2017年 05月 27日
小選挙区制が生んだ共謀罪
しかし、この議席は、得票33%で議席61%を獲得となった自民党から明らかなように(2014年衆院選)、私たちの投じた票に比例してはいない。民意を反映しない議員の「数」で、民意をしばることになる深刻な法律を決めたのである。
その上、何度も繰り返すが、人口の半分以上を占める女性がわずか1割以下しか衆院にはいない。
日本の女性割合は、世界194カ国中164位である(2017年5月、IPU)。国連から幾度も是正勧告を受けてきた。政府ですら、「党員・役員に占める女性割合や、衆議院議員及び参議院議員の選挙における女性候補者の割合、地方公共団体の議会の選挙における女性候補者の割合が高まるよう」にという文書を政党に向けて出した。しかし、1強しか当選しない小選挙区制での女性当選は難しく、9%だ。この「極端な男性偏重の場での法律は無効!」と叫びたいくらいだ。
共謀罪と似ているといわれるのが治安維持法だ。この法律があった戦前の日本女性はどうだったか。
何しろ女性には投票する権利も、立候補する権利もなかった。権利がないのだから義務もないのならしかたがない。が、全く違った。女性たちは、「皇道精神および日本婦道の奨励」をする大日本婦人会という組織の下、天皇の赤子を産み育てて兵士として送りだす戦争支援義務を徹底して負わされた(若桑みどり『戦争がつくる女性像』、写真)。
女性による社会主義団体「赤瀾会」は、憲兵隊によって拉致虐殺された伊藤野枝に代表されるように、会員たちが検挙・投獄されたりの迫害を受けて、創設後、数年間で消滅せざるをえなかった。反体制とも言えない矯風会の機関誌『婦人新報』さえ、「ページ数が減らされ、のちに発行部数を半減して会員には回覧で読むように乞うたのだが、ついに紙の配給の割当が受けられなくなり、出版統制のため休刊のやむなきに至った」(久布白落実『廃娼ひとすじ』)。
戦前の日本女性には、人権など、かけらほども存在しなかった。
日本女性が、表現の自由、思想信条の自由、政治参加の自由を獲得したのは、戦後の憲法によってである。「人類の多年にわたる自由獲得の成果」(憲法97条)なのだ。
その自由をしばることとなる共謀罪を、まともな質疑もせずに強行採決とは。その道筋をつくることになったのは、小選挙区制という選挙制度による”歪んだ多数制”だ。承服してはならない、とあらためて思う。
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