テニス界の男女同一価値労働同一賃金論争

テニス界のワールド・チャンピオン、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の株が急降下している。

BNPパリバ・オープン大会ディレクターのレイモンド・ムーアの女性蔑視発言を紹介したが、彼の発言に関わって、ジョコビッチは、こう言ったのだ。

「男子テニス界は、もっと多く賞金を要求すべきだと思う。男子テニスの試合に来る客の方が多いとデータがあるのだから」

セレーナ・ウィリアムズは、レイモンド・ムーアに対してと同様、このノバク・ジョコビッチ発言も聞き逃さなかった。すぐ鋭く反撃した。

「非常に失望した。たとえば、娘と息子の両方がテニスをしていて、息子に、あなたは男の子だからより賞金が多いなんて言えない。3歳でテニスを始めた娘と息子に、あなたたちはどちらも同じように評価されると言いたい」

ジョコビッチとトップを争うイギリスのアンディ・マレーも、ノバク・ジョコビッチの発言に対して、「賞金額は男女同一で、100%当然」と断定して、こう批判した。

「ジョコビッチは、女性が男性よりも観客が多いと、より賞金が多くあるべきだと言っているらしい。しかし、たとえば、セレーナがセンターコ―トで試合をして、男子プレイヤーがセルジー・スタコフスキ(ウクライナ)と男子テニスの試合をしたとしよう、観客の多くはセレーナの方を見にくるに決まっている。女性の試合を見に来る客は大勢いる。全体でどうのこうのとは言えない。どんな試合を見たいかによって、日によって、変わる」

アメリカのテニス界の対応は素早い。今日のニュースによると、女性蔑視発言をしたレイモンド・ムーアは、ディレクターを辞任し、ノバク・ジョコビッチは「誤解されてとられた」と謝罪した。

c0166264_18205514.jpg年俸ウン十億円というプロ・スポーツ界と、年収ウン百万円の日本女性の賃金を比べるのは、適当とはいえないかもしれない。でも、この一連の発言は、日本でやっと社会問題になりつつある「男女同一価値労働同一賃金」という大テーマについての、生きた材料だった。なかでもセレーナ・ウィリアムズの反撃は、すばらしかった。多くの働く女性だけでなく、性差別の嫌いな男性も、うなずいたはずだ。

ところで、男女同一価値労働同一賃金について、錦織圭選手からコメントをとった日本の記者はいたのだろうか。

Serena Williams and Andy Murray back equal pay and wade into Djokovic
Raymond Moore Steps Down As CEO and Tournament Director of the BNP Paribas Open
Tennis pay row: Novak Djokovic says comments were taken wrong way
セレーナ・ウィリアムズ「地上の全女性への侮辱だ」
高梨選手と女子スキージャンプ
女性がマラソンをすると胸毛がはえる
昭和シェル石油女性差別裁判原告・野崎さんの想い

【写真:1993年代の北欧の「男女同一価値労働同一賃金」キャンペーンポスター】

追記(2016.3.24) 今回の論争の大前提に、すべてのメジャーテニスの試合では、賞金額に性差がなくなっていることがある。もちろん長年、男性の試合の賞金のほうが女性のより高かった。その歴史を破った選手がビリー・ジーン・キングBillie Jean King。彼女は1973年、男性テニスプレイヤーに試合を挑み勝利した。
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by bekokuma321 | 2016-03-23 18:38 | USA