決闘の場はトロムソ図書館(ノルウェー)

毎晩9時半、ノルウェーの家庭はNRKで選挙デベイトを見る。今晩は題して「首相の決闘」。NRKは日本のNHKにあたる。

現首相アーナ・ソールベルグ(保守党党首)と、元外相ヨーナス・ストーレ(労働党党首)の論争だ。次の首相にふさわしいのはどちらか。政策から私生活まで多彩な話題で1時間半続いた。

番組で真っ先に目を引いたのは、2人の討論が行われた場所だ。首都オスロのNRKスタジオではなく、北の都トロムソにある公立図書館だった。

優美な曲線の屋根と総ガラス造りの豪華な建築は、とても図書館には見えない。トロムソ市の中心にある、この図書館は、さまざまなイベントに使われ、市民の憩いの場になっているそうだ。吹き抜けの会場はどこもかしこも人、人、人。「どなたでも自由に参加できます」という呼びかけに応じてやってきた市民たちだ(写真下はNRKウエブの録画から借用)。

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国会議事堂やメディアが集中する首都オスロで番組をつくるほうが、NRKには楽だろう。でも、それではオスロ近郊の人しか参加できない。オスロの人たちと、北極圏にあるトロムソ市民では首相への質問も違ってくるだろう。

それに、話す言葉も違う。ノルウェーには大きくわけて4つの方言があるといわれていて、北部の人は北部なまりの独特の方言を使う。アクセントだけでなく単語自体が違う場合もある。トロムソのあるフィンマルク県にはサーミの人たちも住む。サーミの人たちの言語はまったく別の言語で、方言とは言えない。

討論の中身だが、番組直前、労働党支持率が下がったという世論調査が発表になったばかりだった。しかし労働党党首ヨーナス・ストーレは、「決闘」にふさわしく、移民・統合大臣の国民の分断をあおるような行動(注)をとりあげて、首相に先制攻撃をした。

参加した市民からの質問には、漁業問題や、「20年間、薬物中毒だった。治って病院から地域に戻ったが周りに友人や相談に乗ってくれる人がいない。あなたならどうしますか」という深刻なものもあった。専門家や芸能人中心の日本の選挙報道とはずいぶん異なる。

椅子席は満員のため立っている人もいたが、市民のほとんどが座っていたのに対し、首相と元外相の2人は終始立ちっぱなしだったことも印象に残る。

先週、この選挙番組は、西海岸のローエンで放送されていた。討論をする政治家とアナウンサーのバックに壮大な山とフィヨルドが広がっていた。

世界一民主主義の国は、選挙制度や選挙運動、そして選挙報道までが民主的のようだ。思い出すのは、「どこに住んでいようと、平等の権利を持つ」とうたうノルウェーの教育方針だ。

「教育はみんなのもの!子どもや若者は、どこに住んでいようと、どちらの性であろうと、どんな社会的文化的背景を持っていようと、いかなる支援を必要としていようと、平等に教育を受ける権利を持つ」

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 ▲労働党の支持率低下を報道するアフテンポステン紙(2017年8月30日)。左が労働党党首、右が首相の保守党党首


【注】極右といわれる進歩党から移民・統合大臣となっているシルヴィ・リストハウグ Sylvi Listhaugが突然スウェーデンを訪問して、またメディアの見出しを飾った。スウェーデンにある移民・難民が集まる町 Rinkebyを参考にするための視察というが、選挙に利用としているのが見え見えであり、野党はもちろん首相など与党からもひんしゅくを買った。同じ移民問題を担当するスウェーデンの大臣と会う予定だったが、スウェーデン大臣は面会をキャンセルした。(Norway minister sparks war of words with Sweden over immigration)

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by bekokuma321 | 2017-08-31 03:05 | ノルウェー