2017年 06月 01日
ノルウェー最大労組LO、イスラエル製品の完全ボイコット
イスラエルは、パレスチナを今なお占領し続けている。報道によるとパレスチナ人の3人に1人、中でもガザ地区の2人に1人は、極度の貧困生活にある。
2016年12月には、イスラエルが占領地で進める入植活動の停止を求める国連安保理決議が成立した。オバマ政権下のアメリカが拒否権発動せず、棄権したからだ。しかし、トランプ政権に変わり、決議の行方が案じられる。そんな中での「日・イスラエル投資協定」だ。
ああ、またかとガックリしていたら、これと関係したニュースがノルウェーから届いた。
90万人の組合員を擁するノルウェー最大の労働組合連合LOが、大会でイスラエル製品の完全ボイコットを決定した、というのだ。
LO委員長は、完全ボイコットに反対意思を表明していた。しかしLOメンバーは、委員長の考えとは違う結果を選んだ。賛成197 、反対117 。
ここに至るまでには、1人の女性組合幹部の信念をかけた闘いがあるという。その人の名は、サラ・ベル(40)。
サラ・ベルはLO傘下のベルゲン自治労・一般労働者組合の委員長だ(ノルウェーでは女性の労組委員長は珍しくない。LO前委員長も女性。最近では鉄道労働組合の委員長に女性が就任した)。
サラ・ベルは、LO組合員として何回か現地に飛びパレスチナ人の極限の生活を見、話を聞いてきた。ノルウェーに帰国して報告会を開き、説得を重ねてきた。また、サラ・ベルには、労働組合運動の弱体化と労使の力関係が崩れるとして、非正規雇用に反対する闘いを強め、ベルゲン市が派遣会社から職員を雇うことを中止する契約を勝ちとった実績がある。次はイスラエルの完全ボイコットだった。
LO大会で賛成多数に持ち込んだ彼女は、「議決までは、はらはらドキドキでしたが、結果は完全ボイコットが圧勝しました。まだ喜びに酔いしれています」。そして「パレスチナ人は、余りにも長く苦しみ続けています。この恐るべき不正を許せないというノルウェー一般人の考えが票に反映したのです」(注1)
「LOは国際BDS(boycott, divestment and sanctions)運動を支持し、今後もイスラエル製品のすべてのボイコット運動を国際的に進めます。またボイコットに反対するノルウェー政府に1967年のパレスチナ国家を認め、すべての人々が平等の権利を持てるような、民主的解決を約束させます。私たちの目標はボイコットではなく、イスラエル占領をやめさせることです」と大きな夢を語る。
このたびのLOの結果に、LO委員長も、LO支持政党である労働党党首も、外務大臣も嘆いた。オスロ駐在イスラエル大使は、LOの決議は不道徳なものだと言い、「深く根付いた、ユダヤ国家に向けての偏見、差別、ダブルスタンダードが反映したものだ」と激しい批判をあびせた(注2)。
サラ・ベルは平気だ。ノルウェーメディアは、サラ・ベルの生い立ちを報道したいるが、それによると彼女は、左翼的信条の親を持ち、幼い頃から政治的デモは日常茶飯事だったという。そのうえ彼女の親は、若者の相談員(Utekontakten)をしていて、その関わりから、貧困や格差や薬漬けの若者たちの非行を見聞きして育った。そんな環境から、平等な人間関係を好み、どんなところで生まれても人間は人間としての尊厳を尊重されて生活すべきだという考えを持つようになったのだという。
新聞に載ったサラ・ベルの写真を見て驚いた。右鼻に小さなピアス、両耳には巨大なイアリング、腕には派手な入れ墨。そのスタイルは、労働組合幹部の常識から大きく外れている。型破りだ。そんな彼女は言うーー「私の信念は、平等を求めて連帯すること。連帯して闘うことです」。ほれぼれするではないか。
一方、わが日本を振り返れば秘密保護法、安全保障法、さらに共謀罪。安倍首相に反論ひとつなく、そろってなびく自民党議員たち。彼女の爪の垢でも煎じて飲ませたい。
【写真】「連帯ーーそんなに難しいことではないでしょ」と書くサラ・ベルのFacebook。
【注1】最大労組LOがイスラエルの完全ボイコットを決議した以前に、トロンハイム、トロムソ、リリハンメルの少なくとも3市が議会で議決したと報道されている。3市に限らず他の市も議決したかもしれないが未確認。ノルウェー地方自治体の自立した決断と、国際問題への敏感な対応に驚かされる。
【注2】1814年のノルウェー憲法にはユダヤ人排除の規定があったが、その規定は1851年削除された。そこには作家ヘンリク・ヴェルゲラン Henrik Wergelandの不屈の闘いがあったとされている(Ervin Kohn)
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