親に持つ子ども、成績の芳しくない子、運動神経のにぶい子などが、いじめのターゲットにされた。犠牲者は、集団とは異質である人たち、集団のなかの少数派だった。後を絶たないいじめの現実を見たら、原発避難者がいじめにあうことは予測できる。原発避難者は、究極の社会的弱者であり、少数者なのだから。

しかし、対策はとられなかった。事件が報道されてはじめて、教育関係者がカメラに向かって頭を下げる。何度このシーンを見たことか。しかし何度お辞儀したところで、いじめをなくそうという強い意志と具体的対策がなければ、いじめはなくならない。

「原発いじめ」は日本独特だろうが、いじめは世界中にある。ノルウェーも例外ではない。違いは、ノルウェーは、ニ度と同じようないじめ被害が起きないようにするための専門的制度を設けている点だ。

その名は「いじめオンブッド」ノルウェー語でmobbeombud(モボンブード)。

オンブッドとはオンブズマンのことだ。一方の性に偏らないようにとオンブズマンの「マン」をとった。

北欧では、法制度というものは独立した監視機関がなければ十分に守られないものだとされてきた。その機関は、個人が誰でもいつもでも簡単にアクセスできて、無料でなければならない。これがオンブッドだ。

たとえば、女性差別撤廃のために男女平等法ができても、差別された女性労働者が差別企業を相手に提訴することは敷居が高い。しかし、男女平等オンブッドになら相談を持ち込める。男女平等オンブッドは調査の結果、女性差別だと判断したら、差別企業に対して是正勧告をし、マスコミに公表する。社会的弱者に代わって、男女平等オンブッドという「裁判官」と「大臣」を足して2で割ったような強い権限を持つ国家公務員が動くのだ。

ノルウェーの場合、男女平等オンブッド(現在は平等・反差別オンブッド)だけでなく、子どもオンブッド(下の写真)、兵役拒否オンブッドなど5種のオンブッドがいて、それぞれが事務局に何人ものスタッフを擁して働いている。

さて、「いじめオンブッド」に戻る。先日、誕生した「いじめオンブッド」はオスロ市(県でもある)特別公務員で、保育園や学校のいじめを専門に扱うオンブッドだ。国の機関ではない。数年前、ブスケル―県(Buskerud)にノルウェー初の「いじめオンブッド」が誕生したと聞いた。今回は首都オスロだ。

オスロの「いじめオンブッド」第1号に選ばれたのは、小学校の副校長をしていたシェスティン・オ―レン(33。上の写真)。応募者116人の大激戦だったらしい。ちなみに、ノルウェーでは公的機関のポストはことごとく公募制だ。しかも応募者の名前や履歴は基本的にメディアで公表される。日本の”お友だち人事“や天下りとは大違いで、万人に公平に開かれる。

難関を突破したシェスティン・オ―レンは、やる気満々でこう語る。

「いじめオンブッドに選ばれて、とてもうれしいです。私はまず広報に力を入れます。いじめオンブッドとはどんなもので、誰がいつどんなふうにコンタクトをとれるのか、を広く伝えます。それから、生徒会と連絡をとって、いじめオンブッドがどう働けばいいかについて生徒会の考えを聞きます」

原発事故対策には膨大な予算がある。大手ゼネコンにだけ回さずに、もっと人のケアに投資すべきだ。上述のようなノルウェー「いじめオンブッド」にならって、「原発いじめオンブッド」 のような専門の監視機関設置などどうだろうか。

c0166264_16402937.jpg


Kjerstin Owren er Oslos nye mobbeombud
Hun blir mobbeombud i Oslo
いじめ反対デモに数千人
ノルウェーの子どもオンブッド
ノルウェーの新「平等と反差別オンブッド」、決まる
ノルウェー地方選挙レポート2011 第1回 「女のクーデター」 再び -平等・反差別オンブッドは語る


[PR]
by bekokuma321 | 2017-03-27 16:44 | ノルウェー

今年、もっとも幸福な国に輝いたのは、ノルウェーだった。日本は51位で、昨年の53位よりは上がった。

c0166264_23232922.jpg

ノルウェーは、FEM-NEWS記事の大部分を占める。筆者は日本で女性差別と闘いつつ、20年以上ノルウェーの男女平等や福祉を追いかけては、そのしくみや実例を本などで紹介してきた。思うに、ノルウェーの幸福は、男女平等と不可分である。


国連「世界幸福度レポート World Happiness Report」は、つまるところ、どれだけ多くの国民が自分の人生に満足しているかを調べたものである。重要な調査項目は「人生を選択できる自由」と「社会的支援」である。


「人生を選択できる自由」―――女性が自分の人生を選択できる社会って? まず女性に経済力がなければならない。性による賃金格差のある社会、結婚によって姓を変えなければならない社会、結婚・出産した女性が職場を去らざるをえない社会、女だからと排除されたり片隅に追いやられたりする社会で、女性が経済力をつけるのはきわめて難しい。


もうひとつ 「社会的支援」―――女性が満足のいく人生を送るには、公的サポートが不可欠である。そのためには法制度がなくてはならず、国会や地方議会に女性議員がCritical mass30%以上)いなくては話にならない。ノルウェーは国会も地方議会も、女性議員はほぼ4割を占める。

日本の保育園不足を見よ、だ。ちなみに日本の国会(衆院)の女性議員はわずか9%、世界163位の低さだ。それに女性議員の一人もいない「女性ゼロ議会」は全国約370にのぼる。


幸福度世界一の国ノルウェーは、いま保守中道政権だが、前は中道左派政権だった。当時の首相はイエンス・ストルテンベルグ(労働党)。彼が国民に訴えた新年のスピーチが忘れられない(2011年)。


「ノルウェーの豊かさは、多くの人が仕事につくことによって成し遂げられました。ノルウェーが他の国と異なっているのは、おびただしい数の女性たちが経済活動を選んでいる点です。ノルウェ―は石油があるからラッキーだといわれています。それは間違いではありません。しかし、もっと重要なことがあります。それは、ノルウェーは、ノルウェー女性がいるからラッキーなのだということです。より多くの人が働くーーこのことがノルウェーの豊かな福祉につながっているのです」


【写真は、オスロの職場でフルタイムで働く5人の子どもの母親ヘッレ・チュン。撮影当時、6人目の子どもがおなかにいた。父母ともの育児休業制度、保育園・学童保育園などの社会的支援が充実しているノルウェーだからこそ、彼女はフルタイム職にありながら、6人の母親になる人生を選ぶことができた、と言える】

World Happiness Report 2017
ノルウェーのワーキング・マザー
「ノルウェーが幸運なのはノルウェー女性がいるからだ」―首相
シングル・マザー、107倍の難関に合格
民主主義コンテスト 世界1はノルウェー、日本は20位
世界で母親がもっともハッピーな国ノルウェー




[PR]
by bekokuma321 | 2017-03-23 00:07 | ノルウェー


c0166264_15084955.jpg


「戦わなければならないことが多すぎますね」――201738日、国際女性デーを記念する新聞に載ったベリット・オースのことばだ。


88歳のベリット・オースの闘いは、今なお続いているようだ。オスロ大学名誉教授(社会心理学)。ノルウェー初の女性の政党党首に就任した1970年代、クオータ制を初めて実行した。

クオータ制とは、決定機関や立候補者の少なくとも40%を女性にするしくみだ。これによってノルウェー女性の政治参加は爆発的に進んだ。日本にクオ―タ制を私が紹介したのは80年代だった。今ではクオータ制は、世界中に伝播している。


ノルウェー紙によると、女性デ―にあたって、ベリット・オースは若い人たちへ「女性への虐待、女性の貧困、女性器切除について膨大な調査が出ています。それらを読みなさい」とアドバイス。さらにノルウェーでは、貧富の差ーー女性に極端に貧しい人が多いーーが拡大しているにもかかわらず、どの政党もそれへの対策がないと批判する。


さて、ベリット・オースは、大阪府豊中市にやってきたことがある。いま森友学園事件で話題の豊中市だ。


私が豊中市男女共同参画推進センターの館長をしていた2003年のことだった。愛称「すてっぷ」。男女平等を地域のすみずみに浸透させるために、豊中市が阪急豊中駅前に創立した施設だ。初代館長は全国公募だった。応募したら、幸いにも採用された。


私は、20代から女性差別に敏感に反応し、それに対して闘ってきた。豊中にも、男女不平等社会を変えたいと願う女性たちが大勢いた。そんな市民を下から支えていこう。私は120%努力した。ベリット・オース講演会も、その一環だった。「すてっぷ」の台所事情を話したら、旅費を負担して来日してくれた。彼女は、豊中のあと、名古屋、高知、福井などを講演して回り、聴衆をとりこにした。メディアも大きく取り上げた。


しかし、豊中市議会には、私を嫌っている人たちがいた。日本最大の極右組織といわれる「日本会議」につらなる議員たちだった。


議会には、「教育再生地方議員百人と市民の会」代表の議員、神社本庁と関わる議員、塚本幼稚園卒だという議員らがいた。彼らは、議会質問の名のもとに、「ジェンダーフリー」を議会で攻撃した。その執拗さに、行政は頭をたれておどおどするばかりだった。


日本会議系の議員の唱えるあるべき男女とは、こういうものだ。TVニュース番組での発言を引用する。


「オスとメス、男と女というものは、有史からずっとこうあるわけですから、男性は男性としてきっちりと小さなうちから男性の自覚というものを育ててゆく、女性は女性としての自覚を育てていく」(北川悟司市議)


「もっともっと女性は、家庭を、子どもを大切にして、いい子どもを、つくってください」(北川悟司市議)


「女性が家庭を維持する大きな役割を担う。これ当たり前じゃない。世の中で一番すばらしいことは、愛する子どもを育てることです。一人の女性の人生のなかにこのことがなかったら、社会自体も存続しません。女性が安心して、そうできるように、男は、ある意味、命を捨ててでも働くということなんです」(西村真悟衆議院議員)


「すてっぷ」への妨害行為や図書室蔵書の非難、市役所周辺での悪質な嘘のビラ撒き、私の講演会における集団での難癖、根も葉もないうわさの流布。山谷えり子や高橋史朗を「すてっぷ」近くの会場に招いて「ジェンダーフリー反対」の講演会をシリーズで催す。


攻撃のピークは、夜の市役所での3時間にわたるどう喝だった。議員は、「すてっぷ」の1年前の内部資料を手に、これは人権侵害だと怒鳴り散らした。テーブルをバーンと強打した。こうした日本会議系議員らの執拗な言動に屈した豊中市幹部によって、私は首になった。


不当な首切りだと考えた私は、豊中市らを提訴した。1審は敗訴だった。失意のどん底にあった私を励ましたのは、豊中市民たち(木村真議員も)や国内外の友人たちだった。私は控訴した。そして高裁で勝訴! 裁判長は、地方自治体の政策に対する右翼議員らによる陰湿きわまりない圧力をあますことなく断罪した(注)。

ノルウェーから、私を励ましてくれたのは、ベリット・オースだった。彼女の2008年の手紙は、男女平等の敵は好戦的な家父長制であると、日本会議の特質をズバリ見抜いていた。




c0166264_15281906.jpg
▲ベリット・オースからの手紙(原文は英語)


【注】 日本会議系の政治家による反動的動きが、行政に介入して意思決定に圧力をかけるさまが、裁判によって露呈された。三井マリ子・浅倉むつ子編『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』(旬報社、2012)に詳述されている。

「日本会議」に向かって闘いを挑んだ本:『バックラッシュの生贄』を読んで
インパクションに『バックラッシュの生贄』 (書評)
今も続く右翼的攻撃の楯となる本:『バックラッシュの生贄』を読んで
ベリット・オース「支配者が使う5つの手口」
館長雇い止めバックラッシュ裁判
男女平等を嫌う反動勢力の実像
館長交代「圧力に屈す」市に賠償命令 朝日新聞 第1面(2010年3月31日)
「豊中市批判的勢力に屈服」市施設めぐり大阪高裁判決「元館長の人格権侵害」朝日新聞朝刊(2010年3月31日)   





[PR]
by bekokuma321 | 2017-03-17 16:12 | ノルウェー

ノルウェーの移民政策

c0166264_11335218.jpg

c0166264_11371754.jpg


ノルウェーは、今秋9月、国政選挙を迎える。

選挙は比例代表制だ。1年ほど前から政党は、候補者リストを公表し選挙に備える。有権者は、候補者ではなく政党を選ぶ。どの政党に投票するかは自分の政治信条や政党の政策などで決める。「知り合いが◎◎党だから」という人もいる。

2015
年の地方選では、移民・難民政策に厳しい右派政党が票を減らした(日本の地方議会は“無所属”が多く政党別に統計はとりにくいが、ノルウェーは地方議会も政党政治であり、ほぼどの議会にも平均5つか6つの政党から議員が出ている)。

上記は、20171月に書いた原稿。当時の世論調査によると、寛容な難民政策をとる左派中道政党の人気が高かった。つまりノルウェーはいま右派中道政権だが、今秋9月には政権が交替しそうな雲行きなのだ。

【原稿は、「Voice(なくそう戸籍と婚外子差別・交流会通信)第216201712月号」】


子どもたちがはぐくむ平等と包括教育
イラク移民の少女が国会議員有力候補になれる国
ノルウェー国王のスピーチ録画、277万回再生される
難民、ノルウェーと日本
難民体験学習をするノルウェーの若者
ノルウェーの難民と“児童婚”
ヒジャブ着用をめぐる論争
難民問題
非暴力の出番
ノルウェーの難民・移民政策
新年の報道:ノルウェーと日本
イスラム風刺漫画を擁護する女性作家








[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-23 15:05 | ノルウェー

c0166264_20481693.jpg


ノルウェー・ノーベル委員会のカ―シ・クルマン・フィーべ委員長が亡くなった。まだ65歳の若さ。乳がん治療中だったと報道されている。

彼女は、1990年代初頭、ノルウェーの保守党初めての女性党首に就任した。現首相は、フィーベ委員長に次いで2人目の保守党女性党首となる。

20年以上前、フィーベ委員長が国会議員として活躍していた頃、オスロの国会議事堂まで出かけて行ってインタビューしたことがある。前髪をヘアピンで留めた女学生のようなヘア、黒のセーターにベージュのスラックス姿だった。英語よりもフランス語が得意らしかったが、私のために英語で応じてくれた。

『ママは大臣 パパ育児――ヨーロッパをゆさぶる男女平等の政治』(明石書店、1995)p216~p223から、要約して紹介する。

取材の主な目的はEU加盟問題と女性。当時、ノルウェーは、政府がEU加盟を申請していたにも関わらず、国民はEU加盟に反対だった。ノルウェーでは、国民に影響を与える重要政策は国会で決定されても、国民投票にかけることになっていた。加盟か非加盟かをめぐって、国を二分する闘いをしていた。

反対派の主導権は女性が握っていた。彼女たちは「高い福祉、高い女性の地位は、長年ノルウェー人が闘い取ってきたもの。EUは、経済競争のため加盟国に減税を強いている。減税でどこが削られるか。保育や介護など福祉分野だ」と主張した。

それに対して、EU加盟派のスポークスパーソンのカ―シ・クルマン・フィーベは、私に賛成理由を語った。

「福祉を公的負担で賄うことには賛成です。しかし、問題は、高い福祉は、経済力がなければ維持できません。ノルウェー経済を支える石油からの収入は、今後減ります。これからの経済は、国際市場へのアクセスなしには伸びません。それはEUに入ることによって強まるのです」

心からお悔やみ申し上げます。

ノーベル平和賞

[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-20 21:04 | ノルウェー

ノルウェーから、久しぶりにクオータ制に関するニュースが届いた。


報道によると、オスロ大学とベルゲン大学は、クオータ制を男性に採用するよう教育省に提案した。2017年度中に、男女平等法改正案を出すことを要望している。


大学のクオータ制は、長年議論になっていた。というのも、大学入学者は女性が多く、とりわけ心理学における男子学生の少なさが問題となっていた。たとえば、オスロ大学心理学部は、女80%、男20%、と極端に女性が多い。両性の不均衡を改正するには、男性のクオータ制を導入しかないと指摘されていた。


そこで、数年前、少なくとも30%は男性に割当てるようなクオータ制が提案された。論争が続いた。そして昨年、教育省は、男性へのクオータ制導入は、男女平等法のクオータ制の趣旨に反するとこの提案を却下した。ノルウェーの男女平等法は、男女平等と女性の地位を上げることを目的とする、と明記され、女性へのポジティブ・アクション法といえるからだ。


大学側は、時代は変わったと言い、あらためて男女平等法の改正にチャレンジした。社会のすみずみまで男女平等を行き渡らせようという、指導者たちの姿勢に感銘を受ける。



c0166264_17470063.jpg

▲オスロの港から海を見つめるアースタ・ハンステーン(1824-1908)。女性解放運動家、画家、小説家。伝記によると彼女は聖書にある女性像や家父長主義を批判する文章を新聞やチラシに数多く書いた。当時、彼女の考えは受け入れいれられず嫌がらせの対象だった。失望してアメリカに移住。9年後に帰国してからは、さらに女性解放運動に磨きがかかったと言われる。


Vil endre loven for å kvotere inn mannlige studenter
大学のクオータ制





[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-14 17:55 | ノルウェー

26日は、ノルウェーの先住民サーミ国民の日。1992年から正式にノルウェー国民の祝祭日となった。

1917
年のこの日、エルサ・ラウラ・レンベルグは、初の北欧サーミ大会を開いた。ノルウェー全土でサーミ文化祭が繰り広げられ、スウェーデン、フィンランド、ロシアも歩調を合わせる。


今年は例年とは比べものにならないほど盛大のようだ。というのも、初の北欧サーミ大会があった1917年からちょうど100年になる。

ホームページによると、26日を含む1週間はサーミ国民の週、今年いっぱいはサーミ国民の年として、フィンマルク県各地で音楽、映画祭、文化祭、講演会をはじめ、多彩な行事が続く。


さて、100年前、サーミの権利を掲げて初の北欧サーミ大会を開いたエルサ・ラウラ・レンベルグは、ノルウェーの女性史資料によると、1877年、スウェーデンと国境を接するヌールラン県の森林地帯で生まれた。


トナカイ放牧で暮らしていた両親は、彼女に高等教育を受けさせた。きわめて珍しいことだった。彼女はストックホルムに留学して産婆教育を受け、政治集会にも参加。1904年、ストックホルムで世界初のサーミ協会を創設して代表に就任。同時に、『死か生か:ラップ人の現状についての真実の言葉』と題する小冊子を出版。サーミ女性初の出版物だとされている。


この小冊子で、彼女は、サーミ民族の貧困、男性のアルコール問題、土地の収奪、子どもたちの教育を論じる。「スウェーデンの選挙権にはノルウェーにはない収入制限があるためサーミの選挙権が制限されている」とスウェーデンの選挙制度をやっつけている。


その後、結婚して再びノルウェーのヌールラン県に住み、サーミ族の権利擁護を主張。女性に選挙権がなかった時代に、女性がその権利擁護運動の先頭に立つべきだと講演をして回った。1910年には初のサーミ女性解放運動団体「サーミ女性協会」を立ち上げた。


さらに191726日、トロンハイムで、初の北欧サーミ大会を主催。エルサは開会演説をした。当時、サーミ文化や言語は消滅の危機に瀕していた。彼女は、サーミの権利擁護には「土地」と「教育」と「選挙権」が不可欠で、そのためには国境を超えた連帯が必要だと訴える。スウェーデン代表も参加した、この大会は、サーミ政治史の偉大な1ページとなった。


100年後の2017年26日、500万人を越える非サーミ人と、4万人サーミ人は、サーミ国民の日を祝った。トロンハイムの記念式典には国王や首相も参加と報道されている。

しかし、そんなサーミの英雄(正確には英雌だろうが漢字がない)エルサを、20世紀初めの新聞は「キチガイ」(ノルウェー語でSinnsykと表現した記事もあったという。




c0166264_00061966.jpg
▲フィンマルク県のヴァランゲル半島にあるネセビュー教会。このあたりはサーミ語とノルウェー語の2言語が使われる


c0166264_10324258.jpg
▲上の大きな文字vuostáがサーミ語、その下ostはノルウェー語。ともに「チーズ」という意味。フィンマルク県キルケネスのスーパー



c0166264_11371592.jpg

[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-08 00:24 | ノルウェー


c0166264_21155662.jpg「腹立たしいこと極まりない」


トランプ大統領によるイスラム7カ国旅行者の入国禁止について、こう語ったのはノルウェーの元首相だ。


キリスト教民主党のヒェル・ボンディビック元首相は、火曜日午後、国際会議に出席するためにワシントン・ダレス国際空港に降り立った。ところが空港で拘束されて、入国できたのは1時間後だった。


ヒェル・ボンディビックは、キリスト教民主党の元党首で、首相を2度務めた。現在は「オスロ・センター」という平和・民主主義・人権を擁護する独立機関の代表である。


報道によると、元首相は入国審査に外交官パスポートを見せて、「僕はノルウェーの首相でした」とも言った。すぐ、通過できると思ったという。

ところが、元首相は、中東やアフリカの国々から到着した人たちといっしょにある部屋に誘導された。そこに40分ほど留め置かれた。その後、外交官パスポートに記録された2014年のイラン渡航に関して、20分間、その目的について質された。「人権問題の会議出席のためだ」と答えたという。


「ある国の名前が目にはいると、すべてのアンテナがビビッと反応するみたいだ。まったく無用な疑いをかける」「テロの恐怖はわかるが、こんなやり方で、ある宗教の人々をまとめて、扱うべきではない」と彼は取材に答えている。


外交パスポートを保持するノルウェー元首相、キリスト教民主党の元党首、アメリカへの渡航目的はトランプ大統領も出席予定の「世界宗教家の朝食会」―――どれひとつとっても、トランプ大統領令にひっかかるはずなどない。


ひっかかったのは、ただひとつ。3年前のイラン渡航記録だけ。


ボンディビック元首相の話から、一般の人たちならどれだけ邪険に扱われるか想像できる。ましてやイスラム教の7カ国の人たちはいかばかりか。これが宗教に基づく差別でなくて何なんだ。ほんとうに胸が痛む。


Former Norway PM held at Washington airport over 2014 visit to Iran
The Oslo Center (上のボンディビック元首相写真も)
精神疾患を公表したノルウェー現職首相の思い出 (ボンディビック元首相の人となりがしのばれる記事)






[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-04 21:45 | ノルウェー