ベリット・オース、豊中市、日本会議


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「戦わなければならないことが多すぎますね」――201738日、国際女性デーを記念する新聞に載ったベリット・オースのことばだ。


88歳のベリット・オースの闘いは、今なお続いているようだ。オスロ大学名誉教授(社会心理学)。ノルウェー初の女性の政党党首に就任した1970年代、クオータ制を初めて実行した。

クオータ制とは、決定機関や立候補者の少なくとも40%を女性にするしくみだ。これによってノルウェー女性の政治参加は爆発的に進んだ。日本にクオ―タ制を私が紹介したのは80年代だった。今ではクオータ制は、世界中に伝播している。


前述のノルウェー紙によると、女性デ―にあたって、ベリット・オースは若い人たちへ「女性への虐待、女性の貧困、女性器切除について膨大な調査が出ています。それらを読みなさい」とアドバイス。さらにノルウェーでは、貧富の差ーー女性に極端に貧しい人が多いーーが拡大しているにもかかわらず、どの政党もそれへの対策がないと批判する。


さて、ベリット・オースは、大阪府豊中市にやってきたことがある。いま森友学園事件で話題の豊中市だ。


私が豊中市男女共同参画推進センターの館長をしていた2003年のことだった。愛称「すてっぷ」。男女平等を地域のすみずみに浸透させるために、豊中市が阪急豊中駅前に創立した施設だ。初代館長は全国公募だった。応募したら、幸いにも採用された。


私は、20代から女性差別に敏感に反応し、それに対して闘ってきた。豊中にも、男女不平等社会を変えたいと願う女性たちが大勢いた。そんな市民を下から支えていこう。私は120%努力した。ベリット・オース講演会も、その一環だった。「すてっぷ」の台所事情を話したら、旅費を負担して来日してくれた。彼女は、豊中のあと、名古屋、高知、福井などを講演して回り、聴衆をとりこにした。メディアも大きく取り上げた。


しかし、豊中市議会には、私を嫌っている人たちがいた。日本最大の極右組織といわれる「日本会議」につらなる議員たちだった。


議会には、「教育再生地方議員百人と市民の会」代表の議員、神社本庁と関わる議員、塚本幼稚園卒だという議員らがいた。彼らは、議会質問の名のもとに、「ジェンダーフリー」を議会で攻撃した。その執拗さに、行政は頭をたれておどおどするばかりだった。


日本会議系の議員の唱えるあるべき男女とは、こういうものだ。TVニュース番組での発言を引用する。


「オスとメス、男と女というものは、有史からずっとこうあるわけですから、男性は男性としてきっちりと小さなうちから男性の自覚というものを育ててゆく、女性は女性としての自覚を育てていく」(北川悟司市議)


「もっともっと女性は、家庭を、子どもを大切にして、いい子どもを、つくってください」(北川悟司市議)


「女性が家庭を維持する大きな役割を担う。これ当たり前じゃない。世の中で一番すばらしいことは、愛する子どもを育てることです。一人の女性の人生のなかにこのことがなかったら、社会自体も存続しません。女性が安心して、そうできるように、男は、ある意味、命を捨ててでも働くということなんです」(西村真悟衆議院議員)


「すてっぷ」への妨害行為や図書室蔵書の非難、市役所周辺での悪質な嘘のビラ撒き、私の講演会における集団での難癖、根も葉もないうわさの流布。山谷えり子や高橋史朗を「すてっぷ」近くの会場に招いて「ジェンダーフリー反対」の講演会をシリーズで催す。


攻撃のピークは、夜の市役所での3時間にわたるどう喝だった。議員は、「すてっぷ」の1年前の内部資料を手に、これは人権侵害だと怒鳴り散らした。テーブルをバーンと強打した。こうした日本会議系議員らの執拗な言動に屈した豊中市幹部によって、私は首になった。


不当な首切りだと考えた私は、豊中市らを提訴した。1審は敗訴だった。失意のどん底にあった私を励ましたのは、豊中市民たち(木村真議員も)や国内外の友人たちだった。私は控訴した。そして高裁で勝訴! 裁判長は、地方自治体の政策に対する右翼議員らによる陰湿きわまりない圧力をあますことなく断罪した(注)。

ノルウェーから、私を励ましてくれたのは、ベリット・オースだった。彼女の2008年の手紙は、男女平等の敵は好戦的な家父長制であると、日本会議の特質をズバリ見抜いていた。




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▲ベリット・オースからの手紙(原文は英語)


【注】 日本会議系の政治家による反動的動きが、行政に介入して意思決定に圧力をかけるさまが、裁判によって露呈された。三井マリ子・浅倉むつ子編『バックラッシュの生贄ーーフェミニスト館長解雇事件』(旬報社、2012)に詳述されている。

「日本会議」に向かって闘いを挑んだ本:『バックラッシュの生贄』を読んで
インパクションに『バックラッシュの生贄』 (書評)
今も続く右翼的攻撃の楯となる本:『バックラッシュの生贄』を読んで
ベリット・オース「支配者が使う5つの手口」
館長雇い止めバックラッシュ裁判
男女平等を嫌う反動勢力の実像
館長交代「圧力に屈す」市に賠償命令 朝日新聞 第1面(2010年3月31日)
「豊中市批判的勢力に屈服」市施設めぐり大阪高裁判決「元館長の人格権侵害」朝日新聞朝刊(2010年3月31日)   





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by bekokuma321 | 2017-03-17 16:12 | ノルウェー