小選挙区制の日本、比例代表制のノルウェー

久しぶりに三井マリ子さんの講演「高校生が議員になれる国ノルウェーの選挙」を聞いた。政党交付金にまつわる厳しい裁判を終えた三井さんは、すっかり変貌していた。

「政党交付金や選挙制度について勉強しましたから、今はよくわかります」と、苦悩の衆院選体験を笑って語り、タフさが戻ったかのようだった。

衆院選とその選挙にまつわる裁判を闘った三井さんは、講演の冒頭で「1 小選挙区制は悪い制度である」と、石川真澄と阪上順夫の本から引用した。そして、「2 比例代表制は民意を反映する」と言った(左下Moreをクリックして末尾PPTを参照)。この2点を証明するかのように比例代表制をとる「ノルウェーの選挙制度」が紹介された。

c0166264_20443766.jpg講演の最後のほうで、ノルウェーの小さな自治体「オーモット市」の議員一同がアップされた。100年ほど前のものだという。女性は端っこにただ一人。男性は一様に黒っぽいスーツにネクタイ姿。年齢も似たり寄ったりの高齢層。表情さえ似たり寄ったりの強面だった


c0166264_20482020.jpg次に映されたのは、100年経った、同じ「オーモット市」の現在の議員一同だった。その前列は、女性で占められ、男性は後ろの列に並んでいる。多様な年齢層。服装もカーディガンにパンタロンの女性あり、ワンピース姿の女性あり。男性もセーターあり、ワイシャツ姿あり、ジャケットあり、といった具合だ。年齢、性別、服装、のどれをとっても一色におさまらない。このオーモット市は地方選挙後、女性の当選割合68%である、と大きく報道されたとか。
 
北欧諸国のみならず、ヨーロッパの多くの国々では、地方議員は無報酬のボランティアが多いと三井さんは言った。報酬はないが、住民からの強い信頼と尊敬の念を得て働くのだという。





そのノルウェーの選挙制度だが、ノルウェーも、100年ほど前までは「小選挙区制」だったそうだ。19世紀後半、地方自治体に、民意を反映しない選挙への不満が噴出し、人々は怒りを「棄権」で示した。有権者全員が投票をボイコットした市もあったそうだ。

そして19世紀末になると、「比例代表制」で選挙をする地方が誕生した。国政の前に、地方が「比例代表選挙」を始めた、というのだ。なんと面白い展開か。

同じ頃、イギリスでは、『代議制統治論』を書いたジョン・スチュアート・ミルが下院議員に当選し、国会で「比例代表制」を提唱した。1885年には、ベルギーで「比例代表制を求める国際会議」があり、その決議文が採択された。以下は、三井さんが和訳して講演会で紹介した決議文。

「比例代表制は、国家の本当の多数派に政治的力を与える唯一の手段であり、また、少数者たちには効果的意見を、選挙区のすべての重要な団体には正確な代表を与える唯一の手段である」(翻訳三井)

こうして1920年には、ノルウェーは、地方だけでなく国政も、「比例代表制」選挙に改正した。

日本はと言えば、敗戦後、ようやく女性参政権を認めた完全普通選挙がスタートし、衆議院の中選挙区制(複数当選)が長く続いた。しかし、20年前に小選挙区制へと改変されて、今に至っている。

c0166264_21105100.jpg「ノルウェー選挙」の特徴は、政党中心の比例代表であり、「選挙は個人を選ぶのではなく、政党を選ぶ」。選挙にあたって、各政党は「候補者リスト」を作る。この候補者リストは、性別、年齢、住所などから幅広く選ばれる。

有権者は、たくさんの政党の候補者リストから、自分の支持するリストを選んで投票箱に入れる。選挙で得た政党の得票率にしたがって当選数が決まり、そのリストの上から順番に当選していく。

ノルウェーの選挙は、政党を選ぶ選挙だから、「政党」同士が競い合うのであり、選挙運動は政党の政策の討論会が中心となる。こうなると、候補者個人は、当選めざして顔や名前を売る必要がないので、そのためにカネを集めることはありえない。

しかし、日本の選挙は、候補者個人(1人)を選ぶ小選挙区制だ。さらに問題は、その小選挙区制といっしょに成立した「政党助成法」だ。この法律によって、国民の税金が「政党交付金」として、各政党を経由して、選挙を戦う候補者個人へと配布される。この政党交付金が、国民にわからない錬金術で、政治家個人の懐にはいっているのだ。

c0166264_21163173.jpgさらに学んだことは、学校教育における政治教育の有り様だ。小学生のときから、政党を訪問して政策を聞いたり、政党の代表者が小学校に来て政策を生徒に説明する。高校ともなると、生徒会が主催して、校内で「選挙討論会」も投票も行われる。投票結果は、学校ごとに集計されて報道されて世論にも影響を与える。学校生活に政治にが入り込んでいるありさまは、政治を教育から締め出している日本と比べ、その大きな差異にあんたんとする。

ヨーロッパの多くの国で捨てられた、大量の死票を生み出す「小選挙区制」で、日本の選挙は行われている。では、この選挙制度を変えるにはどうするか。この選挙制度に立ち向かってくれる議員を輩出する以外に方法はない。日本の選挙制度の弊害を知ることが、まずは必要だと思った講演会だった。

岡田 ふさ子(さみどりの会* 事務局)
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(*)2012年暮れ、2カ月にわたる立候補要請を受けて、三井マリ子さんは秋田移住して衆院選に。落選後、松浦大悟議員らに不明朗な会計処理をされ心身ともに損害を受けたと提訴。さみどりの会は三井裁判を支援する会の愛称。さみどりの会ホームページは選挙・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイト。裁判は2015年11月和解で終わった

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死に票がない比例代表選挙_pdf(連載「衆院秋田3区の政党交付金」第24話)
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by bekokuma321 | 2016-11-16 21:30 | ノルウェー