2017年 08月 12日
平等・公平・同権に満ちた選挙制度(ノルウェー)
9月まで待たなくても、今日も投票ができる。ノルウェーの選挙投票は、すでに7月から始まっているからだ。「事前投票」と呼ぶ。7月1日から9月8日までだ。日本の「期日前投票」は選挙期間だが、ノルウェーには選挙期間という定めはない。そう、年から年中選挙運動をしているような感じだ。
2カ月間余りの長期間、いつでも投票できるのだ。これなら、うっかり忘れることも少ない。
投票時間は、選挙区ごとに決められていて、オスロ大学、オスロ市役所は午前10時から午後7時まで(土曜は午後6時まで)。
ヘードマルク県の小さな町オーモット市は市役所、図書館・カルチャーセンター、ケアセンター(高齢者や障害者総合施設)などが投票所にされ、時間は各施設の通常開館時間に加えて、特別時間が組まれている。
バス停の隣に新設された事前投票所を取材したことがある(上の写真)。遠くにいる人の目にも飛び込んでくる巨大な看板に目を奪われた。車いすやベビーカー用のスロープの大きさも目立った。これなら、らくだ。
選挙は比例代表制だ。国会議員数は169人。19県がそのまま選挙区なのでわかりやすい。19の選挙区から決められた数の人が選ばれる。たとえばオスロは19人、北部のフィンマルク県は5人、南部のアウスト・アグデル県は4人で最も少ない。
比例代表制は、最強候補が1人当選する小選挙区制とは異なり、大政党は大政党なりに小政党は小政党なりに当選者を出せる。多様な民意をほぼ的確に反映する。投票日が終わると、県選管は、政党ごとの”獲得票”を、1.4→3→5→7というふうに割っていき、その商で最大数をとった政党リストの上から順に当選していく。「修正サン=ラグ方式」といって、ドント方式より弱小政党に有利なんだそうだ。
有権者は投票ブースに入って、そこに並ぶ政党リストから支持政党のものを1枚とって、政党名を見えないように裏返しにして(以前は封筒に入れる方式だった)、それを投票箱に入れる。政党の決めた政党リストを変えたいなら、国会議員の場合、政党リストに数字を書き入れたり、×をつけたりする。
投票が終わると、県選管は、政党ごとの“獲得票”を国の選管に伝える。この“獲得票”の面倒な計算は省くが、要するに選挙区で1議席もとれなかった政党の中から4%以上とった政党リストのトップ候補が、各選挙区の最後の1議席をもらう。それを「平等化議席」と呼ぶ。
そもそも比例代表制である点で、小政党への票を切り捨てないように、という意志が感じられるが、「平等化議席」で、さらなるきめ細かな手を打っているといえる。平等と言えば、選挙に出る人や支援者がお金を使うなどということは絶対ない。日本のカネまみれ選挙とは異なる。だからこそ、ノルウェーでは貧しい難民を親に持つ人や、女子高生も立候補する。
忘れていけないのが、国会議員選挙と同時にサーミ議会選挙もあることだ。
ノルウェーの選挙は、素人にわかりやすく、らくで、便利で、平等なのだ。ノルウェーを含む北欧諸国は、福祉と平等のモデル国だ。その原点は、システムをつくる国会議員を選ぶ選挙自体が平等・公平・同権に満ちているからだ、と私は思う。
■ノルウェーの選挙は政党の政策を選ぶ選挙
■ノルウェーの事前投票は1か月以上
■世界一幸福な国ノルウェーの女性たち
■民主主義コンテスト 世界1はノルウェー、日本は20位
■選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
■比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
■高校生も立候補するカネのかからない選挙(近江真理)
■イラク移民の少女が国会議員有力候補になれる国