カテゴリ:ヨーロッパ( 281 )

6月8日のイギリスの総選挙で、イギリス史上最も多くの女性が当選した。

歴史的だったとはいえ、前の選挙から大躍進したというわけでもない。全体で女性の当選者は208人で、2年前の196人から12人増えた。割合は30%から32%になった。政党別の女性割合は、保守党21%、労働党45%、SNP34%、自由党33%。

前回選挙と比較すると、保守党は変化がなく、労働党は44%から45%に微増、SNPも33%から34%と微増だった。自由党は11%から33%と大幅に女性が増えた。とはいえ、自由党の議席は少なく、多くの報道は「歴史的」としたが、それは労働党当選者が多かったことによる。

この結果に、伝統ある女性解放団体「フォーセット協会」はまったく満足していない。協会は、「国会のわずか30%しか女性はいない」と訴え、選挙に向けて女性政策・男女平等政策を政党に要求するなど精力的に運動をしてきた。サム・スミサ―ス代表はBBCに次のようにコメントしている。

「女性たちは、200議席というハードルを初めて超えました。しかし、これはまだ全体の32%にすぎないのです。赤面するほどのろいカタツムリの歩みでしかありません。新しいアプローチをする時がきました。全政党に候補者の少なくとも45%は女性にせよと要求して行きます」

c0166264_018227.jpg
 ▲地方議会と国会に女性議員はどのくらい増えたか(フォーセット協会のキャンペーン)

Record number of female MPs win seats in 2017 general election
Election 2017: Record number of female MPs
Fawcett Society
[PR]
by bekokuma321 | 2017-06-22 00:36 | ヨーロッパ

6月15日、共謀罪が、委員会採決をすっとばして本会議で可決された。この腹立たしさをどうしてくれよう。

次の選挙で共謀罪に賛成票を投じた議員を減らせたら少しは癒されるだろう、が、その選挙制度は私たちの民意を反映しない小選挙区制ときている。衆院選で、自民党に投票した人は、2012年43%、2014年48%。過半数に満たない。しかるに、その議席は、2012年79%、2014年76%だ(注)。

6月8日に選挙があった、小選挙区制の母国イギリスはどうか。

保守党は、330議席から318議席に議席を減らし、労働党は229議席から262議席に増やしたが、政権交代とはならなかった。ハング・パーラメント(宙ぶらりん国会)と呼ぶらしいが、「小選挙制は強靭な安定政権をつくる」という説は嘘ではないか、と思える。

投票日の朝、「さあ投票に行こう。だが、このグロテスクな選挙制度は改革を必要としている」と題した刺激的論説がガーディアン紙に載った。

筆者は専属コラムニスト ポリー・トインビー(Polly Toynbee)。彼女はのっけから「選挙に関わった人たちは、戸別訪問で、『投票しても変わらない』とか『政治には関心ない』と言われただろう。実際、その声は当たっている」とキッパリ。

そして、小選挙区制選挙に致命的欠陥があることをあげる。

「2015年の総選挙では保守党が7ポイントリードしたが、保守党から労働党に639票移れば、労働党が6議席増え、ハング・パーラメントになっていた。わずか639票だ!」と、選挙改革協会(electoral reform society)の調査結果を紹介。

次に、「前回、有権者の多くは、勝者となった候補者の票数に無駄に票を上積みしたか、落選候補へ入れた」とし、「票の74%が無駄に投票された。その無駄は2200万票」とはじき出した。2200万票の無駄を出す選挙ーーこれはグロテスクだ。

小選挙制は死に票が多いのが欠点だ。日本でも死に票の多さは指摘されてきたが、その死に票だけでなく、1票でも多ければ当選なのだから勝者への上積み票も無駄な票である、と彼女はいう。なるほど、なるほど。

加えて、当選者の多くは「当確」候補者であり、中には民主主義が誕生した時代から「当確」と言われる政党の候補者もいた。1945年から一度も変化がない選挙区が保守党103議席、労働党67議席もある、という。これでは、「投票しても変わらない」。

そのうえで、彼女は、「小選挙区制から比例代表制に変えれば、1人1人の票が無駄になることはない」と結論づける。

北欧の選挙制度を取材してきた私は、この主張がよくわかる。彼女のいう「選挙区から6人当選とすると、比例制選挙なら、支持政党議員を1人は国会に送ることができる」を、私はノルウェーで何度も見てきた。

そうなると、生活保護受給者の厳しさに同情しない保守党議員しかいないとか、相続税を減らしたい富裕家族の困りごとをとりあげない労働党議員しかいないということもなくなる。

それに、小選挙区制よりずっとらくに女性や社会的弱者の代表を増やせる。比例制選挙では、有権者は個人を選ぶのではなく政党を選ぶのだから、政党は印象をよくするため、男性だらけより男女バランスを考えたリストを作成するだろう。それにブラック企業も真っ青というような選挙運動は無用だから、ハンディをかかえる人たちも立候補できる。

これらは、国会にも地方議会にも、右から左まで多様な政党の代表がいて、4割ほど女性議員が占める北欧諸国ーー比例代表制ーーがちゃんと実証している。

比例代表制による多様な民意の反映が生み出した福祉と平等の国々を、FEM-NEWSは何度も紹介してきた。だが、何と言っても、小選挙区制の母国イギリスの小選挙区制否定論は傾聴に値する。


c0166264_21153564.jpg
▲ノルウェーのソール・トロンデラーグ県トロンハイム市。同県は国会議員10人の選挙区。労働党、保守党、進歩党、中央党、左派社会党の5党から国会議員が出ている。


This new parliament provides a clear opportunity for electoral reform
First Past the Post’s Third Strike
Scotland’s multi-party system can never be represented by First Past the Post
Five things we have learned from the election
Go out and vote today, but know this – our grotesque system needs reform
Election 2017: Record number of female MPs
Election 2017: A big Conservative win could see fewer women in parliament
Diversity deserts: 7.5m people can’t vote for a woman this election
小選挙区制が生んだ共謀罪
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
あざやかな歴史
比例を切るな!
安保法案の成立は小選挙区制のせいである
イギリス6割が選挙制度改革に賛成
小選挙区制は女性の声を捨て去る
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
比例制選挙がいい

【注】日本国憲法には、イの一番に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と書かれている。これだけ民意とかけはなれた結果を産む小選挙区制は「正当」な選挙ではなく、現国会議員は「正当に選挙された代表」とは言えない。
[PR]
by bekokuma321 | 2017-06-15 21:56 | ヨーロッパ

c0166264_039564.jpgさきほどヨーロッパから入ったニュースによると、スペインのマドリードは、すべての公共交通機関で足を広げて座ることを禁止した。

マドリード市のツイッターを見ると、こんなわかりやすいイラストとともに「他人のスペースを尊重しましょう。マンスプレディングはやめましょう」と知らせている。

マンスプレディングは、manspreadingという英語だ。man(男)にspread(広げる)をつけた言葉だ。ガバッと開脚してスペースを横取りする座り方は男性に多く、隣に座った人が不快な思いをしたり、スペースをとられて横に座れなくなったりする。

報道によると、女性運動団体Mujeres en Lucha(女性の闘い)が、インターネットのチェンジchange.org で「マンスプレディングをやめさせよう」と運動をしていたという。ちなみに、マドリードの市長は共産党員だった女性Manuela Carmena

Ayuntamiento Madrid (Madrid Town Hall)
‘Manspreading’ banned on all public transport in Madrid
Madrid contra el 'manspreading': la lucha feminista por un uso cívico del transporte público
Que la Comunidad de Madrid ponga carteles sobre el Manspreading en el metro(チェンジの署名運動)
Madrid installs gay-friendly traffic lights for World Pride 2017
[PR]
by bekokuma321 | 2017-06-08 00:48 | ヨーロッパ

c0166264_14184438.jpgフランス大統領選の1回目が終わり、中道政党「前進!」のエマニュエル・マクロンと、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペンが残った。

決選投票は5月7日だ。フランス国民はマクロンを選ぶだろうと予測されている。

次期大統領と目されるマクロンは、高校時代に教師と大恋愛。「何があっても、僕は先生と結婚する」との誓いどおり、2007年、結婚した。彼女の名はブリジット・トロニューBrigitte Trogneux。20歳(24歳という説も=注)年上で、前夫との間の子ども3人の母親だ。マクロンは、「僕が彼らの母と愛し合うことを認めてもらえてうれしい」と語っている。

彼女の教え子だった彼は、選挙中も彼女のアドバイスをよくきいていたとか、大統領になったら誰かは未定だが女性首相にする予定だ、とかさかんに報道されている。ユニークなのは私生活ばかりではない。無名の若者・・・という報道のとおり、彼は一度も国会議員に当選したことがないのだという。候補者になったかどうかは不明だ。

ここで、フランスの国会(下院)の話を少し。

国会議員に占める女性は25.8%で、世界63位。日本はたったの9.3%で世界163位だから、それに比べればいい線なのだが、フランス女性には屈辱の数字のようだ。

彼女たちは、政界を男女半々にするため、まず2000年、憲法に「パリテParité 男女同数」という言葉を盛り込ませた。次に政界への男女平等アクセスを推進する「パリテ法」を定めた。これによって比例代表制をとる欧州議会(EUの準立法府)、州議会、人口1000人以上の市議会は、候補者名簿が北欧のように男女が交互に並ぶことになった。欧州議会はもともと女性が多かったのだが、加えて、州議会や市議会は、限りなくパリテに近づいた。

一方、小選挙区制の国会と県議会はパリテがうまく働かなかった。そこで県議会(女14%)の選挙は、突飛というべきかおしゃれというべきか、選挙法を改正して「男女ペアで立候補しなければならない」とした(2013年)。

フランス語でビノームbinômesというらしいが、ダンスを踊るときのように、男性(女性)はペアを組む女性(男性)を探して立候補する。ポスターも、恋人か夫婦のように男女ペアで並ぶ。ペアを組む相手は同政党より異なる政党や政治団体であることが奨励されている。当選後は、独立して別々の議員活動をする。

小選挙区で最高得票をとった1組の「男女ペア候補」が当選となる。2015年に県会選挙があった。その結果、フランス全県会議員4108人中、女性2054、男性2054。みごとなパリテである。

大統領選は国中からたった1人を選ぶ選挙だからパリテにはなじまない。ところが、決選投票は期せずしてパリテとなった。フランスは、選挙までちょっとセクシーだ。


自由の国のおしゃれな改革(フランス) (叫ぶ芸術:ポスターに見る世界の女たち)
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
国会議員年収も政党交付金も世界最高額
フランス地方選で極右台頭
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい

【注】追記だが、マクロンが次期大統領と目されるなか、妻との年齢差の報道が多く見られる。妻ブリジット・トロニューは夫マクロンより25歳上らしい。女性が受ける年齢差別は男性のものの数ではないことを考えると、今後も何かにつけて騒がれることだろう。




[PR]
by bekokuma321 | 2017-04-24 14:35 | ヨーロッパ

祝!国際女性デー2017


c0166264_17504324.jpg

38日、国際女性デ―、おめでとう!


今朝のガーディアン紙は、国際女性デ―の大特集。世界中の性差別と抗議運動を、これでもか!と報道している。

充実した内容ばかりだ。主な記事の見出しを大急ぎで和訳した(↓)。

写真やビデオが多いので、本文は英語でも楽しめる。クリックしてどうぞ。


世界初の国際女性デーは1911年だという。オーストリア、デンマーク、ドイツ、スイスで、女性の労働権、女性参政権、政治参加、性差別撤廃を求めて100万人以上が集まった。


今年もあちこちでストライキやデモがあるようだ。でも、参加できない人は、できることをすればいいと思う。いつも料理をしているなら彼にやらせる。保育園の送り迎えを彼にしてもらう。職場の同僚や上司に「今日は女性デ―」とあいさつする。女性店主の店で買物をする。親や友人に電話して「今日は女であることを祝う日よ」と言う。夫や父に国際女性デ―の歴史を話す・・・。


私は早起きして、国際女性デー・カード(Mitsuart作)に「平等と平和を!」と心をこめて書いた。外に出て、まぶしい朝日をあびながら、カードを持ち、女性の権利を踏みつける世相に、怒りのこぶしを上げた。連れ合いに撮影してもらって、フェイスブックで友だちに知らせた。



■2017年国際女性デ―・ライブ:抗議、運動、ストライキ
■国際女性デ―・ビデオ:世界的ストライキへの参加方法
■1日ストで女性の権利を燃え上がらせよう
■世界の女たちの毎日と性差別の影響
■「女たちは地球人、女たちは国境を超える」 世界の女たち連帯してストライキ
■沈黙と弱気はいっしょにやってくる――聞け、女たちの意見を
■「あなた自身たれ、あなた自身であろうとすることを悪いと思うな」-女たちの成功物語
■保育士1000人余り、差別賃金に怒って職場放棄
■中国で女性解放ステッカーを渡して投獄された私
■なぜインドの女性解放運動家たちは必要のない帝王切開をする医師たちを非難しないのか
■オーストラリア、いらつく男女不平等の実態報告
■ロシア革命の火ぶたを切ったのは女たちの抗議行動


[PR]
by bekokuma321 | 2017-03-08 18:07 | ヨーロッパ

映画「サフラジェット」

女性参政権獲得運動を描いた映画「未来を花束にして」を観た。


1910年代のロンドン。洗濯工場で働く若い母親モードが、あるきっかけから女性参政権運動に関心を寄せるようになり、しだいに運動にのめり込んでいく物語だ。原題は、Suffragette(サフラジェット)。女性参政権獲得運動家という意味。


目に焼き付いているシーンがある。


刑務所に収監された女性参政権運動家Suffragetteたちは、独房の差し入れ棚に置かれた食事をいっさい拒否する。ハンガーストライキだ。


ハンガーストライキ5日目。刑務所の薄暗い廊下。男女の刑務官らが何やら道具を引きずってやってくる。


モードのc0166264_19383405.jpg独房に入る。女性刑務官が数人でモードの体を椅子に力づくで倒す。腕を拘束して、頭部を後ろに押し付ける。男性刑務官か医師が、鼻からゴムチューブを差し込み、チューブの片方に設置された漏斗のような器具にミルクのような液体を流し込む。モードはむせた後、苦痛の余り悲鳴をあげる。足を何度も何度もける。私はスクリーンから顔をそむけてしまった。


これが悪名高い「強制摂食」だ。映画で、「死んだら、殉教者だ。パンクハーストの勝ちになる」という当局の台詞があった。強制摂食は、獄死をさけようと執行された拷問なのだ。


ガーディアン紙によると、ハンガーストライキは、投獄された女性参政権運動家がとった抵抗運動だ。「私たちは政治犯であり、他の罪人のように扱う政府に抗議をする」という信念の表現だったのだという。映画の最終場面に出てくるダービィ会場で走ってくる馬に身を投げ打ったエミリーは実在の人物で、彼女は、9回も投獄されて、強制摂食は49回にのぼったという。200回以上も強制摂食された女性参政権運動家もいたことが、当時の新聞に書かれている。なんという抵抗魂!

女性参政権をめざして、命を投げ出すことも厭わない政治運動をひっぱった人物は、エミリア・パンクハーストだ。彼女は7回収監されたという。映画では、バルコニーで短い演説をするシーンしか出てこないが、終始、女性活動家たちの精神的支柱として描かれている。


エミリア・パンクハーストの創設した「女性の社会的政治的連合Women's Social and Political Union, WSPU」に集まった人は中産階級の女性たちだったという。モードのような貧しい労働者階級の女性はほとんどいなかっただろう。

だから、映画の主人公モードは架空の人物だ。モードは夫と幼い息子の3人暮らし。隣近所が密集した労働者地域にある狭い家に住んで、朝から晩まで10時間も騒音まみれの洗濯工場で働き、工場長のセクハラにいら立ち、ヘトヘトとなった体で家に戻る。「お前は母であり、俺の妻だ」という夫に気がねもする。


この映画の成功は、労働者階級のモードを主人公にした脚本の素晴らしさにありそうだ。

モードの日常に、女性参政権運動は遠い。ところが、同僚のヴァイオレットは女性参政権運動家。国会で証言をするので聞きにきてほしいとモードを誘う。国会に足を伸ばしたモードは、ヴァイオレットが、夫のDVで顔があざだらけになっているのを見る。「ヴァイオレットに証言は無理、書いた紙を読むだけでいいから」と頼まれる。大勢の男性議員に囲まれた議会の一室で、モードは口を開く。映画のハイライトだ。


「母親は14歳から洗濯工場で働きづくめ。私が4歳のとき火傷で死にました。私は7歳からパート、12歳からフルタイムで洗濯をしています」


「洗濯女は短命なのです。胸が痛くなり、咳がとまらなくなります。指は曲がり、足には潰瘍ができます。火傷、ガスによる頭痛給与は、女は週13シリングで男は19シリングです。女性のほうが長く働いていますが」


映画は2015年にイギリスで公開された。日本公開は2017年。100年以上も前の史実を基にした映画だが、現代の私たちに突き刺さるのは、私たちがまだ同じような境遇に置かれているからだろう。


工場長の卑劣なセクハラ

男性より低い賃金
DV夫におびえる妻
「お前の言う事なんか誰も聞きはしない」という蔑視

安心して子どもを預けるところがない
夫の目を気にしながらの日々


最後に、珠玉の言葉から、ひとつ:

「法を破りたいのではなく 法をつくりたいのです。そのために闘うのです。今がその時―――パンクハスト」

92年前の今日、日本女性は参政権めざして大同団結した
ロンドンのレッド・カーペットに女たち横たわる
ノルウェー女性参政権100年から考える

【写真:Photo by Museum of London/Heritage Images/Getty Images - http://www.historyextra.com/article/social-history/10-facts-about-suffragettes







[PR]
by bekokuma321 | 2017-03-02 19:49 | ヨーロッパ

100、女73

先日、厚生労働省から発表された、日本の男女賃金格差だ。その差27。この歴然たる格差を、厚生労働省は、いったい全体、いつまでどのような方策で解消しようとしているのか。その具体策はまったく見えない。マスコミも追求したようには見えない。マスコミにも男女賃金格差があるから、強く追求できないのだろう。

しかも、「10073」という数字は、女性労働者の5、6割を占める、非常勤や派遣など非正規で働く人たちの賃金は含まれていないのだから、多くの働く女性の実感とは異なる。

さて同じころ、イギリスの国会で、政府は男女賃金格差を是正する具体策を講じていないと、痛烈な政府批判がなされた。

イギリスの男女賃金格差は、男100、女80.8だ。

この賃金格差を批判したのは、「女性と平等委員会The Women and Equalities Committee」の委員長マリア・ミラー。国会内に、「女性と平等委員会」と名づけられた常設委員会がつくられていて、「女性と平等省」が、ちゃんと仕事をしているか否かを調査するのだというから、このこと自体驚きだ。いや、「女性と平等省」という省すら日本にはない。

ともかく、マリア・ミラー委員長は、政府は委員会の提案をやってないじゃないか、とこう批判する。

「①フレキシブルワーク(定時に縛られない柔軟な働き方)を増やすこと ②女性が担っている子どもやお年寄りの世話という無報酬労働を男性とわけあうこと ③40歳以上の女性の復職への支援体制をつくることーーーわれわれが提起した、これらの重要な課題の解決に向けての実行なしには男女賃金格差はなくならない」

このような政府に対する酷評は、きっと野党・労働党の議員だろう、と思ってしまうが、違った。委員長は保守党の女性議員だった。批判された相手側は、「女性と平等省」の大臣ジャスティン・グリーンニング。もちろん女性だ。



c0166264_22262968.jpg
      ▲20年以上も前、男性よ家事育児をもっとしようという政策を打ち出したデンマーク政府パンフレット。メッテ・ドレイヤ―の作品


MPs attack ministers' lack of action on gender pay gap
世界の男女賃金格差縮まらず (OECD加盟国中、日本の男女賃金格差は最下位ランク)



[PR]
by bekokuma321 | 2017-02-24 22:37 | ヨーロッパ

アメリカ大統領選の結果に怒りがおさまらない。次期大統領は、徹底した差別主義者だ。その彼に誰より先に思いっきりしっぽを振ってアメリカまで飛んで行った日本の首相。さらに怒りがわいてきた。

大統領選の真っ最中、テレビ討論会で、共和党のトランプが、民主党のクリントンの発言をさえぎって、こんな横槍をいれたーーー「なんて嫌な女だ」

その昔「嫌な女」呼ばわりされたことがある私は、トランプのような男性から「嫌な女」と言われるのは勲章かもしれない。そんな気分にもなって討論を聞いた。そして思い出したのが、このポスターである。
c0166264_21194322.jpg

「いい女は天国に行ける。でも嫌な女はどこにでも行ける」(三井マリ子意訳)。

作者も作成年代も発行元も不明。所持していたのは親友のノルウェー人マグニ・メルヴェール。先々週も、私はノルウェーの彼女の家に投宿したのだが、今もバスルームの壁に飾られてあった。

マグニは大学卒業後、ノルウェーの中都市エルヴェルムにある図書館で司書をしていた。1986年夏のこと、オスロ大学で開かれた「国際フェミニスト・ブックフェア」で、このポスターを見つけた。

国際フェミニスト・ブックフェアは、1984年ロンドンで初めて開かれ、続く2回目はオスロ。オスロ大学キャンパスを使って1週間催された。

女性によって書かれたありとあらゆる本が世界中から集められて、展示販売された。「女性解放と表現」をテーマのセミナーや、世界中の著名なフェミニスト作家を囲んでの、作品を論じ合う講座も設けられた。マグニが今でも忘れられないのは、エジプトの作家ナワル・エル・サーダウィの話だ。

サ―ダウィの話を聞いた後、マグニはこのポスターを買った。なぜか。その答えは、「叫ぶ芸術:ポスターに見る世界の女たち」嫌な女はどこにでも行ける(国際フェミニスト・ブックフェア)

アメリカ大統領選と「嫌な女」
[PR]
by bekokuma321 | 2016-11-18 21:30 | ヨーロッパ

c0166264_23204224.jpg

今日、月曜日、ポーランドの女たちは、「女のゼネスト」を決行した。

ポーランドの右派政権が、妊娠中絶を完全に禁止をしようとしているニュースを前に知らせたが、この法案への怒りを、女たちはストライキで示した。

産む産まない権利の圧殺に弔いの意を表すため、女たちは、黒い衣服を身につけて、町を行進した。いっせいに職場や学校を休み、家事を拒否した。そう、あの1975年のアイスランドの女のストライキからヒントを得たという。

BBCによると、ワルシャワの女性たちは、大通りで行進したが、他の市でもいっせいに行われ、全国でどのくらいの女たちがストをしたかは不明だ。

好きで妊娠中絶をする人はいない。女たちは、強姦やDVで妊娠することもある。もうこれ以上、経済的に無理だということもある。中絶せざるをえないから、するのだ。

保守派の見積もりでも、違法な妊娠中絶がずっと合法的中絶のほうがはるかに多い。合法1000から2000件に対して、非合法1万から15万件だ、という。

国際調査でも、妊娠中絶が禁止されると、合法になっている外国まででかけていける金持ちと異なり、貧しい人たちは闇中絶に走らざるを得ない。非合法の妊娠中絶ーー非衛生で危険ーーが増えるだけなのだ。

「あなたの自由に私は連帯する」「あなたの自由に私は闘う」のスローガンを掲げ、抗議の声を集めている。あなたもホームページからどうぞ! こちらTheir Freedom, our fight!

Black Monday: Polish women strike against abortion ban
[PR]
by bekokuma321 | 2016-10-03 23:28 | ヨーロッパ

c0166264_15175532.jpg

「『精神病院がなくなったら、私たちのほうが狂ってしまう』と、私に言った女性がいました」

こう言うのは、マリア・グラツィア・ジャンニケッダだ。

マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、イタリア精神保健改革運動の生き証人。精神科医フランコ・バザーリア(1924-1980)が働いていたトリエステで、精神病院廃絶運動の渦中にいた一人である。昨年までサッサリ―大学社会学教授で、フェミニスト。先日、彼女の来日講演があった。

イタリアで、精神病院廃絶が始まったころ、「精神病院が閉鎖されます。○月○日、あなたの娘さんを迎えにきてください」というような手紙が当局から家族たちに届いた。多くの家族は、精神病院から自宅に戻されると知って驚き、精神病院閉鎖に猛反対をした。

マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、そうした家族たちの集会に呼ばれた。そのとき、冒頭の発言が彼女に向かって投げつけられた。

女性解放を唱えてきたフェミニスト・ジャンニケッダにとって、精神病院廃止によって、母親、娘、妹、などが家族介護に縛られることは、あってはならないことだった。

「家族が家で世話をするのではなく、あちこちに地域精神保健センターをつくって、そこが責任をもって世話をする。この精神保健改革は、患者だけの解放ではありません。患者と患者の家族をともに解放するのです」と訴えた。

このとき、ジャンニケッダに強い反発をした、この女性は、その後、家族会運動にまい進していき、多くの家族をこの運動に引き込むリーダー的存在となっているという。引き込まれた女性の一人が、2010年来日したジゼッラ・トリンカスだ、とジャンニケッダは言った。トリンカスは、イタリア家族会連合会長、サルデーニャで精神障がい者のグループホーム経営に頑張っている。

c0166264_15194487.jpg

上のエピソードは、9月22日、東京大学駒場キャンパス講演会(イタリア語、日本語通訳付き)で披露された。ただ、裏方の仕事があった私はメモをとれていない。他の内容は後日、共催団体から広報される正確な報告を待ちたい。

さて、9月28日(水)、同大学石原孝二研究室で、マリア・グラツィア・ジャンニケッダの英語講演があった。簡単に報告する。

こちらのテーマは、イタリアの司法精神病院についてだった。日本では精神病院廃絶すら達成していないので、司法精神病院廃絶ははるかかなたの話だと思いながら聞いた。

イタリアの司法精神病院はOPGと略される。2011年から「なくせOPG」(STOPOPG)と呼ばれる市民運動の連合体ができ、廃絶に向けてネットワークを組んでいる。

c0166264_15574279.jpgイタリアでは長年の精神保健改革によって、1960年代末から精神病院の10万ベッドが少しずつ減らされ、1978年バザーリア法によって精神病院廃絶が強化された。このあたりは「大熊一夫著『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』(岩波書店)をみなさんが読んでいることを前提にします」と、ジャンケッダより発言があった。

精神病院がなくなったイタリアだが、刑法によって規定される司法精神病院OPGは残っている。法務省の管轄だ。6つ司法精神病院があり、そこの何千ものベッドは、常に満員状態(前著『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』p165~p175に詳しい)。

2006年から、EU加盟国以外からやってくる移民、難民の増加とともにOPGに入れられる人の数は増えてきた。「犯罪は、極貧状態、近くに頼れる仲間がいない、社会からつまはじきにされる、などによって引き起こされるのだから、当然でしょう」とジャンケッダは言った。

OPGは一部改革されたり、現存するOPGが閉鎖されたり・・・それに代わるレムズREMSと呼ばれる「安全策をほどこす住居施設」に移っている。とはいえ、法的根拠となる刑法の改正はない。つまり、世話と保護監督されなければならないと専門家によって認定された人は拘束される、とされている。ジャンニケッダは、REMSの快適そうな門構えと、その中で見た牢獄のような高いフェンスを見せた。

現在、司法精神病院6つのうち、3つが実態としてなくなった。最新統計では、司法精神病院に入院している人は269人。REMSには573人である。

新しく生まれたREMSは、司法精神病院と本当に違うのか。司法精神病院が減って、本当に拘留が減ったのか。もし拘留をしないとすると、精神を病む人で罪を犯した人はどう対処されるべきなのか――今、イタリアでは活発な議論がある。

この議論の根底を知るには、1978年のバザーリア法にもとづいた、イタリア精神保健改革に立ち戻る必要がある。と、ジャンニケッダは、そもそものバザーリア法をまとめた。

c0166264_15231978.jpg

イタリアの精神保健改革の第一は、精神病院の新設を禁じたこと。第二は、患者(と呼ばず「客」と呼ぶ)を地域精神保健センターで、支援しケアをするとしたこと。第三は、一般病院に最大15ベッドの精神科サービスステーションが新設されたこと。第四は、強制保健治療Involuntary Health Treatmentというものが生まれたこと。

この第四の強制保健治療は、他の病気と同様に法に規定されている。すなわち、治療は「人間としての尊厳、市民的、政治的権利を尊重して」「強制的保健治療をほどこされる人の同意と参加が確実とされたうえで」行われる。

強制保健治療は、公務員である精神科医を含む2人の医師によって要請される。命令を下すのは市長または市長代理である。さらに判事による認可が必要とされる。

強制保健治療は、利益優先をさけるため、私立の精神科で行うことは許されていない。公立一般病院の精神科サービスステーション、または地域精神保健センターでなされる。

しかも、強制保健治療は長くて7日間と決められている。延期される場合は、最初と同じように市長や判事による手続きを経なければならない。

「大事なことは、強制保健治療は、患者が社会に危険だから施すのではなく、患者が特別な支援(緊急対応:投薬管理、個室監督など)を必要としているから施される、ということなのです」

「精神科医には、その患者が危険であるかいなかを診断する義務はもうないのです」

イタリアの精神病院廃絶は、精神病を患う人たちを、自由と権利が付与された人間に復権し、法的位置に絶大な変化をもたらした。変わったのは患者だけではなく、患者の家族も変わった。さらに、精神科医の法的規定が変わった――バザーリアの娘と称されるマリア・グラツィア・ジャンニケッダは、こう結んだ。

最後に、FEM-NEWSとしてつけ加えたいのは、バザーリアの妻フランカ・ウンガロについてだ。彼女もフェミニストだ。カリスマ医師バザーリアゆえ、妻の業績は見えにくいが、彼女は作家であり、バザーリアの著作のほとんどすべてが妻との共著である。

また、夫の亡き後、フランカ・ウンガロは、国会議員に当選して、180号法(バザリア法とも呼ばれる)に対するバックラッシュ勢力と闘いつつ、精神病院を出た人たちをケアする地域精神保健センターをつくりあげる運動や、家族会運動の発展に寄与した。この妻と、マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、制定されたバザーリア法がちゃんと施行されるよう運動を続けてきた(法ができることと、法が施行されることは別)。現在、マリア・グラツィア・ジャンニケッダは、「フランコ&フランカ・バザーリア財団」理事長。

【写真上:2016年9月22日、東大駒場キャンパスのホールにて。中央がマリア・グラツィア・ジャンニケッダ】
【写真中1:2016年9月22日、東大駒場キャンパスのホールにて。バックの写真がイタリアから精神病院をなくしたフランコ・バザーリア】
【写真中2:なくせ司法精神病院STOPOPG 運動のシンボルマーク】
【写真下:2016年9月28日、東大駒場キャンパスの18号館にて。左がマリア・グラツィア・ジャンニケッダ。「日本の精神病院における"任意入院"と、"措置入院"は想像できますが、"医療保護入院"というのは何ですか。想像できません」と強い語調で質問している】

映画 むかしMattoの町があった:全国各地にて自主上映会展開中!
[PR]
by bekokuma321 | 2016-09-29 15:40 | ヨーロッパ