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ノルウェーDV予算をめぐる攻防

先日、北欧とくにノルウェーのDV政策を多摩市で紹介した。

DVシェルターで働く人たちは両国ともボランティアだ。しかし、ただ同然で働く日本と、報酬を受けて働くノルウェーとの違いに驚いたという感想を多くいただいた。

中でもDVを受け続けてきた女性でなければ絶対に書けない感想に接し、日本の受け皿の貧弱さにあらためて悪寒が走った。

しかし、ノルウェーの性暴力撤廃運動にかかわる人たちは、ノルウェーの現状に決して満足してはいない。彼女たちは鋭く政府を批判し、改善策を求めて果敢に頑張っている。だからこそ問題の所在も明らかになる。また、DVシェルターに身を寄せる女性の半数以上がマイノリティだと言われている。イスラム世界からやってきてノルウェーで家庭を持った人には「強制結婚」「名誉殺人」さえある。事態は深刻化している。

そんななか、今秋ノルウェー総選挙があった。続投に決まった保守中道政権が、来年度からDV関係予算を削減するというニュースが届いた。

DV運動関係者はただちに予算削減を非難して、復活を求めてロビー活動を続けていた。どうなるのかと心配していたが、数日前「万歳! ありがとう」というDVシェルター連合代表Tove Smaadahlの声がネットに舞った。政府の予算削減案が退けられ、逆に増額されたというのだ。

日本なら考えられないDV関係予算増。その背景にあると考えられることを3つほど簡単にまとめる。

第一に、ハリウッド映画プロデューサー・ワインスタインのセクハラ報道をきっかけに、性暴力を告発する「#MeToo(私も)運動」が世界をかけめぐった。ノルウェーでは、ワインスタインによる強姦被害を早い時点で公にした女優ナターシャ・マルタ(Natassia Malthe)がノルウェー人であることもあり大々的に報道された。ノルウェーのMeToo反応は高く、性暴力を許さないムードが一気に広がった。

第二に、11月、ジュネーブで国連女性差別撤廃委員会CEDAWがあった。そこでノルウェー政府レポートの審査があった。参加した民間団体代表は、性暴力対策への補助金がCEDAWから評価されていることを持ち帰って、ロビー活動や女性運動に拍車をかけた。

第三に、保守中道政権は少数政権で、予算通過は予断を許さない。ボランティアでDV被害相談をしている大学法学部生たちや、閣外協力をしている自由党国会議員らは、DV関係予算削減への反対に熱心だった。

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 ▲赤ちゃんを連れて駆け込んだ女性がいたのだろう。DVシェルター相談受付前にはベビーカーが置いてあった。ノルウェーのハーマル市

krisesenter
Vold mot kvinner:Vi bør lytte mer til sinte feminister
1040 kvinner snakker i dette oppropet ut mot overgrep i norsk musikkbransje(「世界で最も男女平等の国」でさえこのありさまだとMeTooを報道するアフテンポステン紙)
北欧DVシェルターは24時間365日オープン
by bekokuma321 | 2017-11-23 23:10 | ノルウェー