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女子のみ減点 東京医大の露骨すぎる女性差別

東京医大の露骨な女性差別を知った。8月2日の読売新聞によると、

「東京医科大(東京都新宿区)が医学部医学科の一般入試で、女子受験者の得点を一律に減点していたとみられることが2日、関係者への取材で分かった。不正な操作は2010年前後に始まっていたとみられ、最近まで続いていた可能性がある。女性は結婚や出産を機に職場を離れるケースが多いため、女子合格者を全体の3割前後に抑え、系列病院の医師不足を回避する目的があったという。」

8月3日の朝日新聞は「東京医大 女子を一律減点 合格3割以下に抑制か」「女子減点 差別と偏見」と見出しをつけ、次のようにフォローした。

「東京医科大の入試で秘密裏に、女子受験者の点数が一律に減点されていた。時代に逆行する差別の発覚に、同大幹部も『とんでもない話で、許されない』と憤った。一方、女性医師らからは、構造的な問題を指摘する声も出た。」

女学生を何が何でも減らしたい東京医科大はどんな方法をとったか? 女子の合格者を3割程度に抑える目的で、いつからかは不明だが、「マークシート方式の一次試験の結果に一定の係数をかける手法で長年にわたって行われていた」という(朝日 2018.8.3)。

女子のみ減点 東京医大の露骨すぎる女性差別_c0166264_113257.jpg女生徒たちは、そんな女性のみの減点操作が秘密裏に行われていることを知るはずもない。受験対策上、安全策をとって志望大学を変える女子受験生もいただろうが、必死に頑張った女性は多かったのだだろう。減点されても、女性は4割弱になったという。

そこで2010年、驚くべきことに、大学側によって女性へのさらなる減点策が編み出されて操作された。その企みの成果だろうが、2011年以後、女子の合格率は男子を下回る。男女の合格率の推移が示す(右図、朝日新聞2018.8.3)。

2018年の受験者は、おおよそ女4割、男6割。しかるに合格者は、女2割以下、男8割以上だ。朝日によると、大学関係者はこう証言する。

「2010年の一般入試で、女子の合格者が38%に上昇。『学内で困ったな、という話になった』(関係者)といい、翌11年からは、女子の得点がさらに減るよう、係数を変えたという」

燃えるような意思と高い才能が備わっていても、たまたま女に生まれたというだけで、医学の道を狭められてきた受験生たち―――なんという女性差別だろう。

教育は、雇用や社会的・政治的権利の基礎をつくる。だからこそ、教育では、男女平等と女性の地位向上の精神をもっとも徹底させなければならない。

憲法11、13、14、26条、教育基本法4条、女性差別撤廃条約1条に男女平等の教育が掲げられている。東京医科大における女子のみ減点制度は、これらすべてに違反する。

そのなかから、女性差別撤廃条約1条をかかげる。

第1条 この条約の適用上,「女子に対する差別」とは,性に基づく区別,排除又は制限であつて,政治的,経済的,社会的,文化的,市民的その他のいかなる分野においても,女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し,享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。

同条約は、「教育課程の男女同一」「固定的役割分担意識の克服」のため、「すべての適当な措置をとること」と明文化している。さらに「女子に対する差別とは、性に基づく区別,排除又は制限である」としたうえで「事実上の平等促進目的の特別措置をとることは差別とみなしてはならない」と、平等のための暫定的特別措置(アファーマティブ・アクション)をとることを認めている。

たとえば、男女平等政策に熱心なノルウェーでは、70年代から、大学において女性教員が少ない分野(学部)への女性教員の優遇策をとってきた。これは、長年の女性差別を解消する方策として認められる。

このたび発覚した東京医科大の女子のみの減点は、この真逆であり、絶対に許されない。

筆者は、男女共学の都立高校教員だった。その後、東京都議会議員になり、1990年ごろ、都立高校のいわゆるナンバースクール(もと旧制高校)の女子募集枠の極端な少なさを問題にして、改正を訴えた。

90年当時、都立高校全体で普通科の募集は女24998人、男27740人。女が2742人少なかった。私たちの抗議に対して、東京都は、「男女別々に募集してきた定員を撤廃して男女合同定員制にする」と応じた。しかし、男尊女卑が残存するなかで、性別定員が不明となれば、結局、内々に男女比が決められる恐れがあるため、男女別定員を堅持したうえで、男女半々にとさらに要求していった。

あれから4半世紀。日本の女性差別は、教育分野でさえこのように露骨であり、根は深い。

その最大の要因は、日本の政治が女性差別撤廃にきわめて弱腰だからだ。教育分野でいえば、安倍政権は、弱腰どころか女性差別を容認しているとしか見えない。2006年、日本最大の改憲運動体といわれる日本会議(注)や日本会議ダミー団体を支えに、安倍内閣は教育基本法を変えた。旧教育基本法第5条は、男女平等のために男女共学を保障していた。しかし、もとの5条は削除されて、男女共学の保障は消えてしまった。男女平等原則を一応否定していないものの、男女共学をあるべき教育の姿としてはいない。

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▲朝日新聞2018.8.3



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▲朝日新聞2018.8.3

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▲東京医大の行事。内閣府男女共同参画局(野田聖子大臣)が共催して支援している。同大ホームページで宣伝していたがなぜか中止に。罪悪感があるせいか同大学は男女共同参画的なる講演会を多々催している。2018.8.3現在

ノルウェーの大学、クオータ制再び提案
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●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第5回
女子が多い学部を希望する男子に加算点


【注】日本会議ホームページによると、かつての教育基本法の改正に向けて、365万人の国会請願署名や37都道県420市区町村での地方議会決議などをした、と記載されている。安倍首相は日本会議国会議員懇談会特別顧問。小池百合子都知事は衆院時代、日本会議国会議員懇談会副会長だった。
by bekokuma321 | 2018-08-03 12:00 | その他