EU国民投票と女性

c0166264_13413464.jpg6月24日、イギリスは、国民投票で「EUから抜ける」という決定をくだした。結果は52%対48%。投票率は72%。

この結果に、世界のメディアは世も末と叫んでいる。イギリスのメディアには、離脱したら経済がめちゃめちゃになる、関税やビザ検閲が復活し物や人の移動が不自由になる、海外企業が逃げて行き雇用が減る、とする危機感があふれている。

そんななか、イギリス国旗を背景にして、「Great, Britain!」と掲げたのは、ノルウェーの市民団体「EUに反対(Nei til EU)」(↓)。EU加盟に反対する超党派の組織だ。イギリスに対して、「心配ご無用、世界はEUより大きい」と励ます。

ノルウェーでは、EUに加盟したい政府の決定に反して、国民は、国民投票で2度にわたってEU加盟反対を選んだ。現在、国民の7割はEU加盟反対である。とりわけ、男性よりも女性にEU反対派が多く、非加盟世論を先導してきたのは女性たちである。Nei til EUの代表もずっと女性だ。

2回目の国民投票を現地ノルウェーで取材した。当時の加盟反対派代表は、女性の雇用とむすびつけて、こう論陣をはった。拙著「第3章 EU加盟に『ノー!』」(『ママは大臣パパ育児』明石書店、1995)から引用する。

「EU諸国の失業率はノルウェーの2倍です。貧富の差もノルウェーよりはるかに大きい。ノルウェーは人々の間の不公平をなくすことに社会の富を使ってきました。とりわけ公的分野の充実は、女性の雇用の拡大に2つの重要な役割をはたしてきました。

ひとつには保育者、教員、福祉職員など、公的サービス部門が増えた結果、女性の職場そのものが増えました。

ふたつにはそうした公的サービスによって保育、介護など家の中でやっていた仕事が代行され、女性が無理なく働き続けられるようになりました。

ところが、EUの経済優先政策は、こうした福祉分野へ市場原理を導入させようとしています。それは公的部門の縮小につながっていきます。その結果、女性の雇用の場は減らされ、社会福祉が低下します。これでは、お金のあるひとしか必要なサービスを受けられなくなるのは明らかです」

では、イギリスの女性たちはどう動いたのだろう。

そもそもEU離脱(または残留)によって女性の生活や仕事はどう変わるのかについて主要メディアの報道は見つからなかった。イギリス国内でもそうだったらしく、危機感を抱いた女性団体は、EUに入っていることで、いかに男女平等政策が進んだかを示すため、EUの制度を解説したパンフを発行し広報した。読んだ国民がどの程度いたかは、疑問だ。

投票日が近づくと、「賛否どちらも論陣をはるのは男性ばかり。もっと討論会に女性を登場させて、女性の関心を高めろ」(フォーセット協会)とアピールを出した。もとになったのは、次のような世論調査結果だ。

「女性は、EUをめぐる討論は男性主導であると思っている」

「女性は、どちらに投票すべきか判断するための情報を得ていないと思っている」

「残留派は、離脱派に比べ、個人的な問題と結びつけることに成功していない」

「女性は男性よりも『よくわからない』と答えている」

こうした女性側の空きポケットに、離脱派の威勢のいい言葉ははいりやすかったに違いない。

たとえば、離脱派の急先鋒ファラージ独立党党首(右派)は、ドイツ・ケルン市での暴動をとりあげ、「EUにとどまる限り移民難民が増えて女性が性暴力にあう」というような“脅迫的アピール”をした。保守党のボリス・ジョンソン前ロンドン市長は、EUに納める重い負担金(100億㍀)がなくなれば、それを国内で使える、EUにいる限り移民・難民に仕事が奪われ社会保障を食いつぶされる、と唱えた。
c0166264_14252987.jpg
というわけで、同じEU懐疑派といっても、ノルウェーとイギリスでは、だいぶ考え方が異なる。

2国は、人口も歴史も主産業も違う。イギリスもノルウェー方式で、は難しいだろう。

しかし、ノルウェーの市民団体Nei til EU代表Kathrine Klevelandのイギリス国民投票へのコメントは、傾聴に値する。要旨を和訳する。

「イギリスは離脱したら300万の仕事が失われると言っている。これはノルウェーの国民投票でも同じだった。EUに加盟しないと10万の仕事がなくなる、と言っていた。実際は逆で、ノルウェーの失業率は、1994年以来、EU加盟国の失業率よりも少ない。

EUの外にいると、国際競争力がそがれて、経済が干上がるというのもそうだ。実際は正反対だ。ノルウェーは孤立していない。独立国家であり、20年間経済は順調であり、EU加盟国よりも高い成長率をほこる。

さらに、男女平等、社会福祉などの国際指標で、ノルウェーはEU加盟国よりも高いランキングにある。幸福度の国際ランキングでも、ノルウェーはEU諸国より高い。

ノルウェーは、主権国家であり、民主主義国家だからこそ、EU加盟に反対した。ブラッセル(EU官僚機構がある)は民主主義とはあいいれない。ノルウェーは、決定する権利は人々により近くになければならないと考えている、つまり、自国のことは、地方自治体、県、自国の政府が決定すべきであり、ブラッセルに決定させたくない」

Vote Remain
Vote Leave
Pressemelding fra Nei til EU:Brexit – a victory for democracy!
Eight reasons Leave won the UK's referendum on the EU
Gender imbalance in the EU referendum debate
The EU Referendum Gender Equality Challenge
民主主義度1位ノルウェー、23位日本
レガタム繁栄指2015
世界で母親がもっともハッピーな国ノルウェー
最も再犯率の少ない国ノルウェーで今
再犯率の最も少ない国の刑務所
[PR]
by bekokuma321 | 2016-06-27 14:13 | ヨーロッパ