2017年 11月 21日
北欧DVシェルターは24時間365日オープン
ですから福祉先進国といわれる北欧がどのような対応をとっているのか、とても興味がありました。それで三井マリ子さんの「北欧のDV対策と日本の今後」という講座に参加しました(注)。
刺激的ポスター
会場で渡された講演資料を手にとると、日本とはまるで違う刺激的なポスターのコピーが目に入りました。このような暴行を受けた女性のポスターを日本で貼ったら苦情が来るんだろうなと思いました。
でも、義母から10年にわたって食事を与えられない、殴る蹴る、押し入れに閉じ込められるなどDVを受け続けてきた私にしてみれば、DVの真の姿は、ノルウェーのポスターより実はひどいのです。
日本なら1250カ所のDVシェルター
お話が始まって、まず驚いたのは、ノルウェーには公的資金がはいっている駆け込みシェルターが50カ所あるということです。人口は大体500万人なので日本をノルウェー並みにするには、単純に数だけで1250か所は必要だと言う事になります。
日本に公的資金が入っているシェルターが何個あるのか、私はよく知りません。ただ日本では、DVを受けた被害者には、よほどの事が無い限り、外から手を差し伸べてくれるなんていう事はないと私は思っています。私が子ども頃に受け続けたDVは、完全に逮捕されるレベルだとは思うのですが、当時は「子どもへのしつけ」の一言で片づけられていました。
時代は変わりましたが、平成(1990年代以降)になっても、DV対策はあまり変わっていないようなのです。
日本の行政は被害者をたらい回しにする
公的なところ(女性センターとか、市役所とか)に相談窓口があるとは聞きますが、そこに行っても「それは警察に報告したほうがいい」とか言われます。そして警察に行けば行ったで「実家があるのなら、そこに頼れ」とか「自分で何とか逃げろ」とか言われます。理由も原因もさまざまなのに、日本の行政にはがっかりする事ばかりです。
駆け込みシェルターらしき所に接触したことはあるのですが、あれこれ制限があって、被害者側に立って親身になってくれるということとは程遠いものだ、と感じました。
それに比べて、ノルウェーは1970年代からDV対策がこんなに進んでいたとは、本当に驚きました。
そのノルウェーも、初めは女性たちがポケットマネーでDV相談を開設したことからスタートしたのだそうです。日本にもそういう女性はいるのでしょうが、数少ないのでしょう。そういう女性も出る杭は打たれるで、続かないのかもしれません。議員や行政の幹部になる女性がいても、結局権力側についてしまい、DV対策というようなことに熱心になる人が少ないのでしょう。
24時間365日体制で滞在日数無制限、働く人は有給
それに比べ、ノルウェーのシェルターは24時間体制、365日オープン。本気度が凄くて、天国のように感じてしまいます。おまけに滞在日数に制限がないそうです。
正直、女性が経済的に自立出来る状況は、ノルウェーより日本の方が難しいと思えるのに、日本の場合、早期に退所して、早期の自立を要求されては、たとえDV家庭でも、家を出る事を躊躇する人がいても不思議ではないと思います。
そのうえノルウェーでは、シェルターで働く人たちの給料が国立病院の看護士と同一だったそうです。公的資金が入っているからだと三井さんは言います。日本とは比べ物にならない程充実しているノルウェーのシステム。私たちの税金は、こういうところを優先的に使うべきだとつくづく思います。
DV家庭の子どもの声を聞こうキャンペーン
ノルウェーではDV家庭の子どもの声を聞こうというキャンペーンが盛んにおこなわれたということも知りました。日本は、子どもの死因や問題の背景にDVがあることを見ようともしません。
たとえば、子どもが夜中に繁華街をウロウロするのが問題だと言いますが、子どもが家にいられない状況に置かれていることを真剣にとらえている行政があるのでしょうか。形ばかりのミーティング位はするのかも知れませんが、行政が真の原因に立ち向かおうとしているなんて聞いた事もありません。日本の行政って、人権を無視しすぎると思います。
ノルウェーでは、1960年代前は今の日本と似ていたと講演で聞きました。同じ年月を使ってここまで進歩してきたノルウェーと、ひょっとしたら後退してるような日本との違いに唖然としました。
三井さんは、最後のほうで、公的資金がDVに配分されるかなど予算を決めるのは議会だと言いました。議員を選ぶ選挙の仕組みが日本とノルウェーでは違っているのだと思えました。私が生きてる間に、この日本をノルウェーのような仕組みに近づけることができるのでしょうか。
中山 あみ(サバイバー)
【注:2017年11月18日、東京都多摩市関戸公民館にて、
TAMA女性センター市民運営委員会企画「DV防止週間講演会」】
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