2017年 05月 20日
「魔女狩り」と「共謀罪」
魔女狩りとは、トランプの場合、いつもながらのド派手な言いがかりにすぎない。ロシア介入などなかったのなら、証拠をもとに徹底調査をさせて、疑惑を晴らせばいいだけのことだ。
ところで、今日、国会議事堂の一室で、自・公・維新の3党によって共謀罪が強行採決された。「魔女狩り」の可能性を含む法律だ。この際、ほんものの魔女狩りとはどういうものか思い出してみたい。
アメリカでは、セーレムの魔女裁判が有名だ。17世紀、ニューイングランド地方のセーレム村で、100人を超す村人たちが次々に「魔女である」と告発され、何の証拠もなく、裁判で有罪とされ、絞首刑となった。
ことの発端は、牧師の娘たちが、ある会合で奇妙な行動をとったことだ。牧師は、娘たちの行動の原因は、使用人である黒人女性によって妖術をかけられたからだと断じた。「自白すれば減刑される」と言われた使用人は、妖術をかけたと”自白“した。さらに、関係者であると密告された村人たちが次から次に告発されていった。
『魔女狩り』(森島恒雄、岩波新書)によると、魔女狩りはアメリカより先にヨーロッパで起きた。「1600年を中心の1世紀はまさしく『魔女旋風』の期間だった」。一説には数十万の女性たち(男性も)が、「迷信と残虐の魔女旋風」の犠牲となって、絞殺されたり、絞殺された上で焼かれたり、生きながら焼き殺されていった。
ノルウェーでも魔女狩りがあったと聞いて取材にでかけたことがある。フィンマルクのヴァルドゥーだ。
ありえない罪を有罪と断定する決めては何だったか。強いられた「自白」だった。魔女とされた人たちは、審問官が誘導するままにすべてを肯定し、「自白」をしていった。
なにやら、今日、衆院の法務委員会で強行採決した共謀罪に似ているではないか。ある場所に集まって話し合っただけで処罰しようというしろものだ。計画するのは頭の中でのことだから、物証があるはずはない。だから自白と密告しかない。
20世紀のイギリスの最高法院長マクドネル氏の言葉は、警告的だ。
「魔女裁判は『自白』というものが不十分であり頼りにならぬものであることを、他のどんな裁判よりも強力に証明している」(同上『魔女狩り』)
■小林多喜二から共謀罪を思う
■「むかし魔女、いま大臣」(連載「衆院秋田3区の政党交付金」)
■ノルウェーの魔女裁判から思うこと
■魔女モニュメント、オープン